• 更新日 : 2025年9月22日

退職届の効力はいつ発生する?2週間前までの提出ルールや無視された時の対処法も解説

退職届を提出しようと考える時、「本当にこれで辞められるのだろうか」「いつから法的な効力が発生するのか」といった不安がよぎるものです。特に、会社から強く引き止められたり、就業規則を盾に退職を認めないと言われたりすると、その不安は一層大きくなるでしょう。

この記事では、退職届が持つ法的な効力について、民法や労働基準法を交えながら詳しく解説します。

退職届が持つ法的な効力

退職の意思を会社に伝える際、「退職届」や「退職願」を提出します。これらは似ているようで、法的な性質と効力に違いがあります。

退職届と退職願の違い

退職願は、「退職させてください」という労働者から会社へのお願いです。これは労働契約の合意解約の申込みにあたります。そのため、会社が承諾して初めて退職が成立します。会社が受理するまでは撤回できる可能性があります。

一方、「退職届」は、「○月○日をもって退職します」という労働者からの一方的な意思表示です。これは辞職の意思表示にあたり、会社の承諾を必要としません。提出された時点で効力を持つ強い書類であり、原則として一度提出すると撤回はできません。

意思表示から2週間で退職は成立する

正社員のように雇用期間に定めがない場合、民法第627条1項により、労働者はいつでも退職を申し出ることが可能です。そして、その申し入れの日から2週間が経過すると、雇用契約は終了すると定められています。

参考:民法|e-Gov 法令検索

これは法律で定められた労働者の権利です。たとえ会社が退職を認めなくても、無期雇用の場合は、退職の意思を会社に到達させてから2週間が経過すれば、法的に退職が成立します。ただし、有期雇用の場合には、原則として契約期間中の退職はできません。

退職届の効力はいつ発生するのか

退職届の効力発生日は、退職の意思表示が会社に到達した日です。具体的には、人事権を持つ上司などに退職届が渡ったその日からカウントが始まります。

例えば、8月1日に直属の上司へ退職届を提出した場合、民法の原則に従って初日不算入となり、8月15日が退職日となります。口頭で伝えることも可能ですが、後々のトラブルを避けるため、書面で証拠を残すことが確実です。

就業規則の1ヶ月前と法律の2週間はどちらが優先される?

多くの会社の就業規則には「退職を希望する場合、1ヶ月前(あるいは2ヶ月前)までに申し出ること」といった規定があります。この就業規則と、法律で定められた2週間ルールは、どちらが優先されるのでしょうか。

就業規則より法律が優先される

一般的には、就業規則よりも民法627条1項の規定が優先されます。一般的に民法627条は強行法規と解されるためです。

退職のルールは労働基準法ではなく民法

退職届を何日前に出すかについて、労働基準法に定めがあると思われがちですが、直接的な規定があるのは民法です。労働基準法は、解雇の規制など労働条件の最低基準を定める法律ですが、労働者側からの退職の申し出期間については定めていません。そのため、期間の定めのない労働者の退職は、民法第627条のルールが適用されます。

就業規則を無視するリスク

法律上は2週間前の通知で退職できますが、就業規則を全く考慮しないのは、円満な退職を難しくする可能性があります。業務の引き継ぎが不十分なまま退職すると、残された同僚に大きな負担をかけ、職場に混乱を招くかもしれません。

退職届にまつわるトラブルと対処法

退職の意思を伝えたにもかかわらず、会社側がスムーズに対応してくれないケースは少なくありません。「退職願を受け取ってもらえない」「受理されたかどうかわからない」といった状況は、精神的な負担になります。ここでは、具体的なトラブル事例とその対処法を解説します。

退職届が受理されたかわからない場合

退職届を提出したのに、上司から明確な返事がなく、受理されたかわからない状態になることがあります。まずは直属の上司や人事部に、「先日お渡しした退職届の件はいかがなりましたでしょうか」と確認しましょう。それでも返事が曖昧な場合は、「〇月〇日付で退職します」という強い意思を示す退職届を、内容証明郵便で送り直すことを考えましょう。

会社が退職届の受け取りを拒否する場合

上司が感情的になったり、人手不足を理由にしたりして、退職届の受け取り自体を拒否するケースもあります。この場合、内容証明郵便の利用が有効な手段です。

内容証明郵便は、いつ、誰が、どのような内容の文書を、誰に送ったかを郵便局が証明してくれるサービスです。これにより、退職の意思表示が会社に到達した事実を法的な証拠として残せます。手渡しを拒否されても、意思表示をしたという事実が確定します。

退職を伝えて怒られた場合

就業規則通り1ヶ月前に伝えたにもかかわらず、怒られたという話も聞きます。会社としては、人員の補充や引き継ぎの時間を考えると、退職者に対して厳しい態度を取ることがあるかもしれません。

しかし、退職は法律で認められた労働者の自由です。相手が感情的になっても、こちらも感情的にならず、「引き継ぎは責任を持って行います」と誠実な姿勢を伝えましょう。

退職届の正しい書き方と提出方法

退職の意思を固めたら、その意思を明確に会社へ伝えるため、正式な書類を作成して提出します。退職届の書き方で重要なのは、退職理由と退職日をはっきりと書くことです。

  • 表題:退職届
  • 本文:冒頭に「私儀」と記載します。
  • 退職理由:「一身上の都合により」と記載します。詳細な理由を書く義務はありません。
  • 退職日:「来たる令和〇年〇月〇日をもちまして、退職いたします」と退職する年月日を断定的に書きます。
  • 提出日・所属・氏名:提出する年月日、所属部署、氏名を書き、捺印します。

曖昧な表現を避け、退職の意思が固いことを明確に示すことが重要です。

退職届の効力を正しく理解し、円満な退職を

この記事では、退職届の法的な効力について解説しました。無期雇用の正社員であれば、退職の意思を会社に示してから2週間が経過すれば、法的に雇用契約は終了します。ただし、有期雇用契約や就業規則・労使合意によって定められた特約がある場合には、この限りではありません。

円満な退職のためには、できる限り会社のルールを尊重し、後任者への引き継ぎを誠実に行うことが望ましいでしょう。法律知識を正しく身につけることで、不当な扱いに臆することなく、自信を持って会社と交渉し、円滑な退職を実現させましょう。


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