• 更新日 : 2025年2月5日

電子帳簿保存法とは?2024年からの改正内容・対象書類を簡単に解説

電子帳簿保存法とは、紙で保存しなければならなかったものを一定の要件を満たして電子で保存できるようにする法制度のことです。

電子帳簿保存法は国税帳簿書類を対象としており、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つの区分があります。また、2024年1月1日から、原則、電子データで受け取った請求書類は印刷して保管できなくなっています。※

※リンククリックで該当の見出しにジャンプします

当記事では、電子帳簿保存法の対象書類や対象企業、保存要件、電子帳簿保存法に対応した業務フロー、などを全体的に解説していきます。さらに2023年の改正点を図解を交えながら解説します。

個人事業主・フリーランスの方に特化された情報を得たい場合は、こちらの記事もご参考ください。(より個人の方に特化して分かりやすく解説しています)

※ 2023年度の税制改正大綱により、相当の理由によってシステム対応を行うことができなかった事業者は、2024年以降も一定の条件下で電子取引の出力書面(紙)の保存が可能です。

目次

電子帳簿保存法とは?図解で解説

電子帳簿保存法は、帳簿や領収書・請求書などの書類の保存処理に係る負担を軽減するために、電子データによる保存を認めるものです。

電子帳簿保存法を理解する上で、まずは3つの区分を理解することが大切です。

電子帳簿保存法を理解する上で重要な「3つの区分」

電子帳簿保存法とは?図解で解説

画像:電子取引・電子帳簿保存法なら マネーフォワード クラウド

電子帳簿保存法は、①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引の3つに区分されます。(※「電子帳簿保存法」と「電子帳簿等保存」が似ている言葉ですが、違う意味を指していますので注意してください)

① 電子帳簿等保存【任意】

電子帳簿等保存は、コンピューターなどで電子的に作成した国税関係帳簿書類の電子保存を認めるものです。

会計ソフトなどにより作成した「国税関係帳簿」「決算関係書類」「自己発行の取引関係書類」については、一定の要件を満たしたときに、電子データ保存できます。

② スキャナ保存【任意】

スキャナ保存とは、紙の書類をスキャナで保存し、電子データで保管する方法です。取引先から郵送や手渡しで受け取った契約関係書類や、社内で作成した請求書や納品書などが該当します。自社で作成したか相手方から受け取ったかにかかわらず、紙の書類はスキャナ保存の対象です。

③ 電子取引【義務】

電子取引は、メールやクラウドサービス、会計システムを介して電子上でやり取りした請求・契約関連の書類が対象です。

取引先から書類を受け取った場合、自社が発行した書類のいずれも該当します。

  • 請求書
  • 領収書
  • 納品書
  • 見積書
  • 注文書 など

電子帳簿保存等保存やスキャナ保存と異なり、電子取引の電子帳簿保存は必須です。

【要点】2024年の改正による電子帳簿保存法の変更点

電子帳簿保存法の改正で2024年から何が変わる

電子帳簿保存法の改正は、これまで何度か行われてきており、2024年1月1日以降からは以下の変更点があります。特に「電子取引データ」の内容が重要です。

※2023年(令和5年度)税制改正の内容は、こちらの見出しで解説しています。

① 電子取引データ:紙保存要件が変更【重要】

電子取引のデータ保存

– 全事業者が対象 – (※所得税と法人税を申告する事業者)

2023年12月末までは電子取引のデータを書面に出力しての保存も認められていましたが、2024年以降は電子保存が義務化されます。

法改正後は上記の対応は認められず、電子データのまま保存することが義務づけられます。電子データを保存する際は、電子帳簿保存法のルールに従い、保存要件を満たした方法で行わないといけません。

② スキャナ保存:タイムスタンプと検索要件の緩和

– スキャナ保存の導入を希望する事業者が対象 –

タイムスタンプ付与期間が最長2ヶ月+7営業日以内に、検索要件が「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つのみに緩和されました。

