• 更新日 : 2025年6月23日

育児休業の手当とその期間は!?産休から育休までのまとめ

「産休」と「育休」はどう違う?もらえるお金って?

「産休」「育休」とは?

妊娠・出産・育児期間(原則1歳未満の子どもを育てる期間)中に取れる休業には以下の3種類があります。

  • 産前休業:出産日以前の42日間(双子以上の場合には98日間)
  • 産後休業:出産翌日から56日間
  • 育児休業:産後休業~子どもが原則1歳になる誕生日の前日まで

    出産日が予定日と異なる場合は、産後休業は実際の出産日の翌日から開始します。つまり、出産予定日より遅く産まれた場合は、産前休業は42日より長くなり、出産日の翌日から産後休業56日を数えます。また、育児休業期間は保育園に入れない場合など、やむを得ない事情がある場合には、最長で子どもが2歳になるまで延長することが可能です。
    産前・産後休業(産休)は女性であれば誰でも取得できます。一方、育児休業(育休)については、取得できる要件はあるものの、1歳未満の子どもを養育する労働者であれば、男女問わず取得することができます。

    もらえるお金って?

    ※この記事では、全国健康保険協会(通称「協会けんぽ」)の健康保険に加入している場合について説明します。加入している健康保険組合によっては独自の付加金・付加給付がある場合などもありますので、ご自身の加入している健康保険組合のホームページ等でご確認ください。

    出産育児一時金(出産時)

    健康保険の被保険者及びその被扶養者が出産した際、出産にかかる費用に充てるため、一児につき原則50万円が支給される制度です。
    実際に支給を受ける場合には、出産育児一時金を病院に支払う出産費用に充てることができる「直接支払制度」を利用するのが一般的です。この場合、健康保険から医療機関等に出産育児一時金が直接支払われるため、出産費用としてまとまった金額を事前に用意する必要はありません。手続きをする際には、出産する病院でサポートをしてもらえることが多いです。

    参考:出産で会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

    出産手当金(産休中=産前42日、産後56日までの間)

    健康保険の被保険者が出産のために会社を休業し、その期間に給与の支払いがなかった場合、健康保険から出産手当金が支給されます。子どもが出産予定日より遅く産まれることもあるでしょう。この場合、その遅れた期間についても出産手当金の対象になります。
    支給額は、「1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額」とされています。標準報酬日額は、以下のように計算します。
    標準報酬日額=支給開始日以前の継続した12ヶ月の標準報酬月額の平均額÷30日

    参考:出産で会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

    標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金などの社会保険料を決める基準となる金額のことです、詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

    育児休業給付金(育休中=産後57日~子どもが1歳になる前日まで)

    雇用保険の被保険者が1歳に満たない子どもを養育するために育児休業を取得した場合、その期間中に支払われた賃金が80%未満に低下した場合など、一定の条件に該当することで給付金が支給されます。
    支給の対象になる期間は、原則として育児休業を開始した日から対象となる子どもが1歳に達する日の前日、つまり、1歳の誕生日の前々日までの期間です。
    パパ・ママ育休プラスを利用した場合には1歳2ヶ月に達する日の前日、保育所などに入れない場合など育児休業が延長できる場合には最長2歳に達する日の前日までの期間となります。「1歳に達する日」というのは誕生日の前日のことであり、支給の対象となるのは誕生日の前々日となることを覚えておきましょう。
    支給額は、「休業開始時賃金賃金日額×支給日数」の67%(育児休業開始から180日間経過後は50%)です。休業開始時賃金日額は、原則として育児休業開始前6ヶ月間の賃金を180で除して計算した金額となります。
    育児休業期間中に賃金が支払われた場合には、以下のように計算します(育児休業開始から180日までの給付率が67%)。

    • 支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の30%以下(給付率が67%の期間中は13%以下)の場合
      支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×50%
    • 支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の30%超(給付率が67%の期間中は13%超)~80%未満の場合
      支給額=休業開始時賃金日額×支給日数の80%相当額と賃金の差額を支給
    • 支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の80%以上の場合
      支給額=支給されません。

      保育所に入れないなどやむを得ない事情があり、育休を延長する場合(最長子どもが2歳になる前日まで)には、保育所に入れないことを証明する市区町村が発行した「保育所入所保留通知書」などの証明書を会社に提出し、育児休業延長の手続きをする必要があります。

