• 更新日 : 2025年11月4日

【令和7年】年末調整の計算方法を確認するには?シミュレーション付き

年末調整の計算方法は、5つのステップを順に追うことで誰でも確認できます。国税庁が提供する計算シートなどを活用すれば、ご自身の給与や控除の情報を入力するだけで、還付金や追徴税額を正確に検算できるようになるでしょう。

年末調整の結果を見て、計算が合っているか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。この記事では、令和7年(2025年)分の計算について、その仕組みから確認手順、便利なツールの使い方、人事担当者向けのチェックポイントまでをわかりやすく解説します。

目次

年末調整の計算方法を確認!年収から所得税額が決まる流れ

年末調整の計算を確認するには、まず年間の給与総額である「年収」から、段階的に控除(差し引くこと)を経て最終的な「所得税額」が確定するまでの流れを理解することが大切です。この全体の流れがわかれば、ご自身の計算結果のどの部分を確認すればよいかがはっきりするでしょう。

1.「年収」と「所得」の違いを理解

年収と所得は、年末調整において意味が異なります。 年収は、1年間の給与・賞与などを合計した総支給額です。一方で、所得(給与所得)は、その年収から給与所得者向けの経費にあたる給与所得控除を差し引いた後の金額を指し、税金計算の元になります。

年収に含まれるもの・含まれないもの

年末調整の対象となる年収には、基本給や残業代、賞与のほか、各種手当(住宅手当、役職手当など)が含まれます。一方で、一定額以下の通勤手当や出張旅費などは非課税となるため、年収には含まれません。

2.「所得」から「課税所得」を算出

課税所得は、所得からさらに個人の事情に応じた「所得控除」を差し引いて計算します。 所得控除には、扶養家族の状況に応じた扶養控除や、支払った社会保険料に応じた社会保険料控除など、15種類があります。これらの所得控除を適用することで、税負担が調整されます。実際に所得税率が掛けられるのは、この課税所得の金額です。

3.「課税所得」から「年税額」を確定

年税額は、課税所得に所得税率を適用して算出した税額から、さらに住宅ローン控除などを直接差し引いて決まります。 課税所得に所得に応じた税率(5%~45%)を掛けて所得税額を算出します。そこから、住宅ローン控除のような「税額控除」を直接差し引いた金額が、その年に最終的に納めるべき年税額となります。

年末調整は、この年税額と、すでに給与から天引き済みの源泉徴収税額との差額を精算する手続きです。

年末調整の計算に使う4つの申告書

年末調整の正確な計算は、従業員から提出される4種類の申告書から始まります。これらの書類に記載された内容が、所得から差し引くことができる所得控除額を決定する根拠情報となります。それぞれの書類が計算のどの部分に影響するのかを見ていきましょう。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(全員提出)

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、扶養控除や障害者控除といった人的な控除額を決定するもので、原則として全従業員が提出します。 配偶者の有無、扶養親族の人数や年齢、同居の有無、障害の有無などを記入します。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書一枚で、扶養控除、配偶者控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除といった、多くの所得控除の金額が決まります。

扶養する家族がいない方でも、自身の情報を記入して提出しなければ、年末調整が受けられなくなる場合があります。

参照: A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁

基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書は、主に本人の所得に応じた控除額を決定するもので、該当する従業員が提出します。

一枚の様式に3つの申告書がまとまっており、本人の合計所得金額に応じた基礎控除(最大58万円)、配偶者の所得状況に応じた配偶者控除や配偶者特別控除、そして年収850万円超で特定の条件に合う場合に適用される所得金額調整控除の額が決まります。

参照:  A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告|国税庁

給与所得者の保険料控除申告書

給与所得者の保険料控除申告書は、支払った保険料に応じた控除額を決定するもので、該当する従業員が提出します。 生命保険や地震保険に加入している方、または個人で国民年金やiDeCoの掛金を支払った方が対象です。

申告できる控除は、生命保険料控除地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の4種類です。支払いを証明する控除証明書を添付することで、支払額に応じた所得控除が適用されます。

参照: A2-3 給与所得者の保険料控除の申告|国税庁

住宅借入金等特別控除申告書

住宅借入金等特別控除申告書は、住宅ローン控除額を決定するもので、該当する従業員が提出します。

住宅ローン控除を2年目以降に年末調整で受ける方が対象です。この控除は、他の所得控除とは異なり、算出された所得税額から直接差し引く税額控除という種類になります。そのため、最終的な還付金額に大きな影響を与えるでしょう。

