- 更新日 : 2026年9月4日
有給休暇の5日取得義務とは?対象者・罰則・年次有給休暇管理簿の実務までわかりやすく解説
有給休暇の5日取得義務とは、年10日以上の有給が付与される労働者に対し、企業が5日分の取得時季を指定しなければならない制度です。
- 対象は雇用形態問わず年10日以上付与の労働者
- 違反すると労働者1人につき30万円以下の罰金
- 年次有給休暇管理簿の作成・保存も義務
Q. パート・アルバイトも5日取得義務の対象になる?
A. なります。年10日以上の有給休暇が付与されていれば、雇用形態に関係なく対象となります。
有給休暇の5日取得義務は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、企業が5日分の取得時季を指定しなければならないルールです。本記事では、有給休暇の年5日取得義務化の対象者や基準日の考え方、違反時の罰則、取得促進の方法まで、バックオフィス担当者が実務で押さえるべきポイントを整理します。
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有給休暇の5日取得義務とは?
有給休暇の5日取得義務とは、年次有給休暇が年10日以上付与される労働者に対し、企業がそのうち5日について取得時季を指定し、確実に取得させなければならない労働基準法上のルールです。正式には「使用者による時季指定義務」と呼ばれます。
年次有給休暇は本来、労働者が自由に時季を選んで取得する権利であり、企業が取得を強制することはできません。しかし、同僚への気兼ねなどから取得率が低調な状態が続いていたため、一定日数については企業側から時季を指定して取得させる仕組みが設けられました。時季を指定する際は、労働者の意見を聴取し、その意見をできる限り尊重するよう努める必要があります。
労働者が自ら5日以上取得している場合は時季指定不要
労働者が自らの請求や計画的付与によって、すでに年5日以上の有給休暇を取得している場合、企業による時季指定は不要です。取得日数が5日に満たない場合にのみ、不足分について企業が時季指定を行う義務が生じます。
管理監督者やパート・アルバイトも対象になる
有給休暇の年5日取得義務は、正社員に限定された制度ではありません。年10日以上の有給休暇が付与されていれば、管理監督者や有期雇用労働者、要件を満たすパート・アルバイトも対象に含まれます。雇用形態ではなく、付与日数が基準となる点に注意が必要です。
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有給休暇の5日取得義務はいつから始まった?
有給休暇の年5日取得義務は、2019年4月に施行された働き方改革関連法による労働基準法改正で導入されました。制度自体は以前から存在していましたが、取得日数の義務化は初めての試みです。
2019年4月の労働基準法改正では、罰則付きの残業時間上限規制の導入や労働時間の客観的把握の義務化とあわせて、年5日の有給休暇取得も企業に義務付けられました。義務化の目的は、長年低調だった有給休暇の取得率を底上げすることにあります。
制度導入後、有給休暇の取得率はどう変化した?
制度導入後、有給休暇の取得率は右肩上がりで推移しています。厚生労働省の調査によれば、義務化前の平成30年は52.4%だった取得率が、義務化された令和元年には56.3%まで上昇しました。
その後も上昇傾向は続き、直近の令和7年就労条件総合調査によると、令和6年(2024年)の年次有給休暇取得率は66.9%となり、昭和59年以降で過去最高を更新しています。前年の令和5年は65.3%であり、取得義務化を含む働き方改革の取り組みが、取得率向上に一定の効果をもたらしていることがうかがえます。
有給休暇の5日取得義務の対象者は?
有給休暇の年5日取得義務の対象は、年次有給休暇が年10日以上付与される労働者全員です。正社員やフルタイム契約社員はもちろん、要件を満たせばパートやアルバイトも対象となります。
雇用形態にかかわらず「年10日以上の付与」という条件を満たすかどうかが判断基準になるため、勤続年数や所定労働日数ごとに付与日数を正しく把握しておくことが重要です。
正社員・フルタイム契約社員の対象条件
正社員やフルタイムの契約社員は、入社から6ヵ月経過し全労働日の8割以上出勤していれば10日以上の有給休暇が付与されるため、以降は継続して取得義務の対象となります。
| 勤続年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6ヵ月 | 10日 |
| 1年6ヵ月 | 11日 |
| 2年6ヵ月 | 12日 |
| 3年6ヵ月 | 14日 |
| 4年6ヵ月 | 16日 |
| 5年6ヵ月 | 18日 |
| 6年6ヵ月以上 | 20日 |
パート・アルバイトの対象条件(比例付与)
週の所定労働時間が30時間以上のパート・アルバイトは正社員等と同じ日数が付与されるため、入社6ヵ月経過後は取得義務の対象です。一方、所定労働時間が週30時間未満で、かつ所定労働日数が週4日以下(または年216日以下)の場合は、勤続年数と所定労働日数に応じた比例付与となります。
| 所定労働日数(週) | 1年間の 所定労働日数 |
6ヵ月 | 1年 6ヵ月 |
2年 6ヵ月 |
3年 6ヵ月 |
4年 6ヵ月 |
5年 6ヵ月 |
6年 6ヵ月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
表のとおり、週4日勤務であれば入社3年6ヵ月以降、週3日勤務であれば入社5年6ヵ月以降に付与日数が10日以上となり、取得義務の対象に含まれます。週の所定労働日数が2日以下の場合は、勤続年数にかかわらず年10日以上の付与とならないため、取得義務の対象外です。
取得義務の対象となる1年間(基準日)はどう計算する?
