- 更新日 : 2025年1月9日
社会保険における「130万円の壁」とは?扶養条件や103万円の壁との違いを解説
会社員などの扶養家族となっている配偶者でも、一定金額を超えなければ扶養のまま、パート収入などを得ることができます。しかし、定められている金額を超えてしまうと、扶養から外れなければなりません。
扶養といわれているものには「税の扶養」と「社会保険の扶養」があり、社会保険の扶養範囲は配偶者年収130万円未満になります。
今回は、この社会保険における「130万の壁」について、扶養に関する注意点を解説します。
目次
社会保険における扶養とは?
社会保険の扶養とは、会社員などの配偶者が自分自身では健康保険、および厚生年金に加入しなくても済む仕組みのことをいいます。
会社員や公務員は、勤務先において健康保険・厚生年金に加入します。そして健康保険料・厚生年金保険料の1/2を負担しなければなりません。なぜ1/2かというと健康保険料・厚生年金保険料は会社員・公務員である被保険者と、勤務先が折半して支払うことになっているためです。残りの1/2は勤務先が負担し、給料天引きで徴収した被保険者負担分と合わせて、保険料納付を行います。
こうした会社員・公務員が配偶者を扶養している場合、その配偶者を社会保険の扶養とすることができます。社会保険の扶養となった配偶者は、自分自身で健康保険に加入しなくても健康保険を使うことができます。年金でも不利な取り扱いにはなりません。自分自身が加入しているわけではないため、健康保険料・厚生年金保険料の支払いも不要です。
社会保険における130万円の壁とは?
社会保険の扶養範囲は、年収が130万円未満の配偶者です。パートなどをすることは認められていますが、この130万円の範囲に収まっていなければ、社会保険の扶養からも外れてしまいます。130万の壁を超えると社会保険の扶養から外れ、自分自身で社会保険に加入しなければならなくなり、配偶者自身に健康保険料・年金保険料の負担義務が生じます。
なお、年収とは1年間(1月1日~12月31日まで)に会社から支払われた総支給額のことです。基本給以外に各種手当やボーナスなども含まれた額になります。
130万円の壁に交通費は含まれる
社会保険の扶養範囲内である配偶者の年収130万円には、交通費が含まれます。そのため、年収が130万円以下かどうかを計算する際は、交通費・通勤費として支給される金額も加えて計算する必要があります。
例:
年収125万円+交通費なし:年収130万円未満となり、社会保険の扶養の範囲内になる
年収125万円+交通費6万円の支給あり:年収130万円以上になり、社会保険の扶養の範囲から外れる
103万の壁との違い
130万の壁によく似たものに103万の壁がありますが、103万円は所得税の計算において配偶者控除の対象となるかどうかを決定する年収です。配偶者の年収が103万円以下であれば控除対象配偶者として認められ、配偶者控除を受けられます。103万円を超えてしまうと控除対象配偶者として認められなくなるため、所得税計算において配偶者控除を受けられません。また、103万円以内であれば所得税は非課税となります。
130万円を含む年収の壁一覧
年収の壁は、103万円、130万円以外にもいくつか存在します。それぞれの年収と障壁となるものについては、次の表の通りです。
税金の壁 | 103万円 | 所得税が課される |
---|---|---|
社会保険の壁 | 106万円 | 健康保険・厚生年金保険への加入義務の発生(勤務先の規模による) |
130万円 | 国民健康保険や国民年金の支払いが発生 | |
税金の壁 | 150万円 | 配偶者特別控除が満額受けられなくなる |
103万円の壁
年収が103万円を超えると、超えた分に対して所得税の納税義務が生じます。ただし、103万円には交通費や通勤手当は含まれないため注意しましょう。
106万円の壁
年収が106万円を超えると、勤務先企業の規模や労働時間、賃金などによっては、健康保険や厚生年金保険への加入義務が発生します。給与収入が106万以上で社会保険の加入対象となった場合、社会保険の扶養から外れることになります。
130万の壁
年収が130万を超えると社会保険上の扶養ではなくなるため、自分で社会保険に加入し、保険料を納める必要があります。
勤務先の社会保険に加入しない場合は、国民健康保険と国民年金への加入が必要です。
150万の壁
年収150万円を超えると、配偶者特別控除を満額で受けられなくなります。年収150万円以下の場合は、扶養者は最大38万円の配偶者特別控除を受けることが可能です。
収入が150万円を超えた場合は、その金額と扶養者の収入などに応じた配偶者特別控除が受けられ、控除は段階的に少なくなっていき201.6万円以上でゼロになります。
年収を130万円未満に抑えるには?
年収を130万円未満に抑えるためには、1ヶ月の収入を108,333円以下(=130万円÷12ヶ月)に抑える必要があります。毎月たくさん仕事をして収入が108,333円を超える場合は、130万円を超えてしまうことになるため、あらかじめ出勤日数を調整するなどして対応しましょう。
なお、仮に残業などで1ヶ月だけ上記の金額を超えても、即座に対象から外されてしまうことにはならないため、安心してください。
ただし、会社によっては2ヶ月連続して超過した場合や平均月収(3ヶ月における)が108,334円を超えた場合などに外れることになる恐れがあるため、注意が必要です。会社によって、それぞれ外れるための要件が違うため、事前に確認をするとよいでしょう。
一時的に130万円を超えても扶養に入れる?