【令和7年税制改正】住宅ローン減税のポイント

令和7年度の税制改正により、住宅ローン減税の一部措置が延長されました。とくに子育て世帯や若者夫婦世帯(19歳未満の扶養親族がいる、または夫婦のどちらかが40歳未満の世帯)が令和7年に入居する場合、借入限度額が通常より高い水準(認定住宅で5,000万円など)に維持されます。また、合計所得1,000万円以下の方を対象とした、新築住宅の床面積要件を40㎡以上に緩和する措置も期限が延長されています。

参照: 住宅ローン減税|国土交通省
参照: 令和7年度税制改正の大綱(住宅関連)|国土交通省

年末調整の計算方法を確認する5つの手順

年末調整の計算は、5つの手順で進めます。各手順で何を計算しているのかを理解することで、ご自身の源泉徴収票の数字の根拠がはっきりわかるようになるのではないでしょうか。

年末調整の計算を始める前に、1月から12月までの給与明細などを準備し、総支給額(年収)、社会保険料の合計額、源泉徴収税額の合計額の3つを正確に集計しておきましょう。

STEP1:給与所得を算出する

まずはじめに、所得税計算の元となる給与所得を確定させます。 1年間の収入総額である年収から、年収に応じて法律で定められた給与所得控除額を差し引きます。

給与所得控除は、給与所得者が受けられる一種のみなし経費のようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。年収を国税庁の給与所得控除の速算表に当てはめて計算します。

給与等の収入金額 (年収)給与所得控除額
1,625,000円まで650,000円
1,625,001円~1,800,000円収入金額 × 40% – 100,000円
1,800,01円~3,600,000円収入金額 × 30% + 80,000円
3,600,001円~6,600,000円収入金額 × 20% + 440,000円
6,600,001円~8,500,000円収入金額 × 10% + 1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円 (上限)

参照: No.1410 給与所得控除|国税庁

STEP2:所得控除の合計額を算出する

次は、個人の事情に応じて税負担を調整する所得控除の合計額を算出します。 集計した社会保険料の全額に加え、各種申告書で申告した控除、例えば生命保険料控除、扶養控除、基礎控除などの金額をすべて足し合わせます。この合計額が大きいほど、後の税額が小さくなります。

STEP3:課税所得金額を算出する

この手順では、税率を掛ける対象となる課税所得金額を確定させます。 「給与所得」から「所得控除の合計額」を差し引いて算出します。計算結果の1,000円未満は切り捨てましょう。

STEP4:年調年税額を算出する

この手順では、その年に最終的に納めるべき所得税額である年調年税額を確定させます。 年調年税額とは、年末調整によって計算された、その年の確定した所得税および復興特別所得税の合計額のことです。まず、STEP3の金額を所得税の速算表に当てはめて算出所得税額を求め、復興特別所得税(税額の2.1%)を加算します。その後、住宅ローン控除などの税額控除を直接差し引きます。次の表では先の1,000円未満切り捨て前の金額で記載しています。

課税される所得金額税率控除額
195万円未満5%0円
195万円以上330万円未満10%97,500円
330万円以上695万円未満20%427,500円
695万円以上900万円未満23%636,000円
900万円以上1,800万円未満33%1,536,000円
1,800万円以上4,000万円未満40%2,796,000円
4,000万円以上45%4,796,000円

参照: No.2260 所得税の税率|国税庁

STEP5:年調過不足額を算出して精算する

この手順では、還付されるか、あるいは追加で徴収されるかを確定します。 計算開始前に集計した源泉徴収税額の合計額から、STEP4で確定した年調年税額を差し引きます。結果がプラスなら還付、マイナスなら追徴となります。

【ケース別】年末調整計算シミュレーション

ここでは年収500万円の、家族構成や控除内容が異なるモデルケースで、実際の計算の流れをシミュレーションします。 令和7年(2025年)の税制改正により、扶養親族や配偶者の所得要件が緩和され、年収123万円以下であれば扶養の対象となりました。この変更点をふまえて、同じ年収でも最終的な税額がどう変わるかを確認しましょう。

なお、各ケースの社会保険料は、健康保険・厚生年金保険料などを年収から算出した概算額です。源泉徴収税額は、毎月の給与から天引きされる所得税の年間合計額で、扶養親族の人数などに応じて変動する概算額として設定しています。

