- 更新日 : 2025年7月11日
就業規則の作成費用の相場は?社労士に依頼する場合や自分で作成する場合を徹底比較
従業員を雇用し、健全な企業運営を目指す上で不可欠な「就業規則」。しかし、その作成には専門的な知識が求められ、「一体どれくらいの費用がかかるのだろう?」「できるだけ安く済ませたいけど、大丈夫?」といった費用に関する疑問や不安は尽きません。
この記事では、2025年現在の最新情報に基づき、就業規則作成にかかる費用相場を徹底解説します。社会保険労務士(社労士)への依頼はもちろん、弁護士やコンサルティング会社といった社労士以外の専門家への依頼、さらにはテンプレートや作成ツールを活用して自分で作成する場合の費用相場を紹介します。
目次
就業規則作成にかかる費用の全体像
就業規則の作成費用は、依頼先や依頼内容、企業の業種特性や経営者の目的、従業員の勤務形態や雇用状況によって大きく変動します。まずは、どのような要素が費用に影響を与えるのか、その全体像を把握しましょう。
費用の主な内訳
専門家に就業規則作成を依頼した場合、一般的には以下のような業務に対する費用が発生します。この内訳を理解することが、見積もり内容を正しく評価する第一歩です。
- コンサルティング・ヒアリング費用
企業の現状を詳細にヒアリングし、就業規則に盛り込むべき内容を整理・提案する費用です。オーダーメイドで実効性のある就業規則を作るための最も重要な工程であり、ここでの情報共有の質が完成度を左右します。 - 就業規則本文・各種規程の作成費用
ヒアリング内容に基づき、法的に問題なく、かつ企業の実情に即した就業規則の条文(本則)を作成する費用です。加えて、賃金規程、育児・介護休業規程、ハラスメント防止規程、テレワーク規程など、企業の実態や法改正に応じて必要となる各種関連規程を作成する場合は、別料金で費用が発生する場合があります。 - リーガルチェック費用
作成された就業規則が最新の労働関係法令に適合しているか、法的なリスクがないかなどを専門家が確認する費用です。自社で作成した場合や、既存の規程を改定する際は、このチェックだけを依頼することも可能です。 - 労働基準監督署への届出代行費用
作成した就業規則は、届出書および意見書とともに所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。手続きに不慣れな場合は、社会保険労務士に届出を代行してもらうことで、時間と手間が削減できます。 - 従業員説明会の実施・サポート費用
作成・変更した就業規則を従業員へ周知徹底するための説明会の開催や、そのための資料作成、説明方法のアドバイスなどをサポートする費用です。運用を確実にするために重要です。 - その他
既存の就業規則の問題点を洗い出す「就業規則診断サービス」や、作成後の法改正に対応するための継続的な「法改正対応サポート(顧問契約に含まれることもある)」など、オプションで費用が発生する場合があります。
費用に影響を与える要因
就業規則作成の費用は、画一的なものではありません。主に以下の要因によって変動します。これらの要素を事前に整理しておくことで、より正確な見積もりを得やすくなります。
- 企業規模(従業員数)
従業員数が多いほど、考慮すべき雇用形態(正社員、契約社員、パートタイマーなど)や労働条件が多様になり、規程が複雑化する傾向があるため、費用が高くなることがあります。 - 業種・業態
特定の業種(例:建設業、運送業、医療・福祉業、IT業など)では、業界特有の勤務形態(変形労働時間制、みなし労働時間制など)や法令対応(安全衛生管理など)が必要となるため、専門性が求められ、費用が変動する場合があります。 - 依頼範囲
全くの新規作成か既存規程の全面改訂か、一部の条文変更か本則のみか、賃金規程や育児介護休業規程など関連規程もまとめて依頼するのか、届出代行や従業員説明会まで依頼するのかなど、依頼する範囲によって費用が異なります。依頼する業務範囲が広ければ広いほど、費用は高くなります。 - 既存規程の有無
既に就業規則がある場合でも、その内容が古く法改正に対応していなかったり、実態と乖離していたりすると、新規作成に近い工数がかかることがあります。逆に、ある程度整備されており、たたき台として活用できる場合は、費用を抑えられる可能性があります。 - 求める専門性やカスタマイズの度合い
汎用的な雛形をベースに簡易的に作成する場合と、完全オーダーメイドの規程を作成する場合とでは、費用が大きく異なります。企業の理念や独自の福利厚生制度、特殊な勤務体系などを細かく反映させた完全オーダーメイドの規定は、コンサルティングにかかる時間や条文作成の難易度が異なり、費用が高くなります。 - 依頼する専門家の種類と実績
