- 更新日 : 2024年12月24日
賃金台帳に賞与は記載する?記入例やテンプレートを紹介
労働基準法第108条にもとづき、賃金台帳には従業員の賞与を記載しなければいけません。
従業員が働きやすい環境に整えるためにも、必要な項目を記載した賃金台帳の作成が重要です。
本記事では、賃金台帳における賞与の記載例やテンプレートを紹介します。賃金台帳の作成でお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
賃金台帳とは
賃金台帳は、従業員の労働日数や労働時間、賞与の支払い状況などが記載された帳簿です。
労働基準法第108条では、使用者が従業員の労働時間や賃金の支払い状況を正確に管理するために、賃金台帳の作成が義務付けられています。
そのため、正社員やパート、アルバイト、契約社員など雇用形態を問わず賃金台帳の作成が必要です。
また、賃金台帳は従業員を雇用する事業所ごとに作成する必要があります。複数の事業所がある場合は、各事業所で賃金台帳を作成しましょう。
賃金台帳の絶対記載事項
賃金台帳には、記載を義務付けられている項目が8つあります。
賃金台帳の絶対記載事項は以下のとおりです。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間(原則、日雇い労働者や給与計算期間が1ヶ月未満の短期雇用者は除く)
- 労働日数
- 労働時間
- 時間外労働、休日労働、深夜労働の時間
- 基本給や賞与、手当、その他賃金の種類ごとの金額
- 賃金の一部を控除した場合の金額
万が一、賃金台帳に記載すべき項目が作成されていなかったり、そもそも賃金台帳がなかったりする場合は、労働基準法第120条により30万円以下の罰則の対象となる可能性があります。
ただし、労働基準法第41条にもとづき、管理・監督職にあたる従業員は、労働時間・休日についての規定が適用されないため、労働時間と時間外労働、休日労働の時間を賃金台帳に記載する必要はありません。ただし、深夜労働についての規定は適用されるため、深夜労働の時間は記載が必要です。
また、現金ではなく現物支給(定期券や制服など)がある場合、現物の金額を記載する必要があります。
上記の必要項目がすべて記載されていれば、賃金台帳の書式に指定はありません。
労働者が安心して働ける環境を整えるためにも、必要項目を含めて賃金台帳を作成しましょう。
賞与は賃金台帳に記載する?
労働基準法第108条にもとづき、賞与は賃金台帳に記載する必要があります。
労働基準法第11条では、賃金は「賃金、給料、手当、賞与など、労働において使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定められており、使用者は従業員に支払う賃金を正確に記録と管理するよう義務付けられています。
使用者は賞与を含むすべての賃金を賃金台帳に記載することで、支払い状況の明確な管理が可能です。その結果、従業員との間で賃金に関するトラブルを未然に防ぎ、適切な記録管理ができます。
賃金台帳に賞与の記載漏れや不備を防ぐためにも、賞与の支給が決まった際は早めに台帳を記載し、適切に管理することが重要です。賃金台帳を正しく作成すると、法律を守れるだけでなく、従業員の働きやすい環境を整えてあげられます。
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賃金台帳の賞与の記入例
賃金台帳に賞与を記載する際は、基本給との総額ではなく、給与と賞与、手当などに分けて記載する必要があります。
賃金台帳に賞与を記載する際は、賞与と臨時の給与のそれぞれの金額と合計額を記載してください。
賃金台帳に必要な項目は以下のとおりです。
項目 | 詳細 |
---|---|
氏名 | 従業員の氏名を記載する |
性別 | 従業員の性別を記載する |
賃金計算期間 | 従業員の賃金計算対象期間を記載する 月末締めの場合:2024年4月1日〜2024年4月30日 10日締めの場合:2024年4月11日〜2024年5月10日 |
労働日数 | 従業員が賃金計算期間中に勤務した日数を記載する |
労働時間 | 従業員が賃金計算期間中に勤務した時間を記載する |
時間外労働、休日労働、深夜労働の時間 | 労働時間のなかで、早朝・深夜・休日に勤務した時間を記載する |
基本給や賞与、手当、その他賃金の種類ごとの金額 | 基本給と手当に分けて記載する 賞与と臨時の給与がある場合は、各金額と合計額を記載する |
賃金の一部を控除した場合の金額 | 給料から差し引かれる健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの金額を記載する |
上記を基にした記入例は、以下のとおりです。
項目 | 詳細 |
---|---|
氏名 | 山田 太郎 |
性別 | 男性 |
賃金計算期間 | 2024年4月1日〜2024年4月30日(例:月末締めの場合) |
労働日数 | 20日 |
労働時間 | 160時間 |
時間外労働、休日労働、深夜労働の時間 | 時間外労働:10時間 休日労働:5時間 深夜労働:8時間 |
基本給 | 200,000円 |
手当 | 時間外割増賃金:17,970円 休日割増賃金:9,705円 深夜割増賃金:2,872円 通勤手当:10,000円 住宅手当:20,000円 |
賞与 | 50,000円 |
控除額 | 健康保険料:14,471円 厚生年金保険料:26,535円 雇用保険料:1,863円 所得税:7,077円 |
差引支給額 | 260,601円 |
賃金台帳を記載する際は、上記を参考にしてみてください。
賞与と賃金は別の台帳に分けてもよい?
賞与と賃金は、別の台帳に分けて記載しても問題ありません。
労働基準法第108条に基づき、賃金台帳にはすべての賃金の記録が必要です。そのため、記録があれば、別の台帳に分けての管理も可能です。
台帳を分けて記載すると、別々に管理する手間が増えるため、実務上はひとつの台帳にまとめて記載することをおすすめします。
賃金台帳に賞与と賃金をまとめて記録すると、従業員ごとの支払い状況が一目で確認でき、管理もしやすいです。
さらに、労働保険年度更新の際の集計や税務署などの監査にも対応しやすく、給与や賞与をすぐに確認できるため支払い漏れや記録ミスも防ぎやすくなります。
ただし、賃金台帳の管理方法のしやすさは個人により感じ方が異なるため、状況に応じて賃金台帳を作成しましょう。
賞与を正しく賃金台帳に記入しよう
労働基準法第108条により、賃金台帳に賞与の記載が必要です。ただし、給与と賞与をまとめて記載するのではなく、それぞれ分けて記載する必要があります。
そのため、賃金台帳に賞与を記載する際は、賞与と臨時の給与の金額をそれぞれ記載し、さらに合計額を記載してください。
賃金台帳は、従業員への支払い状況を正確に管理するための重要な書類です。ミスやトラブルを防ぐためにも、記載方法を事前に確認してから作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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