- 更新日 : 2024年12月19日
特定技能とは?目的や種類、在留資格を解説!
特定技能制度は外国人労働者を受け入れるために、2019年に創設された制度です。労働力不足解消を目的とした制度で、特定技能外国人には5年の在留資格が与えられます。特定技能1号と特定技能2号があり、1号は12分野、2号は2分野での就労が可能です。企業が特定技能外国人を受け入れる際は、就業規則の多言語化といった準備が必要です。
目次
特定技能とは?
特定技能制度は2019年に導入された、外国人労働者を受け入れる制度です。高度専門職や技能実習といった就労可能な在留資格の一つで、特定技能1号と特定技能2号の2種類があります。特定の技能を持つ外国人に対して最長5年の在留資格を付与するもので、特定技能者と認められた外国人は日本でその特定技能を活かした職に就くことができます。
特定技能が制度化された背景・目的
特定技能制度は日本の労働力不足問題を背景に、その解決を目的として創設されました。人口減少や少子高齢化による労働人口減少に伴い、日本は深刻な労働力不足に陥っています。とりわけ一部の産業や中小企業の人材確保は困難を極め、早急な対策が求められていました。そのような状況下で問題解決の手段として外国人労働力が注目され、特定技能制度が設けられました。
2018年12月に閣議決定された「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本指針」において、特定技能制度の意義は「中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築することである。」とされています。
技能実習と特定技能の違い
技能実習制度は外国人が日本の高度な技術を習得し、帰国して母国に広めるという国際貢献を目的とした制度です。これに対し、特定技能制度は日本の人手不足を解消する目的で創設された制度である点が異なります。ただし、要件を満たせば技能実習から特定技能への在留資格変更が認められています。
特定技能によって就労可能な業種
特定技能者は、特定産業でのみ就労できます。特定技能1号・特定技能2号の特定産業分野は、以下のとおりです。
特定技能1号の特定産業分野
- 介護分野
- ビルクリーニング分野
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造分野
- 建設分野
- 造船・舶用工業分野
- 自動車整備分野
- 航空分野
- 宿泊分野
- 農業分野
- 漁業分野
- 飲食料品製造業分野
- 外食業分野
①介護分野・②ビルクリーニング分野は厚生労働省、③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造分野は経済産業省、④建設分野・⑤造船・舶用工業分野・⑥自動車整備分野・⑦航空分野・⑧宿泊分野は国土交通省、⑨農業分野・⑩漁業分野・⑪飲食料品製造業分野・⑫外食業分野は農林水産省の管轄です。
特定技能2号については、建設分野と造船・船用工業分野の2分野のみが特定産業分野とされています。
特定技能の種類
特定技能制度には、特定技能1号と特定技能2号の2種類があります。それぞれの内容や違いについて見ていきましょう。
特定技能1号
特定技能1号は特定産業分野における相当の知識、または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
- 在留期間:1年、6ヵ月または4ヵ月ごとの更新、通算で上限5年まで
- 技能水準:試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除)
- 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除)
- 家族の帯同:基本的に認められない
特定技能2号
特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
- 在留期間:3年、1年または6ヵ月ごとの更新
- 技能水準:試験等で確認
- 日本語能力水準:試験等での確認は不要
- 家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者、子)
| 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
|---|---|---|
| 在留期間 | 1年、6ヵ月または4ヵ月ごとの更新、通算で上限5年まで | 3年、1年または6ヵ月ごとの更新 |
| 技能水準 | 試験等で確認 | 試験等で確認 |
| 日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認 | 試験等での確認は不要 |
| 家族の帯同 | 基本的に認められない | 要件を満たせば可能(配偶者、子) |
特定技能と在留資格
特定技能は、特定産業分野に関する活動であることを条件に与えられる在留資格です。特定技能1号に対しては1年・6ヵ月・4ヵ月ごと、特定技能2号に対しては3年・1年・6ヵ月ごとの更新で付与されます。特定技能1号には上限も定められており、通算で5年しか在留が認められませんが、特定技能2号には上限がありません。
特定技能の資格を得るための条件
特定技能の資格を得るためには、外国人本人が以下の要件を満たす必要があります。
- 18歳以上であること
- 技能試験及び日本語試験に合格していること(技能実習2号を良好に修了した外国人は免除)
- 特定技能1号で通算5年以上在留していないこと
- 保証金を徴収されていないこと、または違約金を定める契約を締結していないこと
- 自らが負担する費用がある場合、内容を十分に理解していること
特定技能制度はいつから使用可能?
