• 更新日 : 2022年9月1日

労働保険料の仕訳の仕方

労働保険料の仕訳の仕方

事業主には負担が義務付けられているものがあります。例を挙げると、法人税や事業税などです。
同じく負担義務のあるものの中に労働保険料があります。労働保険料は、法律で定められている福利厚生の費用を支払った場合に使用する法定福利費という科目に分類されます。
では、労働保険料の会計処理がどのようなものなのか見ていきます。

労働保険料会計の基礎知識

労働保険料の負担者は、事業主と保険対象の労働者(以下、被保険者)です。労働保険料は労災保険と雇用保険に分かれており、それぞれ負担率が異なります。

  1. 労災保険:100%事業主負担
  2. 雇用保険:事業主と被保険者双方がそれぞれの割合に応じて負担

なお、雇用保険の被保険者負担分は、毎月の給与から天引きされ、事業主がまとめて納付します。

労働保険料とは

労働保険料は、法定福利費として仕訳されます。費用としての計上時期は「発生時」ですが、必ずしも「支払ったとき」とは限りません。

労働保険料には、賃金見込み額をもとに算出する「概算保険料」と実際の支払賃金を計算して精算する「確定保険料」の2種類があります。

当然、概算保険料の支払い時と確定時の差額の精算に関しては、それぞれに仕訳が必要です。また、雇用保険の「被保険者負担分」は毎月、給与から天引きされますが、事業主が納付する時期は毎年6月1日から7月10日です。そのため、毎月の天引き額は「預り金」、事業主負担額は「法定福利費」として計上することになります。

重要な勘定科目

労働保険料の仕訳を理解する上で最低必要な3つの科目は以下のとおりです。

法定福利費
法律で定められた社会保険料の科目です。労働保険の他にも健康保険料、厚生年金保険料などがあります。

預り金
労働保険料のうち被保険者が負担する部分です。毎月の給与から天引きされるものですが、後に支払うことが決まっており、会社のお金とはなりません。そのため、「預り金」となります。反対に、労働者負担分を会社が支出する場合は「立替金」となります。

前払費用
概算保険料は、本来の納付より前に保険料を支払います。そこで、「前払」勘定を使用し、精算時に「法定福利費」とします。

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仕訳例

では、実際の仕訳をどのようにすればよいか、例をあげてみましょう。3月決算で、概算保険料400円×3回(分納)、確定保険料1500円、被保険者が増えたため精算時に300円不足額が発生したという場合、仕訳の仕方は次の3パターンとなります。

1.当初から法定福利費として計上する場合の仕訳例

概算支払い時(3回計上)
概算支払い時(3回計上)
給与預かり時(毎月計上)
給与預かり時(毎月計上)
精算時
精算時
概算保険料と被保険者負担分はすでに法定福利費に計上してあるため、不足分のみを計上します。このパターンは振替や決算期処理がなく一番シンプルな仕訳方法です。

2.精算時に振替が必要な場合

概算支払い時(3回計上):前払費用とします。
概算支払い時(3回計上)
給与預かり時(毎月計上):預り金とします。
給与預かり時(毎月計上)
*こちらも当初預かり金額は25とします。被保険者が変わらない場合は25×12ヶ月=300となりますが、増加という設定なので年間預り金は375になり、その額を精算時に振り替えます。

精算時
給与預かり時(毎月計上)
前払費用は、支払の都度400×3回分計上します。精算時に過不足を法定福利費で調整します。不足分は現金で支払いました。

3.月末・決算時に処理する場合

概算払い時と、給与預かり時の仕訳は2のケースと同じです。異なる点は、毎月末に会社負担分を法定福利費として計上するところです。

毎月末 法定福利費を未払費用として計上
未払費用として計上
毎月の計上額は年間会社負担分の12分の1ですので900÷12=75となります。年間900円は年度末に法定福利費に振り替えます。同じく従業員負担分は預り金として処理します。

年度末の処理
年度末の処理
未払費用75×12=900を法定福利費に振り替える仕訳(1列目)と確定保険料の精算としての仕訳(2、3列目)を行います。3月の決算により、確定保険料1,500になることから不足額300と算出できました。ただし実際に納付するのは6月1日から7月10日ですので「未払費用」とします。

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労働保険料の仕訳のポイント

シンプルな具体例を使い、労働保険料の仕訳について説明しましたが、実務では還付金が出た場合の益金算入(精算時)や立替金の損金算入など、他にも多くの仕訳が発生します。しかし、慌てることはありません。労働保険料の仕訳のポイントは、時間の経過によって費用の扱い方が変わる、すなわち、それぞれの方法によって勘定科目もタイミングも異なるということです。簡単な表にまとめると次のようになりますが、他にも仕訳方法はあるかと思います。

上記の3つの方法1.当初から法定福利費として計上する場合2.精算時に振替が必要な場合3.月末・決算時に処理する場合
概算保険料支払い時支払額を法定福利費として計上支払額を前払費用として計上支払額を前払費用として計上
毎月(給与時)従業員分は、法定福利費を取崩し(給与時)従業員分は、預り金として計上(給与時)従業員分は、預り金として計上
(月末処理)年間法定福利費を1/12ずつ未払費用として計上
決算時なしなし(月末処理の相殺)
法定福利費、未払費用の相殺
(精算額の計上)
前払費用、預り金を取崩、年間の法定福利費を計上し、不足分は新たに未払費用として計上
精算時支払額を法定福利費として計上前払費用、預り金を取崩し、法定福利費を計上未払費用を取崩して精算

仕訳処理を行う時期によって、前払費用が未払費用になるといったように、同じ労働保険料でもその仕訳の勘定科目が変わります。それさえ理解すれば労働保険料の仕訳は通常の会計処理となんら変わりません。
苦手意識を持っている方も多いようですが、制度の趣旨を理解すれば、正しい仕訳が行えるようになるでしょう。

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経過勘定を理解して労働保険料の仕訳をマスターしよう

前払費用や未払費用などは、現金の動いた時期とその費用を計上すべき時期にズレが生じた場合、そのズレを調整する勘定科目であり、経過勘定とも言います。
ここで紹介した3つの仕訳のうち、最後に紹介した概算保険料支払い時、給与預かり時、月末、決算期、精算時に分けて処理する方法は面倒ではあっても、一番実態に合った仕訳といえます。
これを理解すれば、他のものにも応用がききますので、この機会にマスターしましょう。

よくある質問

労働保険料の仕訳はどのタイミングで行うのですか?

毎年6月1日から7月10日の間に、前年4月から当年3月までの確定保険料の算出と当年4月から翌年3月までの概算保険料の算出および精算の仕訳を行います。また、毎月の給与・賞与時に計上する仕訳が発生します。詳しくはこちらをご覧ください。

労働保険料の仕訳の際に注意することは何ですか?

労働保険料は、賃金の見込額を概算保険料で納付し、賃金が確定したら確定保険料で精算します。また、給与・賞与から雇用保険料の控除も行いますので、それぞれのタイミングで仕訳する際の勘定科目に注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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