- 更新日 : 2025年3月12日
総務部門でAIを活用するには?ChatGPTで社内マニュアルを作成する方法も解説
AIの進化により、企業の総務部門でも業務の自動化や効率化が加速しています。従来、総務の業務は手作業が多く、書類管理や問い合わせ対応に多くの時間を費やしていました。しかし、AIを導入することで、業務負担を軽減し、より戦略的な業務に集中できる環境を整えることが可能になります。
AIの活用によって、総務部門は単なるバックオフィスの機能を超え、企業全体の生産性向上にも貢献できるようになります。本記事では、総務部門におけるAIの活用方法や導入のメリット・注意点について詳しく解説します。
目次
総務部門におけるAIの活用方法
AIは総務のさまざまな業務に適用可能です。主な活用領域として、問い合わせ対応の自動化、書類処理の効率化、データ分析の活用、リスク管理の強化、社内ナレッジの蓄積などが挙げられます。
社内の問い合わせ対応
総務部門には、従業員からの「有給休暇の申請方法」「経費精算の手順」などの問い合わせが日々寄せられます。AIを搭載したチャットボットを導入することで、24時間対応が可能になり、担当者の業務負担を大幅に削減できます。
また、AIは過去の問い合わせデータを学習し、時間が経つにつれて回答の精度が向上するため、よりスムーズな対応が可能になります。これにより、総務担当者は問い合わせ対応にかかる時間を削減し、より高度な業務に集中できます。
書類管理・データ入力
契約書や請求書、各種申請書類など、総務部門では膨大な書類を扱います。AI-OCR(光学文字認識)技術を活用することで、手作業での入力作業を減らし、データの管理や検索を容易にすることが可能です。
さらに、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と組み合わせることで、書類データの入力から処理までを完全に自動化し、作業の正確性を向上させることができます。
勤怠管理・経費精算
AIを活用した勤怠管理システムを導入すると、従業員の勤務データをリアルタイムで分析し、不正打刻や長時間労働を検知することができます。また、経費精算システムと連携すれば、領収書のデータを自動で読み取り、手作業による入力ミスを削減できます。
これにより、管理部門の負担を減らすだけでなく、従業員にとってもスムーズな申請・承認プロセスを実現できます。
データ分析による業務改善
AIを活用することで、膨大なデータを高速で分析し、企業の課題や改善点を可視化することが可能です。例えば、従業員の離職率や労働時間のデータを分析し、離職リスクの高い部署を特定したり、業務の効率化ポイントを抽出したりすることができます。これにより、総務は経営層に対してデータに基づいた施策の提案ができるようになり、企業の生産性向上に貢献できます。
リスク管理・コンプライアンス強化
総務部門は、労務管理や法令遵守を担う重要な役割を果たしています。AIを活用することで、最新の法改正情報を自動で収集し、企業の規則と照らし合わせてコンプライアンスチェックを効率化できます。
また、AIが社内データを解析し、不正な経費申請やハラスメントリスクなどの異常な兆候を早期に検知することで、問題が発生する前に対策を講じることができます。
社内マニュアルの作成
生成AIを活用すれば、社内マニュアルの作成や更新を自動化できます。例えば、「新しい制度のマニュアルを作成したい」とAIに指示すれば、既存の情報をもとにドラフトを作成し、担当者が修正を加えることで、短時間で完成させることができます。
さらに、法改正や業務フローの変更があった際には、AIが該当部分を自動的に更新し、最新の情報を常に維持できるようになります。
総務などの管理部門がAIを活用するメリット
総務をはじめとする管理部門は、企業の基盤を支える重要な役割を果たしています。AIを導入することで、単なる作業の自動化にとどまらず、より高度なデータ活用や戦略的な意思決定が可能になり、企業全体の競争力を強化することが可能です。
業務の自動化による時間とコストの削減
総務などの管理部門の業務には、定型的な手続きやルーチンワークが多く含まれています。AIを活用することで、これらの業務を効率化し、担当者がより付加価値の高い業務に集中できる環境を整えられます。
データ活用による戦略的な意思決定
AIの導入により、管理部門は単なるバックオフィス業務を超えて、データを活用した戦略的な意思決定を支援できるようになります。これにより、企業の経営判断の精度が向上し、より効果的な組織運営が可能になります。
