• 更新日 : 2025年1月30日

育休(育児休業)中も住民税は支払う?税金・社会保険料は?わかりやすく解説

育児休業中で給料の支払いがなくても、住民税の納付は必要です。しかし、給料天引きできない住民税はどうやって支払えばよいのでしょうか。

本記事では、育児休業中の住民税について解説します。育児休業中の住民税の納付方法や育休終了後の手続き、住民税の支払いが難しい場合の対応なども紹介しますので、本記事を参考にして手続き漏れがないように対応しましょう。

育休(育児休業)とは

育児休業(以下、育休)とは、会社員などが原則1歳未満の子どもを養育するために取得できる育児・介護休業法で定める休業制度です。要件を満たした従業員から取得の申し出があった場合、企業は拒否できません。

育休期間は原則子どもが1歳になるまでですが、1歳のとき保育所が見つからない場合などは「1歳6ヶ月になる日」まで、子どもが1歳6ヶ月のとき同様の場合は「2歳になる日」まで期間延長できます。

日雇い労働者は対象になりませんが、無期雇用のパートタイム社員(短時間労働者)や所定の要件を満たす契約社員(有期雇用労働者)も対象です。

育休の期間中、給料は支払われないことが多い

育休中の給料の有無は企業によって異なりますが、給料は支払われないことが一般的です。仕事をしていない期間については給料の支払い義務はないという「ノーワーク・ノーペイ」の原則があるためです。

休業中の従業員の生活を支えるために、一定要件を満たせば雇用保険から育児休業給付金が支給されます。休業中に給料が支払われると、育児休業給付金は出ません。ただし、企業が任意に育休中の給与を支払っても問題はありません。

ボーナスについては、育休中でも支払われる可能性があります。企業の定めたボーナス支給要件が「査定期間の勤務」と「支給月の在籍」ならば、査定期間は勤務し支給月に在籍中の人は要件を満たすことになるためです。

育休中でも住民税の納税は必要

育休中で給与収入がなくなっても、前年度の収入があれば住民税の納税は必要です。会社員の住民税は、前年度の所得に対して今年度の給与から源泉徴収されるためです。

一方、所得税や次の社会保険料などは育休中に支払う必要はありません。

所得税や雇用保険料については、給与所得がないため支払いは発生しません。育休中の健康保険料や厚生年金保険料については、免除制度が設けられています。
勤務先が日本年金機構に免除申請すれば、社会保険料の支払いは必要ありません。

厚生年金保険料を支払わないと将来の年金額が減るのではないかと不安に感じる人もいるかもしれませんが、育休前と同額の保険料を支払ったものとして年金額を計算するため安心です。

育休中の住民税の納付方法

会社員の住民税は毎月の給料から源泉徴収されますが、育休中の住民税はどうやって納付するのでしょうか。納付方法は、育休の開始時期によって異なります。開始時期ごとに納付方法を解説します。

なお、前年の1月から12月までの所得に対する会社員の住民税が給与から源泉徴収されるのは、当年6月から翌年5月の給与です。会社員の給与から源泉徴収する方法を「特別徴収」、納付書などを使用して直接住民税を徴収する方法を「普通徴収」と呼びます。

1月~5月に取得した場合

1月から5月の間に育休を開始した場合、育休前に支給される最後の給料から5月分までの住民税が一括して特別徴収されます。たとえば、2月から育休を開始する場合(育休前の最後の給料が2月に支給される場合)、2月から5月分の住民税が給料から一括控除されます。

6月以降の住民税は、給与控除できないため普通徴収です。6月に居住地の自治体から「住民税決定通知書」と「納付書」が送付されるので、次の方法で納付します。

  • 金融機関やコンビニエンスストア、市区町村の窓口で現金納付
  • ペイジー(スマートフォンやパソコンで支払いする決済サービス)による納付
  • 口座振替による納付(事前に口座登録が必要)
  • クレジットカードやスマートフォン決済、地方税ポータルシステム(eLTAX)による納付 など

6~12月に取得した場合

6月から12月の間に育休を開始した場合、給与からの特別徴収ができないため普通徴収となります。前述の納付方法で住民税を支払います。

なお、特別徴収と異なり普通徴収の支払い回数は年4回です。6月と8月、10月、翌年1月の4回分の納付書が居住地の自治体から送付されます。

育休中の住民税の支払いが難しい場合

育休中の住民税の支払いが困難な場合は、市区町村の窓口に相談してみましょう。

納税が困難と認められた場合は、最長1年間の支払い猶予を受けられます。ただし、これは免除ではなく、あくまでも支払いの先送りであり、復職後には支払わなければなりません。

原則として猶予期間中は延滞金が発生するものの、状況によっては免除されるケースもあります。そのため、支払いできない場合はそのままにするのではなく、必ず相談するようにしましょう。

育児休業給付金に税金・住民税はかかる?

