- 更新日 : 2025年3月24日
福利厚生費として社宅の費用を計上する条件とは
社宅制度に興味がある方のなかには、社宅費用を福利厚生費として計上するための条件が気になっている人も多いでしょう。
本記事では、福利厚生費の基礎知識のほか、法定外福利費の実態調査、社宅の家賃を福利厚生費として計上するための条件などを解説します。
さらに、コストと工数を抑えて運用できる社宅制度についても紹介するので、比較検討に役立ててください。
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福利厚生費に含まれる2つの種類
福利厚生費には「法定福利費」と「法定外福利費(福利厚生費)」の2種類があります。
両者の概要をまとめるので、違いを比較しながらチェックしてみましょう。
法定福利費
法定福利費とは、法令によって従業員を雇用している事業者に費用負担が義務付けられている福利厚生費です。
具体的には以下のような費用が法定福利費に該当します。
上記のなかで労災保険と子ども・子育て拠出金は全額事業主負担となりますが、その他の費用は事業主と従業員で分担して負担する仕組みとなっています。
法定外福利費
法定外福利費とは、法令によって費用負担が義務付けられていない福利厚生のことです。費用負担だけでなく、制度の内容、提供の有無自体も任意となっているため、「企業が独自で提供する福利厚生」だと考えればイメージしやすいでしょう。
代表的な法定外福利費には以下のような費用が該当します。
- 交通手当
- 出張手当
- 社宅
- 住宅手当
- 慰安旅行の費用
- 昼食代
- 慶弔見舞金
あくまで任意であるため、制度の内容や負担割合は企業によって千差万別です。
福利厚生のなかでも社宅の人気が高い理由
数ある福利厚生制度のなかでも、社宅はとくに人気が高い制度となっています。
人気の理由をさまざまな角度から解説するので、順にチェックしてみましょう。
法定外福利費の実態調査
まずは法令で義務付けられている法定福利費以外で、企業がどのような福利厚生を導入しているのか見てみましょう。
2019年度に「一般社団法人 日本経済団体連合会」が実施した福利厚生費調査結果の概要から、法定外福利費の内訳を紹介します。
法定外福利費の内訳 | 法定外福利費の合計 | ||
---|---|---|---|
金額 | 割合 | ||
住宅関連 | 11,639円 | 47.8% | 24,125円 |
医療・健康 | 3,187円 | 13.2% | |
ライフサポート | 5,505円 | 22.8% |
上記は法定外福利厚生費のなかでも割合が大きいジャンルのトップ3について詳細をまとめたデータですが、住宅関連の福利厚生費が圧倒的に多くなっています。
法定外福利費のうち、半分近くを占めている状況にあり、社宅や住宅手当といった住宅関連の福利厚生がいかに高い人気を集めているのかがわかるでしょう。
【従業員目線】社宅の人気が高い理由
社宅は従業員目線で考えると、以下のようなメリットがあります。
- 家賃などの費用を一部支援してもらうことで経済的な負担が少なくなる
- 住居関連の手続きの手間が減る
- 社会保険料や所得税の負担が軽減される
とくに注目したいのが3つ目のメリットで、給料から社宅の賃料が天引きされると所得額が減り、社会保険料や所得税の負担額が減少します。
自分で賃貸物件を借りる場合でも賃料の支払いは毎月発生するため、給料から天引きされたとしても、逆に社会保険料や所得税の負担額が減少して実質的な手取りがアップするというメリットをもたらします。
【企業目線】社宅の人気が高い理由
社宅は企業目線でもさまざまなメリットをもたらします。
- 従業員満足度が高まり、離職率改善につながる
- 求職者へのアピールに活用できる
- 福利厚生を充実させることで企業イメージがアップする
- 賃料の一部を給与から天引きすることで所得が減り、社会保険料の負担が少なくなる
昨今は少子化の影響で人材不足の状況にあるため、従業員に明確なメリットをもたらす社宅制度は、企業にとっても人材確保・定着を目指すうえで大きな追い風となります。
さらに、対外的な企業イメージの向上、コスト削減などのメリットにも期待できる点を考えると、さまざまな福利厚生のなかでも価値の高い制度だといえるでしょう。
社宅の家賃を福利厚生費として計上するための条件
社宅の家賃を福利厚生費として計上するためには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。
条件の詳細や具体例をまとめるので、ひととおりチェックしてみましょう。
従業員から賃料相当額の50%以上を受け取っている
社宅の費用を経費として計上するためには、「従業員から賃料相当額の50%以上を受け取っていること」が条件です。
【賃料相当額の計算方法】
(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡)
(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
基本的には「企業が貸主に支払っている家賃の半額以上」を従業員が負担している場合、福利厚生費として計上できる(給与扱い)仕組みになっています。
逆に、従業員から徴収している額が賃料相当額の50%に満たない場合は、差額が現物給与として課税対象になるため注意しましょう。
【例】
①賃料相当額10万円/従業員負担4万円
→負担割合40%で要件を満たさないため、差額の6万円は福利厚生費として計上できず、給与課税の対象となる。
②賃料相当額10万円/従業員負担5万円
→負担割合50%で要件を満たしているため、差額の5万円は福利厚生費として計上でき、給与課税はされない。
社有社宅もしくは借上社宅である
社宅の費用を福利厚生費として計上するためには、「事業者が所有もしくは契約を結んだ賃貸物件に従業員を住まわせている」という条件を満たさなければなりません。
つまり、「住宅手当」「従業員本人が契約した物件」などのケースは現金支給となり、福利厚生費として計上できません。
仮に家賃の半額を企業が負担していても、従業員が契約している住宅の場合は対象外となるため注意しましょう。
社宅の費用が課税対象になってしまう具体例
社宅制度を導入していても福利厚生費として計上できない具体例をいくつか紹介します。
- 無償で社宅を提供している:
→従業員から一定額の家賃を受け取っていないため、全額が給与課税の対象となる - 従業員から賃料相当額の50%以上を受け取っていない:
→要件を満たしていないため、差額分が給与課税の対象となる - 従業員が契約している賃貸物件の賃料を50%支給している:
→現物(社宅)ではなく、現金支給であるため、全額が給与課税の対象となる
住宅関連の福利厚生制度にはメリットが多い
データも示しているとおり、住宅関連の福利厚生制度はさまざまな企業で積極的に導入されています。
生活に欠かせない住宅を支援する複製厚生であることから従業員人気が高いだけでなく、離職率改善、採用率アップ、企業イメージ向上など、企業にとってもさまざまなメリットに期待できるのが大きな魅力でしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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