• 更新日 : 2024年8月29日

過重労働とは?定義や長時間労働との違い、問題と対策方法を解説!

過重労働とは、長時間労働や度重なる休日出勤などにより、身体や精神に大きなダメージを与える働き方のことです。過重労働は、身体疾患や精神疾患のリスクが高く、過労死へつながるケースもあります。本記事では、過重労働の定義や長時間労働との違い、対策方法などを解説します。

過重労働とは?

過重労働とは、不規則な勤務、長時間の時間外労働、度重なる休日出勤などにより身体や精神に大きな負荷を与えるほどの働き方のことです。過重労働には、労働時間だけでなく、能力や経験よりも大きな責任を負わされることや、上司などから厳しい叱責を受けて身体や精神が疲弊している場合なども含まれます。

過重労働は、労働基準法などに法的に定義されているわけではありません。ただし、厚生労働省では、時間外・休日労働時間が「月100時間を超える場合」もしくは「2~6か月平均で月80時間を超える場合」は、健康障害のリスクが高いとしています。

参考:過重労働による健康障害を防ぐために|厚生労働省

過重労働と長時間労働の定義の違いは?

過重労働と似たような言葉に、長時間労働があります。過重労働と長時間労働は、長い時間労働するという意味では同じ部分もありますが、定義は異なります。

長時間労働とは、実際の労働時間が法定労働時間を大幅に超える状態のことです。ただし、長時間労働も、労働基準法などに法的に定義されているわけではありません。そのため、どのくらい働いたら長時間労働になるかは個人や会社ごとに差があり、明確な基準は決まってはいません。

法定労働時間である「1日8時間、1週間に40時間」を超えて労働した場合、長時間労働と呼ぶケースもあります。法定労働時間を超えて時間外労働をさせるためには、36協定という労使協定を締結しなければなりません。この36協定を締結する場合の時間外時間の上限は、1か月に45時間、1年に360時間です。そのため、1か月に45時間を超える時間外時間が、長時間労働のひとつの目安になるでしょう。

一方、過重労働とは、長時間の時間外労働や休日出勤、不規則な勤務や出張などにより、身体や精神にダメージを受けるような働き方のことです。過重労働と長時間労働の違いは、身体的、精神的に負荷を受けているかどうかです。もちろん、長時間労働により身体的、精神的に負荷を受けることも多いですが、長時間労働はあくまでも長時間働くことを意味していて、身体的、精神的に負荷を受けないケースも含まれます。

過重労働の基準は?

過重労働の基準は、法定に決められているわけではありません。ただし、さまざまな数値等を基準として、過重労働かどうかを判断しています。本項では、過労死ライン、時間外労働の上限規制、長時間労働者への面接指導が必要な基準における過重労働について解説します。

過労死ライン

過労死ラインとは、健康障害のリスクが高まるとされる時間外労働時間のことです。 労働災害認定において、過重労働と過労死との関係について用いられます。

脳・心臓疾患に係る労働災害認定基準において、週40時間を超える時間外・休日労働時間が月45時間を超えると業務と発症の関連性が強まります。また、発症前1か月に100時間、または発症前2か月~6か月間で1か月あたり80時間を超える時間外・休日労働が認められれば業務と発症の関連性が高いと判断することが可能です。

参考:過労死等防止に関する特設サイト|厚生労働省

時間外労働の上限規制

労働基準法では、使用者は、原則労働者に対して「1日8時間、1週間40時間」の法定労働時間を超えて労働させてはいけません。法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせるには、36協定の締結が必要です。ただし、36協定を締結したからといって、労働者を無条件に働かせることができるわけではなく、上限時間が決まっています。36協定に基づく時間外労働の上限時間は、原則1か月あたり45時間、1年に360時間です。

参考:労働基準法第32条、36条|e-Gov法令検索

長時間労働者への面接指導が必要な基準

長時間労働と脳・心臓疾患の発症に因果関係があるとされていることにより、労働安全衛生法第66条の8により医師による該当者への面接指導が義務付けられています。

この面接指導の該当者となる基準は、週40時間を超える労働が1か月当たり80時間を超えて、疲労の蓄積があり労働者が申出をした場合です(高度プロフェッショナル制度適用者は除く)。また、研究開発業務従事者と高度プロフェッショナル制度適用者は、月100時間を超える時間外・休日労働を行った場合は申出がなくても面接指導の対象です。

参考:

過重労働による健康障害を防ぐために|厚生労働省

労働安全衛生法第66条|e-Gov法令検索

日本人は働きすぎ?過重労働の現状は?