また、いずれのケースも令和7・8年分にのみ適用される加算額は考慮せず、本則に沿ったシミュレーションとしています。

ケース1:独身・扶養親族なし

はじめに、扶養する家族がいない単身者のケースです。所得控除が社会保険料、生命保険料、基礎控除のみとなり、計算の基本形といえるでしょう。

  • 年収: 500万円
  • 社会保険料: 75万円
  • 源泉徴収税額: 15万円
  • 生命保険料控除: 4万円
  1. 給与所得: 500万円 – (500万円×20%+44万円) = 356万円
  2. 所得控除合計: 75万円(社保) + 4万円(生保) + 58万円(基礎) = 137万円
  3. 課税所得: 356万円 – 137万円 = 219万円
  4. 年調年税額: (219万円×10%-97,500円) × 102.1% = 124,000円(100円未満切り捨て)
  5. 差額(還付金): 15万円 -124,0001円 = 26,000円(還付)

ケース2:配偶者・高校生の子供1人あり

次に、配偶者と16歳以上の扶養親族がいる家庭のケースです。令和7年の改正で、配偶者の年収が123万円以下であれば配偶者控除の対象となります。 これにより所得控除額が大きく増え、課税所得が下がるのが特徴です。

  • 年収: 500万円
  • 配偶者の年収: 123万円以下
  • 社会保険料: 75万円
  • 源泉徴収税額: 8万円
  • 生命保険料控除: 4万円、地震保険料控除: 1万円
  1. 給与所得: 500万円 – (500万円×20%+44万円) = 356万円
  2. 所得控除合計: 75(社保)+4(生保)+1(地震)+38(配偶者)+38(扶養)+58基礎) = 214万円
  3. 課税所得: 356万円 – 214万円 = 142万円
  4. 年調年税額: (142万円×5%) × 102.1% = 72,400円(100円未満切り捨て)
  5. 差額(還付金): 8万円 – 72,400円 = 7,600円(還付)

ケース3:配偶者・大学生の子供1人あり・住宅ローン控除あり

控除額が大きくなる特定扶養親族(19歳以上23歳未満)がおり、さらに税額控除である住宅ローン控除も適用されるケースです。アルバイトをしている大学生のお子様も、年収が150万円以下であれば扶養の対象となります。

  • 年収: 500万円
  • 配偶者の年収: 123万円以下
  • 大学生の子供の年収: 150万円以下
  • 社会保険料: 75万円
  • 源泉徴収税額: 8万円
  • 生命保険料控除: 12万円(上限)、地震保険料控除: 5万円(上限)
  • 住宅ローン控除額: 8万円
  1. 給与所得: 500万円 – (500万円×20%+44万円) = 356万円
  2. 所得控除合計: 75(社保)+12(生保)+5(地震)+38(配偶者)+63(特定扶養)+58(基礎) =251万円
  3. 課税所得: 356万円 – 251万円 = 105万円
  4. 年調年税額: ((105万円×5%) × 102.1%) – 8万円(住宅ローン) = 0円(税額がマイナスになるため)
  5. 差額(還付金): 8万円 – 0円 = 80,000円(還付)

ケース4:配偶者・高校生と大学生の子供1人ずつあり・住宅ローン控除あり

扶養親族が複数おり、その中に控除額の大きい特定扶養親族が含まれる、より控除項目が多いケースです。同じ年収でも、控除額の合計が大きくなることで、最終的な税額に大きな差が出ます。

  • 年収: 500万円
  • 配偶者の年収: 123万円以下
  • 大学生の子供の年収: 150万円以下
  • 社会保険料: 75万円
  • 源泉徴収税額: 4万円
  • 生命保険料控除: 12万円(上限)、地震保険料控除: 5万円(上限)
  • 住宅ローン控除額: 8万円
  1. 給与所得: 500万円 – (500万円×20%+44万円) = 356万円
  2. 所得控除合計: 75(社保)+12(生保)+5(地震)+38(配偶者)+38(扶養)+63(特定扶養)+58(基礎) =289万円
  3. 課税所得: 356万円 – 289万円 = 67万円
  4. 年調年税額: ((67万円×5%) × 102.1%) – 8万円(住宅ローン) = 0円(税額がマイナスになるため)
  5. 差額(還付金): 4万円 – 0円 = 40,000円(還付)

ケース5:共働きで配偶者が扶養から外れている

配偶者が扶養から外れ、配偶者控除・配偶者特別控除のどちらの対象にもならない共働きのケースです。この場合、税法上は配偶者がいないものとして扱われ、計算は独身・扶養親族なしの場合と同じになります。

