• 更新日 : 2023年12月8日

最低賃金とは?制度の概要や種類をわかりやすく解説

最低賃金とは?制度の概要や種類をわかりやすく解説

労働者に は契約に従って労働する義務はありますが、使用者にも労働の対償として賃金を支払う義務があります。また、賃金には最低の額が定められており、その額を下回ることは許されません。

本記事では、最低賃金についての概要や注意点などについて解説を行っています。最低賃金を下回っていないか不安があれば、ぜひ参考にしてください。

最低賃金とは?

労働者に支払う賃金には、最低賃金法による最低賃金が定められています。労働者の生活の安定のために、最低賃金を下回ることは許されず、使用者は最低賃金以上の賃金を支払うことが必要です。では、その額はどのように決定されるのでしょうか。

最低賃金はどのようにして決まる?

最低賃金は、都道府県ごとに決定されることが原則です。その額は、まず労働者代表や使用者代表、公益代表から構成される中央最低賃金審議会により決定されます。決定された額は、地方最低賃金審議会の審査を経て、各都道府県の労働局長により、最終的に決定されることが一般的です。

最低賃金制度の概要

最低賃金は、労働者の生活の安定のために設けられている制度です。この額を下回るような賃金では、生活の安定も望めず、労働力も低下してしまいます。そのため、最低賃金を守ることは、労働者の生活の安定だけでなく、労働力の向上にもつながっています。少子高齢化の進展により、労働力の確保が困難さを増している状況において、最低賃金を守ることの重要性は、年々増しているといえるでしょう。

最低賃金は、原則として時間を単位として定められており、その額は都道府県や産業ごとに異なります。また、最低賃金は1つだけでなく、2種類存在しているため詳しく解説します。

最低賃金の種類

最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類が存在します。両者の概要と違いについて、解説します。

地域別最低賃金

地域別最低賃金は、都道府県ごとに定められている最低賃金です。一般的に最低賃金といった場合には、こちらを指すことが多いでしょう。地域別最低賃金は、都道府県ごとの生計費や賃金、事業の賃金支払い能力などを考慮して決定されます。

地域別最低賃金は、引き上げが続いており、令和5年度の全国加重平均は1,004円となっています。この額は、政府が目標とする1,000円を上回るものです。なお、令和5年度における地域別最低賃金の最高額は、東京都の1,113円となっており、最低額は岩手県の893円です。

特定(産業別)最低賃金

特定(産業別)最低賃金は、特定の産業ごとに定められる最低賃金となっています。特定最低賃金は、地域別最低賃金を上回る額であることが必要です。

たとえば、令和4年度における北海道の地域別最低賃金は920円です。対して、令和4年12月に発効となった北海道の鉄鋼業における特定最低賃金は、1,000円と地域別最低賃金を上回る額となっています。また、特定最低賃金は奈良県の木材製造業のように、時間ではなく日額で定められている場合もあり、この点でも地域別最低賃金とは異なっています。

最低賃金が適用される対象者

最低賃金は、原則として全ての労働者に適用されます。しかし、以下に該当し、都道府県労働局長の許可を受けた場合には、最低賃金が適用されません。

  • 精神、または身体の障害により著しく労働能力の低い者
  • 試みの試用期間中の者
  • 一定の認定職業訓練を受ける者
  • 軽易な業務に従事する者
  • 断続的労働に従事する者

特定(産業別)最低賃金が適用されないケース

特定最低賃金は、地域別最低賃金を上回っていることが必要です。しかし、その額が更新されず、地域別最低賃金を下回っている場合も存在します。

たとえば、東京都の鉄工業(平成26年発効)は、871円となっており、地域別最低賃金を下回る額です。このような場合には、特定最低賃金は適用されず、地域別最低賃金が適用されます。これに対して、千葉県の鉄工業(令和4年発効)は1,054円のため、特定最低賃金が優先されます。

最低賃金における注意点

労働者の生活の安定や、労働力の向上のためにも最低賃金を守ることは重要です。注意点を把握し、違反することのないようにしましょう。

派遣労働者の最低賃金は派遣元それとも派遣先が基準?

