• 更新日 : 2024年4月17日

合同会社とは?設立のメリット・デメリットや株式会社との違いを解説!

合同会社とは、株式会社、合名会社、合資会社と並ぶ日本の会社形態のひとつです。株式会社と同じように有限責任(倒産時などに出資額を限度に責任を負うこと)となりますが、合同会社は会社の所有者と経営者が一致しているなど、運営面などで違いもあります。

合同会社を設立するメリットは、設立費用の安さ、意思決定スピードが速い、決算公告や役員任期の更新手続きがないことです。一方、株式会社と比べたときに信用力や資金調達面で劣る部分もあります。

この記事では、合同会社にはどのような特徴があるのか、合同会社から株式会社に変更することはできるのか、詳しく解説していきます。

合同会社とは?

現在の日本における会社形態は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4つです。そのひとつである合同会社は、2006年施行の会社法で導入された比較的新しい会社形態で、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとしています。

合同会社の特徴は?

合同会社は、出資した人が会社の所有者(経営者)となるため、所有と経営が一致しているという特徴があります。出資者すべてが社員(株式会社でいう役員)となり、基本的には、社員は出資額に関わらず平等に決定権を有しています。内部決定に関しては、定款で規定することで多数決によらない決議方法などを決めることも可能です。

また、合同会社の社員は、全員が有限責任となるため、会社が倒産した場合などの責任は出資額を限度に負うことになります。

合同会社と株式会社の違いは?

株式会社と合同会社の違いは?

株式会社と合同会社では、出資者の責任が有限責任であることが共通しています。違いは、会社の所有と経営が一致しているかどうかです。株式会社では出資者(株主)が会社の経営を経営者に委任し、経営者が会社の業務を行います(所有と経営の分離)。これに対し、合同会社では出資者自身が業務執行権限を有し、会社の業務を行います(所有と経営の一致)。

合同会社には例えばどんな会社がある?

合同会社は比較的新しい会社形態であるため、株式会社と比べると認知度が低く、信用度が低い面もあります。しかし、設立手続きの手軽さや費用の面でメリットが多く、その数は増えつつあり、認知度が高くなってきているのも事実です。
誰もが知っているような有名企業でも、合同会社という形態をとっている会社があります。例えば、「グーグル合同会社」「アップルジャパン合同会社」「アマゾンジャパン合同会社」「合同会社ユー・エス・ジェイ」、「ワーナーブラザースジャパン合同会社」などです。

合同会社の役職は?

合同会社の役職と意義について解説していきます。

代表社員

代表社員とは、会社を代表する社員のことです。持分会社である合同会社では、社員がそれぞれ会社を代表する立場にあるため、定款で定めない限り、社員全員が業務執行社員となり、さらに代表社員となります。

会社の運営上、代表社員を指定したいときは、定款で代表社員を定めることも可能です。定款で直接、代表社員に指名する者の氏名を記載して定める方法のほか、定款に代表社員を選定する方法を定めて選任する方法もあります。

業務執行社員

業務執行社員とは、経営に携わる社員のことです。定款で定めない限り、すべての社員が業務執行社員となります。経営に携わらない社員がいる場合、定款で業務執行社員とその他の社員を区分することにより、社員の一部を業務執行社員に選定することも可能です。

なお、先述の代表社員は、業務執行社員の中から選定することになります。業務執行社員とその他の社員を区分した場合、業務執行社員でない社員は代表社員にはなれませんので注意しましょう。

社員

合同会社の社員とは、会社に出資した人のことをいいます。合同会社は会社の所有と経営が一致しているため、原則的にはすべての社員が経営に携わることになります。

しかし、前述のように、経営に携わる社員と携わらない社員に区分したい場合、定款で業務執行社員の定めを置くことも可能です。この場合、業務執行社員は、株式会社でいう役員のような立ち位置になります。

合同会社設立のメリットは?

