• 更新日 : 2022年7月4日

給与計算は初心者でも簡単にできる?基礎知識や重要な3つのポイント!

一見難しそうに思える給与計算ですが、初心者でもポイントを押さえ、全体の流れを把握することで比較的簡単に行うことができるでしょう。今回は、初心者が給与計算をするために必要な基礎知識や押さえておきたいポイントを解説します。ミスなく給与計算業務を行うために、ぜひ参考にしてください。

初心者が押さえておくべき給与計算の基礎知識

初心者が押さえておくべき給与計算の基礎知識は以下の3つです。

  • 基本給や残業代をそのまま支給しない
  • 会社によって給与の管理方法が異なる
  • 初心者によくある失敗を事前に理解する

それぞれ一つずつ確認していきましょう。

基本給や残業代をそのまま支給しない

基本給や残業代、役職手当などを合計した金額を「総支給額」といいます。この総支給額をそのまま支給するわけではないことに注意しましょう。具体的には、総支給額から保険料や税金などを合わせた「控除額」を差し引いた金額を支給します。

例えば総支給額が23万円であり、控除額が2万円の場合は、実際に支給される金額は21万円となります。

会社によって給与の管理方法が異なる

給与の管理方法は、会社によってさまざまです。給与システムで管理している会社がある一方で、Excelを使って手入力を行いパソコンで管理している会社も少なくありません。また、紙を使って管理しているケースもあります。それぞれの管理方法にメリットとデメリットがあるため、事前に自社の給与の管理方法を確認しておきましょう。

初心者によくある失敗を事前に理解する

給与計算において、初心者によくある失敗を事前に理解しておけば、同じような失敗を未然に防げるといえるでしょう。給与計算の初心者によくある失敗としては、年度切り替え時の会計処理のミスや、手入力する際の入力ミスなどが挙げられます。

こういった失敗は、入念なダブルチェックを行なったり、自動計算ソフトを使ったりすれば、防止することができるはずです。

給与計算は初心者でも簡単にできる?

結論から言うと、給与計算は初心者でも比較的簡単に行えます。しかし、そのためには給与計算のルールや注意点を押さえておく必要があるでしょう。

給与計算で計算ミスや入力ミスをすると、従業員との間でトラブルになったり、税金の支払いが正しくできなかったりすることが想定されます。初心者であれば、わからない点は経験者に質問して、理解を深めることが重要です。

初心者の給与計算でよくある失敗例

初心者の給与計算でよくある失敗例としては、以下の3つが挙げられます。

  • 手入力の計算で入力ミスをしてしまった
  • 個人情報を漏洩してしまった
  • 年度ごとの会計処理を間違えてしまった

前述のとおり、初心者によくある失敗を押さえておくことで、同じような失敗を未然に防ぐことができるでしょう。それぞれの失敗例をお伝えしていきます。

手入力の計算で入力ミスをしてしまった

手入力による計算での入力ミスやデータの転記ミスは、給与計算の初心者によくある失敗の一つです。給与計算システムを活用する企業が増えてきたとはいえ、従来どおりアナログ作業で給与計算を行う企業もみられます。

従来の雇用形態が皆同じで、労働時間も固定されていた時代であれば、勤怠部分の給与計算は手計算であっても十分対応できたでしょう。

しかし、現在は社員以外にもパートタイムやアルバイトなど、雇用形態が多様化しています。さらにフレックスタイム制やテレワークなど、さまざまな働き方が普及しつつあります。勤怠管理は煩雑になる一方であり、それに伴って給与計算も複雑化しているため、特に初心者においては、給与計算におけるミスが起きやすい状況といえるでしょう。

そのため、アナログ作業でのミスをなくすためには、ダブルチェックや計算システムを導入するなどの対策を講じる必要があります。

個人情報を漏洩してしまった

社内外に給与計算で必要な個人情報を漏洩してしまう事態も、起こり得るでしょう。この場合、個人上保護法の違反となり刑事罰を受けるほか、従業員からの訴訟リスクもあります。また、会社としての信用も落としかねません。

安易に個人情報を放置しないようにしたり、定期的にパスワードを変更して他人が予測しづらい強固なものにしたりするなど、必要な対策を実施しましょう。

年度ごとの会計処理を間違えてしまった

従業員の昇給や雇用形態の変更などによって給与が大きく変更する場合には保険料も変わるため、標準報酬月額の改定届の提出が必要です。標準報酬月額の改定届の提出を失念してしまったり、給与が変更したにも関わらず反映するのを忘れてしまったりすることによる失敗にも、注意する必要があります。

このケースに限ったことではありませんが、給与計算でミスが発覚した場合には、その時点で速やかに謝罪しましょう。その後、再計算して差額を支給します。社会保険料にもずれが生じるため、源泉徴収票の修正も必須になります。

初心者の給与計算で重要なポイント3つ

初心者の給与計算で重要なポイントは次の3つです。

  • 「賃金支払いの5原則」を厳守する
  • 地域別の賃金ルールに注意する
  • 残業代の支払要件を事前に確認する

賃金支払い5原則のほか、最低賃金や割増賃金のルールも、給与計算および支払い業務において確実に押さえておく必要があるものです。一つずつ解説していきます。

「賃金支払いの5原則」を厳守する

労働基準法24上で定められた賃金支払いの5原則は、厳守しなければなりません。具体的には以下の内容になります。

  • 通貨で支払う
  • 直接本人に支払う
  • 賃金の全額を支払う
  • 毎月1回以上支払う
  • 一定期日に支払う

例えば給与は基本的に通貨で支払わなければならず、労働協約で定めをした場合のみ、現物支給が認められます。多くの企業で行われている口座振込みも、労働者の同意のもと実施する必要があるのです。