      参考:育児休業給付の内容及び支給申請手続について|ハローワーク

      出生後休業支援給付金

      出生後休業支援給付金とは、労働者が対象期間※において育児のために一定期間の休業を取得した場合に、雇用保険から支給される給付金です。これは2022年10月に施行された「産後パパ育休(出生時育児休業)」の活用促進を目的に設けられた制度であり、男性の育児参加を経済的に後押しするための新たな支援策として注目を集めています。

      給付の対象となるのは、雇用保険の被保険者であり、次の条件を満たした労働者です。

      • 出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休または育児休業給付金が支給される育児休業を通算して14日以上取得していること
      • 被保険者の配偶者が通算14日以上の育児休業を取得していること(配偶者が自営業者など、配偶者の育児休業を要件としない場合を除く)

        なお、この給付金は通常の「育児休業給付金」とは別枠で支給されるもので、併用も可能です。ただし、「育児休業給付金」は1歳までの育児休業に対する制度であるのに対し、「出生後休業支援給付金」は出生直後の育児を目的とする短期間の休業支援という点で位置づけが異なります。

        支給額は、休業開始時の賃金日額に休業日数(最大28日)と13%を乗じた金額となります。これにより、育児休業給付金(賃金の67%)と合わせて、合計80%の給付率となり、社会保険料免除等を考慮すると、実質的に手取り100%相当となることが期待されています。

        • 被保険者が産後休業をしていない場合(被保険者が父親または子が養子の場合)は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日 」までの期間
        •   被保険者が産後休業をした場合(被保険者が母親、かつ、子が養子でない場合)は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日 」までの期間

          産休・育休中の健康保険料・住民税はどうなる?帝王切開の場合は?

          産前産後休業期間中、育児休業期間中は労働していないため、無給として取り扱う企業が多いでしょう。そのため毎月給与から控除されている保険料や住民税については以下の通りとなります。

          社会保険料について

          会社が年金事務所・健康保険組合に申出をすることにより、産前産後休業期間中の健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者、事業主共に免除されます。また、育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業などの期間についても、同様です。会社が年金事務所や健康保険組合で手続きをする必要がありますので、忘れずに手続きをしてもらいましょう。

          この場合、保険加入は継続しているため、健康保険証の利用は可能です。厚生年金についても、納付されているとみなされるため、将来の年金給付額が減額されることはありません。

          参考:厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)|日本年金機構

          住民税について

          住民税は前年の収入に対して計算されるため、休業開始後も引き続き支払う必要があります。通常、毎月の給与から天引きされている(特別徴収されている)方がほとんどかと思いますが、産前休業(育児休業)に入るタイミングで個人で納付する方法(=普通徴収)に切り替える方法もあります。

          特別徴収を継続して会社経由で支払ってもらい、自身の住民税を会社に支払うケース、会社に普通徴収に切り替えてもらい、自分で納付書により住民税を支払うケースの両方が考えられます。普通徴収に切り替えた場合には、市町村から届く納付書の納付期限に合わせて、自分で納付することになりますので、会社とよく相談して決めるようにしましょう。

          帝王切開の場合は?

          妊娠・出産は病気ではないため、普通分娩での出産費用は健康保険の適用対象外となり、全額自己負担となります。出産費用は一般的に40〜80万円程度といわれますが、前述の出産育児一時金制度を利用することで自己負担額を一定程度抑えることが可能です。

          帝王切開で出産する場合は、手術の他に、入院・検査・投薬・術後の処置等が必要になるため、普通分娩よりかかる費用は高額となります。しかし、帝王切開は、健康保険が適用される分娩となり、自己負担額はかかった医療費の3割となり、「高額療養費制度」の利用も可能です。

          「高額療養費制度」は家計負担を軽減するための制度です。医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合、超えた額が戻ってきます。この制度を利用すれば、1ヶ月の医療費自己負担額が高額になっても、いったん窓口で自己負担分を支払い、後日申請をすることで、限度額を超える分が返ってきます。

          医療費が高額になることが分かっている帝王切開の場合には、事前に「限度額適用認定証」を発行してもらいましょう。この認定証を窓口で提示することで自己負担額は「高額療養費制度」で定められた限度額までとなり、高額な費用を窓口で支払う必要がなくなるため、安心です。また、マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合には、限度額適用認定証は不要となります。

          なお、帝王切開の場合でも、普通分娩と同様、出産育児一時金は支給対象となります。

          各種給付金を受けられる条件って?

