- 更新日 : 2025年8月6日
出勤簿に印鑑を押すだけのリスクとは?法的ルールや正しい勤怠管理を解説
出勤簿に印鑑を押すだけの勤怠管理の一例として、エクセルで作成した出勤簿を印刷し、出勤時に氏名欄へ印を押すような運用があります。この方法では労働時間の実態を正しく把握できず、改ざんのリスクや、残業代の未払いなどのトラブルにつながるケースもあります。本記事では、印鑑による勤怠管理の限界やリスク、法的な要件、そしてより正確で効率的な管理方法について解説します。
目次
出勤簿に印鑑を押す勤怠管理とは?
紙の出勤簿に印鑑を押す勤怠管理は、従業員が出勤・退勤の証明として印鑑を押す昔ながらの方法です。かつては、多くの企業がエクセルなどを使わず紙台帳を使っており、改ざん防止や本人確認の手段として印鑑が用いられてきました。
出社時に氏名欄へ押印することで出勤を示し、企業によっては退勤時にも印を押す1日2回の運用を行っています。ただし、出勤簿に印鑑を押す方法は、出勤した「事実」は記録できても、出退勤の時間や勤務実態までは把握できないのが難点です。そのため、正確な労働時間の把握には不向きといえるでしょう。業務効率化や管理精度の観点から考慮すると、見直しが求められる管理方法というのがわかります。
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労働時間管理の基本ルール【社労士解説】
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時間外労働の管理 労基法違反から守る10のルール
年5日の有給休暇の取得が義務化され、企業には正確な休暇管理が求められています。
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出勤簿(エクセル)
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出勤簿に印鑑を押すだけでは把握できないこと
出勤簿への印鑑の押印だけでは、正確な労働時間や残業時間の把握が難しく、法令遵守の観点からも問題が生じる可能性があります。労働時間の客観的な把握が求められる現在において、この方法だけでは不十分といえるでしょう。
正確な労働時間の記録が難しい
印鑑を押す行為は、あくまで自己申告の確認に過ぎません。例えば、従業員が休憩時間を取らずに働いた場合や、始業時間より早く出勤して準備をしていた場合など、実態と異なる記録になってしまうケースがあります。
残業時間の発生が把握しにくい
残業時間も同様、自己申告に委ねられるため、過少申告や未申告のリスクがあります。また、従業員が無意識のうちにサービス残業を行っている場合、印鑑押印だけの管理ではその事実を把握できず、事業主が適切な残業代を支払わない事態に発展するおそれがあります。
労働時間以外にも管理すべき項目が多い
勤怠管理は労働時間だけでなく、遅刻、早退、欠勤、有給休暇の取得状況、休日出勤、深夜労働など、多岐にわたる項目を把握する必要があります。
出勤簿に印鑑を押すだけでは違法?会社のリスク
出勤簿に印鑑を押すだけの勤怠管理は、それ自体が直ちに違法となるわけではありません。しかし、労働時間の客観的な把握と管理が難しくなるため、労働基準法違反に問われる可能性が高くなるでしょう。
2019年4月1日から労働安全衛生法に基づく労働時間の客観的把握が義務化され、労働時間の客観的な把握の重要性が増しています。
参照:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
労働時間の客観的把握の義務
労働安全衛生法第66条の8の3では、企業に対して労働者の労働時間を客観的な方法で把握するよう義務付けています。そのため、タイムカードやICカード、PCの使用ログなど、客観的な記録によって労働時間を把握することが必要です。
残業代未払いのリスク
労働時間を正確に把握できていない場合、適切な残業代が支払われない、いわゆる「サービス残業」が発生する可能性も高まります。
サービス残業は、労働基準法第37条に違反する行為に該当します。発覚した場合、企業は未払い賃金の支払いに加えて、遅延損害金や付加金の支払いを命じられることがあります。さらに、労働基準監督署からの是正勧告や、悪質な場合には書類送検される場合もあるため、注意が必要です。
労働者名簿や賃金台帳の作成義務にも影響する
労働基準法第107条では労働者名簿の作成・保存義務、同法第108条では賃金台帳の作成・保存義務を定めています。