取得義務の対象期間は、有給休暇が10日以上付与された日(基準日)から1年間です。基準日の設定パターンによって、5日取得義務の起算日が変わるため、企業ごとの付与方式に応じた計算が必要です。
STEP1.入社後6ヵ月で10日以上を付与するケース
原則どおり入社後6ヵ月経過時点で10日を付与する場合、その付与日が基準日となります。4月1日入社であれば10月1日が基準日となり、翌年9月30日までの1年間に5日以上の取得が必要です。
STEP2.入社と同時に10日以上を前倒し付与するケース
労働者に不利益とならない前倒し付与は認められています。入社日に10日を付与した場合は、入社日そのものが基準日となり、そこから1年以内に5日以上を取得させる必要があります。
STEP3.全社で付与日を統一する斉一的取扱いのケース
中途採用などで入社日が分散していると、労働者ごとに基準日が異なり管理が煩雑になります。そこで、特定の日(例:毎年4月1日)に付与日を統一する「斉一的取扱い」を採用する企業も少なくありません。この場合は、統一された日が基準日となります。
STEP4.一部を前倒しで分割付与するケース
入社時に5日、6ヵ月経過時点で残り5日というように分割して付与する場合は、合計付与日数が10日に達した日が基準日となります。最初の付与日ではなく、10日目に達した日を起点に1年以内の取得義務が発生する点に注意が必要です。
有給休暇の5日取得義務に違反するとどうなる?
有給休暇の年5日取得義務に違反した場合、労働基準法第120条に基づき、対象労働者1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。
罰則は違反した労働者の人数分科される可能性があるため、対象者が多い企業ほどリスクが大きくなります。たとえば対象者が10人であれば最大300万円、100人であれば最大3,000万円の罰金となる計算です。
年次有給休暇管理簿の作成・保存義務
企業には、労働者ごとに年次有給休暇の取得時季・日数・基準日を記録した年次有給休暇管理簿を作成し、保存する義務があります。保存期間は有給休暇を与えた期間およびその期間満了後5年間とされていますが、当分の間は経過措置として3年間とされています。
管理簿は賃金台帳などとあわせて作成することも認められており、勤怠管理システムを活用して一元管理すれば、実務負担の軽減にもつながります。
有給休暇の5日取得義務に向けた管理実務の課題
マネーフォワードが実施した有給休暇の管理業務に関する調査によると、管理実務において最も工数がかかっている作業は「半日単位や時間単位など、複雑な取得形態への対応」で、29.6%でした。次いで「繰り越し分の有効期限(時効)の管理」が28.9%、「入社時期や労働条件に応じた付与日数の算出」が28.5%と続いています。
有給休暇管理で工数がかかる作業とは?
有給休暇の年5日取得義務を遵守し、従業員の計画的な取得を促進するためには、付与日数や残日数を正確に把握することが欠かせません。しかし、調査結果からは、多くの担当者が従業員ごとの付与日数の算出や、繰り越し分の有効期限の管理といった日々の作業に負担を感じていることが読み取れます。取得義務を果たすためには、従業員が有給休暇を取りやすい環境を整えるだけでなく、管理担当者の負担を軽減し、ミスのない運用ができるようシステムの導入などを検討することも重要だといえるでしょう。
出典:マネーフォワード クラウド、管理実務において特に工数がかかっている作業【有給管理に関する調査データ】(回答者:お勤め先において従業員の有給休暇の管理業務に携わっていると回答した646名、集計期間:2026年4月)
有給休暇の取得を促進するにはどうすればいい?
有給休暇の取得を促進するには、インセンティブ設計や取得しやすい日程の提示など、労働者が申請しやすい環境を整えることが有効です。取得義務を果たすだけでなく、日頃からの取得促進策を組み合わせることが望ましいといえます。
インセンティブ制度を導入する
有給休暇を一定日数以上取得した労働者に特別休暇を付与するなど、取得を後押しするインセンティブ制度は、有給休暇取得を前向きに捉える職場風土の醸成に役立ちます。
取得推奨日を設定する
お盆や年末年始など、長期休暇と接続しやすい時期に取得推奨日を設ければ、申請の心理的ハードルが下がるだけでなく、企業側も取得予定の見通しを立てやすくなります。
計画的付与制度を活用する
計画的付与制度は、労使協定を締結することで、有給休暇のうち5日を超える分について、あらかじめ定めた時季に付与できる仕組みです。付与方式には主に次の3種類があります。
| 付与方式 | 概要 | 向いている業種・場面 |
|---|---|---|
| 一斉付与方式 | 企業・事業場単位で全従業員が一斉に取得 | 工場・製造部門など操業を一斉に停止できる場合 |
| 班・グループ付与方式 | 班やグループ単位で交代して取得 | 流通業・サービス業など一斉休業が難しい場合 |
| 個人別付与方式 | 個人単位で計画を設定 | 誕生日や記念日など個々の事情に合わせたい場合 |
参考:年次有給休暇の計画的付与制度とは|働き方・休み方改善ポータルサイト
半日単位・時間単位の取得も周知する
有給休暇は1日単位だけでなく、就業規則に定めることで半日単位の取得も可能です。また、労使協定を締結すれば時間単位での取得もできます。ただし、時間単位で取得した有給休暇は年5日の取得義務のカウントには含まれない点に注意が必要です。柔軟な取得方法を周知することは、取得率向上に資する取り組みといえます。
有給休暇の5日取得義務を正しく理解し、着実な運用へ
有給休暇の5日取得義務は、年10日以上の有給休暇が付与される労働者を対象に、企業が5日分の取得時季を指定する制度です。対象者の判定や基準日の計算、年次有給休暇管理簿の整備を正しく行い、罰則リスクを避けながら、年次有給休暇取得義務を着実に果たせる管理体制を整えていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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