• 作成日 : 2022年10月28日

企画業務型裁量労働制とは?導入要件や手続きの流れ、残業代についても解説!

企画業務型裁量労働制とは?導入要件や手続きの流れ、残業代についても解説!

企画業務型裁量労働制は、労働者が自分の裁量で仕事のやり方を決めることができる、裁量労働時間制の1つです。専門性の高い職種を対象に、労使委員会の設置・決議・労働基準監督署への届出を要件が要件として導入することはできます。実際に働いた時間にかかわらず一定時間を働いたとみなされ、管理の負担軽減や人件費削減といったメリットがあります。

企画業務型裁量労働制とは?

企画業務型裁量労働制とは、一定の職種の労働者を対象とした働き方の1つです。労働者が事業者の指示・監督を受けずに仕事ができる働き方で、労働時間などについて自分の裁量で決めることができます。

専門性の非常に高い職種のみが対象になり、対象となる業務は労働基準法第38条の4第1項第1号において「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」と規定されています。

該当しない業務に従事する労働者に、企画業務型裁量労働制を導入することはできません。また労働基準法第38条の4第1項第2号では、企画業務型裁量労働制を適用できる労働者の範囲を「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」としています。

この知識・経験についての定めにより、企画業務型裁量労働制の対象者になることができるのは、おおむね3年以上の職務経験者に限られます。

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企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制の違いは?

企画業務型裁量労働制は、仕事のやり方を労働者が自分の裁量で決めることができ、労働時間についても労働基準法の規定の適用を受けない裁量労働時間制の1つです。裁量労働時間制には企画業務型裁量労働制の他に、専門業務型裁量労働制があります。企画業務型裁量労働制は専門性の高い「職種」を対象にしているのに対し、専門業務型裁量労働制は専門性の高い「業種」を対象にしています。

【専門業務型裁量労働制が適用される業種】

  1. 新商品もしくは新技術の新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析または設計の業務
  3. 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または有線ラジオ放送もしくは有線テレビ放送の放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制の違いについて詳しくは、次の記事で紹介しています。参考にしてください。

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企画業務型裁量労働制の導入メリットは?

企画業務型裁量労働制には、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか?導入によって期待できる効果には、次のようなものがあります。

管理の負担が軽減する

企画業務型裁量労働制では、対象労働者の労働時間は、実際に働いた時間にかかわらず一定時間を働いたとみなされます。そのため日々の始業時間や終業時間を記録し、労働時間を計算するという作業が不要になります。時間外労働に対する割増賃金支払いや長時間労働の防止・是正のために管理する負担も軽減できます。

人件費が削減できる

実際の働いた時間ではなく、一定時間が労働時間とされる企画業務型裁量労働制では、時間外労働は発生しません。そのため、時間外労働に対する割増賃金の負担は生じず、人件費が削減できます。

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企画業務型裁量労働制の導入要件は?

企画業務型裁量労働制の導入には、要件を満たしていることが必要です。要件を満たしていない場合は導入が認められません。要件は事業場、業務の内容についてそれぞれ定められています。

事業場

企画業務型裁量労働制を導入できる事業場は、次のいずれかに該当する事業場です。

  1. 本社・本店である事業場
  2. 1.のほか、次のいずれかである事業場
    • 事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行なわれる事業場
    • 本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場にかかわる事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等である事業場

業務の内容

企画業務型裁量労働制を導入できる業務は、次の要件の全てを満たす業務です。

  1. 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること
  2. 企画・立案・調査・分析の業務であること
  3. 業務遂行の方法を大幅に労働者に委ねる必要があると判断される性質であること
  4. 相互に関連し合う作業方法について広範な裁量が労働者に認められていること
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企画業務型裁量労働制の導入手続きは?