日本の長時間労働の労働者の割合は、まだまだ諸外国に比べて多い傾向です。厚生労働省の令和5年版過労死等防止対策白書によれば、週労働時間が49時間以上の日本人労働者の割合は15.3%(男性21.8%、女性7.2%)です。これは、韓国の17.2%に次ぐ数字で、アメリカの14.5%、イギリスの11.4%、フランスの8.8%、ドイツの5.3%よりも多くなっています。

参考:令和5年版 過労死等防止対策白書|厚生労働省

過重労働によって引き起こされる問題は?

長時間労働などの過重労働は、脳疾患、心臓疾患、精神疾患を発症する可能性を高めることになります。本項では、過重労働によって引き起こされる問題について解説します。

過労死のリスクが高まる

過労死等とは、過労死等防止対策推進法第2条にて以下のように定義されています。

  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患、心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患、心臓疾患
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害

このように、従業員の過重労働は、過労死につながる可能性があるため注意が必要です。

参考:過労死等防止対策推進法第2条|e-Gov法令検索

脳疾患、心臓疾患、精神疾患のリスクが高まる

過重労働による身体への過重な負荷は、心筋梗塞、 脳卒中、胃十二指腸などの身体疾患につながる可能性があります。また、過重労働は、不規則な勤務やプレッシャーから精神疾患のリスクが高まる可能性があるため注意が必要です。

過重労働を防ぐために企業ができる対策は?

過重労働は、従業員の脳・心臓疾患や精神疾患などのリスクを高めます。そのため、企業は過重労働を防ぐ対策を立てなければなりません。本頁では、過重労働を防ぐために企業ができる対策について解説します。

長時間労働の是正

過重労働の原因である長時間労働を是正するためには、従業員の労働時間の管理を徹底することが必要です。労働基準法に定められた労働時間の超過がないかを把握して、超過している場合は労働時間を是正しなければなりません。労働時間の把握のためには、勤怠管理システムの導入などを検討するのもよいでしょう。

評価制度の見直し

企業によっては長時間労働が美徳とされて、長時間労働をしている従業員の評価が高いケースがあります。過重労働によるリスクを考慮して、有給休暇の取得や業務の効率化による労働時間の短縮を評価基準に含めた評価制度への見直しを行うことで、過重労働を防ぐことができます。

管理職を含む全従業員の意識改革

長時間労働が当たり前という職場の風土を変えていくためには、管理職を含む全従業員の意識改革が必要です。経営陣などが率先して長時間労働に対する意識改革を行うことで、全従業員の長時間労働に対する意識も変わっていきます。

過重労働撲滅特別対策班(かとく)とは?

過重労働撲滅特別対策班(かとく)とは、労働基準監督官で構成されたブラック企業を取り締まる組織のことです。かとくは、2015年4月に悪質な長時間労働への対応と過重労働や過労死の防止を目的として東京労働局と大阪労働局に設置されました。

かとくには、立入検査や逮捕や書類送検の権限が与えられています。実際に強制捜査を実施して、労使協定を超えた長時間労働をさせている企業や役員を書類送検した例もあります。

過重労働は企業の業績にまで影響する可能性がある

過重労働は、従業員の脳疾患、心臓疾患、精神疾患のリスクがあるだけでなく、過労死につながる可能性もあります。過重労働により従業員のやる気やモチベーションが下がった結果、企業の業績に影響を与える可能性もあるでしょう。

従業員に過重労働をさせることは、企業にとっても従業員にとってもよいことは一つもありません。従業員の労働時間の管理の把握など、普段から過重労働にならない対策を講じることが大切です。


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