• 更新日 : 2025年12月18日

ヒューマンスキルとは?8つの構成要素や育成方法を徹底解説

ヒューマンスキルとは、他人と良好な人間関係を築き、円滑なコミュニケーションを行う対人関係能力を指します。技術革新や社会の多様化が進む2025年現在、組織の目標達成やチームビルディングに不可欠な能力として、その育成と人事評価への活用が多くの企業で求められています。この記事では、ヒューマンスキルの定義や構成要素、階層別の求められるスキル、そして育成と人事評価に効果的に落とし込む具体的な方法までをわかりやすく解説いたします。

ヒューマンスキルとは?

ヒューマンスキルは、アメリカの経済学者であるロバート・カッツ氏が提唱した「カッツ・モデル」における3つの要素の一つです。

マネジメント層に必要な能力を分類した「カッツ・モデル」において、テクニカルスキルやコンセプチュアルスキルと並ぶ中核的な能力と位置づけられています。

ヒューマンスキルは対人関係能力と訳され、チームとして目標達成を目指す上で、周囲の人々との関係性を効果的に構築し、協働していくために用いられます。具体的には、チームをまとめる力、課題を解決に導く力、相手の考えを引き出す力などが該当します。

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テクニカルスキルとは?

テクニカルスキルとは、特定の業務を遂行するために必要となる専門的な知識や技術のことです。たとえば、プログラミング能力、データ分析、経理処理、特定の機械操作技術などが該当します。

このスキルは、教育や訓練を通じて比較的習得しやすく、業務の効率性や品質の向上に直接つながります。一般的に、現場の最前線で働く若手社員や一般社員層に最も必要とされるスキルですが、マネージャー層においても、部下の業務内容を理解するために一定レベルは求められるでしょう。

コンセプチュアルスキルとは?

コンセプチュアルスキルとは、物事の本質を捉えて概念化する能力を指します。日本語では「概念化能力」と訳され、問題や事象を抽象的に把握し、そこから問題の本質を見抜き、解決策を導き出すために必要とされるスキルです。

この能力は、企業の課題解決や目標達成に欠かせないものであり、とくに経営層や上級管理職に最も求められます。複雑な状況や情報を整理し、将来の方向性を定める経営戦略の立案などに大きく影響してきます。

ヒューマンスキルが注目される背景

ヒューマンスキルへの関心が高まっている背景には、主に以下の3つの変化があります。

  • 技術の急速な発展(AI・自動化)
  • グローバル化の進展
  • 社会の多様性(ダイバーシティ)

ヒューマンスキルは技術革新や社会の多様化といった時代の変化に対応するため、また、組織力の強化や従業員の自己成長を促進するために、その育成が強く注目されています。

ヒューマンスキルを育成するメリット

ヒューマンスキルの育成に力を入れることで、組織と個人の両方に多くの良い影響があります。

知っておきたいヒューマンスキルのデメリット

ヒューマンスキル自体にデメリットはありませんが、育成や評価がヒューマンスキルに偏りすぎた場合、企業競争力の低下につながる可能性があります。

たとえば、定性的な対人能力のみに評価が偏ると、専門性の高い業務の品質低下や、戦略的な意思決定の遅れを招くおそれがあります。

育成においては、他の2つのスキルとバランスを取りながら、階層に応じて適切なレベルで習得を目指すことが大切です。

ヒューマンスキルを構成する8つの要素と具体例

ヒューマンスキルは対人関係能力をさらに具体的に分解した8つの要素で構成されています。これらの要素を理解することが、効果的な育成の第一歩です。

リーダーシップ

リーダーシップとは、チームをまとめ上げ、目標達成に向けて導く能力です。単に先頭に立って指示を出すだけでなく、チームや個人の状況に応じて、後方から支援したり、方向性を示したりするなど、さまざまな形でメンバーの意欲を引き出すことが求められます。

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コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、自分の意見や情報を正確に伝え、相手の意見を理解することで、相互に信頼関係を築く能力を指します。ヒューマンスキルの土台とも言える要素であり、業務を円滑に進める上で最も基本となります。

傾聴力(ヒアリング能力)

傾聴力とは、相手の声に真摯に耳を傾け、その言葉の背後にある本音や感情を引き出す能力です。「ヒアリング能力」と言い換えられることもあります。相手の心を開かせ、信頼関係を深めることで、問題の早期発見やより深い情報収集ができるようになります。

ネゴシエーション能力

ネゴシエーション能力は、交渉を通じて、自分や自社の意見・主張が通るように調整する能力です。ただ一方的に有利になることを目指すのではなく、相手の立場や要求も尊重しながら、相互に納得できる落としどころを見つけ出す対話のスキルが求められます。

