- 更新日 : 2026年9月1日
高齢者雇用安定法とは?2025年改正の義務化ポイントと2026年活用できる助成金をわかりやすく解説
高齢者雇用安定法は2025年4月改正により、希望者全員を65歳まで雇用する措置が全企業に完全義務化されました。
- 経過措置が終了し対象者限定が不可に
- 定年延長・継続雇用・定年廃止から選択
- 助成金は最大240万円に拡充(2026年度)
Q. 企業はどの措置を選べばよいですか?
A. 定年引き上げ・継続雇用制度の導入・定年廃止の3つから自社の実態に合わせて選択し、就業規則への明記と労基署への届出が必要です。
少子高齢化により、企業にとって高年齢者の活用は避けて通れない経営課題です。高齢者雇用安定法(正式名称:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)は、2025年4月の改正で65歳までの雇用確保が全企業に完全義務化されました。この記事では、改正内容、企業に求められる実務対応、2026年(令和8年度)時点で活用できる助成金・補助金制度までを網羅的に解説します。
高齢者雇用安定法とは?
高齢者雇用安定法とは、高年齢者の雇用を安定させ、長年培った技能や経験を活かした再就職を促進するための法律です。正式名称は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」で、実務では「高年法」や「高年齢者雇用安定法」とも呼ばれます。
この法律は1971年9月に「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として制定され、社会の高齢化や労働市場の変化に応じて複数回の改正を経てきました。2004年6月の改正では、65歳までの定年引き上げ・継続雇用制度の導入・定年廃止のいずれかを講じることが義務化され、当初は経過措置により対象者を限定できる余地が残されていました。
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2025年4月の改正で何が義務化された?
2025年4月の改正における最大のポイントは、経過措置が終了し、希望者全員に対する雇用確保措置の実施が義務化されたことです。従来は労使協定により対象者を限定できましたが、改正後はこの限定が認められなくなりました。
企業は、次の3つの措置のいずれかを選択して講じる必要があります。
| 措置 | 内容 | 企業側の主な留意点 |
|---|---|---|
| 定年の引き上げ | 定年年齢を65歳以上に変更 | 人件費・役職・評価制度の見直しが必要 |
| 継続雇用制度の導入 | 再雇用・勤務延長により65歳まで雇用 | 希望者全員が対象、選定基準は使えない |
| 定年制の廃止 | 年齢による退職区切りを撤廃 | 無期雇用が前提、評価・退職基準の明確化が必要 |
高年齢雇用継続給付は支給水準が縮小された
高年齢雇用継続給付は、2025年4月の改正で支給水準が縮小されました。60歳以降の賃金が60歳時点より低下した場合に支給される制度で、従来は賃金が61%以下に低下した場合に最大15%の給付率が適用されていました。2025年4月1日以降に60歳に達した方については、最大給付率が10%に引き下げられ、この10%は賃金が64%を下回った場合に適用されます。この給付は65歳までのつなぎ支援としての役割を持ちますが、将来的な制度縮小・廃止の議論も続いているため、企業は賃金設計の際に給付縮小分を踏まえた検討が必要です。
参考:令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します|厚生労働省
高齢者雇用安定法の改正で企業に求められる実務対応とは?
改正への対応で最初に着手すべきは、就業規則の見直しと従業員への周知です。雇用確保措置の内容を就業規則に明記し、変更時は労働基準監督署への届出が必要になります。
就業規則・労働条件の見直し
就業規則には、選択した雇用確保措置の内容を具体的に記載する必要があります。例えば、継続雇用制度を導入する場合は「定年は満60歳とし、希望者は満65歳まで嘱託社員として再雇用する」といった規定を設けます。就業規則を変更した際は、労働者代表の意見書を添付して労働基準監督署に届け出るとともに、全従業員への丁寧な説明が欠かせません。
賃金制度の見直し
継続雇用となる従業員の賃金は、同一労働同一賃金の考え方に基づき、技能・経験・職務内容を適切に評価し、現役世代との間に不合理な待遇差を生じさせないことが原則です。高年齢雇用継続給付の給付率縮小を踏まえ、収入減への配慮や、役割・成果に応じた賃金体系への移行も有効な選択肢です。
社会保険料の取り扱い
再雇用により賃金が大きく変動する場合は、「同日得喪」の手続きにより、再雇用後の新しい賃金に基づいた社会保険料へ即時に切り替えることができます。これにより、従業員の保険料負担を軽減できます。
継続雇用の意思確認
定年の数ヶ月前を目安に本人と面談し、継続雇用の希望有無、職務内容・勤務時間・賃金水準などの条件を確認します。継続雇用を希望する場合は「継続雇用希望申出書」の提出を求め、労働条件が変わる場合は新たな雇用契約書を交わすことが望ましい対応です。
高年齢者が活躍できる職場づくりには何が必要?
高年齢者が能力を発揮し続けるには、一律の働き方を求めるのではなく、本人の状況に応じた柔軟な人材配置が重要です。短時間勤務やフレックスタイム制の導入、ITスキル研修、経験者が若手を指導する「メンター制度」などは、技能継承と就労継続の両立に有効な手段とされています。あわせて、職場のバリアフリー化や定期健康診断の実施など、安全に働ける環境整備を進めることが、シニア人材の定着と企業の持続的な成長につながります。
高年齢者雇用に関わる手続きで押さえるべきポイントは?
