• 更新日 : 2023年10月27日

ラテラルシンキングとは?考え方や具体例、思考の鍛え方を解説

ラテラルシンキングとは?考え方や具体例、思考の鍛え方を解説

時代の変化とともに、新しい課題や問題は次々と出現するものです。これに対応するため、従来の思考法だけではなく、新しい視点やアイデアを生み出す必要があります。

そこで注目されるのが「ラテラルシンキング」です。これは、従来の枠組みを超えた独自の発想法を持つ思考方法であり、その効果や活用法、鍛える方法などについて本記事で詳しく解説します。

ラテラルシンキングとは?

ラテラルシンキングとは、「横断的思考」または「側面的思考」とも訳される、新しいアイデアやソリューションを生み出すための思考法です。従来の順序立てた論理的な思考(バーティカルシンキング)とは異なり、非線形なアプローチを採用し、既存のフレームや常識から外れた独自の視点やアイデアを生み出すことを目指します。これにより、新しい解決策や創造的なアイデアが浮かび上がることが期待されます。

ラテラルシンキングの概念は、マルタ生まれの心理学者であるエドワード・デボノ博士によって1960年代に提唱されました。彼は、人々が問題解決やアイデア創出において、新しい視点や独自のアプローチを持つことの重要性を強調し、そのための具体的な手法やツールを提案してきました。

ラテラルシンキングは、既存の思考のパターンやフレームワークを跳び越え、新しい視点から物事を見ることを目的としています。この思考法を用いることで、従来の方法では見落としていた可能性や解決策を見つけ出すことができるようになります。主な手法としては、「PMI(プラス、マイナス、興味)法」や「シックスハット思考法(6つの帽子思考法)」などがあり、これらを使用してさまざまな角度から問題を検討し、多角的な視点での議論やアイデア創出を促進します。

ラテラルシンキングを活用する目的や効果

ラテラルシンキングを活用する目的と、その効果について整理してみます。ここでは、5つの目的と効果を挙げてみましょう。

アイデアの幅が広がる

ラテラルシンキングを用いる主な目的の一つは、アイデアの多様性を増やすことです。伝統的な縦型の思考法では、ある一定のルールや論理に基づいて考えるため、思考の方向性が限定されがちです。ラテラルシンキングを取り入れることで、従来のフレームワークを超えて多角的な視点からアイデアを生成することが可能となり、その結果、アイデアの質や多様性が向上します。

枠にとらわれない自由な発想を生み出す

ラテラルシンキングは、常識や先入観から自由になり、制約を受けずに思考することを奨励します。これにより、既存の枠組みや制約にとらわれることなく、自由でユニークな発想を生み出すことができるようになります。特に既存の方法やアイデアが機能しない難解な問題に取り組む際に有効であり、独自の解を見つける鍵となります。

新しい価値を見出す

ラテラルシンキングを採用することで、見過ごしていた可能性や価値を発見することが期待されます。これは、物事を多様な角度から考察することで、新たな視点や洞察が得られるためです。従来の方法や思考では見えてこなかった市場のニーズや、新しいビジネスモデル、さらには製品やサービスの新しい価値を発掘することが可能となります。

新たな解決法を見出す

ラテラルシンキングは、問題解決のための新しいアプローチを探求する際に非常に有効です。従来の方法では解決が難しい課題に対しても、新しい視点やアプローチを取り入れることで、新たな解決策を見つけることができます。これは、既存の枠組みや考え方から逸脱し、多角的に問題を分析・検討することで実現されます。

課題に対する答えが増える

伝統的な思考法では一つの問題に対して一つの答えを求める傾向がありますが、ラテラルシンキングを活用することで、多様な答えや解決策が浮かび上がることが期待されます。これにより、問題や課題に対する多様な対応策を持つことができ、より柔軟かつ効果的な対応が可能となります。

ラテラルシンキングの考え方

ラテラルシンキングの柱となる3つの考え方を紹介していきましょう。

前提を疑う

ラテラルシンキングの根幹となる考え方の一つが「前提を疑う」ことです。多くの場合、私たちは特定の問題や状況に対して、無意識に持っている前提や仮定に基づいて考えを進めます。

しかし、これらの前提が必ずしも正しいとは限らず、むしろ時として思考を狭める要因となることもあります。ラテラルシンキングでは、まずこれらの前提を明確にし、それらが本当に正しいのか疑問を持つことから始めます。前提を確認し、調整することで、新しい視点や可能性が開かれ、独自のアイデアや解決策を生み出す土壌が整います。

