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  • 更新日 : 2021年4月2日

法定福利費とは?福利厚生費との違いや計算式、仕訳例や建設業の見積書作成

法定福利費(ほうていふくりひ)は、会社の福利厚生に関わる経費です。
似たような用語で「福利厚生費」や「法定外福利費」と混同して、詳しく理解していない方も多いのではないでしょうか。

しかし法定福利費は事業者にとっても、従業員にとっても非常に重要な費用です。
当記事では「法定福利費とは?」という基礎部分や福利厚生費との違い、計算例仕訳の方法などを解説します。

法定福利費とは?

法定福利費とは、健康保険法、労働基準法、厚生年金保険法などのさまざまな法律・法令によって定められた「事業者に負担が義務付けられている福利厚生の費用」です。
勘定科目ではそのまま「法定福利費」として分類します。
法定福利費は「住宅手当支給」や「レストランやレジャー施設割引」などの会社オリジナルの制度とは違い、どの事業者も必ず負担しなければなりません。

しかし、金額分は経費計上できるため、正しくうまく使えば節税につながります。
割合は主に「事業者の全額負担」「事業者と従業員の半々負担である労使折半(ろうしせっぱん)」の2パターンです(雇用保険料は除く)。
従業員から徴収する方法は、あらかじめ給料から天引きするケースが多くなります。

法定福利費には、以下の社会保険などが含まれます。

健康保険

健康保険とは、労働者やその扶養家族に疾病、負傷などが発生したときに適用される保険です。

健康保険料は労使折半で支払います。

保険料の算出方法は、健康保険の保険者(保険を提供する側)が「協会けんぽ」か「健康保険組合」で変わるため、仕訳時には注意が必要です。

  • 協会けんぽ:標準報酬月額(標準賞与額)と都道府県ごとの保険料率に基づいて計算
  • 健康保険組合:組合が独自に定めた保険料率や基準に基づいて計算

ちなみに、国が保険者となる「国民健康保険」はまた別の計算式になります。

※標準報酬月額:ある定められた報酬の等級テーブル(21万以上~23万円未満など)を、その年の4~6月の平均給与を基にした報酬に当てはめて決定する基準の金額

厚生年金保険

厚生年金保険とは、労働者の老齢(原則65歳以上)、障害、死亡に対して適用される保険です。

厚生年金保険料は労使折半で支払います。

保険料の計算式は「標準報酬額(標準賞与額)×厚生年金保険料(18.3%)」です。

介護保険

介護保険とは、加齢により発生する心身の変化により必要になる、介護に対して適用される保険です。

介護保険料は労使折半で支払います。

保険料を決める要素は次のとおりです。

  • 第1号被保険者(65歳以上)か第2号被保険者(40~65歳未満)か
  • 第1号被保険者は市町村区が所得に応じて決定
  • 第2号被保険者は加入保険が事業で入っている保険か国民健康保険かによって変化

事業者、従業員の多くが当てはまる第2号被保険者としての介護保険料は、満40歳に達した月から64歳までの支払いになります。

計算式は、「標準報酬月額(標準賞与額)×介護保険料率」です。

介護保険料の基準は、介護保険事業計画に基づいて3年ごとに見直されます。

雇用保険

雇用保険とは、労働者が失業や雇用継続が困難になる事態が発生したときに、求職者給付(失業保険)や再就職手当を支給する保険です。

雇用保険料は事業者と従業員がそれぞれ支払いますが、労使折半ではありません。

業種が「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」かによって、負担割合が変化します。

  • 一般の事業:従業員1/3:事業者2/3
  • 農林水産・清酒製造の事業:従業員4/11:事業者7/11
  • 建設業の事業:従業員1/3:事業者2/3

計算式は「賃金総額×雇用保険料率」です。
保険料率も業種によって違いがあるので、事前に確認しておきましょう。

参考サイト:雇用保険率について|国税庁

労災保険

労災保険とは、業務上の事柄などが原因で負傷などをした場合に、公正な保護のために給付を行う保険です。

労災保険料は「事業者の100%負担」になります。

保険料の計算式は「賃金総額×労災保険料率」です。

事業の種別によって非常に細かく分かれているため、自社がどの保険料率に当てはまるのかチェックしておきましょう。

子ども・子育て拠出金

子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)とは、国や地方自治体が実施する子育て支援サービスのために、事業者から徴収するものです。