育児休業給付金には、住民税や所得税はかかりません。育児休業給付金は所得とみなされないため、非課税です。中学生以下の子どもを養育する人に支給される「児童手当」についても同様です。育休中だけでなく、復職後も児童手当には住民税や所得税はかかりません。

なお、育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額(原則ボーナスを除いた直近6ヶ月間の賃金総額を180日で割った金額)」を使用して次の通り計算します。

  • 支給開始後180日目まで:支給額=休業開始時賃金日額×休業日数×67%
  • 支給開始後181日目以降:支給額=休業開始時賃金日額×休業日数×50%

当初6ヶ月の給付額は育休前の2/3、後半の半年は半分です。

例を挙げると、月収30万円の場合、180日目までの月額支給額は201,000円、181日目以降は150,000円、月収40万円の場合は180日目までの月額支給額は268,000円、181日目以降は200,000円になります。

育休前の給料より少ない金額ですが、所得税や社会保険料が控除されないため手取り金額の差は縮まります。なお、休業開始時賃金日額には、上限額(1万5,690円)と下限額(2,869円)が設けられているので注意しましょう。

育休中の社会保険料はどうなる?

育休中の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、事業主からの申請により、従業員負担分と事業主負担分の両方が免除されます。

育休中の社会保険料免除は、育休開始月から終了月の前月までが基本です。

2022年10月からの改正により、同月内で14日以上の育休取得でもその月の保険料が免除されるようになりました。

また、賞与に対する保険料については、賞与支給月に1か月を超える育休を取得している場合のみ免除されます。1か月超の判断は暦日で行い、土日祝日も期間に含まれます。

社会保険料の免除手続きの流れ

育休中の社会保険料免除の手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 従業員から会社への育休取得の申し出
  2. 会社が年金事務所へ「育児休業等取得者申出書」を提出
  3. 申請承認後、免除開始

この免除期間は将来の年金受給額の計算時には保険料納付済み期間としてカウントされるため、年金額への影響はありません。

手続きは育休開始後すぐに行うことが推奨され、遅い場合でも育休期間内に完了させなければなりません。

育児休業給付金は手取りでいくらもらえる?

育児休業給付金は、休業前の給与額によって支給額が異なります。給付金は非課税で社会保険料も免除されるため、実質的な手取り額は給付率よりも高くなり、給付率67%の期間中は育休前の約80%程度になります。

育休開始から180日まで

育休開始から180日まで給付率は休業前賃金の67%で、前年度の年収に応じた住民税を引いたおおよその手取り相当額は以下のとおりです。

休業前の月収支給額(月額)実質手取り相当
20万円(前年度年収280万円)13万4,000円約12万5,000円
30万円(前年度年収420万円)20万1,000円約18万5,000円
40万円(前年度年収560万円)26万8,000円約24万4,000円
50万円(前年度年収700万円)31万5,369円約28万4,000円

※前年度の年収はボーナス2ヶ月で算出、実質手取り相当額は1,000円未満切り捨て

支給上限額は31万5,369円、下限額は5万7,666円となっています。

育休開始から181日目~

育休開始から181日目以降は給付率が50%に下がり、前年度の年収に応じた住民税を引いたおおよその月額手取り相当額は以下となります。

休業前の月収支給額(月額)実質手取り相当
20万円(前年度年収280万円)10万円約9万1,000円
30万円(前年度年収420万円)15万円約13万4,000円
40万円(前年度年収560万円)20万円約17万6,000円
50万円(前年度年収700万円)23万5,350円約20万4,000円

※前年度の年収はボーナス2ヶ月で算出、実質手取り相当額は1,000円未満切り捨て

支給上限額は23万5,350円、下限額は4万3,035円です。

【2025年4月~】実質手取り10割?出生後休業支援給付金スタート

2025年4月から、夫婦がともに14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間、従来の給付金(67%)に加えて休業前賃金の13%が上乗せされます。

