- 更新日 : 2024年7月19日
アクティブリスニングとは?意味や手法・効果について解説
アクティブリスニングとは「積極的傾聴」のことで、コミュニケーションスキルの一つです。元々はカウンセリングの手法でしたが、近年は従業員の育成、社内環境の円滑化、業務スキル向上など、ビジネスでも活用されるようになりました。本記事では、アクティブリスニングの手法や実施上の注意点、社内への取り入れ方などについて解説します。
目次
アクティブリスニングとは?
アクティブリスニング(Active Listening)とは「積極的傾聴」のことで、1957年にアメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱したカウンセリングの技法です。心理学の分野で発祥したアクティブリスニングですが、ビジネスでも活用されるようになりました。
アクティブリスニングでは、聴き手は受動的に話を聞くだけではなく、必要に応じて話し手の言葉を繰り返したり、短い質問を挟んだりしながら、会話を進めます。
会話の中で聴き手は、話し手の感情や伝えたい本質的な部分を読み取り、話し手が自分の考えを整理して自ら解決策に辿り着けるようサポートするのが特徴です。
アクティブリスニングが注目されている背景
アクティブリスニングが注目されている背景には、従業員の多様化があります。
現代の企業では、正社員、短時間正社員、パートタイマーなど多様な従業員が在籍し、さらに育児・介護中の者、学生、病気治療をしながら働く者など、その背景もさまざまです。
こうした多様な従業員をまとめ、労働生産性を向上させるには、管理職の高いマネジメント能力が必要です。そして、そのために役立つスキルの一つが、アクティブリスニングです。
管理職がアクティブリスニングの聴き方を身につけることで、従業員の考えや抱えている問題を引き出し、マネジメントに役立てられます。
また、傾聴の過程で、社内の潜在的な問題点を把握できる可能性もあるでしょう。
アクティブリスニングの活用例
アクティブリスニングの聴き方を用いることにより「この人は話をしっかり聴いてくれる」と、相手に安心感や信頼感を与えます。そのため人事管理だけでなく、営業や接客などの仕事にも活用されています。
例えば大手外食チェーンのマクドナルド社が、アクティブリスニング研修を取り入れていることは有名です。同社では、顧客の注文に関する情報を引き出すために、アクティブリスニングを活用しています。
接客業だけでなく、商品の説明やクレーム処理など、顧客の話に耳を傾け、顧客のニーズや本心を引き出すような業務には、アクティブリスニングのスキルが役立つでしょう。また営業担当者や、コールセンターのオペレーターなどを対象としたアクティブリスニング研修も注目を集めています。
アクティブリスニングを活用するメリット
アクティブリスニングは、短い質問や相槌などを交えながら、話し手の本心や悩み、考えなどを引き出していく聴き方です。
アクティブリスニングには、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で、おもなメリットを紹介します。
1on1などで相手の本音を引き出しやすい
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う対話型の面談です。通常の面談と異なり、1on1ミーティングは信頼関係の構築や部下の人間的成長を目的に行われます。
1on1ミーティングでは、上司が部下の悩みや考えを引き出して問題解決に導きますが、これにはアクティブリスニングのスキルが役立ちます。上司がアクティブリスニングのスキルを身につけることで、より充実した1on1ミーティングが実現するでしょう。
コミュニ―ケーションの活性化につながる
会話やコミュニケーションが苦手な話し手でも、聴き手がアクティブリスニングを行うことで、徐々に自分の気持ちを伝えられるようになります。
アクティブリスニングの聴き方は、話し手に安心感や信頼感を与え、話し手の自己開示を促すためです。結果として次第に社内の会話が増加し、コミュニケーションの活性化が期待できるでしょう。
相手の立場に立って会話ができる
