- 更新日 : 2024年10月7日
【最新】育休はいつから?男性と女性の違い、給付金の実質10割給付を解説
育休は男女ともに取得でき、女性であれば産後休業後から、男性であれば出産日(出産予定日)から取得可能です。本記事では、育休の基礎情報や女性と男性の育休の違い、育休手当の振り込まれるタイミングなどについて解説します。従業員の育休の取得において、会社がすべきことも紹介するので、人事労務担当者はぜひ参考にしてください。
目次
育休(育児休業)はいつから?
育休(育児休業)は、一定条件を満たしていれば申請することで男女問わず取得可能です。育児・介護休業法で導入が義務づけられている制度で、1歳に満たない子どもを養育する従業員が、養育に専念することを目的としています。育休は、従業員からの申出があった際、必ず取得させなければいけません。
育休の取得開始時期は、次のとおりです。
- 女性:産後休業が終了後から
- 男性:出産日(出産予定日)から
また、女性は育休とは別に産休を申出・取得する権利もあります。
- 産前休業:子どもが産まれる前
- 産後休業:産まれたあと
産前休暇は出産予定日以前6週間(出産予定日以前42日)から取得でき、妊娠している本人が雇用先に申請することで取得できます。一方の産後休暇は、出産日の翌日から数えて8週間(56日後)です。
産前休暇が申請制なのに対して、産後休暇の場合、最低6週間は休む義務があるため注意しましょう。なお、育休を取得できる期間は、原則子どもが1歳になる前日までです。
女性と男性の育休の違い
女性と男性の育休の内容は基本的には同じです。しかし、取得開始時期がそれぞれで異なります。
- 女性:産後休業が終了後から
- 男性:出産日(出産予定日)から
また、男性には「産後パパ育休(旧、パパ休暇)」もあります。子どもの出生日から8週間以内の期間で、最長4週間まで休業可能です。なお、4週間を2回まで分割して取得することもできます。
産休、育休のイメージ図は、次のとおりです。男性の上側は、産後育休と育休を併用した例です。産後パパ育休を2回に分割し育休を1回利用したパターンになります。
誕生 | 8週間 | 1歳 | |||||
女性 | 産後休業→ | 育休→ | 終了 | ||||
男性 | 産後パパ育休→ | 職場復帰 | 産後パパ育休→ | 育休→ | |||
育休→ |
転職してすぐの場合、育休はいつから取れる?
基本的に育休の要件は「1歳未満の子どもを養育する労働者」であるため、入社後1年未満であっても取得できます。しかし、労使協定で次の内容について締結されている場合、例外として会社は育休の取得を拒めるため注意しましょう。
- 継続雇用されて1年未満の労働者
- 週の所定労働日数が2日以下の労働者
無期雇用と有期雇用の場合を、それぞれで見ていきましょう。
<無期雇用の場合>
無期雇用の場合、入社から1年未満であっても原則育休を取得可能です。前述した内容の労使協定が締結されている場合は、会社が拒否すると取得できません。
<有期雇用の場合>
有期雇用の場合に取得できる条件は、次のとおりです。
- 子どもが1歳6ヶ月までの間に契約満了することが決定していない
なお、注意したいのが育児休業給付金(育休手当)の扱いです。育休手当を受け取る要件には、「育児休業を開始する前の2年間に12ヶ月以上の雇用保険被保険者期間があること」とされています。
そのため、転職前に一度会社を辞めて転職活動をしていた場合など、育児休業開始前2年間の雇用保険加入期間が12ヶ月に満たない場合は、給付対象外となってしまう恐れがあるため注意しましょう。
育休期間の計算方法、具体例
産休・育休の期間は、次のとおりです。
- 産前休暇:出産予定日以前6週間(出産予定日以前42日)から取得可能
- 産後休暇:出産日の翌日から数えて8週間(56日後)まで取得可能
- 育休:子どもが1歳になる誕生日の前日まで
この条件下で、2024年9月1日に子どもが生まれた場合の産休期間、育休期間は次のとおりです。
出産日:2024年9月1日
産前休業:2024年7月22日~9月1日
産後休業:2024年9月2日~10月27日
育休:10月28日~2025年年8月31日
育休期間の計算には、厚生労働省の自動計算サイトが役立ちます。ご活用ください。
また、育休は2回に分けて取得できるため、以下のように夫婦交代で取得することも可能です。
生後8週間 | 1歳 | ||||
女性 | 育休 | 復職 | 育休 | 復職 | 終了 |
男性 | 通常勤務 | 育休 | 復職 | 育休 |
また、父親だけ分割するパターンなどもあるでしょう。以下のようなパターンであれば。1歳を迎える前に父親が再度育休を取得して、保育園の入園準備などに備えられます。
生後8週間 | 1歳 | ||||
女性 | 育休 | 終了 | |||
男性 | 通常勤務 | 育休 | 復職 | 育休 |
パパ・ママ育休プラスはいつから?
