• 更新日 : 2026年1月20日

社会保険料の改定はいつ?タイミングや手続きと計算方法を解説

社会保険料の改定時期は、原則として年1回の「9月」ですが、給与が大きく変動した場合はその「4カ月後」にも変わります。

保険料は、4月から6月の給与平均額をもとに決定される「定時決定」と、昇給や降給で固定給が変更された際に行われる「随時改定」の2つのルールで動いています。

毎月の給与計算業務では、社会保険料の改定は従業員の手取り額に直結します。そのため、改定のタイミングや計算方法を正確に把握していないと、過不足の精算など、余計な手間が発生しかねません。

この記事では、社会保険料改定の仕組みと、令和6年・7年の変更点や実務上の注意点をわかりやすく解説します。

社会保険料の改定にはどんな種類とタイミングがある?

社会保険料の改定には、主に毎年決まった時期に行う「定時決定」と、給与変動に応じて行う「随時改定」の2種類があります。

この2つの仕組みを理解することで、なぜ10月頃に手取りが変わるのか、あるいは昇給後に保険料が上がるのかが理解できます。

定時決定(年1回の定期的な見直し)を行う

定時決定とは、年に1回、全被保険者を対象に標準報酬月額を見直す手続きのことです。

原則として、毎年4月、5月、6月に支払われた給与の平均額をもとに新しい等級を決定し、その年の9月から翌年8月まで、新しい標準報酬月額を適用します。

この定時決定によって決まった新しい保険料は、「9月分」から適用されます。

社会保険料は、「前月分の保険料を当月支払う給与から徴収(9月分の保険料を10月に支払う給与から引く)」ことになっているため、実際に給与明細上の金額が変わるのは「10月支給の給与」からです。

項目内容
対象7月1日時点で被保険者である全従業員
計算基準4月、5月、6月の給与支払額の平均
適用期間その年の9月から翌年の8月まで
給与反映保険料は翌月徴収となるため、10月支給給与から変更

参照:定時決定(算定基礎届)|日本年金機構

随時改定(給与変動時の見直し)を行う

随時改定とは、昇給や降給などで「固定的賃金」に変動があり、かつ一定の条件を満たした場合に、年の途中でも標準報酬月額を変更する仕組みのことです。

「固定的賃金」に変動があった月から3カ月間の平均給与を計算し、標準報酬月額が従来の等級と比べて「2等級以上」の差が生じた場合に、変動月から4カ月目に改定されます。

たとえば、4月に支払う給与で昇給があった場合、4・5・6月の給与平均を見ます。そこで標準報酬月額に2等級以上の差があれば、7月分の社会保険料(8月支給の給与から徴収)から標準報酬月額の変更に伴い社会保険料の金額が変わります。定時決定を待たずに実態に合わせるためのルールといえるでしょう。

参照:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

育児休業終了時などの改定

産前産後休業や育児休業等が終了して職場復帰した際、時短勤務などで給与が下がることがあるため、随時改定に該当していなくても特例として保険料を見直す制度があります。

復帰後3カ月間の給与平均をもとに計算し、これまでの標準報酬月額と1等級でも差があれば改定が可能です。これは被保険者からの申し出が必要な手続きであり、自動的には行われない点に注意しましょう。子育て世代の負担を軽減するための措置として設けられています。

参照:育児休業等終了時報酬月額変更届の提出|日本年金機構産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出|日本年金機構

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社会保険料の定時決定における計算ルールとは?

社会保険料の定時決定では、4月から6月に支払われた給与総額(残業代や通勤手当を含む)を対象月数で割り、その平均額を「標準報酬月額等級表」に当てはめて決定します。

そのため、この期間に残業が多かったり、通勤手当が高額だったりすると、1年間の社会保険料が高くなる仕組みになっています。

4月・5月・6月の給与が基準になる理由

この3カ月間が基準となるのは、年度初めの昇給などが反映されやすく、かつ年間を通じて平均的な業務量になりやすい時期と考えられているためです。

支払われた給与には、基本給だけでなく、役職手当、家族手当、通勤手当、そして残業代など、労働の対価として支払われるすべてのものが含まれます。

ただし、臨時に支払われるもの(結婚祝金や大入り袋など)や、年3回以下の賞与はここには含みません。あくまで「毎月決まって支払われるもの」と「その月の変動給(残業代)」が計算のベースとなります。

