• 更新日 : 2023年8月29日

副業すると社会保険料が増える?社会保険加入時に注意すべきポイントを解説!

働き方改革が推進されるなか、多様な働き方の一つとして、副業・兼業のダブルワークを認める企業が増えています。自身の能力を一つの企業にとらわれず幅広く発揮したい、という想いから前向きに検討している方もいるのではないでしょうか。

今回は、副業・兼業した場合の社会保険料について、会社員と個人事業主の社会保険の違いなども含めて解説していきます。

副業すると社会保険料が増える?

副業あるいは兼業といっても、形態は一つではありません。現在の会社員としての勤務先以外に別の会社でパートなどの非正規社員として勤務するケースと、事業主として起業するケースがあります。社会保険料は、どちらの形態で副業を行うかによって違ってきます。

まず、パートなどの非正規社員として副業をする場合、労働時間や賃金の額によっては副業先の企業で社会保険の加入要件を満たしてしまうことがあります。

会社員の社会保険にはいくつもの種類がありますが、被保険者となれば当然、本業の勤務先と同様に社会保険料を負担しなければなりません。もちろん、労働時間や賃金額などが被保険者として適用される要件を満たしていなければ、被保険者とならず、社会保険料は発生しません。

一方、個人事業主として起業する場合は、労働者ではないため、新たに社会保険の適用もありません。

そもそも会社員と個人事業主は加入する保険が違う!

会社員と個人事業主の社会保険について詳しくみていきましょう。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

会社員・サラリーマンが加入する社会保険は?

副業でも会社員であれば、加入するのは現在の勤務先での社会保険と同じです。つまり、健康保険、介護保険、厚生年金保険雇用保険、労災保険の5つということになります。

健康保険

健康保険は、公的医療保険の代表格です。業務・通勤外での傷病や出産の際に保険給付されます。保険事業を運営する保険者は、民間企業の場合、基本的に大手企業では健康保険組合(組合健保)、それ以外は全国健康保険協会(協会けんぽ)です。

原則として医療機関を受診した場合の自己負担は3割となっています。保険料は事業主と折半で負担します。

介護保険

介護が必要になった場合に、所定の介護サービスを受けることができる社会保険です。被保険者として加入義務があるのは、40歳以上であり、40~64歳は第2号保険者、65歳以上は第1号被保険者となります。保険料は、事業主と折半であり、健康保険料と一緒に納付します。

厚生年金保険

雇用される労働者の公的年金の2階部分になるのが厚生年金保険です。1階部分は国民年金の基礎年金になります。いずれも老齢、障害、死亡の際に支給されます。厚生年金保険料は、事業主と折半で負担しますが、国民年金保険料は直接負担しません。

雇用保険

失業した場合のほか、自ら教育訓練を受けた場合、育児介護休業する場合などに所定の保険給付を受けることができます。保険給付事業以外にサービス業として二事業があります。保険料は、保険給付事業分は事業主と折半ですが、二事業の分は事業主負担となっています。

労災保険

労災保険は、業務上・通勤途上の際の傷病、障害、死亡に対して保険給付するものです。法律的には、労働基準法に基づき、労災事故が発生した場合、労働者を雇用する事業主に無過失の補償義務があります。

これを担保するのが労災保険であり、事業主は労災保険に加入することで労災事故の際の補償義務を免れ、労災保険から被災労働者等に保険給付される仕組みなっています。こうしたことから、労災保険料は全額、事業主負担となります。

個人事業主・フリーランスが加入する保険は?

次に、個人事業主・フリーランスが加入する社会保険についてみていきます。

国民健康保険

公的医療保険として居住する市町村・都道府県が保険者として運営しています。個人事業主は労働者ではないため、傷病や出産による休業の際の所得保障にあたる給付はありませんが、それ以外は健康保険の保険給付とほぼ同じです。保険料は、自治体によって異なります。

介護保険

健康保険と同様、被保険者は40歳以上であり、国民健康保険料と一括して納付します。

国民年金

公的年金制度の1階部分にあたり、自営業者だけでなく、すべての国民の基礎年金を担っています。自営業者については、基礎年金のほか、付加年金などの独自給付があります。保険料は、給与額によって異なる厚生年金保険料と違い、定額制となっています。

社会保険の加入条件は?

