• 更新日 : 2025年2月3日

従業員が異動(転勤)したら雇用保険の変更はどう行う?手続き方法や電子申請について解説

従業員が異動(転勤)した場合、事業主は14日以内に「雇用保険被保険者転勤届」を管轄のハローワークに提出する必要があります。この手続きは、事業所の所在地が変更になることで、雇用保険の適用事業所が変わるためです。

本記事では、従業員の転勤時の雇用保険手続きについて、電子申請の方法も含めて詳しく解説します。

従業員を異動させたら、雇用保険の手続きは誰が行う?

従業員が転勤する場合、雇用保険の手続きは事業主が行わなければなりません。これは雇用保険法および同法施行規則に定められた法的義務であり、手続きの遅延や漏れは事業主の責任となります。

従業員が転勤した場合、事業主が雇用保険の手続きを行う

事業主は、従業員が転勤する際には転勤日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者転勤届」を転勤後の事業所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出する必要があります。

詳しくは後述します。

転勤と出張・駐在の違い

転勤と出張・駐在は、雇用保険の手続きにおいて明確に区別されます。転勤は、同一事業主の一つの事業所から他の事業所への勤務場所の変更を指し、以下の要素を総合的に判断して決定されます。

  • 辞令の交付の有無
  • 直接の指揮監督者の変更
  • 給与支給場所の変更

一方、出張や駐在は一時的な勤務場所の変更であり、通常2~3ヶ月程度の短期間の変更の場合は転勤とは認められません。この場合、従来の事業所に勤務しているものとして取り扱われ、雇用保険の異動手続きは不要です。

従業員が転勤した場合の雇用保険の変更手続き

従業員の転勤が発生した際、事業主は適切な書類を準備し、定められた期限内に手続きを行う必要があります。以下で、手続きの流れについて解説します。

届出用紙名

従業員の転勤に伴う雇用保険の変更手続きには、雇用保険被保険者転勤届(則様式第10号)を使用します。この届出用紙は、ハローワークのインターネットサービスからダウンロードできます。

なお、書面の印刷にあたっては等倍で印刷すること、印刷用紙は白でなければならないなど細かい規定があるため、よく確認しておきましょう。

提出期限

雇用保険被保険者転勤届は、転勤の事実があった日の翌日から起算して10日以内に提出しなければなりません。

時間的余裕がそれほどあるわけではないため、期限を意識して早めの手続きを心がけましょう。

提出先

雇用保険被保険者転勤届は、転勤先の事業書を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。

提出方法は窓口への直接提出か電子申請システムを利用したオンライン提出のいずれかを選択できます。なお、資本金1億円を超える法人については、電子申請が義務化されています。

転勤届以外に必要な可能性がある書類

従業員の転勤に伴う雇用保険の変更手続きの際には、雇用保険被保険者転勤届のほかにも以下の添付書類が必要になるケースがあります。

  • 雇用保険適用事業所台帳
  • 転勤の事実や転勤日が確認できる書類(異動辞令など)
  • 企業の組織図
  • 既に交付されている雇用保険被保険者証
  • 賃金台帳
  • 転勤前事業所に交付されている被保険者資格喪失届・氏名変更届

雇用保険被保険者転勤届は電子申請できる?

雇用保険被保険者転勤届は、電子申請が可能です。電子申請を利用すれば、365日24時間いつでも申請でき、ハローワークの窓口に出向く必要がありません。

雇用保険被保険者転勤届の電子申請には、以下の方法があります。

  • e-Gov電子申請システムを利用する方法
  • 労務会計ソフトウェア(API連携方式)を利用する方法

電子申請を行う際は、転勤後の事業所の電子署名を行わなければなりません。なお、通常の書面申請で必要となる労働者名簿などの添付書類は、電子申請の場合は原則不要です。

電子申請が義務化される特定の法人

2020年4月以降、以下の法人については雇用保険被保険者転勤届の電子申請が義務化されています。

  • 資本金または出資金が1億円を超える法人
  • 保険業法で規定された相互会社
  • 投資信託及び投資法人に関する法律で規定された投資法人
  • 資産の流動化に関する法律で規定された特定目的会社

ただし、電気通信回線の故障や災害などにより電子申請が困難と認められる場合は、従来の書面による申請も認められています。

従業員が在籍出向する場合、雇用保険は出向元・出向先のどちらで適用する?

在籍出向の場合、雇用保険の適用は出向元と出向先のどちらか一方のみとなります。以下で、具体的な適用基準と手続きについて解説します。

雇用保険を適用するのは、主に給与を支払う側

在籍出向の場合、出向労働者は出向元と出向先の両方と雇用関係を持ちますが、雇用保険は生計を維持するために必要な主たる賃金を支払う企業で適用されます。例を挙げると出向元が給与の3分の2を負担する場合、より多くの給与を支払う出向元が主たる事業主となり、出向元の被保険者として取り扱われます。

なお、例のように出向元と出向先で給与を分担して支払う場合でも、雇用保険は給与負担の多い方の企業でのみ適用になる点に注意が必要です。

出向先で雇用保険を適用する場合の手続きの流れ

出向先で雇用保険を適用することになった場合は、以下の手続きが必要です。

  1. 出向元での資格喪失手続き:出向元の事業所で雇用保険被保険者資格喪失届を提出
  2. 出向先での資格取得手続き:出向先の事業所で雇用保険被保険者資格取得届を提出

これらの手続きは、出向開始日から10日以内に、それぞれの事業所を管轄するハローワークで行います。手続き完了後、出向先の事業所から出向者本人に雇用保険被保険者証が交付される流れです。

従業員が転勤した場合の社会保険の変更手続き

従業員が転勤する場合の社会保険手続きは、被保険者のマイナンバーと基礎年金番号の紐づけ状況によって対応が異なります。

それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

被保険者のマイナンバーと基礎年金番号が紐づいている場合

マイナンバーと基礎年金番号が紐づいている被保険者については、住所変更の届出は原則として必要ありません。紐づけが行われている場合は日本年金機構が被保険者のマイナンバー情報から住所変更を自動的に把握しているため、特段の手続きは不要です。

事業主は、従業員のマイナンバーと基礎年金番号の紐づけ状況を「ねんきんネット」や管轄の年金事務所で確認できます。

被保険者のマイナンバーと基礎年金番号が紐づいていない場合

マイナンバーと基礎年金番号が紐づいていない被保険者の転勤時には、事業主は「健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届」を提出する必要があります。この届出は、被保険者から転居の申出があった日から速やかに、管轄の年金事務所に持参、または事務センターに郵送します。

また、以下のケースでも住所変更手続きが必要です。

  • 健康保険のみに加入している被保険者
  • 海外居住者や短期在留外国人
  • 住民票の住所と実際の居住地が異なる場合

雇用保険の変更手続きのポイントを押さえておこう

従業員の転勤に伴う雇用保険の手続きは、事業者側に責任があります。福利厚生の一環であり従業員の権利のひとつでもあるため、漏れや遅延なく確実に手続きを行うことが求められます。

在籍出向時など、通常とは扱いが異なるケースについても把握しておきましょう。また、企業によっては電子申請が必須の場合もあります。適切な手続きができるよう、常に厚生労働省などの最新情報も確認しておくことをおすすめします。


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