• 更新日 : 2025年8月20日

パートの試用期間を更新しない場合の対応は?退職の伝え方や本採用が見送られるケースも解説

パートとして働き始めたものの、試用期間中に「この仕事、自分には合わないかもしれない」「このまま契約を更新したくない」と感じていませんか。あるいは、「会社から本採用されないのでは」という不安を抱えている方もいるかもしれません。

試用期間は、働く側と会社側が互いを見極めるための重要な期間です。そのため、期間満了時に契約を更新しないという選択は、決して特別なことではありません。

この記事では、パートの試用期間を更新しない場合の伝え方や手続きの流れ、そして会社側から本採用が見送られるケースについて、分かりやすく解説します。

そもそもパートの試用期間とは

試用期間は、会社がパート従業員の勤務態度やスキル、職場への適応能力などを見極めるために設定されます。同時に、働く側にとっても、仕事内容や職場の雰囲気が自分に合っているかを確認する期間です。

法的には、解約権留保付労働契約が成立している状態とされ、すでに雇用契約は始まっています。そのため、会社側が一方的に、客観的で合理的な理由なく契約を打ち切ることはできません。

試用期間と本採用の違い

試用期間中と本採用後で、労働時間や休憩時間などの基本的な労働条件に違いを設ける場合、使用期間中とその後の労働条件を明示しておかなければなりません。給与額については、就業規則や労働条件通知書によって明記することにより、合理的な理由があれば試用期間中の給与を本採用後よりも低く設定することも認められています。

最も大きな違いは、会社側が持つ解約権の存在です。会社側は、本採用が不適切と判断した場合に解雇する権利を持っていますが、その権利の行使は、本採用後の解雇よりも少しだけ広く認められる傾向にあります。

パートの雇用契約書で確認すべきポイント

働き始める前には、雇用契約書の内容を必ず確認しましょう。特に以下の4つのポイントは、後のトラブルを防ぐために重要です。

  • 試用期間の長さ
    法律上の上限はありませんが、一般的には1ヶ月から6ヶ月程度です。
  • 期間中の賃金
    本採用後と異なる場合は、その金額が明記されているか確認します。
  • 契約更新の有無と判断基準
    試用期間満了後、どのような基準で本採用に至るのか、または契約更新されるのかが書かれているか確認しましょう。
  • 退職に関する規定
    自己都合で退職する場合、何日前までに申し出る必要があるかを確認します。

これらの条件が明記されているかを確認し、不明な点があれば必ず採用担当者に質問してください。

パートの試用期間を更新したくない場合の対応

実際に働いてみて、「想像と違った」「続けられそうにない」と感じることもあるでしょう。自分から契約を更新したくないと決めた場合、どのように行動すれば円満に退職できるのでしょうか。伝え方のポイントや具体的な流れを解説します。

1. 退職の意思を固め、伝える準備をする

まずは、なぜ辞めたいのかを自分の中で整理しましょう。感情的になるのではなく、冷静に退職の意思を固めることが大切です。その上で、就業規則に定められた申し出の時期(通常は退職希望日の14日前〜1ヶ月前)を確認し、できるだけ早く伝える準備をします。

2. 直属の上司に口頭で伝える

退職の意思は、まず直属の上司に口頭で伝えるのがマナーです。他のスタッフがいる場所は避け、お昼休みや就業後など、相手が少し時間を取れるタイミングを見計らって声をかけましょう。

切り出し方の例文

お忙しいところ恐れ入ります。〇〇さん(上司の名前)、今少しだけお時間よろしいでしょうか。お伝えしたいことがございます。

3. 誠実な態度で退職理由を伝える

最も重要なのは、感情的にならず、誠実な態度で伝えることです。会社の体制や人間関係への不満を直接的な言葉でぶつけるのは避けましょう。

退職理由は、基本的には一身上の都合で問題ありません。もし具体的な理由を尋ねられた場合は、角が立たないように、個人的な理由や前向きな理由を伝えると良いでしょう。

退職理由の例文
  • 実際に業務を経験してみて、求められるスキルと自身の能力に隔たりがあると感じ、ご迷惑をおかけする前に退職させていただきたいと考えました。
  • 家庭の事情により、現在の勤務を継続することが難しくなりました。
  • 想定していた業務内容と、実際の業務に違いがあり、このままでは会社に貢献していくことが難しいと感じました。

