- 更新日 : 2025年1月20日
本人がいないところでの悪口はパワハラ?悪口を聞かされたらハラスメント?わかりやすく解説
職場で本人がいないところで悪口が交わされ、それを放置することは、パワハラにつながる場合があります。このような影響を最低限に抑えるには、パワハラ定義の3要素や、不法行為の要件などといった客観的な基準を知ることが必要です。
本記事では、職場にまつわる悪口とパワハラに関する具体的な事例と適切な対応策について解説します。
目次
本人がいないところで悪口を言うのはパワハラ?
パワハラの「パワー」とは、相手に対して優越的であるという力関係を表現したものです。例えば悪口であってもパワー関係を背景としていますが、それがパワハラ定義の3要素を満たしていれば、パワハラに該当します。
パワハラ3要素の確認
パワハラとは、次の3つの要素を満たす言動のことです。
- 優越的な関係を背景としている
⇒ 行為者に対して抵抗したり拒絶したりすることができない場合
職位の上下は問わない - 業務上必要かつ相当な範囲を超えている
⇒ 業務上の必要性がなく、かつ、内容的に度を越した状態
同じことを執拗に繰り返すなどの場合も含まれる - 就業環境が害されている
⇒ 言動によって身体的・精神的苦痛を受け、就業に支障が生じる状態
パワハラ6類型の確認
厚生労働省は、以下の6つのパワハラ類型を提示しています。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
これらの類型はあくまでも例示です。これらに該当しない行為であっても、パワハラの3要素を全て満たす場合はパワハラに該当する可能性があります。
立場の優位性を背景にしている場合はパワハラ
悪口がパワハラに該当するのは、上述の通りパワハラ3要素全てを満たしている場合です。順に検討してみましょう。
- 上司が部下に対して悪口を言うだけでなく、グループ(チーム)内の勤務経験が長い従業員や集団になった部下が上司に向かって悪口を言うのも優越的な関係に当たります。
- 「仕事が遅い」「ミスが多い」などの発言が、本人の奮起を促すためにあえて行われる場合には、これをすぐにパワハラとみなすのは難しいでしょう。ただし、このような発言が執拗に繰り返されるようであれば、パワハラと考えられます。
- 本人が精神的に追い込まれ、仕事に支障をきたしている場合は、職場環境が害されていると考えられます。
悪口がパワハラと認定された事例
ここでは悪口がパワハラと認定された事例を紹介します。
【ケース1】
上司から「新入社員以下だ。もう任せられない」「何でわからない、お前は馬鹿だ」などの否定的な発言を受けた部下が、うつ病を発症した
⇒ 注意・指導のための言動という範疇を超え、相当性を欠いていると認定された
【ケース2】
上司が「会社を辞めるべき」「○○がいると会社にとっても損失」「あなたの給料で事務職を何人雇えると思いますか」などと記載したメールを、対象者以外の多数の従業員に送信したケース
⇒ 従業員の名誉感情を毀損する不法行為との認定があり、損害賠償が認められた
※本人以外の従業員に送信されたメールである点にも注意
上司が部下から悪口を言われた場合はパワハラになる?
部下の上司に対する悪口が深刻な主なケースとして、部下が集団となって上司の悪口を言い合うことが挙げられます。そして、もう一つは、あるプロジェクトの推進にあたって不可欠な知識と技術を持っている部下が、そのことを盾に上司の知識不足や技術不足を指摘し、頻繁に悪口を発言するケースです。
これらのケースがパワハラに該当するかどうか、検討してみましょう。
- 優越的な関係とは?
パワハラというと職位の上位者から下に対する威圧的な言動が一般的ですが、部下から上司に向かってのパワハラもありえます。それを納得するためにはパワハラ3要素のうち「優越的な関係」の理解が必要です。これは、パワハラの行為者と対象者との間に何らかの要因でパワー関係が存在し、対象者が行為者に対し抵抗したり拒絶したりできない状況を指します。職位の上下は、このパワー関係の一つのあり方にすぎません。言い換えれば、部下が徒党を組んだり、自分の知識や技術を上司との交渉の武器にしたりすることも「優越的な関係」のあり方なのです。 - 部下から上司への悪口がパワハラに
ITに詳しい部下が、PCやスマートフォンが苦手な上司をけなす意図で「そんなことも知らないの」「無能な上司だね」「こんな上司のもとで働くのは嫌だ」などと発言するケースもあります。これらの発言が繰り返され、上司から部下に指示を出しにくい状況が生まれ、業務の停滞が生じるようであれば、パワハラが疑われるでしょう。
職場で悪口を聞かされるのはパワハラ?
上司から悪口を聞かされ、不快な感情に陥るといった精神的苦痛が生じ、仕事にも支障が出るようであれば、パワハラに該当すると考えられます。
上司以外の人物から聞かされる場合は、基本的に「優越的な関係」を背景としている状況ではないのでパワハラには該当しません。しかし、言葉や態度、身振りや文書などによって、明らかに職場の雰囲気を悪くさせる場合となると、いわゆるモラルハラスメント(モラハラ)に該当することが考えられます。
悪口を言われたと相談された場合に会社がとるべき対応
悪口の相談には、次の流れで対応していくのが効果的といわれています。
ステップ① 相談者の話をもとに事実関係を調査し、会社として対処すべき案件かどうかを切り分けます。
- ハラスメントに該当するケース
※悪口は、パワハラのほかモラハラに該当する場合もありえます。 - 不法行為として損害賠償請求の対象になるケース
- 名誉毀損罪、侮辱罪に当たるケース
※不特定多数に向けてなされることが要件となります。 - 会社が介在する余地のないケース
※相談者には丁寧な説明が必要です。
ステップ② 就業規則に基づき加害者に対する処分や指導・助言を行います。
ステップ③ 加害者、被害者の経過観察を行い、必要なケアを講じます。
悪口の放置は仕事環境の悪化につながる
職場で悪口を耳にしても、見て見ぬふりをしてしまうことがあるかもしれません。しかし、これを放置することで職場の人間関係が悪化し、重要なコミュニケーションにも悪影響を及ぼす可能性があります。そうした状況を避けるためにも、本記事で紹介したパワハラの3要素や6類型、事例を参考にし、悪口に対して適切に対応することが大切です。個々の正しい対応で、健全で円滑な職場環境の維持につながることを忘れないようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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