派遣労働者に適用される地域別最低賃金は、派遣先を基準とします。千葉県の派遣会社から東京都の企業に派遣された場合には、千葉県の1,026円ではなく、東京都の1,113円が適用されます。また、特定最低賃金は派遣先の同種の職業に従事する労働者に適用される額が派遣労働者にも適用されるため覚えておきましょう。

最低賃金は、残業代やボーナスも対象?

次の賃金は、最低賃金の対象から除外されます。そのため、残業代やボーナスは最低賃金の対象となりません。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)
  • 時間外割増賃金
  • 休日割増賃金
  • 深夜割増賃金
  • 精皆勤手当
  • 通勤手当
  • 家族手当

最低賃金は周知義務がある

最低賃金は、労働者にとって非常に重要な制度です。そのため、最低賃金には周知義務が課せられています。使用者は、以下の事項を常時作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法で、労働者に周知しなければなりません。

  • 最低賃金の適用を受ける労働者の範囲
  • 労働者に適用される最低賃金額
  • 最低賃金に算入しない賃金
  • 効力発生年月日

周知義務に違反した場合には、最低賃金法41条により、30万円以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意しましょう。

最低賃金が支払われているかチェックする方法

労働者に支払っている賃金が、最低賃金額以上であるかは、賃金支払いにおいて注意しなければならないポイントです。適用される支払い形態ごとに、確認方法が異なるため、それぞれ解説します。

1.時給制

原則として、最低賃金は時間を単位として定められています。そのため、時給制の場合には、支払われている時給が最低賃金額以上であるかどうかで判断可能です。

2.日給制

日給制として使用される労働者であれば、以下の式によって求めた額を最低賃金額と比較します。

日給÷1日の所定労働時間

なお、日額として設定されている特定最低賃金が適用される場合には、支払われる日給が最低賃金額(日額)以上であることが必要です。

3.月給制

月給制の場合であれば、以下の式から算出された額が、最低賃金額以上であることが必要です。

月給÷1ヶ月平均所定労働時間

1ヶ月の平均所定労働時間は、以下の式から算出可能です。

(365日-1年の休日合計日数)×1日の所定労働時間÷12ヶ月

4.出来高払いや請負制

出来高払いや請負制の適用を受ける労働者であれば、賃金計算期間における賃金総額を、出来高払いや請負制により労働した総時間数で除すことで、時間当たりの金額を算出することが必要です。その後に、算出された時間当たりの金額と、最低賃金額を比較することになります。

5.1から4の複数が適用

月給制と日給制など、複数の支払い形態が適用される労働者も存在します。その場合には、支払い形態ごとに時間当たりの額を求め、その合計額で判断します。たとえば、基本給が日給制で、職務手当などの各手当が月給制を採用している場合は、2と3の式によって、時間当たりの額を求め、合算した額と最低賃金額を比較します。

罰則の適用

地域別最低賃金を下回る給与を支払っている場合には、最低賃金法により50万円以下の罰金が科される恐れがあります。

特定最低賃金が適用される労働者に、特定最低賃金額以上の賃金を支払わない場合には、労働基準法により、30万円以下の罰金が予定されています。最低賃金額を下回らないように注意しましょう。

最低賃金を守ろう

最低賃金は、労働者の生活を安定させるために欠くことのできない制度です。もし、最低賃金を下回る賃金を支払っているような場合には、罰則の適用も予定されています。本記事を参考に、最低賃金についての理解を深め、違反することのないようにしてください。

最低賃金についてより詳しい方はこちらの記事もご参考ください。

【HR Journey】最低賃金とは?地域別一覧や確認方法、賃金引き上げの企業事例を解説


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