支払基礎日数が17日未満の月の取り扱い

給与計算の対象となる期間(支払基礎日数)が17日未満の月は、計算の対象から除外します。一般社員は、支払基礎日数が「17日以上」ある月の給与を平均して標準報酬月額を算定します。

たとえば、4月と6月は20日出勤したが、5月は欠勤が多く15日しか出勤しなかった場合、4月と6月の2カ月分の平均で標準報酬月額を算定します。3カ月ともすべて17日未満の場合は、従前の標準報酬月額で決定されます。

パートタイマーやアルバイトの方で、就業規則等により1週間の所定労働時間及び1カ月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上となる場合も、社会保険に加入しなければなりません。このような一般社員より短時間の労働条件で勤務する方で、被保険者となっている従業員は、支払基礎日数が17日以上の月で計算するのは同じですが、17日以上の月が1カ月もない場合、15日以上の支払基礎日数がある月の給与の平均で標準報酬月額を算定します。3カ月ともすべて15日未満の場合は、従前の標準報酬月額で決定されます。

また、社会保険の適用拡大により「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」に該当する企業に勤務するパートタイマーやアルバイトの方(短時間労働者)は、週の所定労働時間が20時間などの一定の要件を満たすと、社会保険加入の対象者となります。このような社会保険の適用拡大により被保険者となっている従業員は、一般社員のケースの支払基礎日数「17日以上」を「11日以上」と置き換えて標準報酬月額を算定します。

このように、勤務日数によって計算に含めるかどうかの判断が変わるため、勤怠データの確認は欠かせません。

参照:算定基礎届の記入・提出ガイドブック 令和7年度|日本年金機構

保険料額表と等級の確認方法

計算した平均月額を、加入している健康保険組合や都道府県ごとの「保険料額表」に当てはめて等級を決定します。

健康保険料率は「都道府県」や「加入している組合(協会けんぽか組合健保か)」によって異なります。

一方で、厚生年金保険料率は全国一律で「18.3%」(労使折半で9.15%ずつ)と決まっています。

たとえば、「協会けんぽ・東京」に加入している事業所で、従業員の平均給与が30万円だった場合、東京都の保険料額表を見て、その金額がどの等級(例:22等級など)に該当するかを確認します。

これが北海道や大阪の事業所であれば、同じ給与額でも健康保険料率が異なるため、保険料の徴収額が変わります。毎年3月分(4月納付分)から健康保険料率が改定されることが多いため、必ず最新かつ自社の所在地の保険料額表を確認することが間違いを防ぐポイントです。

参照:都道府県毎の保険料額表|協会けんぽ
参照:厚生年金保険料額表|日本年金機構

社会保険料の随時改定が発生する条件とは?

随時改定は、以下の3つの条件がすべて揃ったときに行われます。

  • 固定的賃金の変動
  • 変動月から3カ月間の平均による標準報酬月額に2等級以上の差が発生
  • 3カ月間すべて支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所や任意特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)

どれか一つでも欠ければ、給与が大きく変わっても定時決定(次の9月)までは保険料は変わりません。

固定的賃金の変動とは何を指すのか

固定的賃金とは、毎月決まった額で支給される給与項目のことです。

基本給のベースアップやダウン、役職手当の変更、通勤手当(月額)の変更、歩合給の単価や歩合率の変更、家族手当の支給開始などが該当します。

一方で、残業代(非固定的賃金)だけが急増して給与総額が増えたとしても、固定的賃金が変わっていなければ随時改定の対象にはなりません。あくまで「固定給」の変動がトリガーとなる点を押さえておきましょう。

