- 更新日 : 2024年4月12日
資金調達とは?経営者が知っておくべき3つの方法とメリットデメリットを解説
会社を経営していく上で、運転資金は欠かせないものです。債務の支払いや設備投資、給与の支給など、運転資金がなければ会社の経営サイクルは上手く循環していきません。運転資金を調達することを「資金調達」と呼びますが、調達方法は3つあります。
「負債(仕入債務や借入など)を増やす」「資本を増やす(増資や黒字経営)」「保有資産の現金化」です。今回は、それぞれメリットとデメリットを持つこの3つの方法について、それぞれ解説します。
目次
資金調達とは
「資金調達」とは、会社を経営するにあたって必要となる運転資金を融資などで調達することを指します。人間の身体で例えれば、資金は会社の血液のようなものです。資金の流れが止まれば会社はたちまち機能しなくなりますので、その調達方法の意味を知ることは経営者にとって最重要課題であるといえます。
資金調達の目的と役割
会社を経営していくために資金は欠かせないものです。運転資金を調達する目的はいうまでもなく、会社の事業活動を円滑にし、事業を存続・発展させていくことにあります。
事業を発展させるためには、雇用や設備投資を増やしていく必要がありますが、資金調達は、人や財産を増やすための手持ち資金を調達する役割を果たしているのです。
仮に資金調達を怠ったまま事業を拡大すれば、やがて手持ち資金は枯渇し、資金ショートを起こして会社が倒産してしまう恐れがあります。資金ショートを起こさないためにも、会社は常に資金調達のことを考えなければなりません。
資金調達と融資の違い
「資金調達」とは、経営によって外部から「利益」という形で資金を得ることを指します。これに対して「融資」とは、金融機関やその他会社外部の第三者から資金を「借入」して資金を得ることを指します。資金を調達する点は両者とも同じですが、「利益」として獲得するか「借入」で獲得するかという点で大きく異なります。
「利益」により獲得した資金は、会社外部に弁済する必要がない資金であり、社内に滞留します。「借入」により獲得した資金はやがて「返済」という形で社外に流出していきます。この点でも両者の違いがわかります。
なお、今回は「融資」を資金調達方法の1つとして「資金調達」に含めて解説します。
資金調達の基本1 「負債を増やす」
金融機関等からの借入金や、買掛金や支払手形といった仕入債務などを総称して「負債」と呼びます。借入を増やしたり仕入代金を掛仕入や支払手形にして「負債」を増やしたりすることで、資金調達をすることができます。
負債を増やすメリット・デメリット
最も単純な資金調達の方法は「負債を増やす」です。具体的には「買掛金や支払手形といった仕入債務を増やす」「借金をして手持ち資金を確保する」といったケースが該当します。
負債を増やすメリットとして挙げられるのが「レバレッジ効果」です。その理由について解説します。
例えば自己資本が1,000万円の企業が、設備投資に800万円しかかけられないところを、500万円の借入をすることでより大きな利益を出す設備に1,300万円の投資ができるのです。
800万円の設備投資で得られる利益を300万円とし、1300万円の設備投資で得られる利益を450万円とします。すると自己資本は1,000万円のままですが、借入をしたほうが利益は大きくなります。
このように「自己資本利益率(ROE)」すなわち自己資本に対する利益率が高まることをレバレッジ効果と呼びます。
一方、融資を受けるためには不動産などの担保や保証人が必要なほか、赤字経営であるかどうかに関わらず、期日が来れば返済しなくてはいけません。ベンチャー企業や零細企業にとっては、これは大きなデメリットとなります。
借入金・新株予約権付社債・普通社債
負債を増やす具体的な方法には借入・新株予約権付社債・普通社債などがあります。借入金・新株予約権付社債・普通社債の順に会社の信用力が問われ、最も信用力が必要ない借入金でも担保や保証人などが必要となります。
新株予約権付社債とは当初は社債として発行されるものの、その後保有者が一定の条件により株式に転換する権利を持つ社債です。企業の信用力・影響力が比較的低い段階で利用される方法です。
普通社債は返済の予定日時点で企業が社債で調達した資金を活用して利益を上げ、きちんと返済できるかどうかが問題となります。そのため最も信用度が問われる資金調達方法なのです。
資金調達の基本2 「資本を増やす」
負債が「他人調達資本」と呼ばれるのに対して、資本金は「自己調達資本」とも呼ばれます。文字通り、自己調達(増資)によって資金調達を行う方法です。
資本を増やすメリット・デメリット
「資本を増やす」方法とは、すなわち株式の発行です。この株式の発行、すなわち「増資」は、会社が減資や解散をしない限り、長期間に渡って資金を社内に滞留させられるメリットがあります。
株主が1株1万円で購入した株式の価値が、事業不振によって500円にまで下がったとしても、企業は何の補償義務も負わないのです。
「増資」により集めた運転資金は、借入金ではありません。したがって、よほどのことがない限り、資金が外部に直接逃げていくことはありません。信用度の面で借入や社債発行ができない企業でも、この方法なら利用できます。
しかしこの資金調達方法には大きなデメリットも伴います。それは買収や合併のリスクです。
通常の株式では株主の持分に応じて経営権が生じるため、場合によっては投資家や投資企業が経営権を事業主から取り上げてしまうケースもあります。増資により資金調達をする場合は、外部の第三者が保有する株式の持分割合を充分考慮した上で進めていくべきでしょう。
