- 更新日 : 2025年11月19日
所得税と住民税の違いとは?
「所得税」と「住民税」はどちらも給料から天引きされていて、所得に応じて納める金額が変わってくるなど、似ている要素を持っていますが、計算方法などはそれぞれ違います。
ここではこの2つの税金について、比較しながら解説をしていきたいと思います。
国税と地方税の違い
税金は、納める先によって国税と地方税の2つに分類できます。所得税などの国税は国に納める税金で、納付状況は税務署が管轄します。地方税は各都道府県や各市町村などの地方自治体に納める税金で、納付状況は市税事務所や都道府県税事務所などが管轄します。
また、地方税は「住民税」ともよばれています。納める先が国税とは異なるため、税金の計算方法や納付・徴収方法なども異なります。
金額・計算方法の違い
所得税と住民税では、税額の計算方法や計算の対象となる年度、控除額などに違いがあります。具体的に見てみましょう。
所得割と均等割の合算で計算される住民税
住民税は「所得割」と「均等割」と2つに分けて計算されています。
所得割とは、所得金額に対して支払う税金のことです。前年度の所得(1月から12月までの所得)から計算されるもので、所得税の計算方法に似ています。
均等割とは、住んでいるところで自治体によるサービスを受けるために支払う税金のことです。そのため、原則すべての人にかかります。ただし、所得金額が低い場合など、一定のケースでは、均等割が非課税となります。均等割は地方税独自の税金です。
所得税などの国税では所得金額がなければ税金もかかりませんが、住民税は原則、所得金額がなくても均等割の納付があります。
対象年度の違い
所得税は「その年」、つまり1月から12月までの所得から計算される税金です。一方で、住民税は「前年」の所得をもとに計算されます。
まず、所得税は、実際に金銭のやりとりがあった年の年末調整や確定申告をした時点で確定します。給与等の場合には、給与の支払者が支払時に源泉徴収し、年末調整で精算します。給与以外の収入がある人や2か所以上から給与の支払がある人は確定申告を行います。
住民税は前年の所得にもとづいて税額計算が行われ、6月から翌年5月までの住民税が決定されます。
たとえば令和2年に入社した新卒社員の場合、令和2年分所得税は平成29年1月から12月の所得に課税されます。
一方、令和3年度の住民税は令和2年1月から12月の所得に課税され、令和3年6月から納めることになります。
控除額の違い
所得税と住民税では、収入から差し引く「控除額」に違いがあります。
所得控除(人的控除)
| 所得控除 | 住民税 | 所得税 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 15~43万円 | 16~48万円 |
| 配偶者控除 | 11~33万円 | 13~38万円 |
| 老人配偶者控除 | 13~38万円 | 16~48万円 |
| 配偶者特別控除 | 1~33万円 | 1~38万円 |
| 一般の扶養控除 | 33万円 | 38万円 |
| 特定扶養控除 | 45万円 | 63万円 |
| 老人扶養控除 | 38万円 | 48万円 |
| 同居老親等扶養控除 | 45万円 | 58万円 |
| 障害者控除 | 26万円 | 27万円 |
| 特別障害者控除 | 30万円 | 40万円 |
| 同居特別障害者控除 | 53万円 | 75万円 |
| 寡婦控除 | 26万円 | 27万円 |
| ひとり親控除 | 30万円 | 35万円 |
| 勤労学生控除 | 26万円 | 27万円 |
所得控除(物的控除)
| 所得控除 | 住民税 | 所得税 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除(新制度) | 合計控除限度額7万円 | 合計控除限度額12万円 |
| 【内訳】一般・介護医療・個人年金分 | 限度額 各2万8千円 | 限度額 各4万円 |
| 生命保険料控除(旧制度) | 合計控除限度額7万円 | 合計控除限度額10万円 |
| 【内訳】一般・個人年金分 | 限度額 各3万5千円 | 限度額 各5万円 |
| 地震保険料控除 | 合計控除限度額2万5千円 | 合計控除限度額 5万円 |
| 【内訳】地震保険料分 | 限度額 2万5千円 | 限度額 5万円 |
| 【内訳】(旧)長期損害保険料分 | 限度額 1万円 | 限度額1万5千円 |
税率の違い
所得税は、所得金額が高くなれば、それに応じて税率も高くなる「累進課税」が採用されています。税率は5%から45%の範囲で7段階に区分されます。
それに比べて、住民税は一律10%です。この割合は市町村民税(所得割)が一律6%で、都道府県民税(所得割)が一律4%です。
税額控除の違い
上記のほかにも控除率の異なるものや、それぞれ独自に適用される制度があります。
たとえば、配当控除の控除率や、住宅ローン控除の計算にも違いがあります。また、住民税だけに調整控除が設けられていますし、一方、所得税には、政党等寄付金特別控除などが適用されます。
納税の時期
会社員の場合、所得税も住民税も源泉徴収の制度をとっています。源泉徴収とは、会社が毎月の給料から所得税や住民税を源泉徴収(天引き)し、本人に代わって国や自治体に支払う制度のことです。個人事業主などの場合は、それぞれを個人が納める必要がありますので、納付時期を確認しておきましょう。所得税と住民税は、納付時期が異なります。
その年の所得税については、翌年2月16日から3月15日までの期間が納付期間となります。納付は一括で行う必要があります。
一方、住民税は、6月から一括、もしくは年4回に分けての納付をします。分割の場合は、第1期の納付期限が6月末、第2期が8月末、第3期が10月末、第4期が翌年の1月末になります。
所得税と住民税の違いを理解し、正しく納付しましょう
所得税と住民税は、同じように給料から天引きされたり、所得によってその金額が決まったりと似ているところが多くありますが、納入方法や時期にも違いがあります。この違いを意識しておきましょう。
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よくある質問
所得税とは何ですか?
1年間の所得(もうけ)にかかる税金です。国に納付する国税になります。詳しくはこちらをご覧ください。
住民税とは何ですか?
地方自治体に支払う税金です。所得に対する所得割とそこに住んでいることにかかる均等割があります。詳しくはこちらをご覧ください。
所得税と地方税の対象年度は?
所得税はその年の1月から12月までの所得から計算される税金です。住民税は「前年」の所得をもとに計算されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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