③ 電子帳簿等保存:電子帳簿の利用で紙帳簿の7年間の保管が不要に

– 電子帳簿等保存の導入を希望する事業者が対象 –

国税関係帳簿書類に関して、一貫してクラウド会計ソフトを使用して作成する場合は、紙帳簿の保管が不要になりました。

2024年の電子帳簿保存法改正での事業者の対応

2024年の電子帳簿保存法の施行にあたり、対象の事業者に必要な対応は次の通りです。

  1. 電子取引の現状の確認
  2. 業務フローの確認やルールの再設定
  3. 電子帳簿保存法に準拠したシステムの構築

それぞれの対応の具体的な内容を紹介します。

電子取引の現状の確認

現在の取引状況を確認し、電子取引に該当する案件を洗い出しましょう。メールで送付した契約書や会計システムで打ち出した領収書、クレジットカード利用時の明細書、インターネットバンキングでの振込明細なども電子帳簿保存の対象です。

何をデータ保存または紙保存しているかを把握しましょう。授受方法(メール/PDF/クラウドなど)や保管場所、月間や年間でどの程度やり取りがあるか、詳細をつかみます。

現状の取引を確認する行為は、電子帳簿保存法への対応漏れを防ぐとともに、紙保存に伴う業務量を把握し、システム導入の必要があるか確認する意味でも有意義です。

業務フローの確認やルールの再設定

紙保存と電子保存とでは業務フローが異なるため、現在のレギュレーションのままではフィットせず、業務に支障をきたす可能性があります。業務フローの確認やマニュアルの再設定を行わずにクラウド環境やデータ保存システムを導入しても、現場の混乱を生んでしまうでしょう。

保管場所やファイル名に関するルールがないと、後々引き継ぎで後任者が困る可能性も高いです。電子帳簿保存法への対応を良い機会と捉え、少々面倒であっても、新たな業務フローを構築するのがおすすめです。

電子帳簿保存法に準拠したデータ保存システムの構築

電子帳簿保存法対応の請求書管理システムや経費精算ツールの導入によって、新たな体制へとスムーズに移行できます。使用中のITツールがあっても、電子帳簿保存法に対応していないと今後は使いにくくなるでしょう。

現在の業務フローを可視化し、求める機能性を明確にしたうえで、スムーズに導入を進める必要があります。請求書関連のシステムでは、2023年10月から導入されたインボイスへの対応が可能かも留意しましょう。

電子帳簿保存法の対象書類

電子帳簿保存法の対象書類は、以下のように「国税関係帳簿書類」「国税関係書類」「取引関係書類」の3つに分けられます。

電子帳簿保存法_早見表

①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引の3つに分けて、1つずつ対象書類を確認していきましょう。

① 電子帳簿等保存の対象帳簿・対象書類

電子帳簿等保存の対象

電子帳簿等保存の対象帳簿・対象書類は、会計ソフトなどコンピューターで作成している、以下の3種類です。

  • 国税関係帳簿(仕訳帳総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳など)
  • 決算関係書類(損益計算書貸借対照表など)
  • パソコンで作成した取引関係書類を、紙で取引先に渡した際の控え(見積書、請求書、納品書、領収書など)

電子帳簿等保存の適用については、希望者のみの対応となります。

② スキャナ保存の対象書類

②スキャナ保存の対象書類

スキャナ保存の対象書類は、「手書きで作成して取引相手に紙で渡す書類の写し」や「取引相手から紙で受け取った書類」です。

具体的には、決算関係書類を除く国税関係書類のうち、以下の書類が対象です。

書類内容
重要書類資金や物の流れに直結・連動する書類
例:契約書 納品書 請求書 領収書 預金通帳 小切手 約束手形借用証書 預り証 送り状 振替依頼票など
一般書類資金や物の流れに直結・連動しない書類
例:見積書 注文書 検収書 貨物受領証 口座振替依頼書など

参考:電子帳簿保存法一問一答(スキャナ保存)|国税庁(問2ご参照)

スキャナ保存の適用についても、希望者のみの対応となります。

上記の書類を、スキャナでのスキャンやスマホなどで撮影した、電子データで保存することができます。(保存要件を満たすことが必要です。詳しくは「スキャナ保存の保存要件」の見出しで解説しています)

