• 更新日 : 2023年10月6日

45年定年制とは?発言の真意は?人事労務の観点から考えた時

45年定年制とは?発言の真意は?人事労務の観点から考えた時

45年定年制は、45歳をキャリアの転換点として定年後に他の企業に転職したり起業したりと様々な働き方を選ぶための考え方のことで、早期退職を求めるものではありません。この概念が提唱された際、世間から反対されたことに加え、国は少子化対策として定年を引き上げる政策をとっているため法的にも不可能です。しかしその制度を考えた意図には共感できるのではないでしょうか。

45年定年制とは

45年定年制とは、45歳を自らのキャリアを振り返る転換点とする考え方です。45歳での定年は法的に認められていないため実現は不可能ですが、この概念自体がそもそも45歳で退職させるという意味のものではありません。

20〜30代の人たちに今後の人生を自分がどう生きていくかを考えさせ、勉強を促すという意図で提言されました。定年に至るまで1つの企業で働き続ける従来の人生観を見直し、起業や転職などの様々な選択肢を選べるようにするために、スキルアップし続ける主体的な人間になることを促す仕組みが45年定年制です。

しかし、法改正などでいつかこの制度が実現できるようになった折には、業務への社員の意欲低下を防がなければならないという課題もあります。

従来の定年まで1つの会社に勤め続ける形態であれば「自分が勤めている間は会社が存続できるように業績を良くしよう、しっかり働いて会社に貢献しよう」という意識が生まれます。しかし、45歳が定年になってしまうと「どうせいずれ他の会社に勤めるのだから、この会社が存続できなくなっても構わない。そうなれば転職する時期を45歳から多少早めるだけだ。」という意識が醸成に繋がりかねません。結果として、会社に対する社員の忠誠心が減り、労働意欲の低下を招いてしまうでしょう。社員のモチベーションが下がった状態が続けば経営不振に繋がるかもしれません。

そのため、もしこの制度を実現させるなら、社員の会社に対する忠誠心と労働意欲を維持しながら、勉強を促し主体性を身に付けさせる環境を作ることが求められるでしょう。

サントリーホールディングス 新浪社長の発言

45年定年制はサントリーホールディングスの新浪社長が唱える新たなビジネスモデルです。この定年は法律上の定年ではなく、人生100年時代に向けたキャリアの転換点としての定年を指します。自らのキャリアを振り返るタイミングに45歳を挙げ、定年を45歳にすることで自分の今後の人生を考えさせて20代から30代の人たちの勉強を促すことができるという意図で語りました。

世間では誤解されている

日本では高年齢者雇用安定法で60歳未満の定年を禁止しているため、そもそも45歳で定年にするのは違法にあたります。そして、この45という数字はあくまでキャリアの転換点として定める数字であって、45年定年制は45歳で退職させることではありません。しかし「定年」という単語はインパクトが大きいため、「45年定年制」というキーワードを初めて聞いた多くの人がリストラを連想してしまい、誤解が生じたのです。その結果この発言は中高年のリストラを助長するものだと捉えられて大きく批判されました。新浪社長自身も「定年という言葉はまずかった」と発言の翌日に釈明しています。

また「50代では少々遅くなってしまう」「役職がつきやすく、社会経験をある程度積んだ45歳ごろが適している」との考えから45歳を節目にしたようですが、具体的な年齢を挙げているため、既に45歳以上の方の中には年齢による差別に感じて不快に思う方もいたようです。

参考:高年齢者雇用安定法改正の概要|厚生労働省

人事労務の法律から見たときの45年定年制

新浪社長の提言した45年定年制度とは裏腹に、日本政府は定年を引き上げる政策をとり続けています。また定年を迎えても、そのまま働き続けることを希望する人がいた場合は、雇用を継続する義務があるのです。そのため現時点では45年定年制を実現させるのは法律的に見ても困難であるといえます。

45年定年制は制度として不可能

現在、高年齢者雇用安定法により、定年を定める場合は60歳以上としなければならないことや、定年を65歳未満に定めている場合は定年を65歳に引き上げるか、定年制を廃止するか、65歳までの継続雇用制度を導入して希望者全員を再雇用しなければならないことが定められています。そのため法律から見ても45年定年制の実現は不可能です。

