- 更新日 : 2024年8月23日
資金繰り表とは?エクセルでの作り方・無料テンプレートも
健全な会社経営を行っていくためには、「資金繰り表」を適切に作成することが重要です。資金繰り表の必要性は認識しているものの、具体的にどのように作成すればよいか、わからない方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、資金繰り表の作成によって得られるメリットに加え、サンプルを用いて、具体的な資金繰り表の作成手順を解説していきます。
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目次
資金繰り表とは
「資金繰り表」とは、一定期間における資金の動きを把握するための管理表のことをいいます。以下にて、サンプルを見てみましょう。
資金繰り表の主な目的は「一定期間の収入・支出の結果、月末の現預金残高がいくらになるのかを管理すること」です。資金繰り表を適切に作成することによって、資金計画・実績が可視化され、資金ショートを防げるなど、さまざまなメリットがあります。
資金繰り表のテンプレート – 無料でダウンロード
健全な事業運営には、適切な資金管理が不可欠です。資金繰り表、および資金計画実績表テンプレートは、月ごとの予算と実績を把握するための管理表です。
予算と実績の差異を分析することで、資金繰りの状況を正確に把握し、必要に応じて適切な対策を講じることができます。また、将来の資金需要を予測し、計画的な投資や資金調達を行うことも可能です。
ぜひこのテンプレートをダウンロードして、ご活用ください。
資金繰り表の作成に必要な資料
資金繰り表を作成するためには、数字の根拠となる資料を準備する必要があります。予測数値を作成する場合と、実績数値を作成する場合と、それぞれに必要な資料を説明していきます。
予測数値の入力に必要な資料
予測数値を作成するためには、将来の予測を織り込んだ予算や計画資料を準備しなければなりません。具体的に必要となる資料は、設備投資予算・将来の販売計画・人員計画等です。
過去の数字をそのまま利用する場合には、決算書や会計帳簿の数字を利用できますが、可能な限り「将来の予測数値」を準備することが重要です。
また、資金ショート防止の観点から、予測数値はある程度「保守的」に作成することを推奨します。必要に応じて、予算数値等を補正して利用することも検討してみてください。
実績数値の入力に必要な資料・帳簿
実績数値の作成においては、過去の実績を取得するために、決算書や会計帳簿を準備する必要があります。現金預金の動きを把握することがポイントとなるため、現金預金に関する会計帳簿を準備しましょう。
「現金出納帳」「預金出納帳」といった補助簿を作成している場合には、これらを活用できます。また、補助簿を作成していない場合には、現金預金の「総勘定元帳」から同様の数字を取得して進めるとよいでしょう。
資金繰り表の作り方(エクセル対応)
資金繰り表は、比較的シンプルな計算式で作成することができます。資金の動きは「収入(キャッシュイン)」か「支出(キャッシュアウト)」しかありませんので、以下の式で資金繰り表を作成していきましょう。
上図(予算数値)で言うと、3月末残高(500)+収入-支出(700)= 4月末残高(1,200)といった流れで現金預金の残高を管理することになります。
経常収支、非経常収支、財務収支を区分する
資金繰り表を作成する際には、収入・支出を以下の3つに区分して記載すると、効果的に資金管理を行うことができます。
- 経常収支
- 非経常収支
- 財務収支
まず「経常収支」には、毎月経常的に発生する収入・支出を記載します。具体的には、売上による収入や、人件費・家賃・原材料費といった支出が該当します。各収入および支出は、項目別に入力することで合計されるように式を組んでおくと集計作業が楽になります。
また、経常支出については、「固定費」「変動費」に分けて記載すると、より効果的な管理ができるようになり、経営分析にも利用できるでしょう。
次に「非経常収支」には、毎月経常的に発生するわけではない収入・支出を記載します。具体的には、固定資産の売却による収入、固定資産の購入による支出、法人税等の支払いによる支出といった項目が該当します。
経常収支と合わせて記載する方法も考えられますが、管理レベルを上げる観点から区分しておくことを推奨します。作成の手間が大きく増えるわけではないため、区分して管理してみてください。
最後に「財務収支」には、金融機関からの借入による収入や返済による支出を記載します。「経常収支」「非経常収支」によって次月残高がマイナスとなるような場合には、新規借入によって資金ショートが起こらないような資金計画を策定する必要があります。
予測数値の作り方
資金ショートの防止や融資の必要性を説明する際に利用するという観点では、「将来のキャッシュフロー」を適切に数値化することが重要です。そのため、資金繰り表を作成する際には、実績数値だけでなく、予測数値も適切に作成する必要があります。
予測値を作成する際には、販売計画、設備投資予算、人員計画といった会計帳簿以外の資料を利用する必要があります。過年度の実績を参考にするといった作成方法でも問題はありませんが、可能な限り「将来の予測」を織り込むことが重要です。
また、予測数値はある程度「保守的」に作成することを推奨します。「次月繰越」がギリギリプラスとなっているような状態ではないか、販売計画に無理がないか、経費に漏れがないかといった観点で資金ショートが起こらないように留意しましょう。
実績数値の作り方
実績数値は、予測数値よりも簡単に作成できます。「現金出納帳」や「預金出納帳」といった補助簿を作成している場合には、これらの資料から項目別に現金預金の入金・支出を転記していきましょう。また、補助簿がない場合には、現金や預金の「総勘定元帳」から数字を取得することも可能です。
資金繰り表の作り方(日本政策金融公庫)
日本政策金融公庫が提供する資金繰り表は、以下の5つの主要なセクションで構成されています。これらのセクションは、企業の資金の流れと将来の財務予測を把握するために重要です。
前期繰越金額