2等級以上の差が生じるとは

変動後の3カ月間の平均額による標準報酬月額と、現在の標準報酬月額を比較して、等級表上で2ランク以上の差が生じた場合を指します。

たとえば、現在が20等級の場合、計算結果が22等級以上または18等級以下になれば改定対象です。

ただし、給与が上がったのに等級が下がる、あるいは給与が下がったのに等級が上がるような逆転現象が起きている場合は、随時改定を行いません。

「基本給は上がったが、残業が減って総額が下がり、等級が下がった」ケースや、「手当が廃止されて固定給は下がったが、残業が急増して等級が上がった」ケースなどは随時改定の対象外となります。

また、特定の上限等級や下限等級付近では、1等級の差でも改定される特例があるため、極端に高い給与や低い給与の場合は個別の確認が必要です。

3カ月とも支払基礎日数を満たしているか

随時改定を行うには、変動月からの3カ月間すべてにおいて、支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所や任意特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)である必要があります。

もし1カ月でも日数が不足していれば、随時改定は行われません。

たとえば、昇給した直後に体調不良で長期欠勤し、日数が足りない月が発生した場合は、そのタイミングでの改定は見送られます。

参照:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

令和6年(2024年)・令和7年(2025年)の主な変更点

ここ数年、社会保険の適用範囲拡大や料率の見直しが頻繁に行われています。

特にパート・アルバイトを雇用している企業にとっては、加入義務の範囲が変わっているため、過去の知識のままでは対応漏れが生じるおそれがあります。

令和6年10月からの適用拡大(51人以上の企業)

令和6年10月から、社会保険の適用拡大の対象が「従業員数(厚生年金保険の被保険者)51人以上」の企業にまで広がりました。

週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8.8万円以上などの条件を満たすパート・アルバイト従業員は、社会保険への加入が必要になっています。

これまで「101人以上」の企業が対象でしたが、この改正により中小規模の事業所でも対応が求められるようになりました。新たに対象となる従業員がいる場合は、資格取得届の提出や本人への説明が必要です。

参照:社会保険適用拡大特設サイト|厚生労働省

令和7年度以降の改定トレンドと見通し

令和7年(2025年)以降も、少子高齢化に伴う財源確保のため、料率の微調整や適用範囲の議論が続いています。

特に「年収の壁」対策としての助成金活用や、標準報酬月額の上限見直し、社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象の拡大などが議論の焦点となるでしょう。

現時点(2026年1月)では、健康保険料率や介護保険料率の毎年の見直し(通常3月告知・4月適用)が定例通り行われる見込みです。最新情報は毎年2月頃に協会けんぽや厚生労働省から発表されるため、年度末のニュースのチェックを習慣にしましょう。

雇用保険料率との違い

社会保険料(健保・厚年)と混同しやすいのが雇用保険料ですが、こちらは年度更新(4月1日)で料率が変わることがあります。

令和6年度の雇用保険料率は据え置きでしたが、経済情勢により令和7年度から変更されています。

社会保険料は「標準報酬月額 × 保険料率」ですが、雇用保険料は「毎月の総支給額 × 保険料率」で計算し、給与から天引きする保険料の月分・タイミングが異なるため注意が必要です(社会保険料は翌月徴収、雇用保険料は当月徴収)。両方の改定タイミングを整理しておくことが、正確な給与計算につながります。

参照:雇用保険料率について|厚生労働省

社会保険料の改定の手続きと書類作成の流れ

社会保険料の改定には、年金事務所や健康保険組合への届出が必要です。

ここでは、もっとも一般的な「定時決定」と「随時改定」の手続きフローを整理します。

定時決定(算定基礎届)の提出ステップ

毎年7月1日から7月10日までの間に「被保険者報酬月額算定基礎届」を提出します。

この届出により、9月からの新しい標準報酬月額が決定されます。

  1. 対象者の抽出: 7月1日在籍の全被保険者をリストアップする。
  2. 給与データの集計: 4・5・6月の支払日数と報酬額を集計する。
  3. 届出書の作成:算定基礎届に記入、または給与ソフトからデータ出力する。
  4. 提出:管轄の年金事務所または事務センターへ郵送・電子申請する。

手続きには、e-Govやマイナポータルを利用した電子申請が推奨されています。手書きの手間や郵送コストを削減できるため、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参照:e-Govのサービス|e-Govポータル