③ 電子取引の対象書類

電子帳簿保存法_③電子取引のデータ保存

電子取引の対象書類は、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など、紙でやりとりしていた場合に保存が必要な書類(スキャナ保存の対象書類)と同様です。

書類を受け取った場合だけでなく、送った場合にも保存する必要があります。

※なお、あくまでデータでやりとりしたものが対象です。紙でやりとりした書類をデータ化しなければならない訳ではありません。

また、電子取引の対象としては「メール」「Webサイト」「FAX」「電子契約」「EDI(電子的データ交換)取引」などが挙げられます。

電子帳簿保存法の対象外となる帳簿・書類

電子帳簿保存法により、電子データとして保存を許可されているのは(電子帳簿等保存の要件)、あくまで一貫してコンピュータを用いて作成された国税関連の帳簿・書類のみです。

手書きで作成された帳簿・書類に関しては電子データでの保存は認められないため、物理的な書面としての保存が必要です。

電子帳簿保存法の保存要件

続いて、電子帳簿保存法の具体的な保存要件(保存する際のルール)について、①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引の3つに分けて紹介します。

① 電子帳簿等保存の保存要件

電子帳簿等保存の保存要件

引用:電子帳簿・電子書類関係(令和6年1月1日からの取扱いに関するもの)国税庁

電子帳簿等保存の保存要件は上記の画像の通りであり、書類保存と書類保存で満たすべき条件が少し異なります。

要点をまとめると、以下の通りです。

電子帳簿等保存の保存要件の概要(帳簿・書類)
  1. 訂正・削除の履歴が残る
  2. 通常の業務処理期間を経過後の入力の場合は、その事実が確認できる
  3. 簿記録事項と、関連するほか帳簿の記録事項の相互に関連性が確認できる
  4. システム関係書類等の備え付け
  5. 検索条件
    1.  取引年⽉日・取引金額・取引先によって検索できる
    2. 日付または金額の範囲指定で検索できる
    3. 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件で検索できる
  6. 電子データのダウンロードができる

参考:電子帳簿・電子書類関係(令和6年1月1日からの取扱いに関するもの)国税庁

帳簿保存で満たすべき条件

「優良な電子帳簿」の場合:1~5を満たす必要があります。「6.電子データのダウンロードができる」を満たす場合は、5-b・5-cの要件は不要となります。

その他の帳簿の場合:3・4・6を満たす必要があります。ただし優良な電子帳簿の要件をすべて満たす場合は、「6.電子データのダウンロードができる」の要件は不要です。

優良な電子帳簿に該当すると、過少申告加算税(原則10%)が5%軽減されたり、個人事業主の場合は65万円の青色申告特別控除を受ける要件を満たすことができるメリットがあります。

書類保存で満たすべき条件

3・4・6を満たす必要があります。ただし「5-a. 取引年⽉日・取引金額・取引先によって検索できる」「5-b.日付または金額の範囲指定で検索できる」機能がある場合は、6.電子データのダウンロードができる」の要件は不要です。

>マネーフォワード クラウドなら「電子帳簿等保存」にも対応しています

② スキャナ保存の保存要件

スキャナ保存のルール【令和6年1⽉以降用】

画像引用:スキャナ保存関係(令和6年1月1日からの取扱いに関するもの)国税庁

スキャナ保存の保存要件は、上記のように多岐にわたりますが、契約書、納品書、請求書、領収書などの「重要書類」と、見積書、注文書、検収書などの「一般書類」で要件が少し異なるので、注意が必要です。たとえば、「重要書類」では帳簿との相互関連性の確保が必要であったり、入力機関の制限が定められていたり、カラー画像に関する要件が定められたりします。

要件の多いスキャナ保存については、特に以下の3点には気をつけましょう。

1.グレースケール(白黒)スキャンが認められるのは一般書類のみ

グレースケール(白黒)でスキャンすることが可能なのは一般書類のみです。特に重要書類(資金や物の流れに直結・連動する書類)はカラーでスキャン、または撮影しなければいけません。

