- 更新日 : 2025年11月12日
会社役員や取締役は雇用保険に加入できる?労働者性の要件についても解説!
雇用保険は、事業主と雇用関係にあり、働くことで賃金を得る労働者が加入対象です。会社の役員、取締役といった人々は、経営者の立場にあり、原則として雇用保険の被保険者にはなりません。ただし、労働条件などから判断して労働者として雇用保険に加入できるケースもあります。ここでは、雇用保険の「労働者性」要件について解説します。
会社役員や取締役は雇用保険に加入できる?
会社役員、取締役といった立場の人は、原則として雇用保険の対象にはなりません。
ただし、会社の役員であると同時に工場長や支店長など、従業員の身分を有する人は、その実態から判断して雇用保険に加入できるケースがあります。
参考:Q4 取締役や会社の役員は雇用保険に加入できるのでしょうか。|厚生労働省
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
‐入社・退職・異動編‐ 社会保険・労働保険の手続きガイド
企業において社会保険および労働保険の加入・喪失手続きは必ず発生し、手続きを誤れば保険事故が発生した際に従業員が不利益を被る可能性があります。
各保険の基本的な手続き方法を入社・退職・異動のシーン別にギュッとまとめた分かりやすいガイドです。
年度更新の手続きガイドブック
年度更新とは、年間の労働保険料(労災保険料・雇用保険料)を申告・納付するための手続きです。
本ガイドでは、年度更新の具体的な対応手順をはじめ、ミスの発生を防ぐ10のポイントをわかりやすく解説します。
社会保険・労働保険の実務完全ガイド
これ1冊でしっかり網羅!社会保険および労働保険は、従業員の生活上・労働上のリスクに備えるための公的保険制度です。
本資料では社会保険・労働保険で発生する各種手続き方法を、入社・退職時や妊娠・出産時などのシーン別にまとめました。
労災対応がよくわかるガイド
前半で労災の基礎知識と実務の流れを、後半でケーススタディとともに労災認定のポイントを解説しています。
一連の実務対応手順をステップにわけて紹介していますので、手元に置いておくと労災発生時の対応にも困りません。
そもそも雇用保険とは?
雇用保険とは、労働者として働く人が失業した際や雇用継続困難となった場合に備える公的保険制度です。失業中に受給する基本手当や、育児中に受け取れる育児休業給付金などは、雇用保険で支払われる給付金です。
以下に、雇用保険が対象とする被保険者の要件について解説します。
雇用保険の被保険者は?
一人でも労働者を雇用する企業は、原則として雇用保険への加入手続きが義務です。雇用保険は法律で定められた強制加入の保険制度であり、一定の例外を除き、業種や従業員規模を問わず適用事業所である事業主は、対象となる労働者の加入手続きを行わなければいけません。
適用事業所に雇用されている労働者は、「被保険者とならない者」の要件(適用除外)に該当しない限り、本人の意思に関係なく雇用保険に加入することとなります。
雇用保険の適用除外とは?
以下に該当する労働者は、雇用保険の適用は受けず、適用事業所に雇用されていても雇用保険の加入対象にはなりません。
-
- 「1週間の所定労働時間(就業規則や労働条件通知書などで勤務しなければならないこととされる通常の週の1週間の労働時間)が20時間未満である場合」または「31日以上雇用されることが見込まれない場合」のいずれかに該当する者
-
- 日雇労働者(日雇労働被保険者の要件に該当する人は除きます)
-
- 季節的に雇用され、以下の1.または2.の条件に該当する人
- 4カ月以内の期間を定めて雇用契約を締結している場合
- 1週間の所定労働時間が30時間未満である場合
- 季節的に雇用され、以下の1.または2.の条件に該当する人
-
- 官公庁に雇用される一部の人
-
- 法人の代表者や業務執行権を持つ取締役、個人事業の事業主と同居している親族(代表者の個人事業と実態が同じと認められるような法人の場合も含まれます)
- 学生(夜間や定時制課程の学生などを除きます)
また、一部の農林水産業を含む個人の事業は、常時雇用する労働者が5名未満の場合、雇用保険への加入は任意となります(暫定任意適用事業)。ただし、2分の1以上の労働者の希望があれば、雇用保険の加入申請をしなければいけません。
使用人兼務役員は雇用保険に加入できるケースも
会社役員であっても、支店長や工場長のように他の従業員と同じ業務に従事して働いているケースもあるでしょう。原則として、雇用保険の加入対象にはならない会社役員や取締役ですが、一部、その労働者性から加入が認められるケースがあります。このような立場にある人を、使用人兼務役員と呼びます。
使用人兼務役員とは、役員の地位とともに労働者の立場を併せもつ人をいいます。使用人兼務役員であれば、労働者としての保護も受けられ、雇用保険への加入が認められるということです。
使用人兼務役員の労働者性の要件は?
使用人兼務役員に該当するかどうかは、その人の労働者性が問題となります。労働者性を判断する明確な法律の基準はありませんが、賃金や企業に服務している状況など、以下の点をもとに判断されます。
賃金の支払いと役員報酬
役員報酬と従業員として支払われる給与額を比較し、給与額のほうが上回る場合には、従業員=労働者としての役割や業務負担が大きいと判断されます。
就業規則の適用
使用人兼務役員と見なされるには、他の従業員と同様に、就業規則の適用がなされている必要があります。具体的には、タイムカード等で勤怠管理がされていることや、人事考課の対象となっていることなどが挙げられます。
使用人兼務役員の雇用保険加入手続きは?