プレゼンテーション能力

プレゼンテーション能力とは、自分の考えや提案を、相手に効果的にわかりやすく伝え、共感や理解を得る能力です。良いアイデアであっても、その良さが伝わらなければ意味がありません。資料作成のスキルだけでなく、話し方や構成力、相手の関心を引く力などが重要になります。

ファシリテーション能力

ファシリテーション能力とは、会議や話し合いがスムーズに進むように、中立的な立場から案内・調整する能力です。具体的には、議論の段取りを整えるスキルや、発言の少ないメンバーに意見を促す力、意見を整理して結論へ導く力などが挙げられます。

コーチング能力

コーチング能力とは、対話を通じて、メンバー自身が持つ能力や可能性を引き出し、自発的な成長を促す育成能力です。質問やフィードバックを通じて、メンバーの気づきを促し、ともに成長していく関係性を築くことに重点が置かれます。

向上心

向上心とは、現状に満足することなく、目標達成や課題解決に向けて、意欲的に取り組もうとする精神的な姿勢を指します。困難な状況に直面しても諦めずにやり抜こうとする粘り強さや、常に新しい知識・スキルを学ぼうとする積極性が、この能力につながります。

【役職別】求められるヒューマンスキル一覧

結論として、ヒューマンスキルの育成は全社員対象ですが、より注力すべき要素は役職や役割によって異なります。階層に合ったスキルの育成計画が必要です。

マネージャー・管理職に特に求められるヒューマンスキル

マネージャーや管理職に最も求められるヒューマンスキルは、「リーダーシップ」「ファシリテーション能力」「コーチング能力」です。

マネージャーは、チーム全体の目標達成に責任を持つため、メンバーの能力を最大限に引き出し、チームとしてまとめ上げる力(リーダーシップ、コーチング)や、部門間の調整や複雑な会議を円滑に進める力(ファシリテーション能力、ネゴシエーション能力)が、とくに重要になります。部下の育成を通じて組織力を高めることも、重要な役割です。

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若手社員に身につけさせたいヒューマンスキル

若手社員にまず身につけてほしいヒューマンスキルは、「コミュニケーション能力」「傾聴力」「向上心」です。

若手社員は、上司や先輩、他部署のメンバーなど、多くの人と関わりながら業務を学びます。そのため、報連相を適切に行うための基本となるコミュニケーション能力や、先輩や上司からの指導やアドバイスを正確に受け止める傾聴力が欠かせません。また、困難に直面しても学び続け、成長しようとする向上心は、長期的なキャリアアップの土台になります。

ヒューマンスキルを育成する方法

ヒューマンスキルは、座学だけでなく、実践とフィードバックのサイクルを回すことで効果的に習得できるようになります。体系的な育成計画を立てて進めましょう。

研修・ワークショップを活用する

研修やワークショップは、ヒューマンスキルの基礎理論や具体的な手法を体系的に学ぶための効果的な方法です。とくにワークショップ形式は、受講者同士がロールプレイングなどを通じて実践的な練習ができ、「気づき」につながりやすくなります。

これにより、受講者間で目的意識の共有ができ、お互いに高め合う学習機会にもなるでしょう。

PDCAサイクルから学ぶ

ヒューマンスキルは、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)などの実務を通じた実践が、習得の鍵を握ります。研修でインプットした知識を実際の業務で試行し、その結果をふまえて改善するPDCAサイクルを回すことで、スキルが定着します。

たとえば、研修で学んだ手法を実際の会議で試させ、上司がその結果についてフィードバックする、といった運用で進めてみましょう。

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1on1・フィードバックを実施する

ヒューマンスキルの育成には、上司や第三者からの1on1面談やフィードバックが大きく役立ちます。対人能力であるため、自分自身で客観的に判断するのが難しいためです。

フィードバックを行う際は、「〇〇という場面で、あなたは△△という行動をとったので、結果として□□という影響があった」というように、具体的な行動と結果に基づいて伝えることが大切です。具体的な改善点を示すことで、次の一歩が明確になります。

関連資料|メンター面談シート(エクセル)
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書籍・eラーニングの活用

書籍やeラーニングを活用することで、低コストで個人のペースに合わせた学習機会を提供できます。

eラーニングは、時間や場所を選ばずに学べるため、忙しい社員でも取り組みやすくなります。とくに、ヒューマンスキルの具体的な構成要素に特化したコンテンツを選ぶことで、基礎知識の均一化を図れるでしょう。

