- 更新日 : 2024年12月13日
休職期間は何カ月が平均?クビになる?適応障害・うつ病など
休職は法律に規定されているのものではなく、使用者の判断によって導入される制度です。労働者に就労させることが適当でない場合に、労働契約を維持したまま労働の義務を免除されます。
本記事では、休職期間を何カ月にするかに関しての判断方法や、休職の種類を中心に解説します。
目次
休職期間を何カ月にするか、決める際の方法・判断基準
休職期間の上限については、おおむね3カ月から3年の間で設定されている企業が多いと言われています。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、私傷病休職の休職期間で最も多いのは「6カ月超から1年未満まで」、次が「1年超から1年6カ月まで」という結果でした。
休職期間の判断基準はどうなっている?
休職は、社員が何らかの事由があって仕事に就くことができない場合に、その事由への対処に専念させるための制度です。休職期間を設定する場合の判断基準は、休職の事由によります。例えば、ケガや病気が原因で休職する場合であれば、健康が回復するまでの期間を設定します。
次に考慮すべき判断基準として多くの企業が取り入れているのが、社員の勤続年数による期間の上限の設定です。
そのほか、私傷病休職の場合には、医師の診断結果、傷病手当金の支給期間も判断基準となります。
勤続年数と休職期間
一般的勤続期間の長い社員はそれだけの能力を備えており、会社に対する貢献度も高いと考えられます。会社にとってその社員の雇用を継続するメリットが大きい点を考慮し、勤続年数の長い社員には休職期間も長く設定します。ただし、休職の事由によって扱いは変わります。
また、休職期間には解雇の猶予措置という特性もあります。若い社員が新たな業務に向かって活動を開始するきっかけとするために、勤続年数の短い社員の休職期間を短く設定する場合もあります。
医師の診断結果と休職期間
私傷病による休職を発令する場合には、通常、医師の診断書によって、就労が不能であることを確認し、どの程度の休職期間を設定するべきかを判断します。傷病の程度によっては、治療期間が当初の見込みよりも長引く場合もありえます。これに応じて休職期間を延長する場合にも、医師の診断書を踏まえて延長期間を設定します。
傷病手当金の支給期間と休職期間
業務外のケガや病気の場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。この支給期間は通算で1年6カ月とされています。この支給期間に合わせて、休職期間を1年6カ月に設定している企業も多いようです。
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休職期間は何カ月?休職の種類別の目安
休職期間は、休職の事由によって異なります。ここでは、休職の事由ごとに休職期間を設定する際の考え方を説明します。
私傷病休職は、ケガや病気の状況によって治療の期間が異なる点や再発の可能性を考慮して、就業規則で規定します。それ以外の休職については、就業規則には「会社が必要と認める期間」と規定するとよいでしょう。
私傷病休職
仕事とは無関係の病気やケガについて、治療に専念させるために会社が発令する休職です。病気やケガの程度によって復帰までの期間が異なるため、主治医や産業医の意見を参考にして休職期間を設定します。復職に向けて、休職期間中に試し出勤やリハビリ勤務が必要な場合があります。そうした点も勘案する必要があります。なお、仕事中や通勤途上での病気やケガには労働災害として扱われ、休職ではなく休業扱いです。
私傷病休職の期間
私傷病休職の場合の期間について、設定の仕方の事例を紹介します。
①勤続年数による休職期間
勤続年数の区分も休職期間の設定も自社の事情に応じて設定しましょう。
勤続1年以上3年未満 3カ月
勤続3年以上5年未満 6カ月
勤続5年以上10年未満 1年
勤続10年以上 1年6カ月
②うつ病の程度による休職期間
うつ病の程度と休職期間の長さは目安です。
うつ病の程度 | 休職期間 |
---|---|
軽度 | 1カ月 |
中度 | 3カ月~6カ月 |
重度 | 1年以上 |
自己都合休職
資格や学位の取得を目的として国内外の学校に長期間通う場合や災害復興支援ボランティアとして長期間被災地に滞在する場合など、社員が希望する活動のために発令する休職です。
資格や学位の取得やボランティア活動が、長期的に見て会社のメリットになるとの判断によって積極的に認めている会社もあります。資格や学位の取得に必要な期間を休職期間とします。
留学休職
自己研鑽や仕事のスキル向上のために留学を希望する社員に対し、会社が休職を認めるものです。社員本人の都合によるものですから、自己都合休職の一つです。留学の目標を達成するために必要な期間(通常は1年間または2年間)を休職期間とします。
出向休職
出向には、出向元企業に籍を残したまま別の会社で働く在籍出向と、現在勤務している会社の籍を離れ出向先企業に籍を移してしまう転籍出向があります。
在籍出向の場合は、出向元企業において休職の発令を受けます。この場合の休職期間は出向期間となります。
組合専従休職
労働組合に加入している社員が組合活動に専念するため勤務時間内に組合業務を行うことを組合専従といいます。これを会社が認め休職とするものです。
組合専従休職は、団体交渉の一環として要求する場合が多く、休職期間は専従期間とします。
公職就任休職
社員が、国または地方の議員あるいは知事や市町村長などの公職に就いた場合に発令されるのが公職就任休職です。
休職期間は、その任期とするのが適当です。
起訴休職
社員が刑事事件で起訴された場合、起訴事実の内容や社員の職位などによっては、会社の社会的信用が失墜したり、職場内部が混乱したりする恐れがあります。こうした事態を防ぐために発令される休職です。
基礎から裁判確定までの期間を見通すのは難しいケースが多いです。刑事処分が確定した時点で、懲戒などの処分を行います。
事故欠勤休職
傷病以外の事由によって欠勤が続いている場合に、会社が発令する休職です。例えば犯罪の容疑で逮捕・勾留された場合などがあり、被疑者としての拘留期間を休職期間とします。
なお、「交通事故」でケガをして休む場合は、通勤途上であれば労災、プライベートであれば傷病休職となります。
適応障害やうつ病の目安の休職期間は?