合同会社設立のメリットは、株式会社と比べて設立費用がかからないこと、意思決定がスピーディーにできること、などにあります。詳しく解説していきます。

設立費用やランニングコストが安い

合同会社を選ぶ最大のメリットに設立費用の安さがあります。株式会社設立に際して納めなければならない一律の税金や手数料が少なくとも20万円程度であるのに対して、合同会社なら最少で約6万円と3分の1以下で済みます。また、合同会社は、株式会社で必要な役員の更新にともなう手続きや株主総会にかかる費用なども不要です。株式会社と比べるとランニングコストを低く抑えられます。

法人の節税メリットを受けられる

合同会社や株式会社は、法人税法上、普通法人に区分されます。個人事業主事業所得が所得税の対象になるのと異なり、一人起業であっても合同会社の事業所得は法人税の対象となるため、法人の節税メリットを受けることが可能です。

法人の節税メリットのうち、代表的なものが、欠損金の繰り越しや役員報酬の損金算入です。

まず、欠損金の繰り越しについてです。個人事業主は最大3年までしか赤字を繰り越せませんが、法人で青色申告書を提出している事業年度であれば、最大10年(※2018年4月1日前に開始した事業年度の欠損金は最大9年)事業赤字を繰り越すことができます。

また、個人事業主は自身の給料を必要経費に計上できませんが、法人は定期同額給与などの特定の報酬については損金算入できます。会社留保分と役員報酬を分けることが可能です。

ほかにも、法人には次のようなメリットがあります。

  • 法人として生命保険に加入できる
  • 所得税率は累進課税であるのに対し、法人税率は一定とされる
  • 所得税の経費には費用按分が必要な場合もあるが、法人は原則として家事費がないため按分する必要がない
  • 一定の機械装置等の特別償却ができる(青色申告の中小企業者の場合) など

意思決定のスピードが速い

株式会社は会社の所有と経営が必ずしも一致しないため、役員の選任や新株発行、組織拡大などの重大な意思決定は株主総会で行われます。基本的に、重要事項については、株主総会での議決を待たずに役員の中だけで決定することはできません。

その点、合同会社は所有と経営が一致しているため、株主総会を開く必要がありません。出資者である社員が意思決定を行うことから、株式会社と比較するとスピーディーに意思決定できるメリットがあります。

定款の認証が不要

株式会社を設立する場合、本店所在地を管轄する公証役場で、作成した定款を公証人に認証してもらう必要があります。公証人の認証を受けないと効力を有することができないためです。

その点、合同会社を設立する場合は定款の認証は必要ありません。公証役場に出向く手間も省けますし、定款認証に要する手数料も負担せずに済みます。何より、株式会社と比べて早く会社を設立することが可能です。

出資者は有限責任社員

社員である出資者は、出資の範囲において有限責任を負えば済みます。有限責任とは、出資者が出資した分のみ間接的に責任を負うことです。有限責任とは異なり、会社が倒産したときなどに負債全額の責任を負う無限責任もあります。社員のすべてが有限責任となるのは、株式会社と合同会社のみ(※特例有限会社も有限責任)です。

決算公告の義務がない

株式会社では、毎年必ず決算公告を行う必要があります。決算公告とは、定時の株主総会が終了した後に、会社の定款に示した方法によって財務情報を開示することです。開示方法は官報、一般時事を扱う日刊新聞紙、電子公告のいずれかを選んで定款に定めることができます。

比較的掲載料が安いといわれる官報の、大会社以外の会社(会社法の定めで資本金5億円未満、負債額200億円未満の会社を指す)が一般的な決算公告を掲載する際の料金は約7万円からです。合同会社では、これが不要になります。

役員任期の更新が不要

株式会社では、取締役と監査役の任期は決められており、任期を延ばすには定款に記す必要があります。定款に定めれば、取締役の原則2年、監査役の4年の任期を10年まで延ばすことができます。

一方で、合同会社は役員の任期を設ける必要がないため、役員改選にかかる手間と費用を削減することができます。

株式会社への移行も可能

業績が拡大すると、合同会社を継続するよりも株式会社に移行したほうが便利であったり、有利になったりすることがあります。出資者の変更や融資を受けて事業規模を大きくしようとする場合には、組織変更の手続きによって、合同会社を株式会社にすることができます。

組織変更の公告を官報に掲載する費用(約3万円)と登録免許税の収入印紙代(6万円)のほか、司法書士に支払う手数料(5万円程度)で株式会社への移行を済ませることができます。

なお、株式会社の設立に関しては、以下の記事でも詳しく説明していますので併せて参考にしてみてください。

合同会社設立のデメリットは?