就業規則の作成や届出を外部に依頼ができるのは、原則として社会保険労務士や弁護士などの国家資格を持つ、事務所や法人です。国家資格を持っていれば、コンサルティング会社などでも依頼ができます。依頼先によって料金体系や得意分野が異なり、、当該分野での経験や実績が豊富な専門家ほど、高めの料金設定になる傾向があります。
就業規則の作成を社労士に依頼する場合の費用相場
労働法規の専門家である社会保険労務士(社労士)は、就業規則作成の最も一般的な依頼先です。新規作成の場合、一般的な費用相場は10万円〜30万円程度です。企業規模や規程の複雑さ、関連規程の作成数で変動します。
既存規程の変更・改訂の場合は5万円〜15万円程度が目安ですが、大幅な見直しが必要な場合は新規作成に近い費用になることもあります。すでに顧問契約をしている場合、割引や顧問料内で対応してもらえることもありますので、確認してみましょう。
社労士に依頼するメリット・デメリット
社労士に依頼するメリットは、最新法規への適合、助成金活用の助言、労務リスク低減など専門性の高いサポートです。デメリットは、自作に比べ費用がかかる点が挙げられます。しかし、法的不備による将来の紛争コストを考えれば、専門家への投資は合理的と言えるでしょう。
信頼できる社労士選びのコツ
就業規則作成実績の豊富さ、自社の業種・業界への理解度、料金体系の明確さ、そして親身なコミュニケーションが可能かを確認しましょう。作成後の法改正対応など、アフターフォローの有無も依頼する際のポイントです。
就業規則の作成を弁護士に依頼する場合の費用相場
弁護士への依頼費用は、一般的に社労士より高額で、20万円〜50万円以上が目安です。社労士が予防法務や日常労務に強いのに対し、弁護士は訴訟対応や高度な法的リスクヘッジに強みがあります。特に複雑な法的問題を抱える企業や、過去に紛争経験がある企業に適しています。
弁護士に依頼するメリット・デメリット
弁護士に依頼する最大のメリットは、訴訟リスクを最大限に抑える高度なリーガルチェックと、紛争発生時の迅速な対応力です。デメリットは費用が高めであることと、日常的な労務管理や社会保険手続きは専門外となる場合が多いことが挙げられます。
弁護士選びで注意すべき点
労働法分野、特に企業側の案件に精通しているかを確認しましょう。就業規則作成やレビューの実績も重要です。社労士資格も持つ弁護士や、社労士と連携している事務所であれば、より広範なサポートが期待できます。
就業規則の作成をコンサルティング会社に依頼する場合の費用相場
人事コンサルティング会社なども就業規則作成サービスを提供しています。費用は数十万円から数百万円と幅広く、就業規則作成単体より人事制度設計など包括的なコンサルの一環で提供してもらえることが多いです。
コンサル会社に依頼するメリット・デメリット
コンサル会社に依頼するメリットは、人事戦略全体との整合性を図れる点や、広範なサポート体制です。デメリットは、費用が高額になる可能性と、担当者が必ずしも労働法規の専門家(社労士資格保有者など)ではない場合がある点が挙げられます。契約前に担当者の資格や実績、専門分野をしっかり確認することが失敗を防ぐ鍵です。
就業規則を自分で作成する場合の費用相場
費用を抑えるために、テンプレートなどを活用して自社(自分)で就業規則を作成する方法もあります。専門家への依頼費用は発生しないため、コストは最小限に抑えられます。無料テンプレートから数千円〜数万円の有料テンプレート、関連書籍代などが主な費用です。就業規則作成ツールを利用する場合は、月額数千円〜のサブスクリプション費用や、ソフトウェア購入費用がかかることもあります。
自分で作成するメリット・デメリット
メリットは費用を大幅に抑えられる点と、自社のペースで進められる点です。しかしデメリットは大きく、法的リスク、実態との不適合、作成にかかる膨大な時間と労力、最新法改正への対応困難なことなどが挙げられます。安易な自作は、将来的に大きなトラブルを招く可能性を理解しておく必要があります。
就業規則を自分で作成する場合に使えるテンプレート
自社で就業規則を作成する際に役立つのが、テンプレートや厚生労働省が提供するモデル就業規則です。これらを上手に活用するためのポイントと注意点を解説します。
モデル就業規則とは
厚生労働省がウェブサイトで公開している就業規則の雛形です。労働基準法等で定められた記載事項の例や、さまざまな規定例が示されており、自作する際の基本的な参考資料となります。ただし、あくまで一般的なモデルであり、各企業の個別事情には対応していません。そのまま使うのではなく、自社の実態に合わせた修正が必要です。
