• 更新日 : 2023年8月10日

「ジョハリの窓」とは?意味や企業で活用するメリット・デメリットについて解説

ジョハリの窓とは、自己分析に用いる心理学モデルのひとつです。「自分から見た自分」と「他人から見た自分」との認識の違いを分析し、自己理解を深めるツールとして活用されます。本記事ではジョハリの窓の概要や、就活や企業で活用するメリット、社内研修における活用例、課題などをわかりやすく解説します。

ジョハリの窓とは?

ジョハリの窓は、より精度の高い自己分析に有効な心理学モデルです。ここでは、ジョハリの窓の意味や生まれた背景、得られる効果について解説します。

ジョハリの窓の意味

ジョハリの窓とは、1955年にアメリカの心理学者ジョセフ・ルフトとハリ・インガムによって考案された心理学モデルのことです。英語では「Johari Window」と表記します。もともとは、両名が「対人関係における気づきのグラフモデル」として発表した概念で、のちに「ジョハリの窓」と呼ばれるようになりました。「ジョハリ」はジョセフとハリの名前が由来となっています。

生まれた背景

この心理学モデルは、自分と他者との認識のズレを理解し、他者とのコミュニケーションの円滑化を図るために考案されました。「自分をどのように公開し、自分をどのように隠すか」という自己開示の状況を客観的に把握し、コミュニケーションの円滑化に役立てるというものです。

のちほど詳しく解説しますが、ジョハリの窓では以下の「4つの窓」を用いて自己分析と他己分析を行います。

  • 【開放の窓】他者も自分も知っている自己
  • 【秘密の窓】自分は知っているが、他者には隠している自己
  • 【盲点の窓】他者は知っているが、自分では気が付いていない自己
  • 【未知の窓】自分も他者も知らない自己

理想的な対人関係を築くためには、「開放の窓」の拡大が重要とされています。

ジョハリの窓で得られる効果

ジョハリの窓の活用によって自己理解が深まり、コミュニケーションの円滑化を図れます。例えば、自分では話しかけやすい雰囲気を出しているのに、なかなか話しかけてもらえなかったり、堅苦しい態度をとられてしまったりする、という人がいるとしましょう。そのような場合は、自分と他者とで認識のずれが生じていると考えられます。

ジョハリの窓では、自分では気が付かなかった一面を知ることで、コミュニケーションにおける改善点の把握が可能です。他者に公開するべき自己を広げ、隠している部分を少なくすると、他者からの信頼が高まるでしょう。企業でジョハリの窓を実施すれば、チームワークの向上が図れます。

ジョハリの4つ窓が意味するもの

ジョハリの窓は、4つの窓に自己分析と他己分析の結果を該当する窓に当てはめて完成させる仕組みです。ここでは、ジョハリの4つの窓のそれぞれの特徴について解説します。

ジョハリの「4つの窓」

自分が知っている自分は知らない
他者が知っている【開放の窓】
(open self)
他者も自分も知っている自己
(自由の領域)
【盲点の窓】
(behind self)
他者は知っているが、自分では気が付いていない自己
(自分だけが気が付いていない領域)
他者が知らない【秘密の窓】
(hidden self)
自分は知っているが、他者には隠している自己
(意識的に隠している領域)
【未知の窓】
(unknown self)
自分も他者も知らない自己
(日常の延長線上ではわからない領域)

1. 開放の窓

他者が自分へ抱いている印象や理解している性格と自分の主観が一致している状態です。本来の自分を違和感なくさらけ出し、受け入れられている状態とも言えるでしょう。開放の窓を拡大することで、お互いの親近感や信頼感が高まり、より円滑なコミュニケーションを実現できます。

2. 秘密の窓

トラウマやコンプレックス、プライベートの趣味など、他者には隠していて自分だけが知っている自己のことです。秘密の窓が大きいということは「隠し事が多い」ことを意味するので、小さいほど良いとされています。秘密の窓を小さくして素の自分を見せることで開放の窓が大きくなり、円滑なコミュニケーションを図れるのです。

3. 盲点の窓

自分の思わぬ長所や短所、無意識の癖など、自分では気が付いていない自己を指します。他者に言われて初めて気が付く要素です。長所は意識的に伸ばすようにしましょう。無意識の癖の中には、他者を不快にさせるものもあるので改善する必要があります。盲点の窓は小さいほど望ましいですが、他者から指摘してもらわないと自分自身で気が付けません。中には耳が痛くなるような指摘もあるかもしれませんが、アドバイスとして受け入れ改善に努めましょう。

4. 未知の窓

自分も他者も知らない(気が付いていない)自己です。一般的には、秘めた才能や性格のことを指します。この窓を知ることで意識的に開放すべき才能や性格を自覚でき、ビジネスにおいては自分に合った作業を明確化できるのです。秘密の窓と盲点の窓を小さくし、開放の窓を大きくすることで、未知の窓に当てはまる項目を見つけやすくなります。