ここまで合同会社のメリットについて解説してきましたが、株式会社と比較したときの信用度や資金調達などの面で、合同会社にはデメリットがあります。詳しく説明していきます。

株式会社と比べて信用度が高くない

合同会社という会社形態の認知度が低く、株式会社と同等の価値を認められていない現状があります。取引先にこうした印象を与えることはマイナス要素になり、ビジネスの形態によっては避けたほうが賢明な場合もあります。取引先が会社形態にこだわらないかどうかを考慮し、判断したほうがよいでしょう。

資金調達の方法が限定される

合同会社の資金調達方法は、株式会社と比較すると限定されます。株式会社のように株式を発行して出資を募ることができないためです。投資家などに大規模な出資をお願いすることはできません。

また、合同会社は、株式会社のように証券取引所に上場する仕組みがありません。上場には、資金調達力の強化や資金調達の多様化を図るといったメリットがありますが、合同会社にはそのようなメリットはありません。

出資者が業務執行権を持つ

合同会社への出資者は「社員」と呼ばれ、経営権を持ちます。社員が複数人いる場合にはその全員が経営に対する決定権を持ち、出資額に関わらず全員に同等の決定権が与えられます。

そのため、社員間で意見が食い違った際に、上下関係を理由にした意思決定ができず、問題の収拾が困難になりかねません(定款で定めておくことである程度回避することは可能です)。

権利譲渡や事業承継がやりにくい

出資者である社員の地位を誰かに譲る場合、社員全員の同意が原則になります。したがって、権利譲渡はかなり慎重に行わなければなりません。代表社員の継承も同様です。譲渡や継承をきっかけに社内が対立するリスクも考えられます。

合同会社から株式会社への変更に必要な手続きは?

合同会社は、次のような手順で株式会社に組織変更することが可能です。

1.組織変更計画書の作成

まず、株式会社に組織変更するための計画書を作成します。計画書に記載が必要なのは次のような項目です。

  • 商号
  • 本店所在地
  • 事業内容
  • 取締役の氏名
  • 組織変更の効力発生日 など

2.組織変更計画書の承認(総社員の同意)

組織変更計画書を作成したら、計画書の承認をします。合同会社から株式会社に変更する場合、合同会社のすべての社員の同意が必要です。効力発生日の前日までに同意を得ておく必要があります。

3.債権者保護手続き

合同会社の債権者は、組織変更への異議を述べる権利があります。一定期間、債権者が異議を述べられるよう、組織変更を官報で告知するほか、債権者に個別に通知しなくてはなりません(※一定の要件を満たせば個別通知は省略可)。債権者から異議を述べられた場合、弁済や相当の担保の提供などの措置が必要です。

4.組織変更の効力の発生

組織変更計画書に記載した日が、組織変更の効力発生日となります。ただし、効力発生日までに債権者保護手続きを終えていないと効力は発生しません。

5.登記申請

組織変更の効力発生後、代表取締役を選任して組織変更のための登記申請を行います。合同会社から株式会社に変更する場合、合同会社の解散登記と株式会社の設立登記の2つの登記が必要です。

法人設立時は合同会社か株式会社か慎重に選びましょう!

設立しようとする会社の事業内容や規模、将来性や人的な環境などによってもメリットとデメリットの重要度は変わります。
以下のポイントについて、自分の事業が合同会社に適しているかどうかを判断してみてください。

  • 設立費用の負担があっても大丈夫か、少ないほうが望ましいか
  • 毎年行わなければならない決算公告や、定期的に更新しなければならない役員人事などの費用や手間がかかってもよいのか、かからないほうが望ましいか
  • 合同会社という形態であっても事業運営に前向きに取り組む意欲が持てるか、株式会社の確立したブランドのほうが安心できるか

よくある質問

合同会社のメリットは?

日本の会社形態のひとつで、所有と経営が一致している、出資者である社員すべてが原則として平等に決定権を有している、などの特徴があります。詳しくはこちらをご覧ください。

合同会社と株式会社の違いは?

合同会社は所有と経営が一致していますが、株式会社は所有と経営が分離されている点が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

合同会社から株式会社への変更に必要な手続きは?

組織変更計画書作成後に総社員の同意を得て、債権者保護手続きを行った後、組織変更の効力発生日以後に、合同会社の解散登記と株式会社の設立登記の手続きを行います。詳しくはこちらをご覧ください。


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