2.書類が大きく、一度にスキャンできない場合は複数回のスキャンが可能

契約書や請求書などが複数ページにわたる書類をスキャンする場合は、複数回に分けてスキャンすることが認められています。

また、一度にスキャンできないからといって、書類の原本の大きさを変更した「コピー」をスキャンすることはできません。複数ページある書類の原本は複数回に分けてスキャンしましょう。

3.スキャンした書類はすぐに破棄せず一定期間保持しておいたほうがよい

スキャン後すぐに書類を破棄すると以下のケースで困る場合があります。

【書面(紙)を保存する必要がある場合】

  • 入力期間が過ぎた場合
  • 読み取った書類がプリンターの最大出力よりも大きい場合
  • 定期的な検査で不備があった場合 ※2021(令和3)年12月31日以前

上記のケースで困らないために、定期的な検査までの期間は原本(紙)の破棄をしないほうがよいと言えるでしょう。

要件が多岐にわたるため、基本的には「スキャナ保存要件」を満たしたソフトを使用することが推奨されます。

>マネーフォワード クラウドなら「スキャナ保存」にも対応しています

③ 電子取引の保存要件

電子取引は、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つに対応する必要があります。

「真実性の確保」の条件を満たすには、以下のいずれかを満たす必要があります。

真実性の確保
  1. タイムスタンプを付与された後で電子取引データの授受を行う(発行側)
  2.  電子取引データの授受後、最長2ヶ月+7営業日以内にタイムスタンプを付与(受取側)
  3.  電子取引データについて訂正/削除を行った場合にその記録が残るシステム、または訂正/削除 ができないシステムを利用する
  4.  訂正/削除の防止に関する事務処理規程を定めその規程の運用を行う

保存した電子データは可視性も確保し、いつでも閲覧可能な状態にしておくことが求められます。

「可視性の確保」では、以下すべての条件を満たさないといけません。

可視性の確保
  1. 自社開発システムの場合、その概要書を備え付ける
  2. 保存場所にPC等とその操作マニュアルを備え付け、画面・書面で速やかに出力できる
  3. 保存された取引情報を検索できて、すぐに表示できるように検索機能を確保する※
    ※売上高が5,000万円以下の小規模事業者で、税務署のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は検索要件の対応は不要

保存するファイル形式は問われていないため、PDFに変換したものや、スクリーンショットなどでも問題はありません。

前述の通り、今までは紙で印刷したものを原本として保管できましたが、2024年1月1日以降は取引情報を原則電子データで、かつ電子帳簿保存法の要件に則って保存する必要があるため、注意してください。※

※2023年度の税制改正により、システム対応を相当の理由により行うことが出来なかった事業者は2024年以降も一定の条件下で電子取引の出力書面(紙)の保存が可能となりました。

>マネーフォワード クラウドなら「電子取引の保存要件」にも対応しています

電子帳簿保存法の対象企業

電子帳簿保存法の対象は、所得税や法人税の国税関係帳簿書類の保存義務者です。法人税を納める義務がある普通法人と公益法人等、所得税の納税義務がある人のうち事業を営んでいるような個人事業主が対象になります。法人や個人事業の規模は問われません。

もちろん、電子帳簿保存法で電子保存が義務付けられた電子取引についても、同様に法人税を納める義務がある法人や所得税を納める個人事業主が対象です。いずれも要件に沿った電子保存に対応していく必要がありますので注意しましょう。

電子帳簿保存法の対象外の企業

電子帳簿保存法は、すべての企業や個人事業主に適用されますが、電子取引によってやり取りされた国税関連の文書についてのみデータ保存が必要です。

つまり、電子取引をしていない企業や事業者、または紙媒体で書類を受け取る場合は、データ保存の義務はありません。

しかし、デジタル化が進む中で電子取引をしていない事業者は減っており、法改正を通じて将来的には電子取引が一般的になると考えられます。電子データ交換を望む取引先に対応できない企業は、取引の機会を逃す可能性もあるため、早めの対応を検討をしたほうがよいでしょう。

電子帳簿保存法の改正で個人事業主は何をすべき?