労災保険と同じく、事業者が100%納付します。

従業員とは直接関係はありませんが、こちらも法定福利費として処理可能です。

計算式は「標準報酬月額×こども・子育て拠出金率」になります。

拠出金率は、2020年5月より0.34%から0.36%と0.2%増加しました。

福利厚生費との違い

厳密に言えば、法定福利費は福利厚生費の一部です。

福利厚生費は本来「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類に分けられます。

法定外福利費はいわゆる「事業者の福利厚生制度に関係する費用」であるため、そのまま「法定外福利費=福利厚生費」と称することも少なくありません。

また勘定科目の仕訳も、法定外福利費は「福利厚生費」として仕訳されます。

よって当記事では、法定福利費との混同を避ける意味でも、法定外福利費を福利厚生費として定義して進めます。

以下より、福利厚生費の詳細を見ていきましょう。

福利厚生費に該当することが多いもの

福利厚生費とは、従業員やその家族の健康や福祉、生活の向上を目的とした、事業主が独自に定める福利厚生制度の費用です。

こちらも経費として申請できるため、節税と従業員の満足度の両方に貢献できます。

法定福利費と違いは「法律で支払いが義務付けられていない」「あくまで事業主の任意で負担する」という点です。

言い換えれば明確な基準がないため、内容次第では福利厚生費として認められない可能性もあります。

以下では、福利厚生に該当することが多いものをご紹介します。

福利厚生費に該当するもの概要
社宅の賃料(住宅手当)従業員が住む社宅や賃貸の家賃補助
交通手当従業員の通勤にかかる支出の補助
出張手当業務のための出張にかかる支出の補助
慶弔見舞金従業員への結婚祝金、出産祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、傷病見舞金
慰安旅行旅行の期間が4泊5日以内かつ全社員の50%以上が参加している旅行の支出
新年会、忘年会、親睦会等新年会、忘年会、親睦会、歓送迎会、慰安会にかかる支出
残業時の食事代従業員の残業中に食事を提供したときにかかった支出
保養所・別荘レストラン、レジャー施設などの保養所や別荘の利用費の補助
その他人間ドックや永年勤続記念品、クラブ・サークル活動に対する補助や資格取得費用など

最近では、従業員の生活・健康を守り生産性向上を目指すウェルネス経営が注目されたり、働き方改革が進んでいたりなど、福利厚生にスポットが当たっています。

経営者側としては「福利厚生費をいかにうまく使うか」が、今後は重要となるでしょう。

福利厚生費として扱われない可能性があるもの

福利厚生費として認められるのは、次の条件を満たしたケースです。

  • 機会の平等性:すべての従業員が利用できること
  • 金額の妥当性:支出金額が常識的に妥当な範囲であること
  • 現金もしくは換金性がある現物の支給でないこと

日本経済団体連合会の調査によると、2018年度の「従業員1人1ヵ月あたりの福利厚生費(法定外福利費)」の平均は2万5,369円でした(法定福利費は8万8,188円)。

1ヵ月の使用目安は、2万5,000円前後が1つの基準といえそうです。

法定福利費の計算方法

ここでは実際に、法定福利費の計算方法を具体的に見ていきます。

法定福利費に該当する金額の計算式を、あらためて確認しましょう。

法定福利費に該当するもの計算式(事業者負担分)
健康保険料標準報酬月額(標準賞与額)×健康保険料率×1/2
厚生年金保険料標準報酬月額(標準賞与額)×厚生年金保険料率(18.3%)×1/2
介護保険料標準報酬月額(標準賞与額)×介護保険料率(協会けんぽは一律1.79%)
雇用保険料賃金総額×雇用保険料率×負担割合(※)
労災保険料賃金総額×労災保険料率
子ども・子育て拠出金標準報酬月額(標準賞与額)×子ども・子育て拠出金率
参考:令和2年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
参考:協会けんぽの介護保険料率について
参考:労災保険率表