アクティブリスニングでは聴き手が話し手の立場に立ち、相手の問題を自分事化して会話を進めます。会話中、聴き手は自分の意見や考えは口にせず、話し手のサポートに徹することがアクティブリスニングの聴き方です。
こうしたスキルを身につけることで、自然に相手の立場で物事を考え、会話できるようになると考えられます。
ハラスメント防止につながる
アクティブリスニングにより、上司と部下の信頼関係が深まると、自分の悩みや考えを気兼ねなく相談できるようになります。こうした風通しの良い職場環境では、ハラスメントが起きにくいといわれています。
アクティブリスニングを社内に取り入れ、本音で話ができる環境を作ることは、ハラスメントの抑制にもつながるでしょう。
対立の解消につながる
アクティブリスニングでは、聴き手は自分の考えや感情を排除して相手の話に耳を傾け、相手が自ら問題を整理できるようにフォローしますが、このスキルは社内の対立解消にも役立ちます。アクティブリスニングのスキルがあれば、社内で対立が起き、両者から相談を受けたときに、中立を保って双方の意見が聴けます。そして両者にそれぞれ解決策を考えさせることで、問題の解消につながることがあります。
アクティブリスニングを実施する上での注意点
アクティブリスニングで効果を上げるには、聴き手側に一定のスキルが必要です。また聴き手側にストレスがかかることも考慮する必要があるでしょう。ここでは、アクティブリスニングを実施する上での注意点を解説します。
傾聴スキルが高くないと難しい
アクティブリスニングでは、聴き手に傾聴スキルが要求されます。つまり、高度な「聞き上手」であることが重要です。
傾聴スキルを持つ聴き手は、相手の話をただ聴くだけでなく、能動的に短い質問などを交えながら会話を進めていきます。聴き手側の意見を主張することなく、相手を尊重し、より深い話を引き出していくのが特徴です。
こうした傾聴スキルはトレーニングで強化できるため、アクティブリスニングを取り入れる際は、事前に研修などを行うとよいでしょう。
結論の決まらない会話になってしまうことも
アクティブリスニングでは、聴き手は、話し手自身が問題を考えるようサポートし、話し手が自ら結論を見いだすことを目標とします。話し手が結論に至らないことがあっても、聴き手が結論を述べるべきではありません。
聴き手側が結論や解決策を提示してしまうと、相手は考えることを止めてしまい、アクティブリスニングの目標が果たせなくなるためです。
アクティブリスニングは指導や討論ではなく、話し手の成長を支援するための会話です。聴き手はそのことを常に心に留め、話し手のサポートに徹する心得が求められます。
聞き手のストレスが大きい
アクティブリスニングの聴き手には、ストレスがかかりやすい傾向があります。そのため、話の内容にかかわらず、聴き手は相手を全面的に受け入れ、自分の考えや感想を排除してサポート役に徹しなければなりません。
聴き手のストレス軽減のためには、アクティブリスニングにおける役割について、聴き手にしっかりと理解してもらうことが有効です。
アクティブリスニングで使用される手法2つ
アクティブリスニングで使われる手法には「バーバルコミュニケーション」と「ノンバーバルコミュニケーション」があります。以下で、それぞれの内容を解説します。
バーバルコミュニケーション
バーバルコミュニケーションとは、文字や会話など言語を使ったコミュニケーションのことです。「言語コミュニケーション」とも呼ばれています。バーバルコミュニケーションの手法には「パラフレーズ」や「オープンクエスチョン」などがあります。順に説明します。
パラフレーズとは、相手の言葉をオウム返しのように反復することです。話のポイントとなる点を見つけ「それは、〇〇ということですね」などと、適切なタイミングで言葉をはさんでいきます。
話し手は自分の言葉を振りかえり、話の内容を整理しやすくなります。また「話をしっかりと聞いてもらっている」と感じ、聴き手に信頼感を持つでしょう。
オープンクエスチョンとは、「はい」「いいえ」で答えられない質問をする手法です。オープンクエスチョンにより、話し手は話の内容を再確認しながら、さらに話を広げられます。
オープンクエスチョンをするときは「5W1H(いつ、誰が、どこで、何を、なぜ、どのように)を意識するとよいでしょう。