4. 退職届の提出と引継ぎ

上司に退職の意思を伝えたら、その後の指示に従いましょう。退職届の提出を求められた場合は、指定のフォーマットに従って作成・提出します。最終出社日までの期間は短いかもしれませんが、可能な範囲で業務の引継ぎを行い、最後まで責任を持って働く姿勢を示すことが、円満な退職につながります。

会社側からパートの本採用が見送られるケース

自分は働き続けたいと思っていても、会社側から本採用を見送られる、つまり解雇される可能性もゼロではありません。

パートの試用期間でクビになる確率は低い

まず知っておきたいのは、パートの試用期間でクビになる確率は決して高くないということです。前述の通り、試用期間中であっても法的な雇用契約は成立しています。会社が従業員を解雇するには、法律上、客観的な合理性と社会通念上の相当性が求められます。そのため、数回の些細なミスや、単に社風に合わないといった曖昧な理由だけで本採用が見送られることは、法的に問題となる可能性があります。

本採用が見送りとなる主な理由

試用期間満了時に本採用が見送られる場合、以下のようなケースが考えられます。

  • 勤務態度の不良
    正当な理由のない遅刻や欠勤を繰り返すなど、勤務態度が著しく悪い場合。
  • 協調性の著しい欠如
    他の従業員と頻繁にトラブルを起こすなど、業務の円滑な遂行に支障をきたす場合。
  • 経歴の重大な偽り
    業務遂行に不可欠な経歴や資格を偽っていた場合。
  • 能力不足
    会社側が何度も指導や教育を行ったにもかかわらず、改善が見られず、業務に支障が出る場合。

会社は、試用期間中に問題点を具体的に指摘し、通常は改善の機会を与える必要がありますが、重大な経歴詐称などの場合は、改善機会を設けずに即時に本採用見送りを判断できるケースもあります。

パートの試用期間や退職に関してよくある質問

最後に、パートの試用期間や退職に関してよくある質問とその回答をまとめました。

試用期間を更新しない場合も、働いた分の給料はもらえる?

はい、もらえます。働いた分の給与を受け取ることは労働者の正当な権利です。試用期間の途中で辞めた場合や、本採用が見送られた場合でも、実際に勤務した時間分の給与は全額支払われます。

試用期間中でも即日退職はできる?

民法では、原則として退職の意思表示から2週間が経過すれば雇用契約は終了すると定められています。やむを得ない事情がある場合を除き、即日退職は難しいのが実情です。会社の合意が得られれば可能ですが、無断で辞めることはトラブルの原因となるため絶対に避けましょう。

不当な解雇だと感じた場合はどうすればいい?

本採用見送りの理由に納得がいかず、不当な解雇だと感じた場合は、一人で悩まずに専門機関へ相談しましょう。各都道府県の労働局や労働基準監督署内に設置されている総合労働相談コーナーでは、専門の相談員が無料で対応してくれます。まずは会社に解雇理由証明書の交付を求め、具体的な解雇理由を書面で確認した上で相談すると、話がスムーズに進みます。

パートの試用期間中でも円満な退職を心がけましょう

今回は、パートの試用期間について、自分から更新しない場合と、会社から本採用が見送られる場合の両面から解説しました。

試用期間は、あなたと職場がお互いを理解するための時間です。もし合わないと感じたなら、契約を更新しないという決断は、あなた自身のキャリアにとって前向きな選択となり得ます。大切なのは、辞める意思を誠実に伝え、円満な退職を心がけることです。

一方で、会社側から更新が見送られる場合にも、正当な理由が必要です。この記事で得た知識を役立て、ご自身の状況を冷静に判断し、納得のいく形で次のステップに進んでください。不安な場合は、公的な相談窓口を活用することも忘れないでください。


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