- 更新日 : 2025年7月25日
雇用契約書の保管期間は5年!経過措置や起算日、退職後の取り扱い、罰則まで徹底解説
「従業員の雇用契約書、いつまで保管すればいいのだろう?」「法改正で保管期間が5年になったと聞いたけど、具体的にいつから数えるの?」
人事労務を担当する中で、このような疑問をお持ちの方は少なくないでしょう。雇用契約書は、企業と従業員の間の約束事を証明する重要な書類です。雇用契約書の保管は労働基準法で定められた義務であり、正しい知識を持たないまま処分してしまうと、思わぬトラブルや罰則につながる可能性があります。
この記事では、雇用契約書の正しい保管期間や起算日、関連書類の扱い、電子保管のポイントまで詳しく解説します。
目次
雇用契約書の保管期間は原則として5年
企業の労務管理において、法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)と並び、雇用契約に関する書類の適切な保管は非常に重要です。まずは、保管期間の根拠となる法律と、なぜ保管が必要なのかを理解しましょう。
根拠は労働基準法第109条
雇用契約書を含む労働関係の重要書類の保管期間は、労働基準法第109条によって定められています。2020年4月1日の法改正により、この保管期間は従来の3年間から原則5年間に延長されました。これは、労働者が未払い賃金などを請求できる権利(賃金請求権)の消滅時効が5年に延長されたことに伴う措置です。
(記録の保存)
労働基準法 第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
この条文にある「労働関係に関する重要な書類」に、雇用契約書や労働条件通知書が含まれると解されています。
経過措置により当面は3年でも罰則はない
法改正により保管期間は原則5年となりましたが、企業の負担を考慮し、当分の間は3年間とする経過措置が設けられています。ただし、これはあくまで当分の間の措置です。経過措置の終了時期は未定のため、将来の5年保存への備えとして社内ルールを5年に合わせておくと安心です。労務リスク管理の観点からも、長い方の期間で運用するのが最も安全な選択です。
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雇用契約書の保管期間5年の起算日はいつから?
労働基準法施行規則第56条では、書類ごとの保管期間の起算日が定められています。雇用契約書や労働条件通知書といった「労働者の雇入れに関する書類」の起算日は、その従業員が退職した日、または死亡した日です。在職中に作成した日や、契約が満了した日からではありませんので注意が必要です。
では、現在働いている従業員の雇用契約書はどうなるのでしょうか。在職期間中は、雇用契約書を保管し続ける必要があります。契約更新などで新しい契約書を作成した場合でも、過去の契約書を破棄してはいけません。
- 起算日:2025年3月31日
- 保管期限:原則2030年3月30日まで(現在は経過措置中のため2028年3月30日まで)
- 起算日:未到来
- 保管期限:Bさんが退職するまで保管。その後、退職日から5年間(現在は経過措置中のため3年間)保管。
雇用契約書に関連する書類の保管期間一覧
企業が保管すべき書類は雇用契約書だけではありません。労働基準法で定められた他の重要書類についても、それぞれの保管期間と起算日を正確に把握しておくことが重要です。
労働条件通知書の保管期間
労働条件通知書も、雇用契約書と同様に「労働関係に関する重要な書類」に該当します。そのため、保管期間は原則5年(当分の間は3年)、起算日は従業員の退職日または死亡日となります。雇用契約書とセットで保管・管理するのが効率的でしょう。
労働関係重要書類の保管期間
労働基準法第109条で保管が義務付けられている書類と、その起算日を一覧で確認しましょう。これらは一般的に「法定三帳簿」と呼ばれるものを含みます。
| 書類の種類 | 保管期間 | 起算日 |
|---|---|---|
| 労働者名簿 | 5年(当面3年) | 従業員の死亡、退職または解雇の日 |
| 賃金台帳 | 最後に記入した日 | |
| 雇入れに関する書類 (雇用契約書、労働条件通知書など) | 従業員の退職または死亡の日 | |
| 解雇に関する書類 (解雇予告通知書など) | 従業員の退職または死亡の日 | |
| 災害補償に関する書類 | 災害補償が終わった日 | |
| 賃金その他労働関係に関する重要な書類 (出勤簿、タイムカードなど) | 最後の出勤日など、その記録が完結した日 |