パパ・ママ育休プラスとは、両親がともに育休を取得する場合、子どもが原則1歳までの休業可能期間を1歳2ヶ月に達するまでに延長する制度のことをいいます。
注意点は次の2つです。
- 1人あたりの育休取得可能最大日数は1年間で変わらない(産後休業や産後パパ育休など含む)
- 育児休業の終了日が、子どもが1歳2ヶ月になる日の前日までになる
育休期間が1年2ヶ月まで延長されるわけではない点には注意しましょう。ただし、パパ・ママ育休プラスを取得するためには、条件があります。
- 夫婦ともに育休を取得すること
- 配偶者が子どもの1歳の誕生日前日までに育休を取得している
- 本人の育休開始予定日が、子どもの1歳の誕生日よりも前に設定してある
- 本人の育休開始予定日が、配偶者の取得した育休(産後パパ育休を含む)の初日以降になっている
また、次に挙げるようなケースの場合、取得できないため注意しましょう。
- 父親の育休開始予定日が子どもの1歳の誕生日を1日以上過ぎている
パパ・ママ育休プラスの取得パターン例
パパ・ママ育休プラスの取得パターン例として、母親の職場復帰にあわせて交代で取得するケースを見てみましょう。
誕生 | 8週間 | 1歳 | 1歳2ヶ月 | |||
女性 | 産後休業→ | 育休→ | 終了 | |||
男性 | 育休→ | 終了 |
また、産後パパ育休と育休、パパ・ママ育休プラスを組み合わせたパターンとしては、次のようなケースが考えられます。この場合、父親の育休日数が、産後パパ育休を含めて合計1年間までであることには注意が必要です。
誕生 | 8週間 | 1歳 | 1歳2ヶ月 | |||||
女性 | 産後休業→ | 育休→ | 終了 | |||||
男性 | 産後パパ育休 | 復職 | 育休 | 終了 |
育休手当(育児休業給付金)はいつから入る?
育休手当とは、雇用保険の被保険者が1歳未満の子どもを養育する目的で育休を取得した際に受け取れる手当のことです。育休手当は、産前・産後休業(出産後8週間以内)が終了した翌日から給付対象となり、2ヶ月ごとに2ヶ月分がまとめて支給され、子どもが1歳になる日の前日までもらえます。
初回支給は、初回申請から3ヶ月程度を目処に実施されます。2回目以降も、2ヶ月ごとに申請が必要です。育休を分割して取得した場合も、同じく都度申請を行います。
<育休手当の支給要件>
- 原則として1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した被保険者である
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上)該当する月が12ヶ月以上ある
- 育児休業開始日から起算した1ヶ月ごとの就業日数が10日以下または就業時間数が80時間以下である
- 有期雇用契約の場合:養育する子が1歳6ヶ月に達する日までの間に、労働契約期間が満了することが明らかでない
なお、育休中は社会保険料や税金の支払いは免除されます。
育休手当(育児休業給付金)の支給額を計算!