テンプレート活用のメリットと注意点
また、マネーフォワード クラウドでも就業規則に使える無料のテンプレートをご用意しております。
メリットは、作成のたたき台として利用すれば時間短縮に繋がり、費用を抑えられる点です。注意点としては、自社の実態に合わない規定はトラブルの原因になる点が挙げられます。必ずカスタマイズし、可能なら専門家のレビューを受けるのが賢明です。
就業規則の作成費用を格安にするためのポイント
専門家に依頼するにしても、自作するにしても、費用はできるだけ抑えたいものです。賢くコストをコントロールし、かつ質の高い就業規則を作成するための5つのポイントを紹介します。
依頼範囲を明確化する
専門家に依頼する際、「すべてお任せ」ではなく、自社で対応できる部分と専門家の力が必要な部分を切り分けましょう。たとえば、従業員へのヒアリングや資料収集は自社で行い、条文作成やリーガルチェックのみ依頼するなど、必要なサービスに絞ることで無駄な費用を削減できます。
相見積もりで比較検討する
複数の社労士事務所などから見積もりを取りましょう。これにより適正な相場感が把握でき、提案内容、実績、人柄などを比較検討できます。見積もり依頼時は、企業規模や依頼したい業務範囲、重視する点などを具体的に伝え、同じ条件で比較できるようにすることが重要です。
事前準備を徹底する
依頼前に、労働条件に関する資料(雇用契約書、賃金台帳など)を収集・整理し、経営方針や解決したい労務課題を明確にしておきましょう。可能な範囲でたたき台を作成することも有効です。これにより専門家との打ち合わせがスムーズに進み、作業時間の短縮、ひいては費用抑制に繋がる可能性があります。
助成金・補助金の活用を検討する
就業規則の整備や働きやすい環境づくりに関連して、国や自治体が助成金制度を設けている場合があります。「働き方改革推進支援助成金」などが代表的です。費用の一部が補助される可能性があるので、最新情報を確認し、社労士などの専門家に相談してみましょう。ただし、要件が細かく申請も煩雑なため注意が必要です。
長期的な視点を持つ
目先の費用だけにとらわれると、法的不備や企業実態に合わない就業規則となり、将来大きな労使トラブルや訴訟費用、従業員の不信感といった形でより高額なコストが発生するリスクがあります。企業を守る投資として、適切な費用をかける意識が大切です。
就業規則の作成費用に関してよくある質問
就業規則作成の費用に関して、多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
就業規則の見直し・変更だけでも費用はかかる?
はい、見直しや変更にも費用が発生します。法改正対応、新制度導入、条文修正など、範囲や内容で費用は異なり、一般的に5万円〜15万円程度が相場です。大幅な改訂の場合は新規作成に近い費用(15万円以上)になる場合もあります。変更点と理由を明確に伝え、見積もりを取りましょう。
就業規則の作成費用に助成金を使える?
はい、「働き方改革推進支援助成金」など、就業規則整備が対象となる助成金があります。活用すれば費用負担を軽減できる可能性がありますが、要件確認や申請手続きが必要です。最新情報を確認し、社労士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。申請代行には別途費用がかかる場合があります。
就業規則の作成費用の勘定科目は?
専門家への依頼費用は「支払手数料」「業務委託費」、テンプレートやツール購入費は「消耗品費」「事務用品費」「ソフトウェア」などが一般的です。クラウド型ツールなら月額費用として「支払手数料」、顧問契約の一環なら「顧問料」となります。最終的には顧問税理士にご確認ください。
就業規則の作成費用だけでなく品質も大切にしましょう
就業規則の作成費用は、依頼先や内容で大きく変わります。しかし、単なるコストではなく、企業と従業員を守り、健全な成長を支える「投資」と捉えることが重要です。格安な方法も魅力的ですが、法令遵守、自社への適合性、将来のリスク回避といった視点を忘れずに検討しましょう。この記事を参考に、専門家への相談も視野に入れつつ、費用と品質のバランスが取れた、あなたの会社にとって最適な就業規則作成を実現してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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