- 更新日 : 2022年3月22日
社員紹介で「報酬金50万円」ゲット 税金は引かれる?
近年、にわかに注目を浴びている「リファラル採用」。社員が自社に適任だと思う知人に声を掛け、人事に紹介し、選考へつなげる採用活動です。「採用氷河期」の今、採用コストを抑え、定着率の高い人材が採用できるなどの理由から導入を検討している企業も少なくありません。
あわせて、ベンチャー企業などでよく聞かれるのが、知人を紹介した社員への「紹介報酬」です。中には入社1名につき50万円以上を支給する企業もあります。この報酬金、税金は引かれるのでしょうか。
入社1名で「50万円以上」の高額支給も
人材紹介のエン・ジャパンが501社を対象に2017年8月~9月に行った調査では、過半数を超える62%の企業が「リファラル採用」を実施していると回答しました。

エン・ジャパンのプレスリリースより引用(以下同)
実施理由の第1位は「入社後に定着・活躍しやすいため」(59%)、第2位は「採用コストを下げるため」(56%)、第3位は「採用成功の確率が高いため」(51%)と、採用難の今、効率的な人材確保の一助になっていることが分かります。
また、実施企業のうち44%が、紹介した社員へインセンティブを支給しています。支給額は「3万円~10万円」が52%で最多、次に「3万円以内」(28%)が続きます。中には「50万円以上」と高額支給している企業も1%あります。入社1名につき報酬金50万円もらえるならば、優秀な知人を人事に紹介しようと社員のモチベーションも高まるでしょう。
ところで税金は引かれる?
ところでこの50万円、勘定科目は何費として処理されるのでしょうか。また課税対象なのでしょうか。ITやベンチャー企業の会計事情に詳しい、公認会計士で税理士の浅利圭佑さんに聞きました。
――社員紹介の報酬金は、勘定科目は何費として処理されますか。
浅利さん:会社側の勘定科目は、以下のいずれかとなるのが一般的です。
②従業員としての業務に直接関係しない場合:支払手数料(紹介手数料)
①②のいずれに該当するかは、以下のポイント等を勘案して総合的に判断することとなります。人事担当者など業務の一環として採用活動を行っていれば給与手当、業務時間外に本来の業務とは全く関係なく採用活動したケースについては紹介手数料となる可能性が高いです。
・紹介者の通常の業務と当該紹介活動が関係するか
・紹介活動にかかったコストが会社負担か否か
・勤務規定における紹介制度の整備状況
――報酬金は課税対象になるのでしょうか。また課税対象の場合の税率を教えてください
浅利さん:当該報酬が給与である場合は「給与所得」として、支払手数料である場合は「雑所得(あるいは一時所得)」としていずれも所得税及び住民税の課税対象となると考えられます。
なお、税率は対象者の所得金額によって変動し、2018年8月現在、所得税と住民税を合わせると約15%~55%の税率で累進的に課税されることとなります。
給与の場合 :給与所得として所得税及び住民税の課税対象
支払手数料の場合:雑所得として所得税及び住民税の課税対象
――知人を紹介して報酬金を手に入れた社員が、その知人と報酬金を山分けする場合、贈与税がかかるのでしょうか。
浅利さん:はい、社員から報酬金の山分けを受けた知人に対して贈与税が課税されます。贈与税の計算順序は以下の通りです。
②続いて、その合計額から基礎控除額110万円を差し引きます
③次に、その残りの金額に、以下の贈与税速算表(一般贈与財産用)の税率を乗じて税額を計算します(※国税庁ホームページより引用)

したがって、紹介により知人が得る財産の価額と、当年度中に得たその他の贈与の価額の合計が基礎控除110万円以内である場合は、納税は発生せず、贈与税の申告も不要となります。
公認会計士・税理士/IT、ベンチャー特化型の会計事務所「ネクスパート会計事務所」代表
スタートアップからメガベンチャーまで300社を超える企業に対し会計・税務・資金調達支援・VC対応など幅広いサービス提供を行う。会計・税務・FAS・法務のプロフェッショナルを集めたワンストップ型専門家集団、ネクスパート・アドバイザリーグループでグループCEOも務める。
【参考】
・「リファラル(社員紹介)採用」に関するアンケート調査(エン・ジャパン)
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2017/11266.html
・贈与税の計算と税率(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
よくある質問
「リファラル採用」を実施している企業はどれくらいある?
人材紹介のエン・ジャパンが501社を対象に2017年8月~9月に行った調査では、62%の企業が「リファラル採用」を実施していると回答しました。詳しくはこちらをご覧ください。
社員紹介の報酬金の勘定科目は?
給与手当もしくは、支払手数料で処理します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
固定残業代40時間は問題ない?計算方法や注意点を徹底解説
固定残業代40時間は、正しく理解して導入すれば問題ありません。制度の仕組みを把握し、従業員の働き方と労働時間を照らし合わせることが重要です。 本記事では、固定残業代の計算方法や注意点を解説し、正しく導入するポイントをお伝えします。 固定残業…
詳しくみる年金払い退職給付とは?公務員が押さえておくべき制度を解説
公務員は平成27年9月末で共済年金の職域加算部分が廃止になり、平成27年10月から新たな公務員共済制度年金の「年金払い退職給付」が創設されました。 この年金払い退職給付には「退職年金」、「公務障害年金」、「公務遺族年金」の3種類があります。…
詳しくみるボーナスの手取りについて計算方法を解説!
年に数回支給されるボーナスは、額面全てが貰えるわけではありません。毎月の給与と同様、所得税や社会保険料、労働保険料が天引きされます。一方、月々の給与から源泉徴収されている全ての税金が天引きされるわけではありません。この記事では、ボーナスにか…
詳しくみる手取りは「天引き後」の給与!どこから何が差し引かれているか知っておこう
「手取り」「年収」「額面」など、給与額を表現する言葉には様々なものがあります。しかし実はそれぞれの言葉がどんな数字を意味するのかを、よくわからない人も多いのではないでしょうか。 ここではそれぞれの言葉の意味を説明するとともに、手取りがどうや…
詳しくみる有休はいつ増える?増え方の条件や日数、パートアルバイトの場合も解説
有休(年次有給休暇)は、入社後6ヶ月継続勤務し、出勤率が8割以上であれば付与されます。 その後は勤続年数に応じて増えていき、最大で年間20日付与されます。 パートやアルバイトの方も、労働日数や時間に応じて有休の取得が可能です。 本記事では、…
詳しくみる年末調整と住民税の関係
住民税とは、自分の住む地域を維持していくための費用を住民自身が負担するというシステムの下、設定された税金です。所得に応じて課される税のため、基本的なしくみは所得税と同じです。 市町村民税・道府県民税をあわせて、住民税と呼び、その区分は地方税…
詳しくみる