育休手当の計算式は、次のとおりです。
育休開始から180日以内:育休手当 = 休業開始時の賃金日額 × 支給日数 × 67%
育休開始から181日以降:育休手当 = 休業開始時の賃金日額 × 支給日数 × 50%
<休業開始時の賃金日額>
育休開始前6ヶ月間の賃金を180日で割った額
<賃金>
残業手当や通勤手当、住宅手当などを含む給与額面
なお、 育休中は申請をすれば事業主と従業員両方の社会保険料が0円になります。
給料が20万円の場合
給料が20万円の場合の支給額は、次のとおりです。
育休開始から180日以内:120万円(休業直前の半年間の賃金) ÷ 180日 × 30日 × 67% = 134,000
育休開始から181日以降:120万円(休業直前の半年間の賃金) ÷ 180日 × 30日 × 50% = 100,000
育休開始から6ヶ月以内は、月額13.4万円、育休開始から6ヶ月経過後は10万円になります。
給料が40万円の場合
給料が40万円の場合の支給額は、次のとおりです。
育休開始から180日以内:240万円(休業直前の半年間の賃金) ÷ 180日 × 30日 × 67% =268,000
育休開始から181日以降:240万円(休業直前の半年間の賃金) ÷ 180日 × 30日 × 50% = 200,000
育休開始から6ヶ月以内は、月額26.8万円、育休開始から6ヶ月経過後は20万円になります。
【最新】育児休業給付金、手取り10割給付はいつから?
現在の育児休業給付金は休業前の賃金の67%、社会保険料の免除と合計して、実質的な手取り収入は8割となっています。
しかし、2025年4月1日からは、条件を満たすことで賃金の13%が上乗せされ、休業前の賃金の80%程度に引き上げる予定です。これは、手取りにすると約10割に該当する水準になります。
背景にあるのは、少子化問題です。少子化対策の一環として男性の育休取得率の向上を目指すこと、育児中の家庭の経済的負担を軽減させることを狙いとしています。
対象となる条件は、以下の期間に、夫婦で14日以上の育児休業(父親の場合は産後パパ育休)を取得すると、28日間を上限に給付率が引き上げられます。
- 男性:子どもが生まれて8週間以内
- 女性:産休後8週間以内(育休開始後8週間以内)
なお、配偶者が専業主婦(夫)の場合、ひとり親の場合は、配偶者の育児休業取得がなくても給付率は引き上げられます。
育休の取得で会社がすべきこと
従業員が育休を取得するにあたって、会社がすべきことを解説します。大きく分けると、次の3つです。
- 周知・意向確認
- 社内手続き
- 各種申請手続き
周知・意向確認
まずは、育休取得を希望する従業員と面談(オンライン可)または書面交付にて、個別に周知(説明)を行います。そこで、育休などの取得意向を確認することが義務付けられています。
<周知事項>
- 育児休業・産後パパ育休の申し出先
- 育児休業・産後パパ育休に関する制度
- 育児休業給付について
- 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
社内手続き
続いて、育休を取る従業員から「育児休業申出書」(産後パパ育休は「出生時育児休業申出書」)を育休開始予定日の1ヶ月前までに書面で受け取りましょう。内容確認後、約2週間以内に「育児休業取扱通知書」(産後パパ育休は「出生時育児休業取扱通知書」)を書面で交付してください。
各種申請手続き
あわせて、各種申請手続きも進行します。
- 社会保険料免除の手続き
- 育児休業給付金の手続き
- 出生時育児休業給付金の手続き(産後パパ育休取得時)
申請を忘れると、免除されなかったり給付金が支払われなかったりするため、忘れずに申請しましょう。
育休手続きに関する各種テンプレート
育休を取得する際には育児休業申請書の作成、職場復帰後も時短勤務申請書の作成など、必要な手続きが多くあります。会社にテンプレートがまだないという場合は、以下の「育児休業申請書」「育児短時間勤務申出書」のテンプレートをご活用ください。
https://biz.moneyforward.com/payroll/templates/415/
https://biz.moneyforward.com/payroll/templates/885/
https://biz.moneyforward.com/payroll/templates/872/
https://biz.moneyforward.com/payroll/templates/868/
育休についての正しい知識を身につけよう
育休は、一定の条件を満たしていれば、女性であれば産後休業後から、男性であれば出産日(出産予定日)から取得可能です。転職後も基本的には取得できますが、会社によっては「1年以上雇用されていること」といった労使協定が締結されていると取得を拒否されるケースもあるため注意しましょう。
また、育休中に支給される育児休業給付金は、現在社会保険料の免除と合計して、実質的な手取り収入は8割となっていますが、2025年4月1日からは、条件を満たすことで手取り10割給付に引き上げられる予定です。
育休に関しては、申請や手続きなどさまざまな業務が生じるため、スムーズに手続きを進行するためにも、正しい知識を身につけられるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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