• 更新日 : 2023年6月20日

一人親方(個人事業主)の労災保険は経費にできる?勘定科目や節税について解説

一人親方(個人事業主)の労災保険は経費にできる?勘定科目や節税について解説

一人親方(個人事業主)は労災保険に特別加入できますが、保険料を経費に計上することはできません。労災保険は労働者を対象にしたもので、一人親方の加入はあくまで特例であるためです。ただし、確定申告所得控除の対象になり、節税が可能です。

本記事では労災保険の概要や、一人親方が支払う労災保険料の扱い方などを解説します。

労災保険とは?

労災保険とは正式名称を「労働者災害補償保険」といい、雇用されている人が仕事中または通勤途中にケガや病気・障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う社会保険の制度です。給付金により労働者の生活保障や損害の補てんを図り、遺族の生活を守ることを目的としています。

ここでは、労災保険の概要をみていきましょう。

労災保険の加入条件と支給対象者

労災保険は雇用形態にかかわらず、労働者を1人でも雇用している事業主に対して加入が義務付けられており、保険料は全額事業主が負担します。

正社員以外にもアルバイトやパート、日雇い労働者など、使用者との間に雇用契約がある労働者はすべて労災保険の対象です。会社役員でも、業務執行権がない場合は労災保険が適用されます。

ただし、フリーランスなど雇用関係にない人は労働者に該当せず、基本的に労災保険の適用はありません。

また、事業主に雇用されている労働者が対象の保険のため、事業主や自営業者は対象外です。しかし、一人親方や個人事業主など、一定の条件を満たす場合は特別加入制度により労災保険の適用が認められています。

健康保険との違い

労災保険と同じくケガや病気による損害を補償する保険に「健康保険」があります。労災保険は業務上、または通勤中に生じたケガや病気を補償するものであるのに対し、健康保険はそれ以外の原因で発生したケガや病気が対象です。労災保険の給付対象となるケガ・病気には、健康保険を使用できません。

労災保険は健康保険よりも補償内容が手厚いのが特徴です。治療にかかった医療費が全額補償されるほか、休業期間の補償もあります。後遺障害が残った場合や、死亡したときの遺族への補償なども行われます。

労災保険が適用されるケースで健康保険を使用してしまうと、これらの手厚い補償が受けられなくなるため、注意しなければなりません。

一人親方(個人事業主)の労災保険は経費計上できる?

一人親方(個人事業主)が特別加入制度で労災保険に加入している場合、労災保険料は経費になりません。労災保険は、あくまで会社に雇用される労働者を対象としたものだからです。一人親方の加入は特例であり、本来であれば加入できないのが原則です。

雇用する従業員の労災保険料は法定福利費として経費にできますが、一人親方自身の保険料として支払った場合は含まれません。

一人親方労災保険料の経費計上の仕方

一人親方(個人事業主)が特別加入で支払った労災保険料は、事業用の資金で支払った場合と、個人のお金で支払った場合とで処理が異なります。

一人親方が支払った労災保険料の処理について、みていきましょう。

事業主貸で計上する

労災保険料を事業用の資金で支払った場合、事業主貸の勘定科目で計上します。事業主貸とは、経費にできない支出などに使う勘定科目です。 事業で使っている普通預金から個人的な支払いで支出したり、所得税の納税をしたりした場合に使います。

例えば、労災保険料として5万円を支払った場合、以下のように仕訳します。

借方貸方摘要
事業主貸50,000円普通預金50,000円労災保険料

個人のお金で支払った場合は処理が不要

労災保険料は、個人のお金で支払った場合は仕訳が不要です。事業主貸の勘定科目は、事業の収入から個人的な支出を行った際、事業資金と分けるために使用します。個人のお金で支払った場合には、そのような必要がありません。

反対に、個人的なお金から経費を支払った場合には「事業主借」という勘定科目を使って仕訳をします。

一人親方の労災保険で経費に計上できるお金

一人親方は労災保険料を経費にできませんが、特別加入のために入会する一人親方団体に支払う費用を経費にできます。

詳しい内容をみていきましょう。

労災保険の特別加入には一人親方団体への加入が必要

一人親方が労災保険に特別加入するためには、一人親方団体へ加入する必要があります。一人親方団体とは、各都道府県にある労働局の承認を受けた一人親方のための団体です。「一人親方労災保険組合」「一人親方組合」などエリアごとに名称は異なり、一人親方が労災保険に特別加入するには、これら一人親方団体を通して手続きをしなければなりません。

一人親方団体に加入するには、入会金・組合費・事務手数料が必要であり、これらの支出は経費に計上できます。

労災保険で経費にできる費用と仕訳例

一人親方団体に支払うのは以下の費用で、いずれも経費に計上できます。

  • 入会金:一人親方団体に入会したときに支払う費用
  • 組合費:一人親方団体の運営費として支払うもので、毎月(毎年)支払う。「会費」と呼ばれることもある
  • 事務手数料:加入手続きの手数料として支払う

経費に計上する際の勘定科目は特に決まりはありません。一般的に「支払手数料」「雑費」などを使いますが、何を使うかは自由です。ただし、一度使った勘定科目は統一して同じものを使用するようにしましょう。

経費計上する場合の仕訳例は、以下のとおりです。

(例)一人親方団体に事務手数料3,000円を支払った

借方貸方摘要
支払手数料3,000円普通預金3,000円事務手数料

一人親方の労災保険は確定申告で所得控除ができる

労災保険料は経費に計上できませんが、確定申告のときに社会保険料として所得控除の対象になります。

ここでは、確定申告における労災保険料の所得控除について解説します。

労災保険料は社会保険料控除の対象

労災保険は、確定申告で所得控除ができます。所得控除とは、所得税の計算をする際、所得から一定の金額を差し引くことです。 所得税の計算の基礎となる所得を減らすことで所得税を減らし、納税者の負担を軽くします。

所得控除には基礎控除扶養控除配偶者控除などさまざまな種類があり、一人親方が支払う労災保険料は、社会保険料控除の対象です。

確定申告書に記載することで課税所得から差し引かれ、所得税を抑えて節税ができます。

労災保険料の所得控除を申告する方法

労災保険料の控除を受けるには、まず支払った労災保険料の金額を確定します。一人親方団体からの請求書を確認するか、一人親方団体に正確な保険料額を確認しましょう。

金額がわかったら、確定申告書の社会保険料控除の欄に記載します。一人親方が記入するのは、確定申告書第一表、第二表です。

第二表には社会保険料の内訳を記載し、第一表には社会保険料控除の欄に合計の額を記入してください。

一人親方の労災保険は確定申告で節税できる

一人親方(個人事業主)が特別加入した労災保険の保険料は、経費として計上することができません。事業収入から支払ったときは、事業主貸の勘定科目で仕訳します。ただし、一人親方団体に支払った入会金や組合費などの諸費用は、経費に計上できます。

労災保険料も確定申告で社会保険料控除の対象になるため、忘れずに申告して


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