見方を変える

「見方を変える」とは、問題や課題に対して異なる角度からのアプローチを試みることを意味します。従来の考え方や視点に固執するのではなく、意識的に異なる視点や角度から物事を捉えることで、新しい洞察やアイデアを得ることができます。

例えば、ある製品の機能を改善する場合、顧客の立場、製造業者の立場、環境の立場など、さまざまな視点から考察することで、新しい価値や改善点を発見することが期待されます。

組み合わせる

ラテラルシンキングにおける「組み合わせる」とは、異なる要素やアイデアを組み合わせて、新しいアイデアや解決策を生み出すことを指します。これは、異なる要素が相互に影響し合いながら新しい価値を生むことを期待するアプローチです。

例えば、異なる産業や分野の技術や手法を組み合わせることで、革新的な製品やサービスを生み出すことが可能となります。この考え方は、クロスオーバーやマッシュアップといった手法にも関連しており、多様な知識や視点を持つ者同士の協力やブレインストーミングによって、新たな価値の創出が期待されます。

ラテラルシンキングを活用した具体例

では、ラテラルシンキングの具体例としては、どのようなものがあるのでしょうか。実際の例をいくつか挙げてみます。

スウェーデンの逆向きの交通信号

スウェーデンは1967年に、左側通行から右側通行に変更しました。これにより、当初は多数の交通事故が予想されました。問題を解決するために、スウェーデン政府はラテラルシンキングを取り入れたアイデアを実行しました。それは、変更日の前日に、交通信号を逆向きにし、一時的にすべての交通を停止させるというものでした。

この斬新なアイデアにより、ドライバーたちは通行変更の必要性を強く意識し、結果として事故は大幅に減少しました。この例から、ラテラルシンキングが伝統的な解決法にとらわれない、新しいアプローチをもたらすことがわかります。

低コスト航空会社のビジネスモデル

ライアンエアーやエアアジアなどの低コスト航空会社(LCC)は、伝統的な航空会社のビジネスモデルをラテラルシンキングで再考し、独自の成功モデルを築きました。例えば、飛行機のシートを固定して傾けないことで、機内のスペースを有効に利用したり、無料の機内食を提供しないことでコストを削減しました。

これにより、顧客に安価な運賃を提供できるようになりました。このアプローチは、伝統的な方法や慣習にとらわれず、新しい視点から業界の常識を疑問視することの重要性を示しています。

Netflixの映画業界への挑戦

映画やテレビ番組の視聴方法を根本から変えたNetflixは、ラテラルシンキングの良い例といえます。もともとはDVDの郵送レンタルサービスとしてスタートしたNetflixは、インターネットの普及を背景に、ストリーミングサービスに移行しました。

さらに、ユーザーの視聴履歴や好みを分析し、オリジナルコンテンツを制作することで、伝統的なテレビ番組や映画産業に新しい風を吹き込みました。

ラテラルシンキングがビジネスに重要な理由

ラテラルシンキングの具体例を見てきましたが、ここでは、改めてビジネスに活かす重要性について深堀りしていきましょう。

新商品・新サービスの開発

ラテラルシンキングは、新しい商品やサービスのアイデアを生み出すのに極めて役立ちます。従来型の縦型思考だけでは、過去の成功体験や既存の市場のニーズに焦点を当てがちですが、ラテラルシンキングを取り入れることで、未来のニーズやまだ認識されていない消費者の欲求を捉えることができます。

例として、AppleのiPhoneは、単なる電話機から、音楽プレイヤーやインターネットブラウザ、カメラといった多機能を組み合わせた全く新しい製品として市場に登場し、大きな成功を収めました。これは、従来の枠組みにとらわれないラテラルな思考が背景にあるといえるでしょう。

問題や課題の解決

ビジネスの現場では、常にさまざまな問題や課題が浮上します。これらの課題を効果的に解決するためには、従来の方法や常識にとらわれず、新しい視点やアプローチで考えることが必要です。ラテラルシンキングは、問題の原因や背景を多角的に捉える手法として有効です。

例えば、ある企業が売上減少の問題に直面した際、従来の方法であれば広告やマーケティングの強化を考えがちですが、ラテラルシンキングを用いれば、新しい顧客層の開拓や、既存顧客との関係強化のための新しい取り組みを提案することが可能となります。

働き方や社内ルールの改革

近年、多くの企業が働き方改革を進めていますが、このような組織変革もラテラルシンキングが欠かせません。従来の働き方や社内ルールをただ受け入れるのではなく、それらの前提を疑問視し、より効率的で生産的な方法を模索する必要があります。

