• 作成日 : 2022年12月23日

社会保険の4分の3ルールとは?短時間労働者にかかわる制度

社会保険の4分の3ルールとは?短時間労働者にかかわる制度

事業主は、従業員を雇用するとさまざまな社会保険に加入させる義務が生じます。

健康保険と厚生年金保険には適用対象者について、いわゆる「社会保険の4分の3ルール」がありますが、これまで段階的に適用拡大が進められてきました。

本稿では、その前提となる社会保険の適用事業の捉え方とともに、健康保険と厚生年金保険の4分の3ルールについて詳しく解説します。

社会保険の4分の3ルールとは?

社会保障制度の枠組みでは、①狭義の社会保険(健康保険、厚生年金保険、国民年金)と、②労働保険(労災保険、雇用保険)の2つを広義の社会保険として位置づけています。

いわゆる社会保険の4分の3ルールが問題となるのは、①の狭義の社会保険です(以下、社会保険と呼びます)。

年金制度については、事業所に雇用される労働者は厚生年金保険に加入することで自動的に国民年金の被保険者になります。

したがって、事業所で必要な社会保険の適用手続き(被保険者資格取得届の提出)は、健康保険と厚生年金保険の2つです。

社会保険の加入の仕組みについては後述しますが、社会保険の4分の3ルールとは、正社員ではないパートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者が社会保険の適用を受け、被保険者となる所定労働時間などの基準を指します。

社会保険の4分の3ルールは、もともと1980年6月に国から出先機関に出された内簡(ないかん)という文書で示されていたものであり、通達のように明確な基準ではありませんでした。

取り扱いとしては、1日または1週の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が常時雇用者のおおむね4分の3以上を基準とし、これに該当しない場合であっても就労形態や勤務内容等から常用的使用関係にあると認められる場合は、被保険者とされていました。

2016年10月からは基準を明確化し、「1週の所定労働時間」および「1ヵ月の所定労働日数」が、同一の事業所に使用される通常の労働者の所定労働時間および所定労働日数の4分の3以上である労働者については、厚生年金保険・健康保険の被保険者となるとしました。

また、4分の3の基準を満たさない場合であっても、以下の5つの要件をすべて満たす短時間労働者については、厚生年金保険・健康保険の被保険者となるとしています。

  1. 1週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 雇用期間が継続して1年以上見込まれること
  3. 月額賃金が8.8万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 特定適用事業所または任意特定事業所であること

特定適用事業所とは、事業主が同一である一または二以上の適用事業所で、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所のことです。

任意特定事業所は、国または地方公共団体に属する事業所および特定適用事業所以外の適用事業所で、労使合意に基づいて短時間労働者を健康保険・厚生年金保険の適用対象とする申し出をした適用事業所が該当します。

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社会保険の加入条件

4分の3ルールの基準に該当したパートタイマーなどは社会保険の加入義務が生じますが、すべての事業所が社会保険の適用事業所となるわけではありません。

適用事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所があります。

株式会社などの法人は強制適用事業所として、事業主や従業員の意思に関係なく、必ず社会保険に加入しなければなりません。

個人事業所の場合は、常時5人以上の労働者を使用する法定16業種(製造業、鉱業、電気ガス業、運送業など)と、同じく常時5人以上の労働者を使用する士業(弁護士、税理士、社会保険労務士など)は強制適用事業所ですが、それ以外は厚生労働大臣の認可を受けて適用事業所となる任意適用事業所として扱われます。

いずれにしても、「適用事業所に使用される者」は社会保険、つまり健康保険と厚生年金保険に加入して被保険者となる義務があります。

適用事業所に使用される者とは、以下の者が該当します。

  1. 法人の役員
  2. 通常の労働者(正社員)
  3. 1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の者と比べて4分の3以上である者

3は、4分の3ルールに該当するパートタイマーなどの短時間労働者のことです。

政府は、社会保障の機能強化や被用者にふさわしい保障の実現などを目指し、社会保険の適用拡大を進めてきました。

2022年10月からは、短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用範囲がさらに拡大されています。

社会保険の加入条件の詳細については、以下の記事をご覧ください。

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4分の3ルールは2022年10月の適用拡大でどう変わる?