※一般事業所=従業員3/1,000:事業者6/1,000(1:2)
 農林水産・清酒製造の事業=従業員4/1,000:事業者7/1,000(約1:1.75)
 建設の事業=従業員4/1,000:8/1,000(1:2)

以下では一定の条件を設定し、具体的な計算例を見ていきます。

  • 標準報酬月額:36万円
  • 賃金総額:400万円
  • 東京都在住(健康保険率9.87%)
  • 協会けんぽの介護保険第2号被保険者(介護保険率1.79%)
  • 一般の事業(0.09%:事業主負担2/3)
  • 小売業(労災保険料0.3%)

数値は2020年11月のものです。

<健康保険料>
標準報酬月額36万円×健康保険料率9.87%=35,532円
事業者負担分=35,532×1/2=17,766円/月

<厚生年金保険料>
標準報酬月額36万円×厚生年金保険料率18.3%=65,880円
事業者負担分=65,880×1/2=32,940円/月

<介護保険料>
標準報酬月額36万円×介護保険料率1.79%=6,444円
事業者負担分=6,444×1/2=3,222円/月

<雇用保険料>
賃金総額400万円×0.9%=3,600円
事業者負担分=3,600円×2/3÷12ヵ月=200円/月

<労災保険料>
賃金総額400万円×0.3%=12,000円
事業者負担分=12,000円÷12ヵ月=1,000円/月

<子ども・子育て拠出金>
標準報酬月額36万円×子ども・子育て拠出金0.036%=1,296円
事業者負担分=1,296円/月

法定福利費の仕訳例

ここからは、法定福利費を仕訳するときの具体例について解説します。

正確な帳簿付けの参考にしてください。

従業員の給与から天引きしたときの仕訳

会社から従業員への給料支給というケースで給料20万円・社会保険料4万円・普通預金からの支払い、という条件で仕訳例を見てみます。

借方貸方
給料200,000普通預金180,000
預り金20,000

まず借方に従業員に支払う給料20万円、貸方に普通預金18万円、預り金2万円を記入します。
預り金は「従業員が支払う社会保険料分を預かっていますよ」という意味での使用です。労使折半であるため、1/2の2万円と記入しましょう。