社内ナレッジの蓄積
管理部門では、社内規程や手続きの管理を行うことが多いため、情報を適切に蓄積し、従業員が簡単にアクセスできる環境を整えることが重要です。AIを活用すれば、情報の管理や検索がよりスムーズになります。
総務などの管理部門がAIを活用する場合の注意点
AIの導入により、業務効率化や生産性向上が期待される一方で、適切に運用しなければコスト増加や運用上のトラブルにつながる可能性があります。
費用対効果を検討する
AIを導入しても、自社の業務量やプロセスに見合っていなければ投資回収に時間がかかります。最初から大掛かりな仕組みを入れるよりも、効果が高い部分に絞って小規模に導入し、徐々に範囲を広げていく方がリスクも低減できます。AIを「魔法の杖」と捉えず、ツールの一つとして適材適所で使う視点が大切です。
AIの精度を検証する
チャットボットや生成AIが誤った回答をしてしまう可能性はゼロではありません。総務業務では法令遵守や正確さが求められる場面も多いため、AIの回答や処理結果を人間がチェックする仕組みを残しておくべきです。特に、最新の社内規則や法改正などAIが学習していない情報についてはアップデートを怠ると誤情報を提供しかねません。
セキュリティ対策を徹底する
AIツールによっては社内の人事情報や機密データを扱うケースもあるため、データの暗号化やアクセス制限などの情報漏えいを防ぐ措置を講じなくてはなりません。また、外部のクラウドAIサービスを利用する場合、社外へのデータ送信が発生するため、機密情報を入力しない運用ルールづくりが重要です。
社内の受け入れ態勢を整える
AI導入を成功させるには、社内の受け入れ態勢を整えることが不可欠です。まず、導入目的を経営層から現場担当者まで共有し、「なぜAIを導入するのか」「導入により何が良くなるのか」を明確に伝えましょう。目的が共有されていれば、ツール選定や効果測定もスムーズになりますし、現場の納得感も高まります。
従業員への説明・教育を実施する
AIがどのように業務をサポートするのか、導入によって自身の業務がどう変わるのかを丁寧に説明し、不安を取り除くことが重要です。特に「AIに仕事が奪われるのでは」という懸念がある場合、「AIはサポート役であり、人間の仕事の価値を高めるためのもの」ということを強調します。また、実際にチャットボットの使い方や新しいシステムの操作方法について研修を行い、現場が戸惑わず使いこなせるよう支援しましょう。
運用体制を構築する
そして、運用体制の構築も欠かせません。AI導入後も定期的にシステムの動作を監視し、問題があればアップデートを行う担当者やチームを決めておく必要があります。問い合わせ応対AIであれば回答精度のチェック、OCRであれば読み取りエラー時のフィードバックなど、PDCAサイクルを回す運用が必要です。また、最初は小規模に導入し成功事例を積み重ねてから段階的に拡大するアプローチがおすすめです。段階的な導入により現場の混乱を防ぎ、AIへの信頼感を醸成できます。
総務などの管理部門におすすめのAIツール
ChatGPTは、総務部門でも幅広く活用できるAIツールです。高精度な文章生成機能を持ち、自然な文書を作成できるため、以下のような場面で役立ちます。
文書作成の補助
総務では、社内通知や案内メール、社内報の記事作成など、文章を作る機会が多くあります。ChatGPTを使えば、ゼロから文章を考える手間を省き、短時間でドラフトを作成できます。また、敬語のチェックや表現の修正提案もできるため、文書の品質向上にも貢献します。
アイデア出しのサポート
社内イベントの企画や、福利厚生の新施策を考える際、ChatGPTに相談すれば、複数のアイデアを提示してくれます。ブレインストーミングの補助ツールとして使うことで、斬新な発想が生まれるきっかけになります。
情報収集と要約
新しい法制度の概要や、社内規定の変更点を知りたいとき、ChatGPTに質問すれば、要点をまとめて分かりやすく説明してくれます。また、長い報告書の要点を抽出したり、議事録を簡潔にまとめたりする作業にも活用可能です。
Q&A対応の自動化
ChatGPTを社内FAQシステムとしてカスタマイズすれば、従業員の「○○の手続き方法を教えて」といった質問に自動で回答できます。問い合わせ対応の手間を大幅に削減できるため、総務担当者の負担軽減につながります。
ChatGPTを活用した社内マニュアルの作成手順
総務部門の重要な役割の一つに、社内規程や業務手順をまとめた社内マニュアルの作成があります。ChatGPTを活用すれば、社内マニュアルの作成・更新作業を効率化し、より簡単に管理できるようになります。ここでは、ChatGPTを活用した社内マニュアル作成の手順について解説します。