具体的な支給額を、月収30万円、40万円のケースでシミュレーションした結果は、以下のとおりです。実質手取り10割に近くなることがわかります。

  • 月収30万円の場合:24万円(80%)+社会保険料免除で実質手取り約30万円
  • 月収40万円の場合:32万円(80%)+社会保険料免除で実質手取り約40万円

ただし、支給上限額があるため、必ずしもすべての方が実質手取り10割になるわけではありません。

給付率67%の場合、月収約47万円以上になると実質手取り10割には届かない場合があります。なお、この制度は子の出生後8週間以内(女性は産後休業後8週間以内)の期間が対象です。

育休中に効果的な節税方法

一般的に育休中は無給のため税金はかかりませんが、以下の方法で節税もできます。

それぞれの節税方法について解説します。

生命保険料・個人年金保険の控除を活用する

育休中の節税には、一般生命保険、医療保険、個人年金保険の3種類の組み合わせが効果的です。これらは所得控除の対象となり、所得税と住民税の負担を抑えられます。

新契約(2012年1月以降加入)の場合、各保険料控除の控除上限は所得税4万円、住民税2.8万円で、3種類合計の上限は所得税12万円、住民税7万円です。

なお、2025年4月からは23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除の上限額が所得税において4万円から6万円に引き上げられる予定です。

配偶者控除を申告する

育休によって、配偶者の所得税や住民税が安くなることもあります。収入が減少して年間所得が次の金額になると、所得1,000万円以下の配偶者が配偶者控除または配偶者特別控除を受けられるためです。

  • 配偶者控除:育休取得者の所得が48万円以下
  • 配偶者特別控除:育休取得者の所得が48万円超133万円以下

配偶者控除や配偶者特別控除は申告しないと適用されないため、年末調整などで忘れずに申告しましょう。

育休終了後の税金・社会保険料・住民税の納付手続き

育休終了後の税金や社会保険の各種手続きについて、項目ごとに説明します。

育休終了後の税金

所得税は復職後の最初の給与支給時から源泉徴収が再開されます。育休中は非課税の育児休業給付金が主な収入でしたが、復職後は通常の給与所得として課税対象になります。そのため特別な手続きは必要ありません。

なお、年末調整については、1年間の給与収入に応じて通常どおり行われます。育休期間中に受給した育児休業給付金は、所得にならないため年末調整の対象外です。

育休終了後の社会保険料

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は育休終了月の前月まで免除されるため、育休終了月から保険料が発生します。

一般的に社会保険料は翌月支給の給与から控除されるため、育休終了月の翌月給与から給与天引きが始まります。

当初の予定より前倒しで育休を終了した場合、会社が「育児休業等取得者申出書・終了届」を提出し、免除期間終了になります。予定どおりに復帰する場合、提出は必要ありません。

時短勤務などで給与が減少する場合は、会社を通じて「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出しましょう。保険料が復職後3ヶ月間の給与実態に応じた金額に見直されます。

育休終了後の住民税

住民税の納付方法は、育休中の納付方法によって手続きが異なります。

  • 特別徴収(給与天引き)を継続していた場合:追加手続き不要
  • 普通徴収に切り替えていた場合:会社が「普通徴収から特別徴収への切り替え届出書」を提出

切り替え手続きは復職後、提出月の翌々月から特別徴収が開始されます。なお、普通徴収で未納分がある場合は、特別徴収への切り替えができないため、本人が直接納付する必要がある点に注意しましょう。

育休前・育休後に役立つ各種テンプレート

育児休業に関わる各種書類はテンプレートの活用が便利です。
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育休中の住民税の取扱い育休取得者に正しく伝えましょう

住民税は前年の所得に対して課税されるため、育休中の従業員にも住民税がかかります。納付方法は、育休の開始時期によって特別徴収または普通徴収です。育休中の住民税支払い方法が普通徴収だった場合、育休終了後に特別徴収への切り替え手続きが必要です。

育休中に給与収入がなくなることに不安を感じる従業員もいます。育児休業給付金の支給や社会保険料の免除、住民税の納付方法などを正しく伝え、従業員が安心して育休取得できるように配慮しましょう。


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