随時改定(月額変更届)の提出ステップ

随時改定の条件(固定的賃金の変動+3カ月平均で2等級差+3カ月間の支払基礎日数の条件)を満たした対象者がいる場合、速やかに「被保険者報酬月額変更届」を提出します。

提出期限は特に定められていませんが、改定月の前月までに行うのが実務上の理想です。

  1. 変動の確認:毎月の給与計算時に、固定的賃金の変動者をチェックする。
  2. 3カ月の経過観察:変動月から3カ月間の支払基礎日数と平均額を監視する。
  3. 該当判定:2等級以上の差があるか確認する。
  4. 届出書の提出:4カ月目の給与計算前、あるいは確定後に速やかに提出する。

決定通知書の確認と給与システムへの反映

届出を提出した後、年金事務所から「標準報酬決定通知書」または「標準報酬改定通知書」が送られてきます。

この通知書に記載された新しい等級と保険料を、給与計算システムに登録する作業を忘れてはいけません。

9月分保険料は10月の給与から控除します。9月の給与計算時にはまだ古い料率のままで、10月の計算時に新しい等級に切り替える設定が必要です。

この切り替えのタイミングを間違えると、全従業員の保険料計算に間違いが生じるおそれがあるため、ダブルチェックを行いましょう。

社会保険料の改定が会社経営と従業員に与える影響

社会保険料の改定は、企業のキャッシュフローや従業員のモチベーションにも関わります。

ここでは、経営視点と従業員視点の双方から、改定の影響を深掘りします。

会社負担分のコスト管理

社会保険料は労使折半であるため、従業員の保険料が上がれば法定福利費が増加します。

特に全社員一律のベースアップを行った年は、その年の定時決定(9月)以降、社会保険料負担が跳ね上がることになります。

資金繰りの計画を立てる際は、昇給による給与額の増加だけでなく、それに伴う「半年後の社会保険料アップ」も人件費の予算に組み込んでおく必要があります。

従業員の手取り額への影響と説明

従業員にとって、社会保険料の等級が上がることは「手取りの減少」を意味します。

「昇給したはずなのに、10月から突然手取りが減っている」という不満を持たれないよう、事前の説明が必要です。

給与明細にメモを入れる、あるいは社内掲示板で「定時決定による保険料改定の時期です」とアナウンスするなどの工夫をしましょう。将来の年金受給額が増えるメリットや、傷病手当金の給付基礎額が上がる点など、ポジティブな側面もあわせて伝えると、納得感が得られやすいでしょう。

4月~6月の残業コントロール

定時決定の計算期間である4月から6月に残業が集中すると、その年の保険料が高くなる可能性があります。

不必要な残業を削減し、業務効率化を進めることは、従業員の手取り確保と企業のコスト削減の両面でメリットがあります。

もちろん、繁忙期でやむを得ない場合もありますが、可能な限りこの期間の業務負荷を平準化するよう現場マネージャーに働きかけるのも、バックオフィスからの有効な経営支援策といえるでしょう。

社会保険料改定の正確な把握でトラブルを防ぐ

社会保険料の改定は、主に年1回の「定時決定」と、給与変動時の「随時改定」の2つのタイミングで行われます。

特に定時決定による変更は9月分から適用され、多くの企業で10月の給与支給時から手取り額が変わります。

  • 定時決定:4・5・6月の給与平均で決定し、年1回(9月)見直す。
  • 随時改定:固定給変動後3カ月の平均で2等級以上の差が出れば、4カ月目に改定する。
  • 令和8年・9年以降の動向:パートタイマーへの社会保険料の適用拡大、保険料率変更、標準報酬月額の引き上げなどに注意を払う。
  • 実務対応:届出だけでなく、給与システムへの正確な設定変更と従業員への周知を行う。

これらの仕組みを正しく理解し、計画的に準備を進めることで、給与計算ミスや従業員からの問い合わせを未然に防げます。まずは、次の給与計算のタイミングで、改定対象者がいないか再確認することから始めてみましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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