先に挙げた条件に該当する場合、「兼務役員雇用実態証明書」とともに、必要書類をハローワークに提出します。そのうえで、ハローワークが雇用保険への加入を判断します。
使用人兼務役員の雇用保険加入に必要な書類
ハローワークに提出する書類は以下の通りです。
- 兼務役員雇用実態証明書
- 定款
- 就任日が確認できる書類:就任時の議事録又は登記事項証明書の写し
- 人事組織図
- 役員報酬規程等の報酬額が確認できるもの
- 労働者名簿、賃金台帳、出席簿
- 就業規則、賃金規定(ない場合は雇用契約書もしくは労働条件通知書)
- 資格取得届
その他、総勘定元帳や決算書の添付書類の役員報酬など、状況に応じて必要な書類を求められることがあります。
雇用保険料は、従業員として支払われる給与部分のみをもとに算出されます。また雇用保険に加入した際は、労災保険の保険料の対象として年度更新をする際の賃金総額に含めて集計することになりますので、注意しましょう。
雇用保険に加入できない会社役員はどうなる?
代表権を持っている取締役社長や代表執行役などは、雇用保険には加入できません。また、職制上の地位を有する専務、副社長、常務なども原則として対象外です。合同会社や合名会社の業務執行社員も、業務執行権を持っているため、使用人兼務役員とはみなされません。
会社役員は、会社と委任契約を結んで業務を執行するため、雇用契約があると求められる場合を除き、雇用保険に加入することができません。したがって、役員を退任しても基本手当などの雇用保険に関する給付は受給できないことになります。
こうした役員等は、雇用保険の対象にはなりませんが、健康保険・厚生年金保険等の社会保険では被保険者となることは覚えておきましょう。
会社役員の雇用保険加入は、労働者性が基準
部長が執行役員に任命された際など、役員となった人が引き続き雇用保険に加入するには、その労働者性がポイントとなります。労働者性は、賃金支払いの状況や就業規則の適用状況に合わせて、ハローワークによって判断されます。
役員でも、労働者の地位を有している場合には、雇用保険の加入が認められるケースもあります。まずは、役員報酬と賃金の割合、および勤怠管理の実態等を確認し、基準に合致していると思われるようであれば、ハローワークに必要な書類を提出しましょう。
よくある質問
会社役員や取締役は雇用保険に加入できる?
原則として、会社役員や取締役は雇用保険の加入対象とはなりません。一部、役員の地位を有しながら労働者の立場でもあるケースでは、労働者性が認められると、使用人兼務役員として雇用保険に加入できます。詳しくはこちらをご覧ください。
使用人兼務役員の労働者性の要件は?
まずは役員報酬と賃金の割合がポイントとなります。賃金の割合のほうが多い場合には、労働者性が強いと判断されます。また勤怠管理をされている、人事考課を受けているといった就業の実態もポイントです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
-
# 社会保険業務
週20時間で社会保険加入になる?条件やシミュレーション、手順など解説
「パートのシフトを週20時間以内に抑えるべきか?」「社会保険料はいくらか?」 2024年10月の法改正で51人以上の企業まで適用が拡大され、2025年以降は全企業への導入も議論され…
詳しくみる -
# 社会保険業務
社会保険資格取得届とは?必要な添付書類や提出先を解説!
社会保険資格取得届は、社会保険被保険者となる従業員を雇用した場合に必要な届出です。提出先は、持参する場合は所轄の年金事務所、郵送する場合は事務センターで、資格取得日から5日以内に添…
詳しくみる -
# 社会保険業務
求職者支援制度とは? 給付金の条件や職業訓練の内容、手続きを解説
求職者支援制度とは、再就職や転職などに役立つ知識やスキルを身につけるため、給付金をもらいながら職業訓練を受講できる国の支援制度です。失業保険を受けられない人が対象者に該当します。 …
詳しくみる -
# 社会保険業務
厚生年金の受給に必要な加入期間 – 10年未満の場合はどうなる?
日本の公的年金制度は2段階です。会社勤めで厚生年金保険に加入していた方は、国民年金の制度で受け取れる老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金が上乗せされます。 国民年金の支給額が年間約78…
詳しくみる -
# 社会保険業務
労災申請を本人が行うデメリットとは?弁護士に依頼するメリットも解説
労災保険は、仕事中や通勤中のケガ・病気など万が一のときに労働者を守る大切な制度です。しかし、手続きが複雑だったり、補償内容に制限があったりと、申請者本人には見えにくいデメリットも存…
詳しくみる -
# 社会保険業務
被保険者整理番号とは?健康保険・厚生年金の確認方法と必要な場合を解説
被保険者整理番号とは社会保険の加入手続きの際に発行され、登録内容を変更する際に必要となる番号です。 本記事では、自分の被保険者整理番号が不明という方や人事部の方へ被保険者整理番号に…
詳しくみる