適応障害はうつ病と似ていますが、うつ病はストレスがない状態でも症状が継続するのに対し、適応障害は休日などでストレスから解放されると体調が回復します。
適応障害とは?病因・症状・治癒期間から考える休職期間の目安
適応障害は、ストレス障害の一種です。失業や対人関係のトラブルなど日常生活でのストレスが原因となって抑うつ気分、不安、不眠、めまいといった心身の不調が現れ、社会生活に支障が生じている状態をいいます。
アメリカ心理学会ではストレス要因が消えてから6カ月で軽快するとしており、多くの場合、診断書では「1カ月の休職を要する」と記載されています。
復帰に向けた準備期間なども視野に入れ、休職期間は6カ月と設定し、治療の経過を見て短縮、延長を検討しましょう。
うつ病とは?病因・症状・治癒期間から考える休職期間の目安
うつ病は、脳内の神経伝達物質のうち精神の安定ややる気に関わる「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減少する病気と考えられており、気分の落ち込み、意欲の低下、強い不安感、イライラなどの症状が現れます。
治療開始から3カ月から6カ月で症状が改善するのが一般的ですが、うつ病患者の約60%が再発し、その多くが回復後2年以内に発生すると言われています。
うつ病の休職期間は、症状の程度に応じて1カ月、3カ月から6カ月、1年といった設定をするのがよいでしょう。
適応障害・うつ病による休職で注意したいこと
適応障害もうつ病もさまざまな要因の影響で設定した休職期間を延長しても職場復帰ができない場合があります。また、休職と復職を繰り返す事態も見られます。中には、休職中に働く意欲が減退し、就業規則の規定のスキを突くような形で休職と復職を繰り返すといった悪質なケースもあります。
いずれも会社にとっては、適正な人員配置が損なわれた状態が続くことになり大きな負担となることが考えられます。こうした事態に対応するため、就業規則に「休職期間の満了をもって退職とする」といった規定を設けることができます。ただし、この規定を適用する際は、個別の事情を慎重に考慮する必要があります。そして、退職扱いとする際には、労働基準法第20条(解雇予告)などに基づき、適正な手続きが必要です。
また、休職・復職の繰り返しに対応するためには、就業規則に同一または類似の事由に休職の期間は通算するとの規定を設けておくことが有効です。
「休職何カ月で解雇」といった暗黙のルールはある?
「休職が○カ月以上に及んだら解雇する」といったルールはありません。しかし、就業規則に、休職期間が満了しても職場に復帰できない場合には休職期間が満了となった時点で自動的に退職になる、と定めてる場合があります。
「見出し未定」業務上の傷病の治療にかかる休業の場合はどうなる?
労働基準法第19条は、労働者が業務上の傷病にかかる療養のために休業している期間、休業後の30日間については解雇できないと定めています。
業務上の災害によって労務を提供できないのは、労働者の責任による債務不履行ではないことによるものです。
ただし、打切補償(平均賃金の1,200日分)を支払う場合、または天災などで事業継続が不可能な場合には、解雇を認めています(労働基準法第81条)。
休職期間満了後の解雇は違法?
業務上の傷病ではなく、業務外のケガや病気による休職の場合はどうなるでしょうか。
休職制度は法律上の義務ではなく、会社の判断によって導入される制度です。制度の内容も会社が自由に定めることができます。したがって、就業規則に「休職期間満了に伴い退職とする」といった規定があれば、基本的には退職扱いとなります。しかし、休職前の業務は無理でももう少し軽度な業務であれば遂行できるような場合には退職が無効となることもあります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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