翌月末に保険料を支払うときの仕訳

続いて徴収した社会保険料を、翌月末に納付した際の仕訳を見ます。

借方貸方
法定福利費20,000普通預金40,000
預り金20,000

翌月末に納付したときは、会社負担分の法定福利費2万円と、従業員から徴収した預り金(社会保険料)2万円を借方に記載します。

貸方にはそれらの納付を普通預金から支払った証拠として、4万円と記入しましょう。

ちなみに、社会保険料のうち労働保険料(労災保険料+雇用保険料)は賃金総額で計算するため、本来は年度末にならなければ数値が確定しません。

そのため一旦、年度当初に「概算保険料(前年度の賃金で試算したもの)」として申告した額を徴収します。

実際の賃金で計算した「確定保険料」は、次年度の概算保険料を申告する際、一緒の申告・納付になります。

申告・納付時期は、6~7月です。

より詳しい仕訳の方法は以下をご覧ください。

簡略した場合の仕訳

法定福利費は少々複雑な仕訳になるため、預り金を省略するケースもあります。

法定福利費を、一旦貸方でマイナス計上する方法です。

借方貸方
給料200,000普通預金180,000
法定福利費20,000

その後、翌月末の納付の際に全額仕訳します。

借方貸方
法定福利費40,000普通預金40,000

「借方に計上した40,000円」-「貸方に計上した20,000円」=「20,000円の法定福利費」が計上されるため、結果的に同じ会計処理となります。

建設業は法定福利費を内訳表示した見積書の作成が必要

建設業の現場作業員は肉体労働が中心の仕事であるため、常にケガや障害を負うリスクを背負いながら業務にあたっています。

しかしその実情と逆行して、法定福利費の負担義務を果たさない(福利厚生を行わない)、保険未加入企業が問題になっていました。

トン単価・平米単価の見積もりを出すのみで、法定福利費の取り扱いが不明瞭だったという課題も指摘されています。

そこで国土交通省、厚生労働省、建設業団体などから構成される「社会保険未加入対策推進協議会」を中心に、下請け企業は「事業主負担分の社会保険料+工事費用」を請求するべしという呼びかけが始まりました。

平成29年9月より、「法定福利費を内訳明示した見積書の作成」のルールが作られています。

以下では、その新ルールを適用した見積書の作成手順をご紹介します。

内訳を確認する

はじめに見積書の内訳が、工事業種や各企業の実情に合っているかをチェックします。

材料費労務費、各種経費などの記載項目が揃っているかを見ましょう。

工事ごとの労務費を算出する

正確な福利厚生費を割り出すには、まず工事ごとにかかる労務費の算出が必要です。

企業の実態、人工(作業する人の労働力)、平均的な賃金を基に計算します。

<計算例1.人工数と平均的な賃金で算出する方法>

  • 労務費=所要人工数×平均日額
工事の種類所要人工数平均日額労務費
作業その17人12,000円84,000円
作業その225人25,000円625,000円
労務費の総額709,000円

<計算例2.標準的な歩掛り(工事に要する手間や日数を数値化したもの)から人工数を算出する方法>

  • 人工数=工事数量÷歩掛り
工事数量歩掛り人工数平均日額労務費
250102517,000円425,000円

もし「過去の実績値」「定量化した工事費の増減または数量の増減が労務費と比例している」などのデータがあれば、平均的な労務費の比率を用いて計算する方法もあります。

各専門工事業団体が作成する、標準見積書の数値を使用して算出します。

<計算例3.平均的な労務費比率を用いて算出する方法>

  • 労務費=工事価格×平均的な労務費比率
工事価格平均的な労務費比率労務費
1,500,00025%375,000円

参考:各団体が作成した標準見積書:国土交通省

どの式を用いるかも、各団体が公表している標準見積書を参考にしてください。

労務費を基に法定福利費を算出する

続いての作業は、算出した労務費を基にした法定福利費の計算です。

計算式は「法定福利費の計算方法」で解説したものを使います。請求できるのは、労災保険以外の5種です。

1例を見ていきましょう。

保険料各種
(事業主負担)
労務費法定福利費
(事業主負担)
雇用保険料0.8%375,0003,000円
健康保険料4.935%375,00018,506円
介護保険料0.895%375,0003,356円
厚生年金保険料9.15%375,00034,313円
子ども・子育て拠出金0.36%375,0001,350円
合計16.14%375,00060,525円

上記はあくまで1例です。

国民健康保険加入者だったり、介護保険料支払いの対象者でなかったりすると、また違った保険率を適用します。

見積書に法定福利費を明示する

最後に、算出した法定福利費を記載します。

【引用】国土交通省|平成28年度実施【法定福利費】セミナー教材

法定福利費についてご理解いただけたでしょうか?

法定福利費とは、法律で定められている「事業者が従業員の代わりに必ず支払うべき費用」のことです。

とはいえ、社会保険料や子育て支援サービスのための徴収であるため、従業員や社会にとって非常に大切な決まりになります。

また経費計上すれば節税にもなるので、貸借対照表の記載方法をしっかり理解し、正しい決算を行いましょう。

よくある質問

法定福利費とは?

健康保険法、労働基準法、厚生年金保険法などによって定められた、事業者が従業員の代わりに支払うべき費用のことです。

福利厚生費との違いは?

法定福利費は福利厚生費の一部です。福利厚生費は本来「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類に分けられます。

法定福利費の計算式は?

法定福利費に該当する費用ごとに異なります。詳しくは具体例をご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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