株式を設計する
前段で、株式の持分割合の重要性について触れました。では、具体的にどうすればよいか考えてみましょう。
一般的な株式会社では、一株につき一口の議決権が与えられています。これを「普通株式」と呼びます。一方、配当金をより多く配分する代わりに、経営権が生じない「配当優先株式」を設計することもできます。このような株式を「種類株式」と呼びます。
「普通株式」は、資金を集めやすいというメリットはありますが、買収・合併のリスクが高くなります。「種類株式」は資金調達がやりにくいデメリットがありますが、買収・合併のリスクは抑えられます。
増資を使った企業防衛策としては、買収・合併をしかけてくるベンチャーキャピタルファンド等には種類株式を発行し、乗っ取りの危険がない相手に普通株式を発行するなど、乗っ取りリスクを考慮した株式設計が重要です。
資金調達の基本3 「既存の資産を現金化する」
会社が所有する資産を売却して現金化するという方法もあります。使っていない遊休資産を売却できるルートさえあれば、前段で紹介した「借入金」や「増資」より即効性のある資金調達方法です。
既存の資産を現金化するメリット・デメリット
持っているものを売って現金化し、それを資金とする方法が「既存の資産を現金化する」です。車両や重機など、買取市場がある資産については、手早く現金化が可能ですから即効性のある資金調達としては有効な手段です。
しかし、そもそも現金化可能な資産を持っていないケースや、場合によっては実際の評価額より低く買い叩かれるといったデメリットもあります。
不動産証券化、債権の流動化、資産の流動化
固定資産のほかにも、会社が保有する資産はありますのでこれらを現金化するのも1つの方法です。例えば、売上債権(売掛金や受取手形)の譲渡(売却)や有価証券の売却です。
売上債権等を現金化することを「債権の流動化」と呼び、有価証券や出資金といったその他の流動化を「資産の流動化」と呼びます。
資金調達をスムーズに進めるポイント
このように、資金調達には様々な方法があります。では、実際に資金調達をする際に注意したいポイントをまとめてみましょう。
資金の使用用途や金額を明確にする
まずは自分が「何のために」「いくら」運転資金を用意しなければならないかを明確にします。例えば、用途として売上を増加させるために必要な機械装置を1,000万円で購入する、といったものです。
特に「何のために」は初めに明確にすべき部分であり、使用用途によっては重要な判断材料になります。例えば、5年先に受注が見込まれる工事用の特殊な機械装置を購入するという計画があったとしましょう。5年先に使う予定の機械をなぜ今、買う必要があるのか?といった点を明確にすべきです。
事業内容や経営戦略で信用を獲得する
上場株式のなかでも、信頼のできる銘柄の株式は誰もが欲しがるものです。資金調達において、特に「増資」により資金調達を行うケースでは株式に信用がなければなりません。
魅力的な事業内容や経営戦略を明確にすることで、株式が持つ対外的な信用度をアップさせることが可能です。
現在の会社規模に最適な金融機関を選ぶ
設備投資でもなければ、年商1億円の企業にいきなり5億円の資金調達は必要ないでしょう。また、そもそも5億円の借入を実行してくれる金融機関も限られています。
会社の事業規模をふまえた、資金調達で身の丈にあった金融機関を選択しましょう。
資金調達方法のメリット・デメリットを理解しましょう
「負債を増やす」「資本を増やす」「既存の資産を現金化する」ここで解説したこれらの方法は資金調達における最も基本的なものです。それぞれにメリット・デメリットがありますが、自社の営業サイクルに最もフィットした方法を選択するようにしましょう。
資金調達方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
負債を増やす | レバレッジ効果を利用できる | ベンチャー企業などは利用しにくい |
資本を増やす | 返済義務がない。資金の用途も限られておらず、担保・保証人も不要 | 買収・合併のリスクがある |
既存の資産を現金化する | 手早く資金調達ができる | 実際の価値よりも低い価格になる場合がある |
YouTubeチャンネル 5分でわかるバックオフィス by マネーフォワード クラウド にて【会社設立時の資金調達】を解説しています。こちらもご参考ください。
マネーフォワード クラウドで会社設立をもっとラクに
会社が金融機関等の融資を受けて資金調達をする際に欠かせないのが「経営計画」です。
具体的には1年後、3年後、5年後等に会社がどのように成長しているのか?運転資金は充分足りているのだろうか?といった将来のシミュレーションを今から始める必要があります。
その点、マネーフォワードクラウドで会計処理を進めれば、資金繰りの作成が大幅に短縮されます。会社設立も自分で処理できます。
よくある質問
資金調達とは?
「負債を増やす」「資本を増やす」「資産を現金化する」のいずれかの方法で資金を調達することを指します。詳しくはこちらをご覧ください。
資金調達と融資の違いとは?
利益として外部から資金を得ることを資金調達、融資により資金を受けることを融資と呼びます。詳しくはこちらをご覧ください。
レバレッジ効果とは?
少ない運転資金で、より大きな収益を得ることです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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