雇用契約書の保管方法と注意点
法律で定められた期間、適切に書類を保管するためには、管理方法を社内でルール化しておく必要があります。ここでは、紙と電子データそれぞれの保管方法と、義務違反の際の罰則について解説します。
紙での保管
紙媒体で保管する場合は、従業員ごと、または退職年ごとにファイリングするのが一般的です。キャビネットなどに施錠して保管し、権限のない人物が閲覧できないようにセキュリティ対策を講じましょう。また、火災や水濡れなどで書類が毀損・紛失しないよう、保管場所の環境にも配慮が必要です。退職者ファイルは、保管期限が到来したものから順次廃棄できるよう、退職年月日を明記して整理すると管理がしやすくなります。
電子データでの保管
近年、雇用契約を電子的に締結し、そのままデータとして保管する企業が増えています。電子データでの保管には、保管スペースの削減、検索性の向上、紛失・劣化リスクの軽減といった多くのメリットがあります。
ただし、電子データで保管するには、e‑文書法や電子帳簿保存法などにより、以下の要件を満たす必要があります。
- 見読性:パソコンの画面やプリンターで明確に確認できること
- 完全性・真実性:改ざんされていないことを証明できること(タイムスタンプの付与など)
- 検索性・可視性:必要に応じてすぐに探し出すことができ、出力ができること
- 機密性:外部者がアクセスできない状態になっていること
これらの要件を満たす電子契約サービスを利用するのが最も確実で効率的な方法です。
雇用契約書の保管義務に違反した場合の罰則
定められた期間、雇用契約書などの重要書類を保管しなかった場合、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科される可能性があります。罰則を受けることがなかったとしても、労使トラブルの際に会社側の正当性を証明できなくなるなど、企業にとってのデメリットは計り知れません。コンプライアンス遵守の観点から、保管義務は徹底して守りましょう。
雇用契約書の保管期間に関してよくある質問
最後に、雇用契約書の保管期間に関してよく寄せられる質問にお答えします。
退職した社員の雇用契約書はいつ捨てていい?
退職日から5年(当面は3年)が経過した後に廃棄できます。例えば、2025年6月30日に退職した場合、保管期間は2030年6月29日までです。したがって、2030年6月30日以降に廃棄が可能となります。安全のため、保管期限が到来したことを複数人で確認してから廃棄するフローを推奨します。
アルバイトやパートの雇用契約書も保管は必要?
はい、必要です。雇用形態にかかわらず、労働基準法が適用されるすべての労働者(正社員、契約社員、パート、アルバイトなど)の雇用契約書や関連書類は、同様に5年間(当面は3年間)保管する義務があります。
従業員(個人)に保管義務はある?
労働基準法上の保管義務は使用者(会社側)に課せられたものです。そのため、従業員個人に法律上の保管義務や罰則はありません。しかし、自身の労働条件を確認したり、万が一のトラブルに備えたりするために、交付された雇用契約書(の写し)は大切に保管しておくことをお勧めします。
保管期間が過ぎた雇用契約書の廃棄方法は?
保管期間が過ぎた雇用契約書には、氏名、住所、生年月日、給与額などの個人情報が大量に含まれています。情報漏洩を防ぐため、必ずシュレッダーにかけるか、専門の溶解処理業者に依頼して、復元不可能な形で廃棄してください。
雇用契約書の保管期間を適切に守りましょう
今回は、雇用契約書の保管期間について、法律の根拠から具体的な管理方法まで詳しく解説しました。最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。
- 保管期間:原則5年間(当分の間は3年間の経過措置あり)
- 法的根拠:労働基準法第109条
- 起算日:従業員の退職日または死亡日からカウント
- 対象者:パートやアルバイトを含む全ての従業員
- 罰則:違反した場合は30万円以下の罰金
- 保管方法:紙または電子データ(電子化には要件あり)
雇用契約書の適切な保管は、法律遵守はもちろんのこと、企業の信頼性と従業員との健全な関係を守るための基本です。この機会に、自社の書類管理体制を改めて見直し、法令に即した適切な運用を徹底しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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