- 更新日 : 2025年3月31日
労働基準法第61条とは?18歳未満の深夜業禁止についてわかりやすく解説
労働基準法第61条は、満18歳未満の年少者を午後10時から午前5時まで深夜に働かせることを原則禁止する規定です。企業の人事・法務担当者として、この条文の基本内容や例外、違反時の罰則、そして実務上の注意点を正しく理解することが重要です。特に18歳未満の高校生アルバイトを雇用する際に、どのような就業制限があり、企業としてどのような対応策が必要かを確認しましょう。本記事では、最新の法改正や判例にも触れつつ、労働基準法第61条についてわかりやすく解説します。
目次
労働基準法第61条とは
労働基準法第61条は、労働者の健康と福祉を守るため、年少者(満18歳未満)の深夜業務を原則として禁止するものです。
使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。
この規定により、深夜労働が認められるのは18歳の誕生日を迎えた後(18歳以上)からということになります。
※「未成年」と聞くと20歳未満を想起しがちですが、労働基準法上の年少者は18歳未満を指します。したがって18歳以上であれば高校生であっても深夜勤務は法律上可能です。もっとも、高校生の場合は校則等で深夜アルバイトが禁止されているケースも多く、企業も慎重に対応しています。この点は後述します。
労働基準法第61条における深夜はいつからいつまで?
労働基準法における「深夜」とは基本的に午後10時(22時)から翌朝5時までの時間帯を指します。つまり、22時から翌5時までは年少者を働かせてはならない時間帯です。
なお、厚生労働大臣が必要と認める場合には地域や期間を限定して深夜時間帯を23時〜翌6時に繰り下げることも可能と規定されています。しかし、このような例外的な時間変更措置が講じられることは稀であり、一般的には全国一律で22時から翌5時までが深夜業禁止の対象となります。
15歳未満の児童については、そもそも原則として労働自体が禁止されています(労基法56条)。仮に例外的に14〜15歳の児童を就労させる場合であっても、深夜時間帯は午後8時から翌5時までとさらに厳しく制限されています(厚労大臣が必要と認めた場合でも9時〜翌6時まで)。
要するに、年少者が働ける時間帯は年齢が低いほど短く設定されており、高校生年代(15歳以上18歳未満)でも22時以降の勤務は原則禁止となっています。
労働基準法第61条の18歳未満の深夜業禁止の例外
労働基準法61条の規定にはいくつか例外も設けられています。原則は禁止とはいえ、以下のような特定のケースでは18歳未満の労働者に深夜業を行わせることが法律上認められます。
交替制勤務の16歳以上の男性
昼間勤務と夜間勤務を交替で行うシフト勤務に従事する労働者で、16歳以上の男性であれば深夜労働が許容されます。この規定は男性に限られ、女性の年少者は交替制であっても深夜勤務はできない点に注意が必要です。
事業場が交替制で労基署長の許可がある場合
事業全体が交替制勤務を採用している事業場については、所轄労働基準監督署長の許可を受ければ、22時以降の深夜時間帯への一部従事が許されます。
具体的には、深夜の開始が22時の場合は22時30分まで延長、深夜の終わりが翌5時の場合は翌朝5時30分からの早出勤務が特別に認められます。これは交替制シフトの引き継ぎ等のために設けられた緩和措置です。
特定業種の場合
業務の性質上どうしても夜間労働が発生しがちな業種については、年少者でも深夜に就業できる例外が設けられています。
農業、林業、畜産、養蚕(水産養殖を含む)、水産業や保健衛生業、電話交換の業務については、18歳未満でも深夜に労働させることが可能です。これらは社会的に必要な24時間体制の業務や伝統的に家族労働が行われてきた分野であることから特例とされています。
非常災害等の臨時の必要がある場合
地震・火災などの災害その他避けることのできない事由によって臨時に必要が生じた場合には、行政官庁(労基署)の許可を受けて年少者に時間外・休日労働をさせることができます。深夜業の禁止もこのケースでは適用除外となり、緊急措置として18歳未満を深夜に就労させることが認められます。事前許可が間に合わない場合は、事後速やかに届け出を行うことが必要です。
以上のような例外はありますが、ごく限られた特殊なケースと言えます。一般企業で通常のアルバイトや社員として18歳未満の者を深夜に働かせることはほぼ禁止と覚えておけば問題ないでしょう。例えば飲食店、コンビニエンスストア、引越業など通常の事業では、18歳未満は22時以降シフトに入れないのが原則です。
労働基準法61条に違反した場合の罰則
労働基準法61条に違反して18歳未満を深夜労働に就かせた場合、企業や責任者には厳しい罰則が科される可能性があります。労基法の罰則規定である119条において、年少者の深夜業禁止(61条)に違反した場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処されると定められています。
