- 更新日 : 2025年7月1日
深夜残業と割増賃金を解説 – 定義や計算方法
深夜労働が労働時間の中のどの時間帯のことを指すのか知っていますか?22時から翌朝5時の間に行う労働を「深夜労働」といい、深夜労働した場合は通常より割増しした額の賃金を払わないといけません。
この時間帯が残業時間にあたる場合には、さらに割増しの率が変わります。この記事では、深夜残業の概要から計算方法まで見ていきましょう。
目次
深夜残業とは?
深夜残業とは、22時から翌朝の5時までに労働を行う場合で、その日すでに8時間を超えて働いている場合の労働を言います。ここでは深夜労働をできる人の条件や通常の残業との違いについて見ていきましょう。
深夜労働を出来る人・出来ない人
労働基準法第61条では、深夜労働については次のように定めています。
「使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。ただし、交代制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。」
上記から、原則として満18才以上は深夜労働ができます。ただし、下記のような条件に該当する場合は18才未満でも深夜労働が認められるとしています。
- 交替制によって働く16歳以上の男性
- 交替制の事業で労働基準監督署の許可を受けている場合(ただし、22時30分まで)
- 災害その他の非常事態で時間外労働や休日労働の必要がある場合で、かつ、労働基準監督署の許可がある場合
- 農林水産業、保健衛生の事業、電話交換の業務に従事する場合
深夜手当と深夜残業手当の違い
22時から翌朝の5時の間の労働を「深夜労働」といい、その時間に労働した場合は通常の2割5分以上の割増賃金を支払う必要が発生します。これを深夜手当と言います。
深夜残業手当は、深夜労働時間に1日8時間、1週40時間超の残業を行った場合に、深夜手当にプラスして深夜労働に対する割増賃金として2割5分以上が加算されます。よって、深夜残業手当の場合は、通常の5割以上の割増賃金の支払いが必要になるのです。
深夜残業と通常の残業の違い
通常の残業は通常の賃金の2割5分以上の割増賃金です。それに対して深夜残業は、2割5分以上の深夜手当分の割増賃金に深夜労働に対する2割5分以上の割増賃金が加算されますので合わせて5割以上の割増額になります。
深夜労働は何時から?
深夜労働の時間帯は22時から翌朝の5時までですので、深夜労働が始まるのは22時からになります。
深夜残業の割増賃金に関する計算方法
次に、深夜残業の割増賃金に関する割増賃金率や割増賃金の計算方法について見ていきましょう。
深夜残業の割増賃金率
深夜労働に対する割増賃金率は2割5分以上です。時間外労働が深夜残業時間に重なる場合には、合計5割以上(2割5分以上+2割5分以上)の割増賃金を支払う必要があります。
深夜残業の残業代に関する計算方法
深夜労働に関する割増賃金の割増率は労働基準法第37条で「2割5分以上」と規定されています。割増賃金の計算方法は、「1時間あたりの賃金×1.5(時間外労働1.25+深夜労働0.25)」になります。
例えば、1時間あたりの賃金が1,200円、深夜労働時間を2時間行った場合は以下のように計算します。
1時間あたりの深夜労働賃金=1,200円×1.5=1,800円
よって、深夜残業の残業代は、1,800円×2時間=3,600円になります。
休日出勤の際の深夜残業に関する計算方法
休日出勤の際に深夜残業となった場合は6割以上(3割5分以上+2割5分以上)になります。
先ほどと同様の条件で計算しますと、割増賃金の計算は「1時間あたりの賃金×1.6(休日労働1.35+深夜労働0.25)」です。
例えば、1時間あたりの賃金が1,200円、深夜労働時間を2時間行った場合は以下のように計算します。
1時間あたりの深夜労働賃金=1,200円×1.6=1,920円
よって、休日出勤の深夜残業時間の残業代は、1,920円×2時間=3,840円になります。
所定労働時間が深夜の場合の計算方法
深夜労働の時間帯(22時から翌朝5時まで)は2割5分以上の割増賃金が必要でした。
所定労働時間が深夜の場合は、深夜労働の時間帯の範囲内で1日8時間までは2割5分増しで計算します。その時間内で1日8時間を超えた時間分からは5割以上(2割5分以上+2割5分以上)の割増率で計算することになります。
例えば、1時間あたりの賃金が1,200円、勤務時間が15時から24時(休憩は19時から20時)とすると以下のような計算式になります。
15時から22時まで・・・1,200円×6時間(休憩1時間は除外)=7,200円
22時から24時まで・・・1,200円×1.25(深夜労働割増分)×2時間=3,000円
よって、その日の賃金は、7,200円+3,000円=10,200円になります。
深夜残業の割増賃金における注意点
ここでは、通常の働き方とは異なる裁量労働制や、固定残業代、管理職の割増賃金について見ていきます。
裁量労働制・固定残業代の場合の割増賃金
裁量労働制とは、業務遂行の手段や時間配分等の決定について会社が具体的な指示をせず、それらの実施方法を労働者の裁量に任せる制度です。裁量労働制の場合、みなし労働時間が8時間を超える定めにした場合は、8時間を超えた分に付いては割増賃金が発生します。また、法定休日勤務や深夜労働勤務についても割増賃金が発生します。
固定残業代につきましては、労働契約の内容として固定残業代として定められた時間分の残業時間を超えた部分について割増賃金が発生するほか、法定休日勤務や深夜労働勤務についても割増賃金が発生します。
管理職も深夜手当は支払われる
労働基準法第41条では、労働時間等に関する規定の適用除外として、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」は、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定は適用しないと定められています。
このように管理監督者は労働時間の規定は適用除外となっていますので、時間外労働に関する割増賃金は支給されません。
ただし、深夜手当については、労働基準法第37条で定められていますので、深夜労働時間分の労働に対しては深夜手当を支給しなければなりません。
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深夜残業と割増賃金の計算方法について再確認しましょう
深夜労働に関して、深夜手当と深夜残業代があることを見てきました。割増賃金についてはそれぞれ異なる計算方法で求めますので、それぞれの違いを理解して計算方法を間違えないように注意しましょう。
また、裁量労働制や固定残業代など、特殊な働き方をする場合の割増賃金や管理職に支払われる深夜手当についても理解を進めてください。
よくある質問
深夜残業とはなんですか?
深夜残業とは、深夜時間と定められている22時から翌朝5時までの間に労働を行う場合で、その範囲内で、1日あたり8時間、1週間あたり40時間を超えた時間からの労働を言います。詳しくはこちらをご覧ください。
深夜労働は何時からですか?
深夜労働の時間帯は22時から翌朝5時までになりますので、深夜労働が始まるのは22時からになります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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