前月末の現金及び預金残高(当座預金、普通預金)を、各金融機関及び口座別に記録します。これにより、新たな計算期間の開始点を明確にします。
収入計
このセクションでは、現金売上、売掛金の現金回収、手形の期日落ち、手形割引などの収入源を詳細に分類し、これにその他の収入を加えた合計が収入計となります。
支出計
支出は、現金での仕入れ、買掛金の現金支払い、手形の決済に加えて、賃金給与、支払利息、その他の経費などで構成されます。これらの支出を合計した金額が支出計です。
財務収支計
このセクションは、事業活動とは直接関連しない財務活動からの収入と支出を記録します。これには短期及び長期の借入金とその返済が含まれ、借入金から返済額を差し引いた合計が財務収支計となります。
翌月繰越金
すべての計算を終えた後の残高が翌月への繰越金として記録されます。これは前期の繰越金、収入と支出の差額、財務収支計の合計から成り立っています。
資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い
なお、資金繰り表は、キャッシュフロー計算書と似たような資料ですが、以下の点で異なります。
- 過去の実績だけでなく、将来のキャッシュフローの管理にも利用される
- 決算書のような外部公表資料ではなく、内部管理の目的で利用される
キャッシュフロー計算書との違いも意識しながら、資金繰り表を作っていきましょう。
キャッシュフロー計算書
キャッシュ・フロー計算書は、主に会計年度における企業の金銭的な流れを詳細に報告する公式文書です。これは、財務諸表の一部として、貸借対照表や損益計算書と共に、会社の経営成績や財務状態を示すものです。
特に大規模法人においてはその作成が法的に義務付けられており、事業の収益性や健全性を外部のステークホルダーに明示する重要な役割を果たしています。一方で、中小企業でも金銭の流れを明確にするために利用されることが推奨されています。
資金繰り表
資金繰り表は、現在および将来の資金の流れを予測するために用いられるツールで、企業規模を問わず任意で作成されます。
資金繰り表は特に直感的で理解しやすい構成がされており、自社の資金管理を助けるためや、金融機関からの融資を受ける際の資料として利用されることが多いです。資金繰り表は、特に中小企業においてその柔軟性と実用性から重宝されています。
資金繰り表を作成するメリット
資金繰り表の作り方の解説に入る前に、資金繰り表を作成するメリットを理解しておきましょう。ここでは、1.黒字倒産の防止、2.金融機関からの融資がスムーズとなる、3.経営判断に利用可能という3点からメリットを解説していきます。
黒字倒産を防ぐことができる
損益計算書上の利益がプラスとなっているにもかかわらず、現金預金の残高がマイナス(資金ショート)となることにより倒産してしまうことを「黒字倒産」といいます。
これは、入出金(キャッシュフロー)のタイミングと、売上・費用の計上タイミングのズレから生じるものです。例えば、工場設備を現金一括で購入した場合、購入時点において全額キャッシュアウト(出金)が生じるのに対し、損益計算書上は、減価償却により一定期間にわたって費用化されていきます。このようなタイミングのズレが要因となり、「黒字倒産」が生じる可能性があります。
この黒字倒産を防止するためには、入出金のタイミングを適切に管理する必要があります。資金繰り表を作成することによって、将来の入出金のタイミングが掴めます。現預金の残高を適切に管理できるため、黒字倒産を防止できるでしょう。
金融機関からの融資がスムーズに
資金繰り表を適切に作成すれば、金融機関からの資金融資をスムーズに受けられるというメリットもあります。金融機関から融資を受ける際には、なぜこのタイミングで、なぜこの金額を借り入れる必要があるのかを合理的に説明する必要があります。
金融機関から融資を受ける際に資金繰り表が作成されてないと、数字的な根拠を持って借入の必要性が説明できず、金融機関からの信頼が得られないおそれもあるでしょう。
そのため、金融機関から融資をスムーズに受けるためには、事業計画書の作成はもちろんのこと、資金繰り表を作成し、将来の資金計画を可視化することが重要です。
効果的な経営判断に利用できる
資金繰り表を作成すると、先手を取った経営判断を行えるといったメリットもあります。
例えば、経常収支・非経常収支・財務収支といった区分を設けて資金を管理することで、本業から安定したキャッシュフローを得ることができているのか、営業債権の回収が滞っていないか、借入金の返済が滞るリスクはないかといった具合に、収支の内容ごとに現状を把握できます。
このようなキャッシュフロー情報を活用できれば、販売戦略の策定、在庫管理方針の策定、債権回収計画の策定、追加融資の必要性の判断など、トラブルに繋がる前に効果的なアクションを起こせるでしょう。
資金繰り表を活用して健全な事業運営を
資金繰り表を作成することで、1.黒字倒産の防止、2.金融機関からの融資がスムーズとなる、3,経営判断に利用可能と、さまざまなメリットを受けることができます。
実務上は、予測数値の計算等に苦労することも多いですが、資金繰り表の数式自体は、比較的シンプルな計算式で簡単に作成することができます。
健全な事業運営をしていくためには、決算書や事業計画書と同じように非常に重要な書類となります。サンプルフォーマットを参考に、ぜひ作成してみましょう。
よくある質問
資金繰り表とは?
資金繰り表は、一定期間における資金の動きを把握するための管理表です。一定期間の収入、支出の結果、月末の現預金残高がいくらになるのかを管理することで、資金ショートを防ぐなどさまざまなメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
資金繰り表の作り方は?
資金繰り表は、「収入(キャッシュイン)」か「支出(キャッシュアウト)」のみで構成されており、「前月残高 +収入 - 支出 = 月末残高」と、比較的シンプルな計算式で作成することができます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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