• 更新日 : 2025年9月30日

育休中の年末調整はどうする?申請書類や各種控除について解説

育休中や産休中で給料が支払われていない場合でも、年末調整を受けることは可能です。要件を満たしていれば対象となるため、申請方法にしたがって必要書類を提出することで、配偶者控除配偶者特別控除、保険料控除などの各種所得控除を受けることができます。

ここでは、育休・産休中の年末調整における、申請方法や各種控除について解説します。

育休中・産休中にも受けることのできる控除

年末調整は対象となる控除などを用いて正しい所得税額を計算する手続きで、育休中や産休中でも会社により実施されます。

年末調整の詳細については以下の記事を参考にしてください。

給料所得の計算で控除が適用されることによってその分だけ課税所得が少なくなり、所得税額を低く抑えることができます。

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者控除・配偶者特別控除は、次の要件を満たす配偶者がいる場合に受けることができる控除です。(また給与所得者自身も合計所得金額が1,000万円以下であることが必要です)

  • 法律上の配偶者であること(内縁関係でないこと)
  • 給与所得者と生計を一つにしていること
  • その年に青色申告者の事業専従者として給与が支払われていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
  • 合計所得金額が一定金額以下であること

配偶者控除は、配偶者の合計所得金額が58万円以下の場合に受けることができ、
配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額が58万円を超えて133万円以下の場合に対象となります。

参照:令和7年分年末調整のしかた|国税庁

保険料控除

保険料控除は、生命保険、介護医療保険、個人年金保険、地震保険などに加入している場合に、支払った保険料に対して受けることができる控除です。

生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料の支払いは生命保険料控除、地震保険料の支払いは地震保険料控除の対象となります。

生命保険料控除額は、保険の契約を2012年1月1日より前にしたもの(旧契約)と、以後に締結したもの(新契約)とで計算方法が異なります。

住宅ローン控除

住宅ローン控除は、住宅購入・新築・増改築の際にローンを組み、返済を行っている場合に受けることができる控除です。

適用されると10〜13年間にわたって、住宅の取得時に利用した住宅ローンの年末残高の合計額を基に計算した金額の控除が受けられます。

控除限度額は最大年間40万円ですが、住宅取得により住み始めた年度によって適用される年数や上限金額が異なります。

認定長期優良住宅、低炭素建築物、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅など、取得した住宅の区分によっても条件が異なるため注意が必要です。

なお、新型コロナウイルス感染症等の影響により入居が遅れた場合、控除期間を10年間から13年間に延長する措置が講じられています。

参考:No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた住宅取得支援策について|国土交通省

育休中でも住宅ローン控除の対象であることは変わらず、計算された金額の控除を受けることができます。ただし、所得税額が少ないために全額の控除ができない場合や、無給で所得税も課税されないため控除がそもそも行われない場合があります。

手当金や給付金は年末調整の対象になる?

育休中や産休中には、健康保険と雇用保険からいくつかの手当金や給付金を受け取ることができます。各手当の詳細については以下の記事を参考にしてください。

育休中や産休中に受け取る手当金や給付金は、それらの支給理由により年末調整では以下のように取り扱われます。

出産手当金

出産する被保険者に健康保険から支払われる給付が、出産手当金です。出産のために産前・産後休暇を取る必要があり、無休となる場合の生活保障の意味合いで給付される手当金です。

出産日までの42日間(双子以上の場合は98日間)、出産日の翌日からの56日間のうち、給料が支払われなかった期間を対象に出産手当金が支払われます。

金額は標準報酬額の2/3で、原則として以下の式で計算されます。

支給開始日以前12カ月間の標準報酬月額平均額÷30×2/3

出産手当金に所得税はかかりません。年末調整にも影響はなく、申告する必要もありません。

出産育児一時金

被保険者やその被扶養者の出産にあたり、健康保険から支払われる給付が出産育児一時金です。出産にかかる費用に充てる目的で給付されます。

妊娠85日以上(4カ月)の妊婦が出産した場合に、出産児1人につき50万円(産科医療補償制度未加入の医療機関で出産した場合や妊娠週数22週未満で出産した場合は48.8万円)が支払われます。

いったん自分で出産費用を支払い、後から健康保険に申請して給付を受けることができます。ただし、医療機関で所定の手続きをとれば、医療機関などの窓口で高額な出産費用を支払うのではなく、保険者(協会けんぽ・健保組合)が直接医療機関などに支払う直接支払い制度を利用することも可能です。この場合、多額の出産費用を事前に準備する必要はありません。

出産育児一時金に所得税はかからず、年末調整にも影響しないため、申告する必要もありません。

参照:子どもが生まれたとき|全国保険協会(協会けんぽ)

育児休業給付金

育児休業給付金は、雇用保険から支払われる給付金です。休業後の復職を前提として、休業中の収入減を緩和することを目的とし、育児介護休業法における育児休業の取得を推進するために設けられています。

