- 更新日 : 2025年4月18日
住民税の扶養控除とは?扶養控除の有無による住民税額を比較
自身に扶養している親族がいる場合、扶養控除を受けることで、住民税の負担がおさえられます。
控除額は扶養親族の年齢や同居の有無により異なるため、自身に当てはまるケースの控除額を把握しておきましょう。
住民税の扶養控除について、受けられる条件や控除額、扶養控除の有無による住民税額の差について解説します。
目次
住民税の扶養控除とは?
住民税の扶養控除とは、納税者本人に扶養している親族がいる場合に受けられる控除制度です。
扶養控除を受ければ課税対象となる所得金額が減らせるため、翌年の住民税がおさえられます。
住民税の扶養控除について、受けられる条件や扶養対象者について解説します。
扶養控除が受けられる条件
住民税の扶養控除は、納税者に特定の扶養親族がいる場合に、所得額から一定額を控除できる制度です。控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無により異なります。
扶養控除を受けるには、以下に当てはまる扶養親族がいることが条件です。
- 本人と生計を一にする親族であること
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)であること
- 16歳以上であること
- 親族の前年度の合計所得が48万円以下であること
- 青色事業専従者給与の支払を受けていない方
- 事業専従者に該当しない方
扶養控除を受ければ所得から一定金額が控除され、住民税の額が小さくなる可能性があるため、家計の負担軽減が期待できます。
扶養する対象年齢と扶養控除額
扶養控除は、扶養している対象の年齢や同居の有無により控除額が異なり、具体的には以下のとおりです。
一般扶養親族(16歳~18歳、23歳~69歳) | 33万円 |
---|---|
特定扶養親族(19歳~22歳) | 45万円 |
老人扶養親族(70歳以上) | (同居老親等以外の者)38万円(同居老親等)45万円 |
なお16歳未満は扶養控除の対象となりません。また同居老親等とは、当年の12月31日時点で年齢が70歳以上の方、かつ本人の配偶者または直系尊属で、本人や配偶者と同居している人をいいます。
扶養控除を受けたら住民税額が下がる理由
扶養控除を受けることで、住民税額がおさえられると聞いた人もいるでしょう。実際に、なぜ扶養控除を受けると住民税額がおさえられるのか把握すれば、負担を減らすために必要なことが理解できます。
扶養控除を受けると住民税額がおさえられる理由を、住民税の仕組みとあわせて解説します。
住民税の金額は課税所得金額で決まるため
住民税は前年の課税所得金額に税率をかけて税額控除額を差し引いた「所得割額」と「均等割額」を合計した金額です。
課税所得金額にかける税率は、市町村民税が6%、道府県民税が4%で、合計10%です。(政令指定都市では道府県民税が2%、市民税が8%)
一方で「均等割額」は、一定額をすべての納税者に対して均等に与えられる負担で、道府県民税1,000円 + 市町村民税3,000円+森林環境税1,000円(国税・令和6年度より)です。
扶養控除を受ければ課税所得金額がおさえられ、結果、所得割額を減らせます。
扶養控除で課税所得金額をおさえられるため
扶養控除を受ける場合と受けない場合とで、住民税にどれだけの金額差が生じるかを比較します。以下の条件で、扶養控除を受ける場合と受けない場合のおよその住民税額を比較します。
- 300万円 – 55万円(給与所得控除額)- 43万円(基礎控除額)= 202万円(課税所得金額)
- 202万円 × 税率10% = 20万2,000円
- 20万2,000円 + 道府県民税1,000円 + 市町村民税3,000円+森林環境税1,000円(国税・令和6年度より)= 20万7,000円
- 300万円 – 55万円(給与所得控除額)- 43万円(基礎控除額)= 202万円(課税所得金額)
- 202万円 – 38万円(扶養控除額)= 164万円
- 164万円 × 税率10% = 16万4,000円
- 16万4,000円 + 道府県民税1,000円 + 市町村民税3,000円+森林環境税1,000円(国税・令和6年度より)= 16万9,000円
双方の金額差は3万8000円で、扶養控除を受ければ住民税を大幅に減らせることがわかります。
住民税の扶養控除が受けられる条件に該当していたら?