実際に違反が発覚すれば労働基準監督署による是正勧告や書類送検(検察官送致)を経て、最終的に刑事処分が下される可能性があります。
また、法令違反によって企業名が公表されたり、報道されることで社会的信用を失うリスクも無視できません。特に未成年者保護の規定違反は社会の目も厳しく、採用活動や顧客からの信頼に悪影響を及ぼしかねません。
単に罰金額の問題に留まらず、コンプライアンス上の重大リスクと捉えて遵守する必要があるでしょう。
労働基準法61条に関する判例
2018年、大手引越業者の支店が当時17歳のアルバイトを深夜(22時〜翌5時)に繰り返し就労させたとして、労働基準法違反(61条違反)の疑いで書類送検される事件がありました。このケースでは支店長らが忙しさのあまり違法と知りつつ勤務させていたとされています。
年少者の深夜労働は禁止事項であり、違反すれば刑事責任を問われる可能性が高いことを示す事例と言えます。
労働基準法61条に関して企業が注意すべきポイント
年少者を雇用する企業として、労基法61条をはじめとする未成年者保護規定を順守するために以下のような実務対応が重要です。
年齢確認を徹底する
採用時に応募者の年齢が18歳以上であるか厳格に確認しましょう。住民票記載事項証明書や学生証・マイナンバーカードなどで生年月日を確認し、事業場に戸籍証明書を備え付けることは法令上の義務です(労基法57条)。
特に高校生アルバイトの場合、本人が18歳に達するまでの期間は深夜シフトに入れないよう人事システムで管理するなどの対策が必要です。
親権者の同意を得る
労働契約を締結する際、未成年者の場合は親権者の同意書を提出させる企業が多くあります。法律上は未成年者本人が契約当事者となりますが、親の理解を得ずに雇用すると後々トラブルになる可能性があります。
書面上の署名捺印だけでなく一度親に電話連絡して意思確認するなど、慎重な対応が望ましいでしょう。また、高校生の場合は法律上学校の許可までは必要とされていませんが、学校の校則でアルバイト自体を禁止しているケースもあります。学校に隠れて勤務し、発覚してすぐ辞めざるを得なくなる事態も考えられるため、事前に本人を通じて学校のアルバイト許可の有無や学業との両立可能性を確認しておくことが望まれます。
年少者のうち児童を使用する場合には、親権者の同意書と学校長の証明書の備付けが義務とされています。
就業規則と管理体制を整備する
就業規則や労務管理上、年少者の深夜業禁止を明文化し現場管理者にも周知徹底しましょう。現場の責任者が無理解だと違反が起こりえます。例えばシフト作成時に年少者が22時以降に入らないようチェックリストを設ける、タイムカード打刻に制限をかけるなどの仕組みづくりが有効です。
万一、災害等で臨時に深夜労働をさせる必要が生じた場合は、速やかに所轄労基署へ相談・許可申請を行いましょう。
2022年の成年年齢引下げに対応する
民法改正により2022年4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これにより18歳は法律上「未成年者」ではなくなりましたが、労働基準法第61条の適用基準(18歳未満の深夜就業禁止)自体に変更はありません。したがって18歳の誕生日を迎えれば深夜労働は可能になりますが、それ以前の17歳以下については従来通り厳格に深夜業を禁止する必要があります。
また、親権者の同意書取得などの実務対応についても18歳未満に対しては引き続き求められる点に注意してください。
その他の年少者保護規定を確認する
労基法61条(深夜業)の他にも、年少者には危険有害業務への就業制限(労基法62条)や坑内労働の禁止(労基法63条)といった規定があります。
重量物の取り扱いや有害物質の扱い、酒席での接客業務や深夜の接客業(クラブ・バー等)も年少者には禁止されています。該当業務がないか職場を点検し、万全を期しましょう。特に飲食店などで18歳未満を雇う場合、厨房での危険作業や深夜営業の接客に従事させていないか注意が必要です。
労働基準法第61条を正しく理解し遵守しましょう
労働基準法第61条は、18歳未満の年少者を深夜帯に働かせないことでその健康・福祉を守ることを目的とした重要な規定です。労働基準法第61条を正しく理解し遵守することで、企業は年少者の健全な育成と職場の安全を確保できます。法令順守は企業の社会的責任であり、ひいては信頼性向上にもつながります。「わかりやすく」述べた本記事の内容を参考に、改めて自社の労務管理を点検し、18歳未満の就業に関するリスク対策を万全にしておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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