電子帳簿保存法は個人事業主も対象です。そのため、個人事業主は以下のことを検討・確認しておきましょう。

電子取引の確認

個人事業主は自分の事業が電子取引を行っているかを確認し、もし行っているならば、国税関連の文書を適切な電子的形式で保存する体制を整える必要があります。保存方法に関する法の要件を理解し、それに従って適切なシステムやソフトウェアを導入することが大切です。

データの保管場所を決める

データの保管に際しては、迅速にアクセスし、検索や印刷が可能な状態で整理しておくことが大切です。適切な保管場所(例えば、クラウドサービス、パソコンのハードディスク、会計ソフトなど)を定めることが必要です。さらに、システムの更新や機器の故障によるデータ喪失を防ぐために、主な保管場所とは別にデータのバックアップを取ることが推奨されます。

ペーパーレスの運用を検討する

電子帳簿保存法に沿って運用する場合、書類を紙ベースで一元管理することは不可能になります。紙と電子の両方のデータを同時に管理することは、保存形式が異なるためやや複雑で困難です。

そのため、将来的に電子データによる保存を一本化するために、ペーパーレス化を検討することを推奨します。

>マネーフォワード クラウド確定申告は電子帳簿保存法の保存要件に対応しています

電子取引に対応できないと青色申告の承認取り消しになる?

当初は、国税庁のホームページに青色申告の取り消しになる旨の記載がありましたが、現在では「お問合せの多いご質問」にて「直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものを判断されたりするものではありません」と見直しされたことが記載されています。

取引が正しく記帳されているかつ、申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できる場合は問題ございません。

出典:お問合せの多いご質問(令和3年 11 月) 一問一答【電子取引関係】問 42 |国税庁

一方で、原則電子データについては、要件を満たして電子データのまま保存する制度自体は変わっていないので対応が推奨されます。

電子帳簿保存法の業務フロー

電子帳簿保存法の業務フローを、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3区分別に簡単に説明します。

①電子帳簿等保存

電子帳簿等保存

電子帳簿等保存は、コンピューターを利用して電子的に作成した帳簿や書類の電子保存等のことを言います。電子保存等とは、ハードディスクやDVD、クラウドサービスなどにデータを保存することです。図のように、優良帳簿で電子保存する場合のみ、検索要件を満たすシステムを準備する必要があります。

②スキャナ保存

電子帳簿等保存 スキャナ保存

スキャナ保存は、紙で作成した書類や紙で受領した書類をスキャンして電子保存することです。スキャナ保存では解像度や色の階調などの要件が細かく定められているため、まず要件を満たせる機器でスキャンする必要があります(要件を満たせばスマートフォンなどを利用した保存も可能です)。

スキャンしたデータは、一定の期間内に入力やタイムスタンプの付与が必要ですが、編集履歴の残るシステムを利用している場合には原則としてタイムスタンプは不要です。

タイムスタンプを付与したら、読取情報の保存やバージョン管理、検索機能の確保など、そのほかの要件を満たしたうえで電子保存を行います。

なお、スキャナ保存は、重要書類と一般書類に分類され、重要書類は帳簿との関連性が求められます。ほかの電子保存と比較して要件が多いため、すべ全ての要件を取りこぼさないように業務フローを細かく設定していく必要があります。

③電子取引

電子取引

電子取引は、電子的に授受したデータを電子保存するための区分です。電子取引では、規定された改ざん防止措置のいずれかを実施する必要があります。上の図のように業務フローにしっかり組み込んで保存を行うようにしましょう。

なお、改ざん防止措置として、タイムスタンプの付与やタイムスタンプが付与されたデータの受け取り、訂正削除の記録が残るシステムや訂正削除ができないシステムの利用、訂正削除防止のための事務処理規程の備え付け、原則としてこのいずれかを実施することが求められます。

ただし、2023年改正により電子取引に係るデータ保存要件が緩和されています。

こんな時どうする?電子帳簿保存法の対応簡単チェック!