ノンバーバルコミュニケーション
ノンバーバルコミュニケーションとは、言語を使わないコミュニケーションのことです。「非言語コミュニケーション」といわれることもあります。
ノンバーバルコミュニケーションには「目線」「声のトーン」「表情」などがあります。こうした非言語情報は、会話時に話し手が聞き手に与える要素のうち、93%を占めているそうです。
会話をするときは、基本的に話し手と目線を合わせます。目線を合わせることで信頼感が増し、相手は話しやすくなるでしょう。しかし、あまり相手の目を見続けると緊張させてしまうため注意しなくてはなりません。
声のトーンも大切です。あまり低い声や小さな声だと聞き取りにくいため、抑揚をつけて活舌良く話すよう気をつけましょう。また、会話の内容や話し手の声に合わせ、トーンを調節することも大切です。
さらに、聴き手の表情も重要な要素です。話をするときは自分の表情を意識し、相手の話す内容に合わせるよう心掛けましょう。
アクティブリスニングの実行方法・コツ
アクティブリスニングを提唱したカール・ロジャーズは、聴き手の心得として「無条件の肯定的関心」「自己一致」「共感的理解」の3つを挙げています。以下で、それぞれの内容を確認しておきましょう。
無条件の肯定を行う(無条件の肯定的関心)
アクティブリスニングにおいて大切な心得の一つは、相手の話を否定せず無条件に受け入れることです。聴き手は、善悪や好き嫌いなどの評価を排除し、どのような内容の話でも肯定的に捉え、相手の考えに関心をもって聴取します。
無条件の肯定により、話し手は安心し、多くのことを話してくれる可能性が高くなります。
聞き手自身の感情の一致(自己一致)
自己一致とは、感情と行動・態度が一致していることです。会話中に、相手が話す内容が分からないときは、分かっているような顔をせずに「分からない」と伝え、もう一度話してもらいます。
自己一致の態度は話し手に信頼感を与え、より深い話を引き出すことにつながります。
話し手の意見を共感とともに理解する(共感的理解)
アクティブリスニングでは、相手を心から理解することが重要です。聞き手は相手の立場に立ち、相手と同じように感じ、相手の視点で物事を見るよう心掛けます。
共感は会話の中で相手に伝わるため、安心して話しやすくなるでしょう。
アクティブリスニングを社内に浸透させるためには
アクティブリスニングの活用は、従業員の育成やコミュニケーションの円滑化などにつながり、人事管理に有効です。アクティブリスニングの手法を社内に浸透させるには、どのような方法があるのかを解説します。
研修を実施する
最近は、管理職などを対象としたアクティブリスニング研修が増えています。こうした研修では、講義の他に、参加者同士での実践トレーニングが組まれていることが多いため、一定の効果が期待できるでしょう。
アクティブリスニングを社内に取り入れたい場合は、このような外部研修の利用を検討してもよいかもしれません。
傾聴の文化を醸成する
アクティブリスニングの重要ポイントは「聴き方」にあります。話し手を尊重し、自分の意見を感情を交えず傾聴する姿勢が大切です。
聴き方に常に気を配ることで、外部研修に参加しなくても、アクティブリスニングの基本を身につけることは可能です。傾聴の習慣が社内に広がれば、社内コミュニケーションは質・量ともに豊かになるでしょう。
アクティブリスニングを社内に取り入れよう
アクティブリスニングとは「積極的傾聴」と訳されるコミュニケーション技法の一つです。アクティブリスニングにおいて、聴き手は相手の立場に立ち、必要に応じて相槌や短い質問を交えながら、話し手が自分で考え、結論に辿り着くようサポートします。
従来はカウンセリングの手法だったアクティブリスニングですが、現在はビジネスでも広く活用されています。従業員の育成や社内コミュニケーションの円滑化など、多くの効果が期待できるため、アクティブリスニングを社内に取り入れてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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