企画業務型裁量労働制は、一定の手続きを踏むことで導入が認められます。定められている手続きを行わなければ、導入することはできません。

労使委員会を設置する

労使委員会は、賃金や労働時間、その他の労働条件に関する事項についての調査・審議を行い、事業主に意見を述べるために設けます。構成員は、使用者と労働者の代表者です。企画業務型裁量労働制を導入するにあたっては対象となる事業場において、労使委員会を設置する必要があります。

労使委員会で決議する

次の事項を労使委員会で決議します。決議には委員会に出席している委員の4/5以上の賛成が必要です。

  1. 対象となる業務の具体的な範囲
  2. 対象労働者の具体的な範囲
  3. 労働したものとみなす時間
  4. 使用者が対象となる労働者の勤務状況に応じて実施する、健康・福祉を確保するための具体的な内容
  5. 使用者が対象となる労働者から苦情を処理するため実施する措置の具体的内容
  6. 適用について労働者本人の同意を得なければならないことと不同意の労働者に対し不利益取扱いをしてはならないこと
  7. 決議の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
  8. 企画業務型裁量労働制の実施状況に係る労働者ごとの記録を保存すること

労働基準監督署に届出をする

労使委員会での決議内容を労働基準監督署に届け出ます。届出を行わなければ、企画業務型裁量労働制を導入することはできません。労働基準監督署への届出は様式第13号の2を使用して行います。様式第13号の2は厚生労働省HPからダウンロードできます。

参考:労働基準法関係主要様式|主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省

対象労働者の同意を得る

企画業務型裁量労働制を適用するにあたっては、対象労働者から同意を得なければなりません。就業規則による包括的な同意ではなく、一人ひとりからの同意であることが必要です。同意が得られない労働者に対して企画業務型裁量労働制を適用することはできません。同意は労使委員会で決議された方法(書面など)で得る必要があります。同意の強要は認められません。

また、企画業務型裁量労働制が自身に適用されることに同意しなかった労働者に対して解雇などの不利益な取扱いをすることは許されません。

企画業務型裁量労働制の残業代はどうなる?

企画業務型裁量労働制を導入すると対象となる労働者の労働時間は、みなし労働時間となります。実際の労働時間ではなく一定時間を働いたとし、労使委員会で決議された時間が企画業務型裁量労働制対象労働者の労働時間として扱われます。労働時間を把握する必要はなくなりますが、時間外労働の割増賃金に関しては支払いが必要になる場合があります。

時間外労働の取り扱い

企画業務型裁量労働制は労働時間を実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めておいた時間とされます。労使委員会で「労働時間は1日8時間とみなす」と決議することによって、実際に働いた時間とは関係なく1日8時間働いたとみなされます。このため時間外労働は生じず、会社に時間外労働に対する割増賃金の負担義務はありません。

深夜労働・休日労働の取り扱い

企画業務型裁量労働制は、みなし労働時間であるため時間外労働に対する割増賃金負担はありませんが、深夜労働および休日労働の割増賃金は支払いが必要です。労働者を深夜や休日に働かせた場合に通常の賃金に上乗せして支払わなければならないのが、深夜労働・休日労働の割増賃金です。

企画業務型裁量労働制の対象労働者でも、深夜労働・休日労働の割増賃金は適用されるため、夜10時から翌朝5時までの労働に対しては25%。休日の労働に対しては35%を通常の賃金に上乗せして支払わなければなりません。

企画業務型裁量労働制の導入により管理負担の軽減・人件費削減を図ろう

企画業務型裁量労働制は、労働者が自分の裁量で仕事のやり方を決めることができる制度です。専門業務型裁量労働制と同じ裁量労働時間制の1つで、労働時間が実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めておいた時間とされます。

実労働時間にかかわらず一定時間を働いたとみなされ、時間外労働に対する割増賃金を支払う必要がありません。ただし、深夜労働に対する割増賃金と休日労働に対する割増賃金は支払う必要があります。

企画業務型裁量労働制を導入するためには労使委員会設置・必要事項の決議・労働基準監督署への届出といった手続きを行わなければなりません。

企画業務型裁量労働制を導入すると労働者の労働時間を細かくチェックして長時間労働の防止や是正を図る必要がなくなります。また時間外労働に対する割増賃金は支払い不要であるため、計算したり残業代を支払ったりする負担もなくすことができます。管理負担の軽減や人件費削減につながるので、企画業務型裁量労働制の導入を検討してみましょう。

よくある質問

企画業務型裁量労働制とは?

労働者が自分の裁量で仕事のやり方を決めることができる裁量労働時間制の1つで、対象事業場で、対象業務を遂行する労働者にのみ適用することができます。詳しくはこちらをご覧ください。

企画業務型裁量労働制の導入手続きは?

労使委員会を設置し、必要な事項を決議した上で、決議内容を労働基準監督署に届け出ることが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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