- 更新日 : 2021年7月15日
資金調達の基本!経営者が知っておくべき3つの方法

設備投資をするにしろ、新たな事業を始めるにしろ、資金調達は経営者にとって避けては通れない問題です。しかし資金調達の基本的な方法は3つしかありません。
それは「負債を増やす」「資本を増やす」「既存の資産の現金化」です。ここではこの3つの方法の具体例を挙げながら、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
目次
資金調達の基本1「負債を増やす」
負債を増やすメリット・デメリット
最も単純な資金調達の方法は「負債を増やす」です。期限付きで融資を受け、定められた利息と元本を毎月・毎年返済していきます。
この方法のメリットはレバレッジ効果を利用できる点です。例えば自己資本が1000万円の企業が設備投資に800万円しかかけられないところを、500万円の借入をすることでより大きな利益を出す設備に1300万円の投資ができるのです。
800万円の設備投資で得られる利益を300万円とし、1300万円の設備投資で得られる利益を450万円とします。すると自己資本は1000万円のままですが、借入をしたほうが利益は大きくなります。
このように「自己資本利益率(ROE)」すなわち自己資本に対する利益率が高まることをレバレッジ効果と呼びます。
一方、融資を受けるためには不動産などの担保や保証人が必要なほか、赤字経営であるかどうかに関わらず、期日が来れば返済しなくてはいけません。ベンチャー企業や零細企業にとっては、これは大きなデメリットとなります。
借入金・新株予約権付社債・普通社債
負債を増やす具体的な方法には借入・新株予約権付社債・普通社債などがあります。借入金・新株予約権付社債・普通社債の順に会社の信用力が問われ、最も信用力が必要ない借入金でも担保や保証人などが必要となります。
新株予約権付社債とは当初は社債として発行されるものの、その後保有者が一定の条件により株式に転換する権利を持つ社債です。企業の信用力・影響力が比較的低い段階で利用される方法です。
普通社債は返済の予定日時点で企業が社債で調達した資金を活用して利益を上げ、きちんと返済できるかどうかが問題となります。そのため最も信用度が問われる資金調達方法なのです。
資金調達の基本2「資本を増やす」
資本を増やすのメリット・デメリット
「資本を増やす」方法とは、すなわち株式の発行です。この資金調達方法の最大のメリットは調達した資金を返済する義務がないということです。
株主が1株1万円で購入した株式の価値が、事業不振によって500円にまで下がったとしても、企業は何の補償義務も負わないのです。
集めた資金は企業の自由に使うことができ、借入金のように担保や保証人を用意する必要もありません。信用度の面で借入や社債発行ができない企業でも、この方法なら利用できます。
しかしこの資金調達方法には大きなデメリットも伴います。それは買収や合併のリスクです。
通常の株式では株主の持分に応じて経営権が生じるため、場合によっては投資家や投資企業によって経営権を事業主から取り上げてしまうのです。資本を増やすことで資金調達をする場合は、このような点に気をつけて株式を設計する必要があります。
株式を設計する
「株式の設計」とは、どのような株式を、どれくらい、誰に対して発行するかを決めることです。株式には一般的に持分に応じた経営権が生じますが、これを「普通株式」と呼びます。
一方「種類株式」と呼ばれる株式もあり、配当金をより多く配分する代わりに、経営権が生じないという「配当優先株式」を設計することもできます。
前者は資金を集めやすいというメリットがありますが、買収・合併のリスクは高くなります。後者は資金集めはしにくくなるものの、買収・合併のリスクは抑えられます。
買収・合併をしかけてくる可能性のあるベンチャーキャピタルファンドなどには種類株式を発行し、そうした危険のない相手に普通株式を発行するなど、リスクを考慮した株式設計が重要です。
資金調達の基本3「既存の資産を現金化する」
既存の資産を現金化するメリット・デメリット
持っているものを売って現金化し、それを資金とする方法が「既存の資産を現金化する」です。
手早く資金調達ができる点はメリットですが、そもそも現金化するための資産がなければできないという点と、現金化する時には資産の実際の価値よりも低い価格になりやすいという点がデメリットとなっています。
不動産証券化、債権の流動化、資産の流動化
主な現金化の方法として債権の流動化、資産の流動化の2つが挙げられます。
「債権の流動化」では売掛債権や手形債権、リース債権など回収時期がかなり先の債権を売却することで早期現金化を図ります。また使わなくなった設備などの不要資産を売却したり、リースに出したりする方法が「資産の流動化」です。
まとめ
「負債を増やす」「資本を増やす」「既存の資産を現金化する」ここで解説したこれらの方法は資金調達における最も基本的なものです。
それぞれのメリットとデメリットをよく理解し、状況に応じて「今自社に適切な資金調達方法はどれか」を判断できるようにしておきましょう。
資金調達方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
負債を増やす | レバレッジ効果を利用できる。 | ベンチャー企業などは利用しにくい。 |
資本を増やす | 返済義務がない。資金の用途も限られておらず、担保・保証人も不要。 | 買収・合併のリスクがある。 |
既存の資産を現金化する | 手早く資金調達ができる。 | 実際の価値よりも低い価格になる。 |
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よくある質問
資金調達の基本的な方法は?
「負債を増やす」「資本を増やす」「既存の資産の現金化」です。詳しくはこちらをご覧ください。
負債を増やす具体的な方法は?
負債を増やす具体的な方法には、借入・新株予約権付社債・普通社債などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
資本を増やす具体的な方法は?
資本を増やす方法は、すなわち株式の発行です。詳しくはこちらをご覧ください。
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