電子帳簿保存法への対応についてイメージがついていない方は、まずは次の3項目を順番にチェックしてみましょう。

①国税関係帳簿や決算書類のチェック

1.紙で作成している場合

引き続き紙で作成・保管することは、法律上問題ありません。

電子帳簿等保存は、あくまで電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存することです。

一方で、業務効率化や優良電子帳簿の認定を受けるためにも、電子帳簿等保存への対応は検討したほうがよいでしょう。

マネーフォワード クラウドなら「電子帳簿等保存」にも対応しています

2.コンピューターで作成している場合

プリントアウトして紙で保存するか、電子データで保存する場合は電子帳簿等保存の要件に則った保存が必要です。

②請求書や見積書などの「受領」のチェック

1.紙で受領している場合

引き続き紙で保管することは、法律上問題ありません。

しかし、電子帳簿保存法によって、一定の要件を満たせば紙書類をスキャンして電子データで保存でき、紙原本の保管が不要になっています。

マネーフォワード クラウド会計マネーフォワード クラウド経費では、従業員の申請時にスキャン要件を確認できるので、複雑な要件を満たしたスキャナ保存が可能です。

2.電子データで受領している場合

電子取引に該当するため、取引情報を原則データで電子帳簿保存法の要件に則って保存する必要があります。

また、2023年10月から始まった「インボイス制度」では、発行側(売手)も受け取り側(買手)もインボイスを保存する必要があり、書類の保存数はさらに増加傾向です。

そのため、電子取引データを自動で書類保存できるシステムの導入を検討するとよいでしょう。

マネーフォワード クラウドなら「電子取引の保存要件」にも対応しています

③請求書や見積書などの「送付」のチェック

プリントアウトして紙で保存するか、電子データで保存する場合は電子帳簿等保存の要件に則った保存が必要です。

1.手書きで作成→紙で送付している場合

現物を保管するか、写しを電子データで保存する場合はスキャナ保存の要件に則った保存が必要です。

2.コンピューターで作成→紙で送付している場合

現物を保管するか、写しを電子データで保存する場合は電子帳簿等保存の要件に則った保存が必要です。

3.コンピューターで作成→電子データで送付している場合

電子取引に該当するため、取引情報を原則データで電子帳簿保存法の要件に則って保存する必要があります。

電子帳簿保存に対応するメリット・デメリット

今まで紙でデータを保存してきた企業も、2024年1月以降は電子帳簿保存の対応を余儀なくされます。保管に伴う作業量の減少、省スペース化などメリットがある反面、いくつかのデメリットもあります。

とくにフローの刷新やシステムの導入など、対応前後で業務が一変する可能性がある点には注意しましょう。電子帳簿保存に対応するメリット・デメリットを解説します。

電子帳簿保存に対応するメリット

電子帳簿保存法に対応するメリットは次の通りです。

  • 書類管理スペースの削減
  • 書類管理の手間やコストの削減
  • セキュリティの強化

書類管理スペースの削減

書類管理のスペースを削減した分、自由に使える場所が生まれます。従来の紙ベースの保存ではファイルを置くキャビネットなどが必要で、時が経つごとに保管スペースが増えるという難点がありました。

歴史がある会社や大企業では、会議室の一室や倉庫を丸ごと保管場所に使っているケースも珍しくありません。電子帳簿保存に移行後はスペースに余裕が生まれ、デスクを設置したり、レイアウトを変更したりとオフィスの使用方法にゆとりが生まれます。

書類管理の手間・コストの削減

PC上で所定のフォルダにアクセスするだけで書類を見つけられるため、倉庫を探し回る手間が無くなります。検索機能を使って効率的にデータを探すこともできます。

また、電子データはネットワーク環境さえあれば、オフィスの外からでも接続可能です。書類を確認するために出社する必要がなくなり、業務効率化にも繋がるでしょう。

セキュリティの強化

出張や打ち合わせの際に電車や飛行機にファイルを置き忘れて、機密情報の漏洩につながるというケースも後を絶ちません。電子データへの移行に伴い、このような書類の置き忘れによる盗難や火災によるデータの紛失リスクなどが無くなり、セキュリティが強化されます。

PCやインターネットを介した情報の保管は、サイバー攻撃のリスクを不安視する人もいるでしょう。しかし、アクセス制限をかけ、社内の特定の人物しか閲覧・編集できない状態にすれば、高セキュリティを確保できます。契約管理システムや会計システムには、従業員のアカウントごとに権限を変えられる機能が備わっていることが多いです。