上記の社会保険のうち、労災保険だけは被保険者という概念自体がなく、雇用される労働者であればすべて適用されます。他の社会保険は所定の加入要件があります。

健康保険・厚生年金保険については、すべての法人事業所(事業主のみの場合を含む)と常時5人以上の個人事業所(農林水産業やサービス業等の業種を除く)は、厚生年金保険・健康保険両制度に加入する義務があります。そして、労働者を厚生年金保険・健康保険に加入する手続きをしなければなりません。

パートやアルバイトであっても、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上であれば被保険者となります。

また、正社員の4分の3未満であっても、以下の5つの要件をすべて満たす場合は、被保険者になります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 勤務期間が1年以上見込まれること
    ※令和4年10月から「勤務期間が2カ月を超えて見込まれること」に改正されました
  3. 月額賃金が8.8万円以上
  4. 学生以外
  5. 従業員501人以上の企業に勤務していること
    ※令和4年10月から「従業員101人以上の企業に勤務していること」に改正されました

雇用保険については、正社員に限らず、パート・アルバイトなども雇用形態にかかわらず、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある場合は、原則として被保険者となります。

なお、雇用保険は二重加入できないため、加入要件に該当しても手続きは不要です。

副業で社会保険料が増えるケース・増えないケースとは?

副業で社会保険料が増えるケース、あるいは増えないケースについて考えてみましょう。

ダブルワーク(アルバイト・パートなど)の場合

アルバイトやパートなどの非正規としてダブルワークしている場合、上記の社会保険の加入要件に該当すると被保険者となり、保険料納付義務が生じます。

現在の勤務先の社会保険料だけでなく、新たに社会保険料を納めなければなりません。したがって、少なくとも1週間の所定労働時間を20時間未満にすれば、社会保険の被保険者とはならず、新たに社会保険料は発生しません。

事業所得や雑所得がある場合

あくまで個人でFXや株などの投資をしている人は少なくないでしょう。この場合、事業所得雑所得が生じ、確定申告は必要になるものの、社会保険に加入するという問題は発生しません。

副業で会社を設立している場合

副業でも個人事業あるいは会社などの法人として起業するケースもあります。この場合、原則として本人が社会保険に加入することはありません。

しかし、労働者を雇用すると話は違ってきます。自分自身が事業主として社会保険に加入させる義務が生じます。つまり、社会保険料を納付しなければなりません。

また、法人で起業した場合は、労働者を雇用しなくても法人の代表者として報酬を受けるときは、本業で勤務している会社から支給されている報酬との合計額を按分して社会保険料額が決まり、納付義務が生じます。

社会保険に二重加入する場合は自分で手続きが必要!

会社に就職または転職した場合、社会保険の加入手続きはすべて勤務先で行います。副業によって健康保険・厚生年金保険に二重加入することになった場合も同様なのでしょうか。

社会保険の加入方法は?

実は、本人がまったく何もしなくてよいというわけにはいきません。すでに加入済みの現在の勤務先では手続きは不要ですが、新たに社会保険に加入することになった会社では通常の手続きが必要になります。勤務先となった会社が「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出します。

次に被保険者となった本人は、二重加入することになる会社のうち、一方を「主たる事業所」として選択し、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を事実発生から10日以内に日本年金機構に提出する必要があります。

届出によって選択した事業所の所在地を管轄する事務センター(または健康保険組合)が被保険者に関する事務を行うこととなります。

なお、保険料は、決定した標準報酬月額による保険料額を、それぞれの会社で受ける報酬月額に基づき、按分して決定されます。

社会保険に加入しないとどうなる?

副業によって二重加入になったにもかかわらず、加入手続きをせずに放置した場合、どうなるのでしょうか。

年金事務所では、例年、総合調査を実施しています。調査対象となった事業所は、指定された日時に労働者名簿、雇用契約書、源泉所得税領収書、個人別所得税源泉徴収簿(直近2年分)、賃金台帳、賃金支給明細書、給与振込明細書(直近2年分)、出勤簿またはタイムカード(直近2年分)、就業規則、被保険者資格取得届などの大量の帳簿を年金事務所に持参し、被保険者資格の範囲と報酬に関する調査などの調査を受けることになります。

調査対象となる頻度は不定期ですが、行政の方針によって2~3年に1度となることもあります。

特に行政が力を入れているのが、社会保険の加入漏れです。発覚した場合、最大、過去2年間に遡って社会保険に加入することが必要になります。例えば、月給が20万円であった場合、社会保険料は毎月約5万円であり、2年間の遡及分は約140万円になります。

本人負担分でも70万円にもなり、一度に支払う金額としては高額になることを覚悟しなければなりません。

副業で社会保険料が二重加入になる場合もあるので注意しよう

かつては就業規則で禁止するのが当たり前だった副業ですが、働き改革によって政府や経済団体が普及を推進する時代になりました。しかし、安易に副業を始めると社会保険料が増えてしまうことがあります。どのような場合に二重加入になるのか、きちんと把握した上で副業を始めることが大切です。

よくある質問

副業すると社会保険料が増える?

社会保険の二重加入にならない場合は増えません。詳しくはこちらをご覧ください。

社会保険に二重加入する場合の手続きは?

主たる事業所を選択し、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構に提出します。詳しくはこちらをご覧ください。


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