月々の就業時間を管理していても、断りにくい残業を頼まれるなどして、気がついたら130万円を超えてしまったという場合もあるでしょう。その場合に活用できるのが、2023年10月から実施されている厚生労働省の「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」という措置です。
パートやアルバイトで働く人が繁忙期に労働時間を延ばすことで一時的に収入が上がって年収130万円を超えた場合でも、事業主がその旨を証明すれば扶養に入り続けられます。
<例>扶養である息子がアルバイトで年収130万円を超えた場合
例えば息子がアルバイト先の繁忙期の残業などで、年収130万円を超えてしまったケースです。
- 扶養者:母親
- 被扶養者:息子(アルバイト勤務中)
アルバイト先の事業主が一時的な収入増であることを証明する書類を作成して、その証明書を母親の加入する健保組合などに提出することで、息子は引き続き扶養に入り続けられます。
103万円超と130万円超の手取りの違い
103万円超と130万円超の手取りの違いについて解説します。
年収103万円超の手取り
超過分の所得税と住民税の支払が必要です。たとえば、年収105万円の所得税は約1,000円で、住民税は7,000円程度になります。そのため、手取りは103万7,000円程度です。
年収130万円超の手取り
年収130万円を超えると、所得税、住民税に加えて社会保険料(健康保険と厚生年金)が発生します。年収130万円の場合の社会保険料は、40歳未満で年間約19万円です。所得税は約3,500円、住民税が約18,000円かかります。そのため、手取りは約108万8,000円になります。
一見すると、130万円以上のほうが負担は大きいですが、社会保険に加入することで将来の年金受給額が増えるため、一概にどちらが得かは考え方によって異なるといえるでしょう。
扶養を外れる要件とは?
扶養から外れるタイミングとしては、税制上の扶養と社会保険上の扶養の2つがあります。それぞれの外れるタイミングは、以下の通りです。
- 税制上の扶養:年収103万円超になったとき
- 社会保険上の扶養:年収130万円超になったとき
また、社会保険上の扶養を外れる要件としては、以下のようなものもあります。
- 月収が10万8,333円以上となる場合
- 2ヶ月以上連続して月収10万8,333円を超える場合
- 3ヶ月の平均月収が10万8,333円を超える場合 など
加入する保険組合によって詳細な条件は異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。なお、扶養から外れるのは、配偶者や子ども(大学生など)などが該当します。
社会保険加入状況のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
社会保険の扶養について年収の注意点
会社員や公務員の配偶者で社会保険の扶養内でパート収入などを得ている場合、現状を維持したいのであれば扶養から外れないように注意する必要があります。社会保険の扶養で居続けるためには、収入が扶養に範囲内に収まっていなければなりません。
うっかり超えてしまった際の対応方法など、気をつけるべきことや知っておくべきことをきちんと理解しておくことが大切です。
130万の壁を理解して自分や配偶者に合う働き方をしよう
社会保険の扶養に入っている配偶者が年収130万円以上になると、扶養から外れて自分自身で社会保険に加入する必要があります。健康保険料と年金保険料を負担することで手取りが減ってしまうため、あらかじめ自分自身で収入をしっかりと把握し、コントロールできるようにしておきましょう。
また、2023年10月からは、一時的に年収 収入が130万円を超えても「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」という措置により、継続して扶養に入り続けられるようになっています。
制度変更や130万の壁の意味をよく理解して、自分や配偶者にとってより良い働き方を選択しましょう。
よくある質問
社会保険における扶養とはなんですか?
自分自身が保険料を負担しなくても健康保険・年金で不利とならないで済む仕組みのことです。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険における130万円の壁とはなにか教えてください。
配偶者の収入が130万円未満であれば扶養でいられ、130万円以上になると扶養から外れることをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
国民健康保険に扶養はある?加入手続きの注意点も解説
日本は国民皆保険制度を採っているため、全国民に健康保険への加入を義務付けています。退職によって社会保険の資格を喪失した際や、フリーター・アルバイトで親の扶養から外れた場合、自営業の方などは国民健康保険への加入が必要です。この記事では、国民健…
詳しくみる高額療養費(高額医療費支給制度)とは?社会保険の観点から仕組みを解説!
「高額療養費制度」とは、高額な医療費負担を軽減するための制度で、医療機関で支払った自己負担額のうち限度額を超えた額が手続きによって還付されたり、事前申請によって支払わずに済んだりします。申請方法は加入している医療保険によって異なり、申請しな…
詳しくみる傷病手当金は有給休暇を取った日にも支払われる?
仕事外のケガや病気が理由で会社を休む場合、傷病手当金を申請できます。原則として有給をとった場合、この傷病手当金は支払われません。ただし、受給までの待機期間に有給を利用するなど、いくつかの適したケースがあります。ここでは傷病手当金と有給のどっ…
詳しくみる年金は何種類ある?厚生年金などの公的年金と私的年金の違い
一口に年金といっても、その種類はたくさんあります。国の制度である厚生年金などの公的年金だけでなく私的年金もあり、仕組みも複雑です。 本稿では年金の種類とともに、厚生年金などの公的年金と私的年金の違いについて解説します。 年金は合計6種類ある…
詳しくみるパートの社会保険加入条件とは?2024年10月からの事業規模や労働時間を解説
短時間労働者を対象とした社会保険の適用拡大が進み、2022年10月からは従業員数101人以上の企業に対応が求められるようになりました。パートやアルバイトといった短時間労働者でも、従業員数101人以上の会社で、週20時間以上や月額賃金8万8,…
詳しくみる70歳以上の社会保険について – 対象者や手続きを解説
社会保険の適用事業所に勤務している従業員は、健康保険や厚生年金、雇用保険などに加入しています。保険料を給与から天引きされている方も多いでしょう。2021年4月1日施行の高年齢者雇用安定法改正により、65歳までの雇用確保の義務と70歳までの雇…
詳しくみる