さらに令和3年4月1日には高年齢者雇用安定法が改正され、これまで義務として定められていた65歳までの雇用確保に加えて、65歳から70歳までの高年齢者の就業確保措置をする努力義務が新設されました。定年を70歳まで引き上げたり、定年制を廃止したり、70歳までの継続雇用制度を導入したりすることが求められます。

努力義務であるため強制力があったり罰則があったりするわけではありませんが、いずれ義務になることも考えられるでしょう。現在義務とされている定年は60歳以上という基準も、元々は1985年に努力義務とされたのがきっかけでした。1994年に60歳での定年の義務化を規定し、1998年に施行されて今の状態になったのです。そのため再び定年を引き上げ、65歳以上の定年と70歳までの就業確保措置が義務化される日がくるかもしれません。

これらのことから、国は定年の上限をあげる方向で動いていることがわかります。高年齢者雇用安定法の改正も、少子高齢化が急速に進んで人口が減っていくなかで、労働意欲のある高年齢者に能力を十分に発揮して活躍してもらうことで、経済社会の活力を維持することが目的です。高年齢者の労働力にすら頼りたい状況で、定年制度を下げる政策をとる可能性は低いでしょう。45年定年制の実現には法改正が必須となりますが、当面の間は定年を引き下げることはないと考えられるため、制度の実現は不可能です。

高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~|厚生労働省

「定年」ではなく正しくは「一つの区切り」

新浪社長自身も「定年という言葉はまずかった」と言っているように、誤解を招いて世間から批判されてしまったのは「定年」というキーワードのインパクトの大きさも関係しているかもしれません。45年定年制は早期退職を求める制度ではなくキャリアの転換点を指しており、退職後に別の企業へ転職したり起業したりと新たな道へ進むことを前提とすることから考えると、「定年」ではなく「一つの区切り」という表現が適しているでしょう。

あえて定年には早すぎる年齢を挙げて1つの節目を作ることで、その後の自分の人生をどのように歩むか主体的に考えることができるようになります。45歳までに自分が何をするべきか、どのようなスキルを身に付けておくべきなのかが明確になり、将来のために早い段階から動くことができるようになるのです。20代から30代が意欲的に活動し成長することは企業にとってプラスになるだけでなく、日本の経済にも良い影響を与えるでしょう。

45年定年制の発言から考えるキャリアのあり方

45年定年制は法律的に不可能ですが、20代・30代の若い人たちに勉強をさせてスキルアップを促し、会社に頼らない主体的な生き方をさせたいという新浪社長の意図には同意する方もいるのではないでしょうか。

20歳・30歳のうちにスキルを詰んでおくことは重要

1つの企業に定年まで勤めるとなると、どうしてもスキルアップへの意欲が失せてしまいがちです。45年定年制は個人が自己投資を先延ばしにしがちな現状を打破したいという意図もあります。45歳という区切りを設けることで、スキルアップの機会を増やすことを目的としているのです。制度の実現は不可能ですが、その考え方を参考にして20〜30代の早い段階で自分の将来のために資格を取得したりスキルを身に付けたりと努力しておけば、40代後半以降に不自由することなく過ごせるでしょう。

定年制の年数は将来的に変わる可能性もある

以前は55歳での定年が一般でしたが、努力義務が義務に切り替わり、定年が引き上げられるなど定年の年齢は変化しています。今は定年を引き上げる方向で国が動いているものの、いずれ定年が引き下げられる日が来るかもしれません。いざ引き下げられるというときに何の対策もしていないと、定年後の新たな人生を歩むときに苦労するでしょう。資格を取得したりスキルアップしておいて損はありません。どんな状況の変化にも適応できるよう、早めに自己投資をすることが大切です。

45年定年制はキャリアの転換点

45年定年制の実現は不可能なものの、自分の将来を安定させるために勉強してスキルアップし、会社に頼らずとも生きていけるようになることは大切です。45年定年制の考え方を参考に、将来を見据えて意欲的に自己投資をしましょう。


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