- 更新日 : 2024年8月21日
就業規則の不利益変更とは?方法や注意点、認められる条件を解説!
就業規則の不利益変更とは、従業員に不利となるように就業規則の内容を変えることを言います。就業規則変更は労使の合意があれば可能ですが、合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められなければ不利益変更はできません。やむを得ずに行う場合でも従業員の同意と周知が必要で、丁寧な説明と労働基準法に則った手続きが求められます。
目次
就業規則の不利益変更とは?
労働者にマイナスになるよう就業規則を変えることを、就業規則の不利益変更と言います。就業規則は労働基準法に沿って作成しなければなりませんが、上回る内容とすることは問題ありません。労働基準法を上回る内容としていた就業規則を、労働基準法に抵触しない範囲で労働者にとって不利になるように変更することを指します。例えば1日の労働時間を7時間から7時間30分に変更する、家族手当や扶養手当をなくすといったことが、就業規則の不利益変更に該当します。
就業規則の不利益変更の具体例は?
就業規則の不利益変更には、様々なことが該当します。具体例をみていきましょう。
賃金に関する不利益変更
基本給を減額する、それまで支給してきた諸手当を廃止する、といったことが、賃金に関する不利益変更に該当します。給料の支払い回数を減らしたり受取方法の選択肢を減らしたりすることも、賃金に関する不利益変更とみなされます。福利厚生の廃止も実質的な賃金の引き下げとなるため、賃金に関する不利益変更の1つと考えられます。
休日や有給休暇に関する不利益変更
休日や有給休暇に関する不利益変更には、付与日数を減らすことが挙げられます。休日であった年末年始やお盆期間を従業員の有給休暇消化とすることも実質的な休日や有給休暇の減少にあたるため、不利益変更にあたります。
シフト変更に関する不利益変更
シフト変更は従業員の生活に悪影響を与える恐れがあり、不利益変更とされる場合があります。生活リズムを崩し、健康に害が生じるような場合です。シフト変更によって睡眠パターンに乱れが生じる場合、それまでの生活ができなくなる場合なども不利益変更とみなされます。
割増賃金に関する不利益変更
割増賃金の計算方法や支給条件の見直しが、不利益変更に該当します。割増賃金の不利益変更は直接的に給料減少につながるため、特に注意が必要です。
就業規則の不利益変更禁止の原則とは?
労働契約法 第8条
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
ただし、どんな変更も認められるわけではありません。労働契約法では第8条に続く第9条において、次のように不利益変更を禁止しています。
労働契約法 第9条
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。
就業規則の不利益変更が認められる条件は?
労働契約法第9条では就業規則の不利益変更は禁止されていますが、次のように続いています。
労働契約法 第9条
ただし、次条の場合は、この限りでない。
労働契約法 第10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。
ここでは労働契約法第10条に規定されている、就業規則の不利益変更が認められる条件を説明します。
就業規則の不利益変更に合理的な理由があること
企業が就業規則の不利益変更を行うには、行わなければ事業継続が不可能になるといった合理的な理由がなければなりません。経営状況悪化により、給与水準・福利厚生の維持が難しい場合が、これにあたります。変更内容にも合理性が求められ、次のような基準で判断します。
- 労働者の受ける不利益の程度
- 労働条件の変更の必要性
- 変更後の就業規則の内容の相当性
- 労働組合等との交渉の状況
- その他の就業規則の変更に係る事情
- 代償措置や経過措置の有無
- 同様の事項に関する同業他社の状況
変更後の就業規則を従業員に周知すること
就業規則の不利益変更後は、従業員に内容を周知しなければなりません。変更内容を周知する際には、従業員全員に対して公平に情報を提供することが求められます。社内のイントラネットや掲示板、説明会などを活用して、変更内容やその理由、影響について詳細に伝えることが重要です。
就業規則の不利益変更を進める方法は?
就業規則の不利益変更は手順に沿って行うと、スムーズに進められます。方法を順序立てて紹介します。
変更点を検討・決定する
どのような変更を行うか、検討・決定します。対象とする従業員の範囲、変更内容に合理性があるかどうか、従業員が受ける不利益はどの程度かをポイントに、慎重な検討が必要です。
特に合理性は、就業規則の不利益変更を実施する際の重要なポイントとされます。明確な合理性が認められない就業規則の不利益変更は従業員からの理解が得られず、強引に進めてもトラブルに発展しかねません。また会社の都合から不利益変更ありきとするのではなく、様々な角度から回避する方法を探ることも大切です。
労働者側と協議する
労働者との協議は、従業員の理解を得る場として非常に重要です。不利益変更の必要性を認めて受け入れてもらうためには、変更によってどのような影響があるのかまで、具体的に示す必要があります。
従業員の疑問や不安にも耳を傾け、真摯に答えなければ協議が円滑に進まない可能性もあります。また労働者側の意見を積極的に聞く姿勢も求められ、必要に応じて柔軟に対応する態度を示すことも大切です。従業員の声を反映させることによって納得度が高まり、トラブル抑止につながります。不利益変更後のモチベーション低下や不満の発生も防げます。
同意書を作成する
就業規則の不利益変更に関して、従業員の同意が得られたら、同意書を作成します。口頭での同意も可能ですが、後にトラブルが発生した場合に備えて、書面での同意を取得しておくことが重要です。労働組合の合意が得られた場合は、労働協約を締結します。労働協約の締結には会社側・労働組合側双方の署名、あるいは記名押印が必要です。
就業規則変更の手続きをする
就業規則変更は労働基準監督署に届け出なければなりません。届け出していない就業規則の変更は無効で、効力がありません。変更後の就業規則を2部準備して労働基準監督署へ提出し、変更を届け出ましょう。一部は受付印押印後返却されるので、保管します。
就業規則の不利益変更を進める場合の注意点は?
就業規則の不利益変更は労働者に負担を強いるため、労使トラブルの原因になる恐れがあります。円満に進めるには以下の点に注意する必要があります。
丁寧に説明する
就業規則の不利益変更を進める際は、従業員への説明を丁寧に行うことが最も注意すべきポイントです。変更する必然性を十分に説明できなければ、従業員は理解せず、反発します。納得して受け入れてもらうためには、会社の置かれている状況を理解してもらわなければなりません。変更によって従業員の生活にどのような影響があるのかも含めた、丁寧な説明が求められます。
同意書面を準備しておく
就業規則の不利益変更をする際は、同意書面を準備しておくことも大切です。不利益変更は時間が経ってからトラブルになり、場合によっては訴訟を起こされる可能性があります。同意書面をしっかりと準備し、後々の備えとしましょう。ただし同意の強要とならないよう、十分な注意が求められます。
負担軽減を図る
就業規則の不利益変更では、できる限り従業員の負担軽減を図らなければなりません。代替策を講じたりフォローアップを行ったりサポート体制を整えたりして、従業員の受ける不利益を最小限にしましょう。
就業規則の不利益変更では丁寧な説明を徹底してトラブル発展を回避しよう
就業規則の不利益変更は、従業員のモチベーション低下やトラブルの発生につながる可能性があります。法律では、合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない不利益変更は無効とされているため、この点に留意する必要があります。
就業規則の不利益変更を実施するには従業員に変更内容の他、理由、影響の程度などを説明する必要があります。
従業員から同意を得るには、丁寧な説明が不可欠です。きちんとした理解・納得が得られるよう、十分な時間をかけましょう。同意書面の準備や負担軽減策の考案などもしっかりと行い、就業規則の不利益変更によって後々トラブルに発展することがないようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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