特定技能制度は、2018年に可決・成立した改正出入国管理法によって創設された制度です。2019年4月から、特定技能1号の受け入れが開始されています。
特定技能の従業員を企業が受け入れるメリット
企業が特定技能の従業員を受け入れるメリットは、以下のとおりです。
人手不足が解消する
特定技能制度は、もともと労働力不足の問題を解決する目的で導入された制度です。特に人手不足が深刻な建設業などの業種で積極的に活用されることで、社会的不安の解消につながることが期待されます。
企業価値が向上する
外国人労働者を受け入れることで,企業の多様性が高まります。多様性の推進は世界的に求められている、企業の取り組むべき重要課題に位置付けられています。特定技能の受け入れによって従業員の多様化が図れ、多様性の推進につながることで企業価値が向上します。
生産性向上につながる
特定技能の外国人を職場に迎え入れることで、新しい人間関係が生まれます。組織をリフレッシュする効果があり,生産性向上につながることが期待できます。
特定技能の従業員を受け入れるデメリット
一方、以下の点が企業の特定技能の従業員を受け入れるデメリットになります。
費用がかかる
特定技能の従業員を採用する際には、紹介料や在留資格申請費用といった費用がかかります。また受け入れ体制の整備を自社で行わずに委託する場合は、登録支援機関に対する料金支払いも発生します。
言葉の壁がある
外国人労働者とは言葉の壁があり、日本人同士のようにスムーズにコミュニケーションを取ることは難しいでしょう。日本語が堪能であっても仕事で使用する専門用語などは通じず、意思疎通が円滑にいかないことが多々あります。
特定技能の従業員を受け入れるために企業が準備すべきこと
特定技能の外国人労働者を従業員として受け入れるために、企業は以下の準備を行う必要があります。
- 就業規則や社内規則を変更する
- マニュアルなどを多言語化する
- 一時帰国のための休暇制度を設ける
マニュアルなどの多言語化では、特に安全に関するものについては外国人がわかりやすい形に整備する必要があります。また外国人が安心して働けるよう、文化や慣習の違いに十分に配慮しなければなりません。
特定技能制度において企業が使用できる補助金など
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、特定技能制度によって外国人労働者を受け入れる企業を支給対象とする助成金制度です。外国人特有の事情に配慮した就労環境を整備し、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部が助成されます。
支給額
賃金要件を満たした場合は支給対象経費の2/3(上限金額72万円)
賃金要件を満たしていない場合は支給対象経費の1/2(上限金額57万円)
- 支給対象経費①通訳費
②翻訳機器導入費(上限金額10万円)
③翻訳料
④弁護士や社会保険労務士等への委託料
⑤多言語に対応した社内標識類の設置・改修費
行うべき取り組み
2つの必須メニューに加えて、選択メニューのうち1つを実施する必要があります。
- 必須メニュー:雇用労務責任者の専任
- 必須メニュー:就業規則等の社内規定の多言語
- 選択メニュー:苦情・相談体制の整備
- 選択メニュー:一時帰国のための休暇制度の整備
- 選択メニュー:社内マニュアル・標識等の多言語化
主な支給要件
- 外国人労働者の離職率が10%以下であること
- 日本人労働者の離職率が上昇していないこと
- 外国人雇用状況届出を適正に届け出ていること
外国人労働者の受け入れに、特定技能制度を活用しよう
特定技能制度は外国人労働者の受け入れを目的に、2019年に創設された制度です。特定技能1号と特定技能2号の2種類があり、特定技能者に認定されると1号は12分野、2号は2分野の特定産業分野での就労が可能になります。
特定技能で外国人労働者を受け入れることには、人手不足が解消することの他に、企業価値が高まる、生産性が向上するといったメリットがあります。また補助金を受けることで、費用の負担を軽減することができます。外国人労働者の受け入れや特定技能制度の活用を考える際は、このようなメリットがあることを踏まえて前向きに検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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