住民税の扶養控除を受けるには、まず自分の扶養親族が控除対象であることを確認します。
扶養控除の対象となる場合は、年末調整または確定申告での申請が必要です。
年末調整の場合は、勤務先から配布される「給与所得者の扶養親族申告書」に必要事項を記入し、期限日までに提出します。申告書には16歳未満の扶養親族についても記載する欄があるため、もれなく記載しましょう。
確定申告の場合は、確定申告書の「配偶者や親族に関する事項」、「住民税に関する事項」に必要な情報を記入し、税務署に提出します。
年末調整により住民税額が決まる仕組みについて、以下の記事で詳しく解説していますので、自身の住民税額が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
あわせて知っておきたい6つの所得控除
住民税額を下げるため、扶養控除のほかにも複数の所得控除があり、条件に該当していれば受けられます。扶養している親族がおり扶養控除が受けられる場合、あわせて知っておくと便利な所得控除の種類を6つ紹介します。
1.配偶者控除
住民税の配偶者控除は、納税者本人に配偶者がいる場合に受けられる所得控除です。配偶者控除を受けるには、配偶者が以下に当てはまっている必要があります。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しない)
- 納税者と同一生計であること
- 配偶者の前年度の給与所得が48万円以下であること(給与収入が103万円以下であること)
- 本人の前年度の合計所得金額が1,000万円以下であること
上記に該当する配偶者がいる場合は、納税者本人に対して以下の所得控除が適用されます。
900万円以下 | (一般の控除対象配偶者)33万円(老人控除対象配偶者)38万円 |
---|---|
900万円超え950万円以下 | (一般の控除対象配偶者)22万円(老人控除対象配偶者)26万円 |
950万円超え1,000万円以下 | (一般の控除対象配偶者)11万円(老人控除対象配偶者)13万円 |
1,000万円超え | (一般の控除対象配偶者)適用無し(老人控除対象配偶者)適用無し |
老人控除対象配偶者とは、当年の12月31日時点において年齢が70歳以上の配偶者をいいます。配偶者が70歳未満の場合と70歳以上の場合とでは控除額が異なるため注意が必要です。
2.ひとり親控除・寡婦控除
ひとり親控除とは、シングルマザーやシングルファザーの場合に受けられる控除で、令和3年に新設されました。
事実婚状態を除くすべてのひとり親家庭が受けられる控除で、30万円の控除が受けられます。一方で寡婦控除とは、以下に当てはまる女性を対象としており、26万円の控除が受けられます。
- 夫と死別または生死不明、離婚したあと再婚していない
- 子以外の扶養親族がいる
- 前年度の合計所得金額が500万円以下である
ひとり親控除と寡婦控除は内容が似ていますが、ひとり親控除は性別問わず受けられます。また双方の控除の併用はできません。ただし配偶者が死亡した年に限り、配偶者控除とひとり親控除もしくは寡婦控除の併用が可能です。
3.障がい者控除
障がい者控除は、納税者自身またはその配偶者、扶養親族が障がい者である場合に適用される所得控除です。
また障がい者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の子を扶養している場合においても適用されます。
障がい者控除には3つの区分があり、それぞれの控除額は以下のとおりです。
- 障がい者:26万円
- 特別障がい者:30万円
- 同居特別障がい者:53万円
特別障がい者には重度の障がいをもつ方が含まれ、同居特別障がい者は、生計を一にする配偶者や扶養家族の中で、特別障がい者に該当する方を指します。
4.医療費控除
医療費控除とは、1年間に支払った医療費の合計金額をもとに控除金額が決まる所得控除です。最高で200万円の医療費控除が受けられ、控除額は以下の式で算出します。
ただし、以下の費用は医療費として認められないため注意が必要です。
- 医師等への謝礼
- 親族へ支払った療養上の世話費
- 病気予防や健康増進のための医薬品購入費(サプリメント含む)
- 健康診断や人間ドックの費用
- 通院のための自家用車のガソリン代
医療費控除を利用して住民税を安くする方法について、以下の記事で詳しく解説しています。医療費控除の利用を検討している方は、あわせてお読みください。
5.生命保険料控除
生命保険料控除は、納税者が支払った一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料に応じて、一定金額の所得控除が受けられる制度です。
支払った保険料の合計金額に応じて、生命保険料の3つの区分それぞれについて28,000円を上限とした控除が受けられます。
平成24年1月1日以降に締結した保険契約等(新契約)の場合は、以下の式で控除額を算出します。
【新契約】年間で支払った保険料 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 全額 |
12,000円超え 32,000円以下 | 支払保険料等×1/2+6,000円 |
32,000円超え 56,000円以下 | 支払保険料等×1/4+14,000円 |
56,000円超え | 28,000円 |
一方で、平成23年12月31日以前に締結した保険契約等(旧契約)の場合は、以下の式で控除額を算出します
【旧契約】年間で支払った保険料 | 控除額 |
---|---|
15,000円以下 | 全額 |
15,000円超え 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+7,500円 |
40,000円超え 70,000円以下 | 支払保険料等×1/4+17,500円 |
70,000円超え | 35,000円 |
旧契約の一般生命保険料控除と個人年金保険料控除は、ともに35,000円が控除額の上限です。
生命保険料控除を利用する方法や申請方法について、以下の記事で詳しく解説しています。生命保険に加入しており、控除の利用を検討されている方は、あわせてお読みください。
6.地震保険料控除
地震保険料控除とは、損害保険契約等の地震等損害部分において、保険料または掛金を支払った場合、支払った金額にもとづき控除が受けられる制度です。
支払った金額別における控除額は以下のとおりです。
支払った保険料の金額 | 控除額 |
---|---|
50,000円以下 | 支払金額の2分の1 |
50,000円超え | 25,000円 |
平成18年の税制改正により、平成19年分から損害保険料控除が廃止されました。ただし経過措置として、以下の要件を満たす一定の長期損害保険契約等の損害保険料についても、地震保険料控除の対象です。
- 平成18年12月31日までに締結した契約(保険期間または共済期間の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)
- 満期返戻金等のあるもので、保険期間または共済期間が10年以上の契約
- 平成19年1月1日以後に契約した損害保険契約等の変更をしていないもの
支払った保険料の金額 | 控除額 |
---|---|
5,000円以下 | 全額 |
5,000円超え15,000円以下 | 支払金額の1/2+ 2,500円 |
15,000円超え | 10,000円 |
夫婦共有名義の建物に対して加入している地震保険でも、控除を受けられるのは保険契約者の一人のみです。また控除を受けるためには地震保険料控除証明書の提出が必要であり、毎年郵送で送られてくるため、無くさないようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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