例として、ここ数年企業では従来の時間にとらわれないフレックスタイム制度を導入したり、リモートワークを推進したりすることで、従業員のワークライフバランスの向上と生産性の向上を同時に実現しています。このような取り組みは、ラテラルシンキングの思考法をビジネスに取り入れることで生まれたものといえるでしょう。

ラテラルシンキングの鍛え方

このようにビジネスにおいて重要なラテラルシンキングですが、その効果を最大限に活かすためには、どのような鍛え方があるのか紹介しましょう。

前提を疑う力を養う

ラテラルシンキングを身につける最初のステップとして、日常の中で当たり前と受け入れられている前提や常識を意識的に疑問視することが重要です。例えば、会議やディスカッションの際に、「なぜその方法がベストとされているのか?」「他に方法はないのか?」と自問自答することで、新しい視点やアイデアを生み出すきっかけとなります。

具体的には、毎日の生活の中で習慣的に行っていることや受け入れられている常識に、意識的に疑問を持つことから始めると良いでしょう。

発想法を習得する

ラテラルシンキングを効果的に活用するためには、さまざまな発想法を習得することが役立ちます。例として、「シックスハット思考法(6つの帽子思考法)」や「SCAMPER法」などのテクニックがあります。これらの発想法を利用することで、従来の思考の枠を超えた新しいアイデアや解決策を見つけることが可能となります。

定期的にワークショップやセミナーに参加することで、最新の発想法を学び、日常の業務や課題解決に応用することがおすすめです。

「ひらめき」を見つける

「ひらめき」は、新しいアイデアや解決策を生み出す重要な要素です。この「ひらめき」を促進するためには、日常のルーティンを変えてみる、異なる業界や分野の情報を積極的に取り入れるなど、新しい刺激を常に求めることが効果的です。

また、散歩をする、メディテーション(瞑想)を行うなど、リラックスした状態で心と頭を空にする時間を持つことで、意識的でない「ひらめき」が生まれやすくなります。定期的に自分の日常を振り返り、新しいことに挑戦することで、ラテラルシンキングを鍛える環境を整えることができるでしょう。

ラテラルシンキング以外の思考法

ラテラルシンキングについて解説してきましたが、これ以外にもビジネスで活用できる思考法はあります。2つの思考法の概要とラテラルシンキングとの違いを紹介します。

ロジカルシンキング(論理的思考)

ロジカルシンキングは、情報を組織的かつ論理的に整理し、合理的な結論を導き出す思考方法です。具体的には、事実と仮定、原因と結果、前提と結論をはっきりさせることで、誤解や混乱を避けるように努めます。この思考法は、特にビジネスの現場や学術研究など、明確な根拠をもとに意思決定を行う場面で役立ちます。

ラテラルシンキングは、新しい視点や発想を生み出すのに対し、ロジカルシンキングは既存の情報や知識を論理的に整理・分析することを重視します。それに対し、ラテラルシンキングは「何が可能か」を模索するのに対して、ロジカルシンキングは「何が正しいか」を追求するという違いがあります。

クリティカルシンキング(批判的思考)

クリティカルシンキングは、情報を客観的に分析・評価することで、真実に近づくための思考方法です。この思考法は、情報の信頼性や妥当性、バイアスの有無などを厳しく評価し、複雑な状況や問題を解決するのに役立ちます。具体的には、偏見や先入観を排除し、複数の情報源からの情報を整理・分析することで、より合理的な結論を導き出します。

ラテラルシンキングは、従来の枠組みや前提を疑問視し、新しいアイデアや視点を生み出すことを重視します。一方、クリティカルシンキングは、既存の情報や意見を厳しく評価し、その真実性や妥当性を追求することに重点を置きます。ラテラルシンキングは「どのように新しく考えるか」を模索するのに対し、クリティカルシンキングは「どの情報が正確か」を追求するという違いがあります。

ラテラルシンキングで新しい視点を持ち、未来の課題に対応しよう!

ラテラルシンキングは、新しい視点やアイデアを生み出すための非常に有効な思考法です。特にビジネスの現場での新商品開発や問題解決、さらには組織の改革などにおいて、その効果を最大限に発揮することができます。

しかし、この思考法を身につけるには、日常の中での継続的な訓練や意識的な努力が必要です。従来の思考の枠を超え、新しい可能性を追求することで、未来の課題にも柔軟に対応することができるでしょう。


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