要件を満たす雇用保険の被保険者が、子供が1歳(パパ・ママ育休プラス制度を利用する場合は1歳2カ月)まで育児休業を取得した場合に受け取ることができ、保育園入園ができないときは子供が最長2歳まで延長することが可能です。

金額は以下の式で計算されます。

育児休業開始から180日目まで=育児休業開始時の賃金日額×支給日数×67%

育児休業開始から181日目以降 =育児休業開始時の賃金日額×支給日数×50%

子供の出生後8週間以内に合計4週間分(28日・2回まで分割可能)を限度に出生時育児休業(産後パパ育休)を取得した場合にも、一定の要件を満たせば出生時育児休業給付金を受け取ることができます。

育児休業給付金や出生時育児休業給付金には、所得税はかかりません。年末調整にも影響はなく、申告する必要もありません。

参照:育児休業等給付の内容と支給申請手続2025|厚生労働省

育休中従業員の年末調整のやり方と注意点

年末調整はやり方や期限が定められていて、育休中であってもルール通りに行う必要があります。育休中は通常の勤務をしている場合と違って会社にすぐに確認することができないため、申請方法や期限を理解しておくことが大切です。

育休中における年末調整の申請方法と期限

会社は年末調整を、一部の対象外となる者以外のすべての従業員に対して行います。育休中でも必要書類を提出することで、他の従業員と同じように会社の年末調整を受けることができます。

年末調整を受けるためには扶養控除(異動)申告書などへ必要な内容を記入し、確認事項のために求められる書類を添えて会社に提出することが必要です。

通常の場合、年内に年末調整を行い、最後の給料支払いで所得税の余剰分の還付や不足分の徴収を行います。そのため給与計算開始前には従業員からの必要書類を回収し、チェックを済ましておかなければなりません。

これら年末調整の準備にかかる期間は従業員数などによって異なり、また、給料の計算期間がどうなっているかも会社によって異なるため、年末調整の申請がいつまでに必要かは一概には言えません。

会社に申請期限を確認して、遅れないことが大切です。

育休中で収入がない場合の年末調整のやり方

必要書類を提出することで、育休中で収入がない場合でも年末調整を受けることは可能です。扶養控除(異動)申告書などへ必要事項を記入して提出すると、他の従業員と同じように年末調整が行われます。

ただし、育休中で1年間の収入がない場合は、給与所得0(ゼロ)円、源泉所得税0(ゼロ)円の内容が記載された源泉徴収票が発行されます。

給料や源泉徴収額、社会保険料控除などが少しでもある場合は、年末調整の計算に基づいた所得税の還付などが行われ、その旨が記載された源泉徴収票が発行されます。

また、配偶者に課税所得がある場合には、配偶者側の年末調整で扶養家族になることができます。その際は配偶者の勤務先に提出する扶養控除等(異動)申告書の配偶者欄に氏名を記入して申告します。

令和7年・2025年 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書-扶養控除等申告書

引用:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁、「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

年末調整に間に合わなかった場合の対処方法

年末調整と同じように所得税精算のために行われる手続きに、確定申告があります。給与所得者は会社の年末調整を受けることで正確な所得税の納付ができるため、原則として確定申告は不要です。

しかし、自営業者には年末調整はありません。自営業者のように、給与所得者以外の人が所得税を納付するために行う手続きが確定申告です。ただし、給与所得者でも医療費控除を受ける場合や、最初の住宅ローン控除を受ける場合などには、確定申告を行う必要があります。

育休中で会社の年末調整に間に合わなかった場合でも、確定申告をすることによって所得税の還付を受けたり、不足分を支払ったりすることができます。

確定申告の実施期間は、通常、翌年の2月16日から3月15日までです。また、所得税の還付の申告は、翌年1月1日から5年間行うことができます。

産休・育休中も年末調整を忘れず行おう

育休中や産休中の従業員も年末調整の対象に含まれます。会社の年末調整を受けることで正確な所得税計算が行われ、還付金がある場合は払い過ぎた分を返還してもらうことができます。扶養控除や保険料控除、住宅ローン控除の適用を受けるためには、年末調整でしっかり申告しなければなりません。

また産休・育休中にはさまざまな手当金や給付金が受け取れますが、これらには所得税はかからず、年末調整に影響はありません。申請方法や期限に注意して、忘れずに会社の年末調整を受けましょう。

よくある質問

育休中でも年末調整は必要ですか?

正確な所得税納税のために必要で、払い過ぎがあれば還付金が受け取れます。詳しくはこちらをご覧ください。

手当金や給付金は、年末調整の対象ですか?

産休中や育休中の手当金や給付金は年末調整の対象になりません。 詳しくはこちらをご覧ください。


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