- 作成日 : 2022年8月5日
勤務間インターバル制度とは?努力義務としてやるべきこと

働き方改革の一環として、労働時間等設定改善法が改正され、2019年4月1日から勤務間インターバル制度の実施が事業主の努力義務とされています。しかし、努力義務にとどまっていることもあり、まだ一般の認知度は高いとはいえません。今回は、勤務間インターバル制度の導入を検討する際に知っておくべきポイントを解説していきます。
目次
勤務間インターバル制度とは
「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務が終了後、翌日に出社するまでの間に、一定時間以上の間隔(インターバル)を設ける制度です。
インターバルが休息時間となることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保することが目的とされています。
働き方改革で努力義務化
「労働時間等設定改善法」(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)は、事業主等に労働時間等の設定の改善に向けた自主的な努力を促すことで、労働者がその有する能力を有効に発揮することや、健康で充実した生活を実現することを目指した法律です。
この法律でいう「労働時間等の設定」とは、労働時間のほかに休日数、年次有給休暇を与える時季、深夜業の回数などを定めることを意味しています。
法律自体は、1992年に時限立法として制定されたものですが、その後、延長を経て期限の定めのない法律となっていました。
改正前は、事業主の責務として、①業務の繁閑に応じた労働者の始業及び就業の時刻の設定、②年次有給休暇を取得しやすい環境の整備などの措置を講ずるように努めなければならない、と規定していましたが、働き方改革に伴う改正によって、新たに「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」、つまり「勤務間インターバル制度」の導入が努力義務とされたことになります。
制度の周知や導入に関する数値目標
日本では、欧米先進諸国に比べ、長時間労働が恒常化していることはよく知られており、働き過ぎによる過労死は、「karoshi」とされ、国際的にも採用されています。
社会問題化した80年代後半には、労災保険での認定件数は、当初、極めて少数でしたが、その後、認定基準の見直しなどで件数は急増しました。
ここ数年、脳・心臓疾患による死亡では減少傾向にあるものの、2020年度には年間で67件に上ります。
一方、うつ等の精神障害による過労自殺による死亡の労災認定の件数は、脳・心臓疾患による死亡件数を上回り、81件になっています(同上)。
こうした状況を背景に、厚生労働省は、2021年7月30日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を見直しました。
新しい大綱では、過労死等防止対策の一つとして「勤務間インターバル制度の導入促進」も挙げられ、次のような数値目標も設定されています。
- 2025年(令和7年)までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とする。
- 2025年(令和7年)までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上とする。
勤務間インターバル制度の具体例
勤務間インターバル制度を導入している企業では、どのような仕組みとしているのでしょうか。具体例としては、次のようなケースが挙げられます。
始業時刻8時、終業時刻17時の労働者が17時以降21時まで4時間残業し、その後、休息時間を11時間確保して翌日の始業時刻8時から仕事をしていたケースで考えます。
この労働者が、17時以降23時まで残業した場合、休息時間を11時間確保するために、翌日の始業時刻を2時間後ろ倒し、始業時刻を10時とするという方法があります。
このケースの場合、後ろ倒しにした始業時刻の8時から10時を働いたものとみなし、この日の終業時刻を17時で変えないという方法もあります。
勤務間インターバル制度導入で必要となる業務
では、実際に勤務間インターバル制度を導入する場合、どのような流れで進めればよいのでしょうか。
厚生労働省「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル」をもとに、取り組みの全体像を紹介していきましょう。
参考:厚生労働省|勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル
労働時間の実態の把握を行う
まず、制度の導入を検討することになりますが、具体的な検討の前に自社の労働時間等について、現状を把握し、課題を洗い出すことが大切です。
その上で、勤務間インターバル制度を導入することが経営上、どのような意味があるのかを踏まえ、目的を明確にします。
全社あげて制度導入に取り組む決意を表明するため、経営トップが全社員に対してコミットメントしましょう。
休息時間の確保と制度を設計する
具体的な制度内容を設計しますが、検討が必要となるのは、次の7項目になります。
- 適用対象の設定
- インターバル時間数の設定
- インターバル時間を確保することによって、翌日の所定勤務開始時刻を超えてしまう場合の取り扱いの設定
- インターバル時間を確保できないことが認められるケースの設定
- インターバル時間の確保に関する手続きの検討
- インターバル時間を確保できなかった場合の対応方法の検討
- 労働時間管理方法の見直し
以上を検討するとともに、就業規則を改訂するほか、労働組合がある場合は労働協約を締結するなど、諸規定を整備します。
試行する
いよいよ制度を導入しますが、その前に社内的に制度内容を周知します。制度の導入によって影響を受ける顧客や取引先にも導入することを説明することが大切です。その上で、本格導入の前に一定期間、試行します。
改善を行う
試行後、制度の効果を検証するとともに課題を洗い出し、制度内容や運用方法を改善します。
導入
以上のステップを踏み、本格導入ということになります。
なお、勤務間インターバル制度に限らず、人事制度は導入後も検証と見直しは継続していくことが重要です。
勤務間インターバル制度を導入する場合、就業規則の変更は必要?
前述のように、勤務間インターバル制度を就業規則などに規定する必要があります。
労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業所では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出義務があり、これは就業規則を変更する際も同様です。
労働者が常時10人未満の場合でも、就業規則に準じるものとして作成すれば、労働基準監督署では受理してくれます。
届出後は、改正後の就業規則を労働者に周知することを忘れないようにしましょう。
勤務間インターバル制度に助成金はある?
勤務間インターバル制度を導入する中小企業・小規模事業者に対しては、国の支援策として助成金制度があります。働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)というものです。
勤務間インターバル制度の導入に際し、外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング、労務管理用ソフトウェアの導入・更新、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新などの取り組みを実施した場合、成果目標の達成状況に応じて取り組みに要した費用の一部が支給されます。
勤務間インターバル制度について知っておこう!
2019年4月1日から導入が努力義務化された勤務間インターバル制度について、導入を検討する際に知っておくべきポイントを解説してきました。
働き方改革の一環としてだけでなく、過労死等防止対策としても、厚生労働省が導入の推進に力を入れていることが推察できます。現在は努力義務にとどまっていますが、いずれ大企業から義務化される可能性も考えられます。
こうした状況を踏まえ、今から制度内容についてきちんと把握しておくとよいでしょう。
よくある質問
勤務間インターバル制度とはなんですか?
1日の勤務が終了後、翌日に出社するまでの間に、一定時間以上の間隔(インターバル)を設ける制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
勤務間インターバル制度に助成金はありますか?
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)があります。詳しくはこちらをご覧ください。
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