- 更新日 : 2025年10月6日
【2025年】共働きの場合の年末調整とは?
年末調整は、概算で源泉徴収していた税金について、年末に各自が所得控除等について申告し、納税額を正しいものに調整するものです。共働きの場合、収入源が2つあるので、所得控除の手続き上どのような点に気をつける必要があるのかについて今回は解説します。
共働きの配偶者控除とは?
夫婦共働きで、一方が正社員で一方がパートという家庭もありますが、パート勤務などでは、「103万円以内で働く」という言葉を耳にしたこともあるのではないでしょうか。これは、103万円以内であれば、所得税が発生せず、扶養控除が受けられるためです。ただし、この103万円は、令和7年度税制改正で「123万円」や「160万円」となっています。
令和7年度税制改正によって、合計所得が58万円(給与収入のみの場合は123万円)以下であれば配偶者控除を受けられるようになりました。そのため、103万円を超えても123万円以下であれば、配偶者控除を受けることが可能です。
また、基礎控除額と給与所得控除額の引き上げによって、最大で160万円(給与所得控除65万円+基礎控除95万円)までであれば、所得税が発生しないことになりました。今後は103万円ではなく、これらの数字を意識して働く人が増えてくるでしょう。
【配偶者控除】
| 控除を受ける納税者の所得金額 | 控除額 | |
|---|---|---|
| 一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 (70歳以上) | |
| 900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
| 900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
| 950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
さらに、共働きの夫婦のどちらか一方の所得が133万円以下(他方の所得が1,000万円以下)の場合には、他方の年末調整において忘れずに配偶者控除または配偶者特別控除の申告をしましょう。
また、一方が事業所得の場合、必要経費を差し引いた所得が58万円以内であれば、配偶者控除の対象になります。
配偶者控除を受ける場合には、年末調整で提出する扶養控除等(異動)申告書の「主たる給与から控除を受ける」欄の「源泉控除対象配偶者」欄に当該配偶者の氏名、続柄、住所、所得の見積額(95万円以下)を記載してください。
この届出と「配偶者控除等申告書」を提出することで、配偶者控除として一定額が所得から控除されることになります。
年収により所得税の税率は変わりますが、例えば、所得が330万円から695万円の場合、税率は20%なので、38万円×20%=7万6,000円分の所得税が安くなります。
そのほか、復興特別所得税2.1%(7万6,000円×0.021=1,596円)の分も安くなりますので、共働きでも条件に当てはまる場合は年末調整のときに確実に申請しましょう。
同様に、住民税(配偶者控除33万円×10%=3万3,000円)の控除も受けることができます。
共働きの配偶者特別控除とは?
配偶者控除の収入の上限が103万円なので、「103万円の壁」などと言われ、共働きをしていても夫婦どちらか片方は103万円を超えないように働く人がいます。ただし、現在では103万円は123万円に変更されているため、注意が必要です。また、123万円(所得58万円)を超えた場合には、配偶者特別控除が適用されます。
配偶者特別控除についても、納税者とその配偶者の双方に所得要件があるので気をつけましょう。
配偶者特別控除
| 配偶者の所得 | 控除を受ける納税者の所得金額 | ||
|---|---|---|---|
| 900万円以下 | 900万円超950万円以下 | 950万円超1,000万円以下 | |
| 58万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
| 100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
| 105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
| 110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
| 115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
| 120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
| 125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
| 130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
したがって、年収201.6万円(所得133万円)までは段階的に控除が認められているので、共働きの夫婦どちらも会社員で、収入をコントロールしにくいような場合には、必ずしも123万円以内にこだわる必要はありません。もっとも、収入が労働時間に比例している場合には、収入が増えた分控除は減るので、労働時間が増えるだけで収入は変わらないという不利益はあるかもしれません。
また、収入が130万円を超えると、健康保険の被扶養者や厚生年金の第三号被保険者とならなくなるため、社会保険料の負担が発生してしまいます。
仮に、社会保険料が月2万円増えると年間で24万円も負担が増えることになるので、税金以上に影響がでます。この点は、十分注意しておかなければなりません。
共働きの場合の生命保険料控除とは?
生命保険料控除は、年間の支払保険料に応じて一定の控除額が認められるというもので、この控除も年末調整で申請できます。
生命保険料控除額が例えば5万円の場合、税率が10%なら5,000円、税率が20%なら10,000円の節税効果があるので、税率が高い人ほど控除する方が、メリットが大きくなります。
生命保険料控除を受けられるのは契約者ではなく、実際に保険料の支払いをしている人になるので、夫婦共働きの場合は所得税率が高い方が保険料を支払い、年末調整で生命保険料控除の申告をするようにしましょう。
もっとも、生命保険料控除の最大額は新制度で12万円、旧制度で10万円までなので、夫婦合算してそれを超えるような保険に加入している場合には、夫婦各自で生命保険料控除を受けた方が有利になるため、保険料も各自負担するようにしておく必要があります。
また、令和7年度税制改正によって、新契約における一般生命保険料の控除額が、令和8年分に限って下記のように変更されます。
令和8年新契約における一般生命保険料の控除額
| 年間の新生命保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 30,000 円以下 | 新生命保険料の全額 |
| 30,000 円超 60,000 円以下 | 新生命保険料×1/2+15,000 円 |
| 60,000 円超 120,000 円以下 | 新生命保険料×1/4+30,000 円 |
| 120,000 円超 | 一律 60,000 円 |
この控除額が適用されるのは、23歳未満の扶養親族を有する場合のみとなります。また、介護医療保険料および個人年金保険料を含めた生命保険料控除の上限額自体は、12万円から変更はありません。
共働き世帯での年末調整はどちらが負担するか確認を
夫婦共働きをしている場合、それぞれの職場で年末調整の手続が必要になりますが、その際、生命保険料控除や配偶者控除の申告をどちらの職場の年末調整で申請するべきなのか迷う場合もあると思います。
そうした場合に備え、上記の内容を念頭において、生命保険料の支払いなどは年末になってから慌てても遅いので、年初から計画的にどちらが負担するのか話し合っておくとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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