  • 年収: 500万円
  • 配偶者の年収: 300万円
  • 社会保険料: 75万円
  • 源泉徴収税額: 15万円
  • 生命保険料控除: 4万円
  1. 給与所得: 500万円 – (500万円×20%+44万円) = 356万円
  2. 所得控除合計: 75万円(社保) + 4万円(生保) + 58万円(基礎) =137万円
  3. 課税所得: 356万円 – 137万円 = 219万円
  4. 年調年税額: (219万円×10%-97,500円) × 102.1% = 124,000円(100円未満切り捨て)
  5. 差額(還付金): 15万円 – 124,000円 = 26,000円(還付)

年末調整の計算を手軽に確認できるツール

国税庁の年末調整計算シート

国税庁の公式サイトから無料でダウンロードできるExcelファイルの「年末調整計算シート」です。 給与や控除の情報を入力するだけで、自動で計算し、過不足額まで正確に確認できます。入力項目が多いため、手元に全ての申告書や源泉徴収票を準備してから利用しましょう。

参照:年末調整計算シート|国税庁

Webのシミュレーションサイト

おおよその還付金額を手軽に知りたい場合には、民間の会計ソフト会社などが提供するWebサイトのシミュレーターが便利でしょう。 ダウンロード不要でスマートフォンからも利用できますが、計算が簡略化されている場合があるため、あくまで目安としての利用に留めるのがよさそうです。

【担当者向け】給与計算ソフト

給与計算ソフトの年末調整機能は、担当者の業務効率を向上させます。 従業員の申告書データをインポートし、給与データと連携させて自動計算できるものが主流です。クラウド型であれば、法改正にも自動で対応してくれるでしょう。

【担当者向け】計算ミスを防ぐ確認・チェックの仕組みは?

年末調整の計算ミスを防ぐ仕組みづくりは、チェックリストの活用といった手動での確認と、システムの自動チェック機能を組み合わせることで効果的に進められます。とくに、計算担当者と検算担当者を分けるピアレビュー(相互確認)は、客観性を保ち、思い込みによるミスを減らす上で有効な手法となるでしょう。これらの対策を組み合わせることで、人為的なミスを最小限に抑え、正確な年末調整業務の実現につながります。

チェックリストの作成と運用

ミスを未然に防ぐには、独自のチェックリストを作成して運用しましょう。 過去のミス事例を基に「扶養親族の年齢確認」「保険料控除の上限チェック」などの項目を盛り込み、全担当者で共有することが、ミスの再発防止につながります。

ピアレビュー(相互確認)の導入

計算担当者と検算担当者を分けるピアレビューは、客観的な視点でミスを発見するために効果的です。 とくに、手計算やExcelで管理している場合は、思い込みによるミスを防ぐためにも、この体制の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

システムによる自動チェックの活用

年末調整システムの機能を活用して、ミスを牽制・発見する体制を構築しましょう。 多くのシステムには、入力ミスを警告するエラーチェック機能や、入力・修正履歴が残る監査ログ機能が搭載されています。これらをうまく使うことで、業務の正確性を保てます。

年末調整の計算に関するよくある疑問

Q1. なぜ追徴になるのですか?

年の途中で扶養親族が減った、賞与が多かったなど、毎月の源泉徴収額が年間の所得に対して不足した場合に発生します。

Q2. 源泉徴収票のどこを見ればよいですか?

「源泉徴収税額」の欄が最終的な年税額です。給与明細の「年末調整還付」や「年調不足」といった項目で精算額を確認できます。

Q3. 確定申告する場合も年末調整は必要ですか?

医療費控除などで確定申告をする場合でも、まず会社で年末調整を完了させるのが基本です。その年末調整済みの源泉徴収票を基に確定申告を行います。

年末調整の計算方法を理解して正しく確認しよう

年末調整の計算は、一年間の税金を正しく精算するための手続きです。この記事で解説した計算の仕組みと手順を理解し、国税庁のツールなどを活用すれば、誰でもその計算方法を確認し、ご自身の結果に納得感を持つことができるでしょう。

還付・追徴の理由がわかれば、翌年からの家計管理にも役立つのではないでしょうか。人事担当者の方は、正確な確認・チェックの仕組みを整えることで、従業員からの信頼を高め、スムーズな年末調整を実現してください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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