- 更新日 : 2024年12月25日
1分単位で給与計算しないと違法?計算方法や端数処理できる例外も解説
労働時間は1分単位で計算しなければなりません。例外として、月単位で30分未満や30分を超えた場合は、切り捨て、切り上げができるケースもあります。会社独自で15分単位、30分単位の切り捨ては認められていません。残業や休日労働、深夜労働の給与は、1分単位での計算です。本記事では時給計算できるサイト・スマホアプリもご紹介します。
目次
1分単位で給与計算しないと違法?
給与計算は、労働基準法に基づき1分単位で計算するのが原則です。
以下では、給与計算に大切な2つのポイントを解説します。
- 労働基準法の「賃金支払いの原則」とは
- 15分単位や30分単位で給与計算した場合の罰則
給与計算のミスは、労務トラブルにつながりかねないため、労働基準法に基づいて計算を行いましょう。
労働基準法の「賃金全額払いの原則」とは
賃金の支払方法について労働基準法では「賃金支払いの5原則」を定めており、「全額払いの原則」はその1つです。
全額払いの原則とは、税金や社会保険料などを除いて、賃金の全額を本人へ支払うという決まりのことです。会社側が税金など以外のものを、勝手に給与から天引きして支払うことは認められていません。
15分単位や30分単位で給与計算した場合の罰則
たとえば18時が定時で、18時25分まで勤務していた場合、15分単位であれば18時15分までの給与計算となり、残りの10分は切り捨てられるため賃金が全額支払われていないことになります。これは賃金支払いの原則に違反します。
そのため、15分または30分単位で計算することは認められていません。もし、そのように計算して給与を支払っている場合は、罰則として30万円以下の罰金、または6ヶ月以下の懲役が課されます。
また、会社側が切り捨てて計算するように就業規則で定めている場合でも、労働基準法では違反です。原則、1分単位で計算しなければならないことに注意しましょう。
1分単位で時給計算する方法
給与計算は1分単位で計算しなければ労働基準法違反です。ここでは、1分単位で時給計算する方法を解説します。
- エクセルで計算する方法
- タイムカードで計算する方法
- 勤怠管理システムで計算する方法
エクセルでは、自分で関数を設定したり、1人ひとり入力作業を行ったりする必要があります。勤怠管理システムを導入すれば、タイムカードを自動で集計できるため効率化できます。どの方法がよいのかを確認しましょう。
エクセルで計算する方法
エクセルでは関数を利用した計算方法があります。
1分単位の場合は、勤務時間に時給をかける計算式を入力することで、給与支給額が求められます。
たとえば、時給1,000円の労働者が下記の時間で働いた場合です。
勤務開始時間 | 休憩時間 | 退勤時間 | 時給 | 勤務時間 | 給与 |
---|---|---|---|---|---|
8:00 | 1:00 | 16:05 | ¥1,000 | 7.083 | ¥7,083 |
エクセルの設定で、業務開始時間と休憩時間、退勤時間を書式設定で時刻に変更します。
時給に関しては、決められた時給または、月給から出勤日数を割って求めましょう。
時給や勤務時間、給与のセルには、時刻ではなく標準の設定を行います。間違えてしまうと計算されないため注意してください。
勤務時間のセルでは、退勤時間から勤務開始時間と休憩時間を引くという関数を入力し、時間単位で表示(7時間5分ではなく7.083時間)させます。最後に給与のセルで、時給に勤務時間をかけるという計算式を入れれば、1分単位で給与を求めることが可能です。
タイムカードで計算する方法
タイムカードに記録された出退勤時間から、電卓で労働時間を1分単位で計算できます。電卓は給与計算するうえで必須です。自分の手で打つため、打ち間違いがないように注意しながら行いましょう。
電卓で計算する方法は、退勤時間から出勤時間と休憩時間を引くやり方です。
たとえば8時出勤で17時15分退勤、そのうち1時間の休憩がある場合、1715-(800+100)と打ちます。計算結果が815と出るため、8時間15分が勤務時間です。
もし、8時20分出勤、17時15分に退勤した場合は1715-(820+100)で、795という結果となります。下二桁が60を上回った場合は、40を引いてください。795-40で755となり、7時間55分の勤務時間です。
勤怠管理システムで計算する方法
勤怠管理システムとは、タイムカードや出退勤を読み取るICカードと連携して、出退勤時間を自動でパソコンにデータ登録する仕組みです。
勤怠管理システムを利用することで、給与計算ミスが減り計算時間も短くなるため、計算の正確性や効率性の向上が見込めます。
また、勤怠管理システムでは、法改正に対応しているため、法に基づいて管理をしてくれるのがメリットです。さらに、計算方法を設定することで、1分単位での計算も自動で行えます。
給与計算 15分単位(エクセル)※出勤を切下げ、退勤を切上げのテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
1分単位で時給計算できるサイト・スマホアプリ
ここからは、1分単位で時給計算できるサイト・スマホアプリを3つ紹介します。
- パート勤務時間計算
- 時給計算ツール
- シフトボード
自分で計算式を入れなくても、簡単に計算ができるためおすすめです。どの計算サイトが使いやすそうかご検討ください。
パート勤務時間計算
初めに、CASIOのサイトの紹介です。このサイトでは、パート勤務時間計算ができます。
- 勤務開始時刻
- 勤務終了時刻
- 休憩時間