これらの台帳には、労働時間や賃金に関する正確な情報が必要とされますが、印鑑押印のみの出勤簿ではこれらの台帳作成に必要な詳細なデータが不足しがちです。結果として、法令で定められた帳簿作成義務を適切に履行できないリスクが生じます。
参照:e-GOV 法令検索
正しい出勤管理に必要な項目
正しい出勤管理を行うためには、紙に印鑑を押すだけでなく、労働基準法に基づいた必須項目を漏れなく記録し、客観的な方法で労働時間を把握することも必要です。
ここでは、勤怠管理者が出勤管理をするうえで必要な項目について解説します。
労働者の労働時間
労働者の始業・終業時刻はもちろんのこと、休憩時間の取得状況も正確に記録することが不可欠です。これにより、実労働時間を正確に算出し、適切な賃金計算の基礎とします。
特に、時間外労働や深夜労働、休日労働が発生した場合には、その時間数も明確に記録する必要があります。
参照:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
有給休暇の取得状況
有給休暇の取得は労働者の権利であり、事業主にはその取得状況を管理する義務があります。取得日数、残日数、取得期限などを正確に把握し、計画的付与や時季変更権の行使など、適切な運用ができるようにします。
賃金台帳の作成
賃金台帳には、労働者の氏名、性別、賃金の計算期間、労働日数 労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数、休日労働時間数、基本給や手当などの種類と額、控除項目と額が記載事項とされ、有給休暇取得日数は含まれていません。しかし、年次有給休暇を与えたときは、時季、日数および基準日を各労働者の年次有給休暇管理簿を作成しなければなりません。
これらの情報が正確に記録されていることで、正しい賃金計算が可能となり、税務上の問題や従業員からの問い合わせにも対応できます。
労働者名簿の把握
労働者名簿に記載する事項は、労働者の氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事している業務の種類、雇入年月日、退職や死亡年月日、その理由(原因)です。労働時間に関する情報の記載は法定に必要な項目ではありませんが、実務上、勤怠情報と関連づけて管理することで、雇用管理の効率化が図れます。
出勤簿に印鑑を押す以外で勤怠管理を効率よくする方法
出勤簿への印鑑の押印に代わり、効率的かつ正確な勤怠管理を実現するためには、ツールやシステムの利用などさまざまな方法があります。これらを使うことで、業務効率を向上させ、法令遵守のリスクを低減します。
タイムカードを利用する
タイムカードは、従業員が専用の機械にカードを通すことで、出勤・退勤時刻を自動的に記録する方法です。
客観的な記録が残るため、労働時間の把握がしやすくなり、手書きの出勤簿よりも正確性が高まります。また、記録されたデータは集計しやすく、賃金計算の効率化にもつながります。
ICカードやPCログと連携する
ICカードリーダーを設置し、従業員が所持するICカード(社員証など)をかざすことで出退勤を記録する方法も有効です。さらに、PCの使用ログと連携させることで、PCのログイン・ログオフ時間から労働時間を把握することも可能です。
勤怠管理システムを導入する
最も効率的で正確な方法は、クラウド型の勤怠管理システムを導入することです。システムでは、従業員がPCやスマートフォンから直接打刻できるため、どこからでも勤怠記録が可能です。
また、労働時間、残業時間、有給休暇残日数などを自動で集計し、給与計算システムと連携させることで、人事・経理業務の大幅な効率化が図れます。法改正にも柔軟に対応しているため、サービス残業の防止にもつながります。
出勤簿に印鑑を押印するだけでは勤怠管理として不十分
出勤簿に印鑑を押すだけの勤怠管理は、勤務の「事実確認」に過ぎず、労働時間や残業の把握、法定帳簿の整合性など、本来求められる管理機能を十分に果たしていません。
形式的な押印では、実働とのズレや未払い残業の原因となり、労働基準監督署による是正勧告の対象になることもあります。
こうしたリスクを回避し、効率的な勤怠管理を実現するためには、勤怠管理システムの導入を検討することをおすすめします。印鑑押印に頼る管理から脱却し、クラウドでのシステムを活用することで、法規制を遵守しつつ、従業員の働きやすい環境の整備ができます。その結果、企業の健全な成長と、従業員からの信頼獲得にもつながっていくでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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