1. 構成・項目の準備
まず、どのような内容を社内マニュアルに含めるかを決めます。業務フロー・ルール・注意事項などを整理し、章立てや見出しを決めましょう。ここは人間が主体となり、必要な情報を明確にすることが重要です。
2. ChatGPTへの指示(プロンプト作成)
次に、ChatGPTにどのような文章を作成してもらうかを指示します。例えば、「備品購入手続きのマニュアルを、ですます調で詳しく説明してください」といった具体的な指示(プロンプト)を用意すると、ChatGPTが適切な文章を作成しやすくなります。また、社内の規程やルールをChatGPTに提供すると、より正確な内容を生成できます。
3. AIによるドラフト生成
ChatGPTにプロンプトを入力すると、瞬時に文章のドラフトが生成されます。ChatGPTは大量のデータをもとに学習しているため、一般的なマニュアル形式の文書を作成するのが得意です。一章ずつ確認しながら進めると、スムーズに作成できます。
4. ドラフトのレビューと編集
ChatGPTが生成したドラフトを、総務担当者がチェックします。社内の実情に合っているか、最新のルールが反映されているか、誤った情報が含まれていないかなどを確認し、必要に応じて修正・追記を行いましょう。
5. 社内用語やスタイルの統一
社内マニュアルは企業ごとに使用する用語や文体が異なります。そのため、ChatGPTが生成した文章を社内で使われる言葉や表現に合わせて調整する必要があります。また、レイアウトやフォーマットも統一し、見やすくわかりやすい形に整えることが大切です。
6. 完成・共有
最終的にマニュアルが完成したら、社内で共有します。電子データとして配布する場合は、検索しやすい形式(PDF・Webページ・クラウドストレージなど)で保存すると、従業員が必要な情報をすぐに探せるようになります。
このように、ChatGPTを活用することでゼロからすべて手作業で作るよりも短時間でマニュアルを作成でき、担当者の負担を大幅に軽減できます。特に、分量の多い社内規程や業務マニュアルの作成には、ChatGPTのサポートが大きな力になります。
ChatGPTを活用した社内マニュアルの更新手順
社内マニュアルは一度作成したら終わりではなく、制度変更や業務フローの改善に合わせて定期的に更新することが必要です。ChatGPTを活用すれば、更新作業も自動化し、より効率的に管理できます。
社内マニュアルの修正
例えば、社内規程が改定された際には、その変更点をChatGPTに入力し、「該当する章の文章を書き換えてください」と指示することで、新旧の差分を踏まえた改訂版文章を生成できます。ChatGPTは膨大な文脈を保持できるため、前後の章内容に矛盾が生じないよう調整しつつ修正案を示してくれます。担当者はそれをベースに細部を調整するだけで済み、手動で一から書き直すより負担が軽くなります。
社内マニュアルの項目追加
社内で頻出する質問やトラブル事例を集めておき、定期的にChatGPTに分析させることで、「マニュアルに追加すべき項目」の提案を受けることも可能です。例えば「最近○○の問い合わせが増えている」というデータが得られれば、ChatGPTにその内容についての説明文を書かせ、新たなQ&Aとしてマニュアルに追記するといった対応がスムーズに行えます。これにより、マニュアルが常に最新のニーズに対応し、実用性の高い内容になっていきます。
総務担当者としても、ChatGPTに任せられる更新作業は委ね、人間は内容の確認や承認に注力するといった形で、効率よくマニュアル管理を行うことが求められるでしょう。
総務部門の業務にAIを上手く活用しましょう
AIの活用により、総務部門は業務の効率化やコスト削減を実現し、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。問い合わせ対応の自動化、書類管理のデジタル化、勤怠・経費管理の最適化など、さまざまな業務がAIによってスムーズに進められます。一方で、導入には初期コストや運用負担、AIの精度やセキュリティリスクなどの課題もあるため、適切な対策が求められます。AIを上手に活用し、総務部門の役割を進化させることで、企業全体のDX推進を後押ししましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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