また、給与はその全額を支払わなければなりません。一部控除をするには、法令で定めがあるほか、労使協定の締結が求められます。

これらの定めを守らない場合、30万円以下の罰金の対象となるため注意が必要です。

参考:厚生労働省 賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。

地域別の賃金ルールに注意する

最低賃金の適用を受ける従業員に対して、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。最低賃金額に達しない賃金である場合はその部分において無効となり、最低賃金と同じ金額になります。

最低賃金には地域別最低賃金と、特定最低賃金と呼ばれる事業または職業に関する最低賃金があり、地域別最低賃金を下回った際には50万円以下の罰金の支払いが課せられます。毎年秋に見直しがされるため、必ず確認しましょう。

残業代の支払い要件を事前に確認する

原則1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える、時間外や休日、深夜の労働に関しては、割増賃金を支払う必要があります。

時間外労働と休日労働、あるいは時間外労働が深夜におよんだ場合など、それぞれ割増率が異なるため、事前に詳細を確認しましょう。

さらに、1ヶ月につき60時間を超える時間外労働に対しては、5割以上の率で計算した割増賃金を支払う必要がある点にも注意しましょう。

参考:厚生労働省 しっかりマスター労働基準法

給与計算の正しい計算方法

給与計算の正しい計算方法の手順を簡単にあらわすと、下記の通りになります。

  • 残業代を含めた支給額を計算する
  • 社会保険料などの控除額の計算を行う
  • 総支給額から控除額を差し引く

それぞれのポイントをご説明していきます。正しい給与計算の方法について、詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

残業代を含めた支給額を計算する

はじめに、残業代を含めた支給額を計算しましょう。給与として支給されるものは、基本給や職務手当などの「固定的な給与」と時間外労働手当や深夜労働手当、休日労働手当などの「変動的な給与」に分かれます。

固定的な給与は雇用契約書や就業規則を参考に算出し、変動的な給与は別途計算しなければなりません。変動的な給与の支給額は以下の計算式で算出します。

・時間外労働の時間数×1時間あたりの賃金×割増賃金率

なお、ベースとなる1時間あたりの賃金は「月給÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間」で計算しましょう。月給には基本給に役職手当や資格手当などが含まれます。

1時間あたりの賃金の算出に必要な「1ヶ月あたりの平均所定労働時間」は、以下のようにして算出することが必要です。

・(365日−年間所定休日数)×1日の所定労働時間数÷12ヶ月

既にお伝えしたとおり、割増賃金率は例えば時間外労働と休日労働は異なるため、給与計算をする前には事前に確認しておくことをおすすめします。

社会保険料などの控除額の計算を行う

次に行うのは、社会保険料や雇用保険料、税金など、給与の総支給額から差し引く控除額の計算です。社会保険には健康保険、厚生年金保険などが含まれ、それぞれの保険料は「標準報酬月額×保険料率」で算出します。一方、雇用保険料は「月支給額合計×保険料率」で計算します。

これらの保険料のほかに、源泉徴収する所得税と住民税の計算も必要です。所得税は「課税対象額×所得税率」で計算し、課税対象額は所得金額から先ほど計算した社会保険料控除を含めた所得控除を差し引いて求めます。

住民税も基本的な計算方法は所得税と同じですが、定額で課税される「均等割」と前年の所得金額に応じて課税される「所得割」の2種類があることなどに注意しましょう。

総支給額から控除額を差し引く

総支給額と控除額を計算したら、最終的な給与の支給額の計算に移ります。手取り金額とも呼ばれる実際の支給額は、「総支給額−保険料や税金などの控除額」で計算しましょう。

支給額が決定した後、金融機関への振り込みや、支給証明となる「給与明細書」の作成を行います。また、翌月10日までに控除した社会保険や税金を納付します。

給与計算の初心者でも流れを理解すれば簡単に行える

給与計算は、従業員の給与の支払いや納税に関わる重要かつミスが許されない業務です。しかし、給与計算の初心者でもポイントを押さえ、流れを確認しておけばスムーズに行うことができるでしょう。

特に「賃金支払いの5原則」や最低賃金のルール、法定割増賃金率などを理解しておくことが重要です。また、初心者によくある失敗を確認しておくことで、同じような失敗を未然に防ぐことができるはずです。この記事を参考にして、正確でミスなく給与計算を行うように心がけましょう。

よくある質問

初心者でも給与計算は可能?

可能です。そのために基礎的な知識のポイントを押さえ、全体の流れを理解しておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

給与計算初心者にありがちな失敗例は?

手入力計算でのミスや個人情報の漏洩のほか、標準報酬月額の改定届の提出の失念や反映忘れなどが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。

給与計算時に重要視すべきポイントは?

「賃金支払いの5原則」や最低賃金のルール、法定割増賃金率などです。詳しくはこちらをご覧ください。


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