          各種給付金を受けるためには一定の加入期間が必要となる場合があります。また、有期契約社員の場合は、制度によって条件が異なることがあるため注意しましょう。

          必要な保険の加入期間

          雇用保険

          育児休業給付金の受給資格は、育児休業を開始する日前2年間に勤務日数(賃金支払基礎日数)が11日以上ある月が12ヶ月以上必要となります。12ヶ月に足りない場合でも、賃金の支払の基礎となった労働時間数が80時間の月があれば、その月を1ヶ月として数えることができ、受給資格を得ることができます。

          これまでしばらくお仕事から離れていて入社1年以内の方、1ヶ月の勤務日数が少ない方は、要件に該当しているかをしっかり確認しましょう。なお、育児休業を開始する日前2年間に本人の疾病による休職期間があるなど、30日以上賃金の支払いを受けられなかった期間があった場合には、救済措置があります。負傷や疾病により賃金の支払いが受けられなかった期間分をこの2年に加えて、最大4年間の期間で12ヶ月の期間要件を算定することができます。

          また、有期契約社員の場合は、子どもが1歳6ヶ月(2歳まで休業する場合は2歳)までの間に雇用契約が満了し、更新されないことが決まっていないことも必要な条件となります。

          健康保険

          出産手当金・出産育児一時金は、産休開始時に健康保険に加入していれば支給対象となります。正社員・有期雇用など、雇用形態も問いません。なお、出産育児一時金については、出産者本人が健康保険の被保険者でなくても、扶養に入っていれば家族出産育児一時金として支給対象となります。

          産休・育休中に退職した場合はどうなる?

          育児休業給付金

          育児休業は、職場復帰を前提とした制度です。育児休業取得時に職場復帰をせずに退職する予定の方は、育児休業給付金を申請することができませんので注意しましょう。また、育児休業給付金を受給している期間中に退職した場合にも原則支給されなくなります。
          育児休業給付金受給中に退職した場合は、その退職日を含む支給単位期間(原則30日)の直前の支給単位期間までは支給されることになっています。ただし、退職日が支給単位期間の末日の場合は、その期間も支給対象となります。
          法改正により育児休業給付が変更されるため、新しい制度に注意しましょう。令和4年10月1日に育児・介護休業法が改正され、育児休業が2回まで分割して取得できるようになりました。また、新しい制度である「産後パパ育休(出生時育児休業)」も始まっています。育児休業給付金についても、1歳未満の子どもについては原則2回まで受給が可能。そして、産後パパ育休取得時には、新しく創設された「出生時育児休業給付金」の受給ができるようになります。

          出産手当金

          以下条件を満たす場合は支給対象となります。

          1. 退職日までに継続して1年以上の健康保険加入期間がある
            退職日に出産手当金を受けているか、退職日に受けられる条件を満たしている(出産日以前の42日目が加入期間であって、退職日当日に仕事を休んでいる)
          2. 任意継続被保険者ではない(※)

            (※)任意継続被保険者であっても、任意継続被保険者の資格を取得する日の前日(退職日)まで継続して1年以上の被保険者期間があり、出産手当金の支給を受けていた場合や退職日に受けられる条件を満たしていた場合は、被保険者として受けられるはずであった期間、継続して給付を受けることができます。

            出産育児一時金

            以下条件を満たす場合は支給対象となります。

            • 退職日までに継続して1年以上の健康保険加入期間があり、資格喪失後(退職日の翌日から)6ヶ月以内に出産
            • 任意継続被保険者であっても退職日まで継続1年以上の加入期間があり、喪失後6ヶ月以内の出産

              なお、退職後に家族の扶養に入った場合は、その家族が申請できる「家族出産育児一時金」との選択となり、併給はできません。

              育児休業申請書のテンプレート

              育児休業申請書のテンプレートが必要な場合、汎用的に使えるテンプレートがあります。

              以下リンクから、フォーム入力をすることで無料でダウンロードできます。ぜひご活用ください。

              産休・育休取得時はまずは会社に相談して手続きをしましょう

              日本の労働市場において女性の活躍は必要不可欠なものであり、国も育児休業期間の延長を法改正で行うなど、支援策を手厚くしています。産前・産後休業、育児休業の制度や給付金を正しく把握し、出産・育児に関する不安が取り除き、安心して仕事と育児の両立が図れるようにしたいものです。
              妊娠中は体調なども不安定になりがちです。妊娠が分かった場合、まずは会社に連絡してその後の手続きの相談をしましょう。産休・育休前の丁寧な引き継ぎによって、休業取得者本人もまわりの同僚・上司も安心できる産休・育休となるでしょう。


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