2022年10月の短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用範囲の拡大では、特定適用事業所の要件と短時間労働者の適用要件が改正されました(医療制度改革関連法:令和3年法律第66号)。

特定適用事業所については、これまで被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所とされていたものが常時100人を超える事業所となり、対象となる事業所が拡大されました。

また、4分の3ルールを満たさない短時間労働者が適用される5つの要件には、これまで「雇用期間が1年以上見込まれること」がありましたが、勤続年数は削除されました。

ただし改正前から正社員であっても、雇用期間が2ヵ月を超えて見込まれない場合は適用除外となります。短時間労働者についても、雇用期間については正社員と同様に2ヵ月を超えて見込まれることが必要です。

適用拡大の詳細については、以下の記事をご覧ください。

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4分の3ルールの注意点

4分の3ルールの適用対象者は、「1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の者と比べて4分の3以上である者」ということですが、「1週間の所定労働時間および1ヵ月の労働日数」に祝日や年次有給休暇の取得日は含まれるのでしょうか。

祝日の労働は4分の3ルールの労働時間・日数に含まれる?

「1週間の所定労働時間および1ヵ月の労働日数」とは、就業規則、雇用契約書などにより、その者が通常の週および月に勤務すべきこととされている時間および日数を意味します。

ここでいう「通常の週」とは、振替休日・国民の祝日・夏季休暇・年末年始休暇等が含まれる週以外の週を指し、祝日は含まれません。

有給休暇は4分の3ルールの労働時間・日数に含まれる?

例えば、1日の所定労働時間が8時間、1ヵ月の所定労働日数が20日の事業所において、正社員として勤務していた労働者が60歳で定年を迎え、雇用契約を変更して嘱託社員として1日の所定労働時間を8時間で週3~4日勤務、1ヵ月の所定労働日数を15日に変更したとします。

この場合でも4分の3ルールの基準を満たすことになりますが、勤務形態を変更する際に本人が取得していた年次有給休暇を5日消化したいと申し出た場合は、どうなるのでしょうか。

年次有給休暇の取得日を除くと4分の3ルールの基準を満たさないことになり、社会保険が適用されないことになります。

年次有給休暇を取得できるのはあくまでも所定労働日であるため、4分の3ルールでは取得日も含めて算定します。

労働時間や労働日数が4分の3ルールを下回っていた場合でも社会保険に加入できる?

1週間の所定労働時間および1ヵ月の労働日数が4分の3ルールを下回り、基準を満たさない短時間労働者が、すべて社会保険の適用対象外となるわけではありません。

以下の4つの要件をすべて満たしている場合は、適用対象となります。

  1. 1週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 月額賃金が8.8万円以上であること
  3. 学生でないこと
  4. 特定適用事業所または任意特定事業所であること

また、雇用期間が2ヵ月を超えて見込まれることが必要です。

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短時間労働者の社会保険の4分の3ルールについて理解を深め、適切に採用・雇用をしましょう!

短時間労働者の社会保険の4分の3ルールについて解説しました。

社会保険の適用拡大は政府の方針でもあり、今後も2024年10月に特定適用事業所の適用要件が常時100人を超える適用事業所から、常時50人を超える適用事業所に改正されることが予定されています。

パートタイマーやアルバイトを採用する場合は、社会保険の4分の3ルールについてよく知っておくことが大切です。

よくある質問

社会保険の4分の3ルールとは何ですか?

短時間労働者が社会保険の適用を受け、被保険者となる所定労働時間などの基準のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

2022年10月に開始された適用拡大は、4分の3ルールに何かしらの影響を与えますか?

4分の3ルールを満たさない短時間労働者が適用される5つの要件のうち、勤続年数は削除されました。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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