高年齢者を雇用する際は、雇用保険・健康保険それぞれの適用ルールを理解しておく必要があります。
雇用保険の加入条件と高年齢求職者給付金
65歳以上であっても、週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象になります。離職して再就職を希望する場合は「高年齢求職者給付金」を受け取れる可能性があり、離職前1年間に6ヶ月以上の加入期間があることなどが要件です。手続きは管轄のハローワークで行います。
高年齢者の健康保険の適用
65歳から74歳は「前期高齢者医療制度」、75歳以上(または65〜74歳で一定の障害がある方)は「後期高齢者医療制度」の対象です。75歳になると原則として後期高齢者医療制度へ自動的に移行し、勤務先の健康保険からは脱退します。
社会保険料の企業・従業員負担
社会保険料は企業と従業員がそれぞれ負担し、再雇用後の給与変更に応じて再計算されます。厚生年金保険は原則70歳未満が加入対象で、70歳を超えた場合は資格喪失届の提出が必要です。手続きを怠ると給付金受給への支障や追加徴収のリスクがあるため、確実な運用が求められます。
高年齢者雇用で活用できる助成金は?
高年齢者の雇用を促進するため、国は複数の助成金制度を用意しており、2026年(令和8年度)は支給要件・支給額が拡充されています。
65歳超雇用推進助成金
65歳超雇用推進助成金は、65歳以上の高年齢者の雇用促進を目的とした助成金で、3つのコースから構成されます。令和8年4月8日の支給要領改正により、65歳超継続雇用促進コースの受給額は最大240万円に引き上げられました(改正前は最大160万円)。あわせて、他社による継続雇用制度導入への助成が経費に応じた定率助成から対象人数に応じた定額助成へ変更され、専門家への委託等に関する経費支出要件も廃止されています。
| コース | 対象となる取り組み | 令和8年度の主な変更点 |
|---|---|---|
| 65歳超継続雇用促進コース | 定年引き上げ・定年廃止・66歳以上の継続雇用制度導入など | 受給額を最大240万円に引き上げ、対象者基準該当者も支給対象に追加 |
| 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース | 高年齢者専用の評価制度、賃金体系、キャリア形成制度の整備 | 措置内容に応じ最大60万円(中小企業)を助成 |
| 高年齢者無期雇用転換コース | 50歳以上・定年未満の有期契約労働者の無期雇用転換 | 受給額について、対象労働者1人につき40万円(中小企業以外は30万円)に変更 |
いずれのコースも、計画書の提出・認定を受けたうえで措置を実施し、その後に支給申請を行う流れです。申請窓口は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の都道府県支部です。
参考:65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
助成金以外の高齢者雇用支援策は?
助成金だけでなく、雇用の入口支援と職場環境整備の両面から利用できる制度があります。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、ハローワークなどの紹介により60歳以上の高年齢者を雇用した場合に支給されます。支給対象者は、雇用保険の一般被保険者として採用され、65歳以上に達するまで2年以上継続して雇用されることが条件です。
参考:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)|厚生労働省
エイジフレンドリー補助金(令和8年度版)
エイジフレンドリー補助金は、高年齢労働者が安全に働ける職場環境の整備を支援する制度です。正式名称は「高年齢労働者の安全衛生確保対策補助金」で、2020年度に厚生労働省が創設しました。令和8年度は「専門家総合対策コース」「熱中症対策コース」「コラボヘルスコース」の3コース構成に再編され、申請受付期間は令和8年5月20日から令和8年10月31日までです。
| コース | 主な対象 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| 専門家総合対策コース | 専門家によるリスクアセスメントと対策費用 | 第一段階:4/5、第二段階:1/2 | 100万円 |
| 熱中症対策コース | 体温低下機能付き作業服、移動式スポットクーラーなど | 1/2 | 100万円 |
| コラボヘルスコース | 健康保持増進の取り組み | 3/4 | 30万円 |
交付決定前に発注・契約・購入した経費は補助対象外となるため、申請前の準備段階から交付決定を待って着手することが重要です。
高齢者雇用安定法への対応における実務上の課題
高年齢者雇用安定法の改正により65歳までの雇用確保が義務化される中、マネーフォワード クラウドでは、高齢者雇用の契約更新事務に携わった経験がある担当者を対象に調査を実施しました。
更新可否の判断基準の実態
契約更新の可否を判断する際、実務上で重視している項目について調査したところ、最も重視されているのは出勤率などの勤怠状況や勤務態度で、44.5%でした。次いで、担当業務における遂行能力や成果が39.9%、本人の健康状態や安全確保の可否が31.7%と続いています。シニア層特有の健康面や勤務態度が評価の大きな軸となっていることが読み取れます。
現場の面談や評価におけるサポート状況
トラブル防止に向けた取り組みとして、更新基準を可視化し、本人へのフィードバックを行う企業が46.3%に上る一方で、現場の管理職向けに面談の進め方の手引を作成している企業は15.3%にとどまりました。
面談や評価を実際に行う現場へのサポートが不足している現状が浮き彫りになっています。企業は制度の見直しとともに、現場を支援する体制づくりも進める必要があります。
出典:マネーフォワード クラウド、更新可否を判断する際の実務上の重視項目・トラブル防止に向けた取り組み【高齢者雇用に関する調査データ】(回答者:定年退職後の再雇用者や有期雇用労働者の契約更新事務に携わった経験がある計627名、集計期間:2026年3月)
高齢者雇用安定法対応を着実に進めるために
2025年4月施行の改正により、高齢者雇用安定法は経過措置を廃止し、65歳までの雇用確保措置(定年延長・継続雇用制度・定年廃止のいずれか)の実施を全企業に義務化しました。企業は就業規則や賃金制度の見直しに加え、2026年度に拡充された65歳超雇用推進助成金やエイジフレンドリー補助金などを活用しながら、高年齢者雇用安定法に沿った安定的な雇用環境を整えることが求められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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