関連資料|人材育成関連のテンプレート(ワード・エクセル)一覧

【実務】ヒューマンスキルを人事評価に落とし込む方法

ヒューマンスキルを育成目標として掲げるだけでなく、人事評価に組み込むことで、社員の学習意欲を高め、組織全体のスキルレベルを引き上げることができます。

人事評価項目に取り入れる際の注意点

ヒューマンスキルを評価項目に取り入れる際は、評価の公平性と客観性を保つことが重要です。「コミュニケーション能力」という抽象的な項目ではなく、「他部署との情報共有を週に2回以上実施したか」など、行動レベルで定義するようにしましょう。

対人能力であるヒューマンスキルは、直属の上司だけでなく、同僚や部下など、多面評価(360度評価)にすることで、より公平な実態を把握できるようになります。

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各構成要素をKPI/KGIに設定する方法

ヒューマンスキルの各要素は、具体的なKPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)に設定するヒントになります。評価に組み込むことで、社員は育成目標をより明確に持てるようになります。

以下はヒューマンスキルを評価に組み込む具体的な一例です。

具体例:

ヒューマンスキル要素評価のヒント(KPI/KGI例)
コーチング能力部下が設定した目標達成率、育成担当者の面談回数
ファシリテーション能力会議の平均時間短縮率、会議後の決定事項の実施率
傾聴力顧客からのクレーム件数(傾聴不足による誤解防止)、1on1での部下の発言量

関連資料|自己評価シート(ワード)
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ヒューマンスキル育成の課題と対策

ヒューマンスキルを向上させることは多くのメリットをもたらしますが、その育成においては、効果測定の難しさや、社員自身が問題点を自覚しづらいといった課題があるのも事実です。これらの課題を事前に把握し、対策を講じることが、育成を成功させるうえで大切になります。

ヒューマンスキル育成の課題3つ

  1. 効果測定が難しい
    「コミュニケーション能力」や「リーダーシップ」など、数値化しづらい定性的なスキルを対象としているため、育成前後の行動変容を客観的に測ることが簡単ではありません。対策として、評価項目に定性的な観点を盛り込む際は、ルーブリックなどのツールを活用し、評価の公平性を保つことが重要です。
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  2. 長期的な視点が必要
    リーダーシップやファシリテーション能力などは、一朝一夕では身につかず、現場での実践とフィードバックを繰り返すことで初めて定着します。「いつまでに」「どのような内容を身につけてもらうか」を事前に明確にした長期的な育成計画を立てる必要があります。単発の研修で終わらせず、継続的な実践と検証の機会を設けましょう。
  3. 問題点を自覚しづらい
    自身の対人関係における問題点を客観視することが難しいという課題があります。この困難を解決するためには、社員の自省や内省を促進することが有効です。ロールプレイングや相互フィードバックの仕組みをつくることで、社員が問題点を自覚できるように工夫しましょう。

育成を成功させるための対策

上記課題への対策として、以下のポイントで目標設定を適切に行い、運用を継続することが鍵となります。

  • 具体的な目標設定(SMART原則など)
    目標を具体的にすることが育成を成功させる鍵です。「コミュニケーション能力を高める」といった曖昧な目標ではなく、「来月中に、他部署との月次会議で必ずファシリテーターを担当し、会議時間を10%短縮する」のように、測定可能で期限を定めた行動目標を設定しましょう。
    関連資料|目標管理シート(エクセル)
  • トップからのコミットメント
    経営層や管理職がヒューマンスキルの重要性を理解し、率先して育成に取り組む姿勢を示すことで、組織全体に重要性が浸透し、社員の学習意欲を高めます。
  • 実践機会の継続的な提供
    育成で学んだスキルを試せる小さなプロジェクトや役割を意図的に与えることで、実践を通じた定着を促します。また、人事評価と連動させることで、継続的な努力を促しましょう。
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ヒューマンスキル育成を見直すことが組織の信頼につながる

ヒューマンスキルは、テクニカルスキルやコンセプチュアルスキルと並ぶ、組織にとって不可欠な能力であり、技術革新が進む現代において、その重要性は増しています。

このスキルは、リーダーシップ、コミュニケーション能力、傾聴力など8つの要素で構成されており、階層別で求められる要素が異なります。

体系的な育成には、研修とOJTを組み合わせ、1on1を通じた継続的なフィードバックを実施することが効果的です。また、人事評価の項目に具体的な行動目標として落とし込み、正しく評価することで、社員の学習意欲を高め、組織力の底上げにつなげましょう。

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