電子帳簿保存に対応するデメリット

電子帳簿保存法に対応するデメリットは次の通りです。

  • 導入にコストがかかる
  • データの管理や研修の手間がかかる
  • システム障害が発生するリスクがある

導入にコストがかかる

帳簿や書類の電子保存のためにシステムを導入する場合は費用が発生します。場合によってはシステムの導入とは別途、タイムスタンプの購入が必要になる場合もあるでしょう。クラウドサービスの場合、初期費用や月額のランニングコストを支払うのが一般的です。

データの管理や研修の手間がかかる

電子帳簿保存の新たなルールやシステムの操作方法に慣れるまでに時間を要します。ITツールを導入する際には、帳簿や書類保存のどの工程まで電子化するのか、システムの管理者は誰を置くのかなどのルール決めが伴うでしょう。

新しい枠組みが決まった後は、従業員への周知が求められます。場合によっては研修や操作説明会を実施する必要があり、新しい体制が軌道に乗るまでに苦労が生じるかもしれません。

システム障害などが発生するリスクがある

電子データでの保管は、システム障害によってデータが閲覧できなくなる可能性や、消失リスクが伴います。外部からのハッキング攻撃や社内のネットワークトラブルで情報漏洩が起きる可能性もゼロではありません。

電子帳簿保存に対応する企業は、データのバックアップや強固なセキュリティの構築が不可欠です。導入するシステムを選ぶ際は、不測の事態にも対応できるよう、トラブルの発生頻度やサポート体制、セキュリティの機能性などにも目を向けましょう。

2023年の改正による電子帳簿保存法の変更点(令和5年度税制改正)

2023年の電子帳簿保存法の改正内容(令和5年度税制改正)

令和5年度税制改正によって、いくつかの改正点があったので、区分ごとに確認してみましょう。

※2024年1月1日から変更における重要なポイントは、「【要点】2024年の改正による電子帳簿保存法の変更点」の見出しをご覧ください。

① 電子帳簿等保存の改正内容

令和5年度税制改正によって、「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の対象となる帳簿の範囲が、下記のようになりました。

優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の対象となる帳票
  • 仕入帳
  • 総勘定元帳
  • その他必要な帳簿
    具体例:売上帳、仕入帳、経費帳、賃金台帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳など

※改正前は「その他必要な帳簿」が「全ての⻘⾊関係帳簿」となっていました。

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁
電子帳簿保存法の内容が改正されました〜 令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要 〜

なお、この軽減措置を受けるためには、適用を受けようとする法定申告期限までに「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」を提出しなければなりません。

② スキャナ保存の改正内容

スキャナ保存について、2023年改正では以下の保存要件が変更されています。

解像度、諧調、大きさに関する情報の保存が不要

国政関係書類をスキャナ保存するにあたっての解像度、諧調、大きさに関する要件が廃止されました。注意したいのは、スキャナで読み込む際の解像度(200dpi以上)や諧調(原則としてカラー)というのは変わっていませんが、データ内に保持していた解像度や諧調の「情報」が不要になったということです。

入力者等情報の確認要件が不要

スキャナ保存時にスキャナで誰が読み取り作業を行ったかという情報の確認が不要となりました。

帳簿との相互関連性を必要とするものを「重要書類」に限定

国税関係書類について、スキャナで読み取った書類はすべて帳簿との関連性を求められていたのが、「重要書類」についてのみ帳簿との関連性が求められるようになりました。重要書類とは、契約書、領収書、送り状、納品書などのように資金やモノの流れに直結・連動する書類を言います。

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁
電子帳簿保存法の内容が改正されました〜 令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要 〜

なお、スキャナ保存についても適用にあたって提出書類はありませんが、「過去分重要書類」のスキャナ保存については届出が必要です。

③ 電子取引の改正内容

電子取引データ保存に関する主な改正事項は、以下の2点です。

電子取引においては電子データの保存義務はありますが、検索要件については大幅に緩和されました。

検索機能のすべてを不要とする対象者の見直し

税務調査の際には、調査担当者からのダウンロード要請に応えることができる場合、すべての検索要件が不要となります。
この検索要件がすべて不要となる対象者が次のように見直されました。