ジョハリの窓を就活や企業で活用するメリット

「自分から見た自分」と「他人から見た自分」との認識の違いを分析し、自己理解を深めることは、ビジネスにおいても役立てられます。ここでは、ジョハリの窓を就活や企業で活用するメリットを見ていきましょう。

自分と他者の認識のズレを可視化できる

就活には自己分析が不可欠ですが、苦手意識を持つ人も多いでしょう。友人や家族と一緒にジョハリの窓のワークを行うことで、自分と他者との認識のズレを可視化できます。対話しながら行うので、1人で悩むよりストレスが軽減されるのもメリットです。4つの窓を完成させることで適性がわかり、自分に合った仕事を見つけやすくなります。

信頼関係を強固にできる

ジョハリの窓を社内研修や人材教育、人材育成にも活用することで、社員が自分を見つめ直すきっかけになり、自分の強みを認識して能力を発揮しやすくなります。ただし、ジョハリの窓はお互いのことをよく知っているメンバー同士でなければ完成できません。ジョハリの窓の特性上、メンバー同士がお互いをあまり理解していない段階での活用ができない点はデメリットとなるでしょう。

コーチングやマネジメント活用できる

コーチングやマネジメントにおいて役立つ点もメリットです。そもそも、コーチングとは、「自発的な行動を促進するコミュニケーション」を指します。マネジメントは、「組織が成果を上げるための機能・仕組み・ツール」のことです。ジョハリの窓を通して自分の得意分野を把握でき、自主性や問題解決力が養われます。上司は、ジョハリの窓で可視化できた個人の得意分野を基に、それぞれが能力を発揮しやすいような人材配置を行えるでしょう。

ジョハリの窓を活用した社内研修

近年、社内研修のグループワークの一環としてジョハリの窓を活用する企業が増加傾向です。まずは、お互いのことをよく知っているメンバーを5~10名集めます。分析に用いる選択肢は講師側が用意しておくとスムーズに進められるでしょう。選択肢は、ポジティブな表現を用意することがポイントです。例えば、「発想力がある」「向上心がある」「聞き上手」「リーダー資質がある」などが挙げられます。項目を集計し、4つの窓に分類したら結果を話し合う、という流れです。

ジョハリの窓を活用する課題・デメリット

企業でジョハリの窓をあたって以下のような課題やデメリットも残されています。

  • お互いに理解している人を複数人集める必要がある

    ジョハリの窓の特性上、お互いよく知らないメンバーでは行えません。信頼関係がある程度築けていてお互いの性格を把握しているメンバーを複数人集める必要があります。必ずしもすぐに実施できる手法ではない点がデメリットとなり得るでしょう。

  • 人によっては大きなストレスを感じる可能性がある

    トラウマやコンプレックスなど自己分析や自己開示を行ううえで抵抗を感じる人もいます。心理的に過度な負担がかからないように十分に配慮しなければなりません。個々の状況を考慮し、場合によっては産業カウンセラーなど専門家の意見を仰ぐ必要があるでしょう。

ジョハリの窓のやり方・ポイント

ジョハリの窓はいくつかの実施方法があります。ここでは、ジョハリの窓の実施方法やポイントを紹介します。

紙やペンを使って自由に記述する方法

紙とペンのみを用意するだけの手軽な方法です。紙は人数×人数分、すなわち5人であれば25枚用意し、各々に5枚ずつ配ります。1枚目には自分の性格を書き出し、残りの4枚はそれぞれのメンバーの性格について自由に記入するというものです。

一般的な性格・能力の項目から選択する方法

Webや書籍で公開されている一般的な性格・能力などの診断項目から選択する方法です。前述したように、「発想力がある」「向上心がある」「聞き上手」などポジティブなワードを20項目ほど用意します。表現にバラつきがなく、参加者も選択肢から選ぶだけなので取り組みやすい方法と言えるでしょう。

無料の診断アプリを利用する方法

スマホやパソコンを用意し、4人以上の参加者を集めるだけで簡単に実施できる方法です。なかには、アプリをダウンロードせずにブラウザ上で利用できるものもあります。アプリの利用手順は、以下のとおりです。

  1. 診断アプリにアクセスする
  2. 参加者の人数と名前を入力する
  3. 自分と相手に該当する項目にチェックを入れる
  4. 結果を確認する

効率的に診断したいときにおすすめの方法となっています。

ワークは信頼関係のある人物と実施する

前述のように、ワークは信頼関係が築かれているメンバーで実施することがポイントです。お互いのことを良く知らないと、正しい分析はできません。フィードバックや自己開示を行い、さらに信頼関係を高めましょう。

ジョハリの窓を企業で有効活用しよう

ここまで、ジョハリの窓の意味や企業で活用するメリット・デメリットについて解説しました。自己分析と他者分析を同時に行い、4つの窓に分類することで自分の性格や長所、短所を正しく認識できます。秘密の窓と盲点の窓を小さくし、開放の窓を大きくすることで、より良好な人間関係の構築が可能です。社員の潜在能力を引き出し、チーム力を高めるためにも、この機会にジョハリの窓を実施してみましょう。


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