- 給与計算単位(1分から選択可能)
- パートの時給
5項目を入力すると、労働時間と給与計算時間(時間単位の労働時間)、日給の計算まで行ってくれます。
使用する際の注意点は、残業や深夜などの割増を考慮していないことです。労働時間を過ぎてしまった場合は、再度計算をしましょう。
時給計算ツール
次にバイト求人ネットが提供している、時給計算ツールのご紹介です。
- 1日の勤務時間(時間)
- 1日の勤務時間(分)
- 1ヶ月の勤務日数(日数)
- 時給(円)
上記4つの項目にそれぞれ数字を選択すると、計算結果が表示されます。
計算結果は、日給、月給、年収です。勤務時間と1ヶ月の働く日数が固定されていれば計算しやすいサイトとなっています。
このサイトも1分単位で計算できます。ただし、残業や深夜手当などの割増は考慮していないことに注意が必要です。
シフトボード
最後に紹介するのがシフトボードというアプリで、リクルート社が提供しているものです。iOS版と、Android版が用意されています。
アプリをダウンロードすると、アカウント登録画面が出るため、メールアドレスとパスワードを設定してください。すでにアカウントをお持ちの方は、ログインできます。
ログインすると、勤務先の登録画面となり、勤務先と場所、ジャンルの入力を行います。各項目は後からでも変更可能です。
次に、給与情報を登録します。
- 締め日
- 給料日
- 給料
- 交通費
- 休日給料
- 深夜給料
- 残業手当
入力が終わるとカレンダーが表示され、勤務状況を入力すると給与計算が行われます。
シフトに勤務開始日時と終了日時を選択し、完了を押すと給料が表示される仕組みです。
天引きや手当の入力もできるため、実際の手取り額の見込みを把握したい場合に活用すると便利です。
シフトボードアプリは、会社の給与計算ではなく、働き手の給与計算やシフト管理に役立つものとなっています。
参考:シフトボード:バイトの給料計算とシフト管理|App Store
参考:シフトボード:バイトの給料計算とシフト管理|Google Play
給与計算で労働時間の端数処理が認められる場合
ここでは、給与計算で労働時間の端数処理が認められる場合について、以下の3つのパターンで解説します。
- 残業(時間外労働)の合計に1時間未満の端数が出た場合
- 休日労働の合計に1時間未満の端数が出た場合
- 深夜労働の合計に1時間未満の端数が出た場合
残業(時間外労働)の合計に1時間未満の端数が出た場合
1ヶ月の残業(時間外労働)の合計に1時間未満の端数が出た場合は、端数処理を行います。月における残業の合計時間に対して、30分未満を切り捨て、30分以上だと1時間に切り上げて計算します。
たとえば、月に7時間20分の時間外労働があった場合、20分は切り捨てで、7時間が時間外労働です。7時間40分だった場合、切り上げて8時間で計算します。
残業時間の切り捨てを行う場合、切り上げも行う必要があるため確認しましょう。1日に1時間40分の残業をした場合、2時間の残業代が支払われるという意味ではないため、注意が必要です。ただし、月で合計した残業時間に対しての端数処理のため、時間外労働で割増賃金を支払う際には、注意して計算しましょう。
休日労働の合計に1時間未満の端数が出た場合
休日労働の場合も、残業と同じく、月単位で40分などと1時間未満の端数が出た場合は、30分未満は切り捨て、それ以上は切り上げ処理を行います。端数の切り捨て、切り上げを行う場合は、就業規則にその旨と端数処理の方法を記入しなければなりません。
また、切り捨てだけを行うのではなく、必ず切り上げも行います。たとえば、1ヶ月で5時間40分の休日労働をした場合です。40分は切り上げの対象となるため、6時間と計算します。
一方、休日労働時間が5時間25分であった場合は30分未満となるため、端数を切り捨てて5時間で計算しなければなりません。1日の労働時間ではなく、月の合計労働時間のみ端数処理が認められているため、間違えないようにしましょう。
深夜労働の合計に1時間未満の端数が出た場合
深夜労働とは、午後10時から午前5時までの労働です。日をまたいでの勤務となるため、勤務日数を2日と数えるわけではなく、1日の労働と考えます。
1日の労働時間は1分単位での計算です。ただし深夜労働に関しても、月単位で1時間未満の端数が出た場合は切り捨て、切り上げが認められています。
また、1時間単位の賃金や割増賃金に端数が出た場合、切り捨て・切り上げの端数処理が可能です。その際には50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を切り上げます。
具体的には、1ヶ月の所定賃金が20万円、所定労働時間が174時間である場合、1時間あたりの賃金は1,149.425円です。50銭未満の端数は切り捨てて、1,149円とすることもできます。1時間当たりの賃金の端数処理は、時間外労働、休日労働ともに同様です。
給与計算は 1分単位で計算するのが原則
原則として、労働した時間はすべて賃金の対象です。労働基準法に基づいて1分単位で計算しなければなりません。
1分単位の計算には例外があります。月単位での残業時間などの計算の場合、30分未満切り捨て、30分以上切り上げが認められています。休日労働や深夜労働の計算も同様です。
労働した時間は原則1分単位で計算し、月単位であれば残業代などの切り捨て切り上げが認められています。給与を計算する際には、注意しながら行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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