  1. 基準期間の売上高が5,000万円以下の者である場合
    基準期間とは法人では2事業年度前、個人では前々年にあたりますが、その期間の 売上高が5,000万円以下(改正前は1,000万円以下)であれば検索要件は不要となりました。
  2. 電子取引を書面出力している者が一定の要件を満たす場合
    電子保存データを書面に出力し、取引年月日、取引先などで整理された状態で提 示することができる場合には、検索要件は不要となりました。

宥恕措置の廃止と猶予措置の新設

  1. 2023年12月31日までは、電子取引であっても出力書面の保存をもって電子データの保存に代えることができます。この宥恕措置は適用期限の2023年12月31日で廃止されます。
  2. 電子取引の電子データ保存への移行が「相当の理由により」できなかった者については、電子保存データを書面に出力し、かつ、電子データをダウンロードできるようにしておけば、検索要件は不要とする(期限なしの猶予措置)。

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁
電子帳簿保存法の内容が改正されました〜 令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要 〜

過去の電子帳簿保存法の主な変更点

電子帳簿保存法は、もともと1998年に創設されたものですが、2004年に「e-文書整備法」が公布された際、その1つとして位置づけられました。その後、2004年から2021年改正までに電子帳簿保存制度がどのように変わっていったのか概要を見てみましょう。

特に、2015年、2021年には大きな改正がなされました(なお、ほとんどは改正年度の翌年に施行開始されています)。

改正年度主な改正点概要
1998(平10)年電子帳簿保存法の創設国税関係帳簿の電子保存について電子データの保存を認める
2005(平17)年スキャナ保存が認められる同年にe-文書法が施行され、スキャナによる保存が認められる
2015(平27)年スキャナ保存の要件を緩和スキャナ保存は当初3万円以上の領収書等に限られたが金額要件は廃止
電子署名もタイムスタンプのみが必要となる
スキャナ保存の要件の追加スキャナ保存に際し、適正事務処理要件を追加
2016(平28)年スキャナ保存の要件を緩和スキャナ装置の要件緩和、スマートフォンやデジカメの活用OK、小規模企業者への事務処理要件緩和
2018(平30)年電子帳簿保存法の特例追加等電子帳簿承認の提出期限の特例、承認申請手続きの改正等
2020(令2)年電子帳簿保存法の要件緩和タイムスタンプの見直し
2021(令3)年抜本的な見直しや緩和
(電子帳簿等保存)
電子帳簿保存法適用の事前承認制度廃止
優良な電子帳簿の過少申告加算税優遇
(スキャナ保存)タイムスタンプ付与期間の緩和
(3営業日から最長2カ月+7営業日へ)
適正事務処理要件の廃止
電子データの改ざんに重加算税の加重
(電子取引)タイムスタンプ・検索要件の緩和
データ保存の義務化(宥恕措置あり)
電子データの改ざんに重加算税の加重

参考:電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁

電子帳簿保存法の改正ポイント(令和3年度税制改正版)

マネーフォワード クラウドは電子帳簿保存法に対応

マネーフォワード クラウドは電子帳簿保存法に対応。『マネーフォワード クラウド会計』にアップロードした証憑データは、改正電子帳簿保存法の保存要件に対応した『マネーフォワード クラウドBox』に自動保存されます。
また、メールで受け取ったPDFの請求書や領収書を『マネーフォワード クラウド会計』に取り込むだけで保存完了。データ連携した銀行明細やクレジットカード明細は自動でデータが保存されます。

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電子帳簿保存法に対応してDX化を進めよう

デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織全体を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されています。その一環として、電子帳簿等保存制度はペーパーレス化だけでなく、会計業務の効率化やさらなるデータ分析に応用することができます。

電子帳簿保存法も、ある程度は事業者の状況を見ながら法改正が行われ、緩和措置も設けられっています。特に電子取引などへの対応が困難な場合には、猶予措置などでしばらくは様子を見るなどして、組織全体を見据えたDXを推進することをおすすめします。


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