• 更新日 : 2025年4月17日

転勤したら住民税はどこに払う?国内転勤と海外転勤の違いを徹底解説

転勤が決まると気になるのは「住民税はどこに払うの?」という疑問です。 国内転勤と海外転勤では、住民税の納付先や手続きが大きく異なります。

転勤後に住民税について正しく手続きを行わないと、納付漏れが発生する可能性があり、後々トラブルにつながることもあるため、注意が必要です。

本記事では、転勤後の住民税の仕組みをわかりやすく解説し、スムーズに進めるためのポイントを伝えます。 転勤による住民税の納付に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

住民税は1月1日時点で住んでいた自治体に納める

住民税は、前年の1月1日〜12月31日までの1年間の所得に対して課される税金であるため、1月1日時点で住んでいた自治体に納付する仕組みです。

たとえば以下のケースで考えてみましょう。

2025年1月1日時点でA市に住み、4月にB市へ転勤した場合2024年1月~12月分までの所得にもとづく住民税は、2025年6月からA市に支払い、引越し先であるB市への納税義務はない
引き続き2026年1月1日にB市に住んでいた場合2025年1月~2025年12月までの所得にもとづく住民税は、2026年6月からB市に納付先が変更になる

ルールがわかりにくい住民税は、転勤したら2重払いになるのではと心配になる方もいるでしょう。しかし住民税をどこの自治体に納付するかは、「1月1日にどこに住んでいたのか」によって確定するため、2重払いになることはありません。

以下の記事では、住民税の計算方法などについて詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

転勤した場合の住民税の手続きは必要?

転勤によって住んでいる自治体が変わった場合でも、住民税は「1月1日時点で住んでいる自治体」に納付するルールのため、転勤のタイミングで納付先は変わりません。

しかし「従業員や会社は、何も手続きをしなくてもいいのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。

次項では、転勤者がいた場合の従業員と企業、それぞれの住民税に関する手続きについて解説します。

従業員は手続き不要

転勤になった従業員は、引越しの際に「転出届・転入届」を各自治体に提出していれば、従業員が行うべき住民税の手続きはありません。

ただし「転出届・転入届」が未提出だと、正しく住民税の納付ができないだけでなく、罰則が課される可能性があります。

住民基本台帳法第五十二条の二では、正当な理由なく届出をしない場合、「五万円以下の過料に処する」と定められています。

また従業員から新しい住所の申し出がなければ、企業も手続きが行えません。したがって、転勤者がいる場合は、「転出届・転入届」の提出の有無を把握し、企業への新しい住所の届出を済ませるよう促しましょう。

参考:e-Gov法令検索「住民基本台帳法第五十二条の二」

企業は「異動届出書」の提出が必要

住民税は1月1日時点で住んでいる自治体に納付するルールですが、転勤で給与支払者が変わる場合は「異動届出書」を提出する必要があります。

なお異動届出書とは、転勤前の事業所での特別徴収を停止して、転勤先の事業所で特別徴収を行うために必要な手続きです。

なお、住民税の取り扱いにおいて、転勤により給与支払者が変わるケースとは、以下のような場合が考えられます。

  • 子会社やグループ会社など別法人への移籍出向による転勤である
  • 同一法人内で、拠点ごとに給与計算や住民税の支払いを行っている

    企業が特別徴収した住民税を支払う場合、各自治体から指定番号が振り分けられます。

    本社で一括して住民税の支払いを行っている場合、各拠点ごとに指定番号がありません。転勤しても給与支払者は本社のまま変更がないため、異動届出書の提出は不要です。

    一方で、拠点ごとに指定番号を持っており、各自治体に住民税の納付をしている場合は、給与支払者はそのままですが指定番号が拠点ごとに異なるため、異動届出書の提出が必要になります。

    届出書を提出する場合、転勤前の事業所と転勤先の事業所を記載した「異動届出書」を提出し、受理されると、新たな特別徴収決定通知書と納付書が事業所に届くので、転勤先での納付が必要となります。

    電子データで提出する場合は、各自治体により定められている書類の追加提出が求められる場合があるので、届出する自治体の公式HPを確認しましょう。

    海外転勤でも住民税は支払う?

    海外転勤をした場合でも、住民税の納付義務が発生するかどうかは、海外赴任のタイミングや期間、1月1日時点での居住地によって異なります。

    次項では、海外転勤時の住民税の納付義務や、期間による扱いの違い、必要な手続きについて詳しく解説します。

    海外転勤が1年未満の場合

    海外転勤の期間が1年未満であれば、1月1日時点で海外にいたとしても、日本に住所がある「居住者」として扱われるため、住民税の課税対象者です。

    たとえば、2024年12月に出国し、2025年10月に帰国する場合、1年未満の海外転勤のため、2024年1月〜12月までの1年間の所得にもとづく住民税が発生し、2025年6月から納付します。

    そのため、海外転勤が1年未満の場合、海外転勤していない場合となんら変わらず特別徴収を継続することになります。

    海外転勤が1年以上の場合

    海外滞在期間が1年以上になる場合、生活の拠点を海外に置くとみなされるため、従業員は自治体に「国外転出届」を提出します。

    国外転出届とは、「生活の拠点を日本から海外に移す」ための手続きです。届出書が受理されると、除票となるためその年の1月1日時点で国内に住所がなければ、前年の所得にもとづく住民税は発生しません。

    ただし、国内にマイホームなどの住居を所有している場合は、住民税の家屋敷課税である均等割りが課税されるケースがあります。

    国外転出届は、渡航の14日前から当日までの間に、本人または世帯主や同一世帯の家族による提出が求められます。

    企業は提出を促すようにしましょう。

    住民税についてよくある質問と回答

    住民税は、毎年1月1日時点で住んでいる自治体に納付する地方税ですので、その後年内に転居、海外転勤となっても1月1日時点で住んでいる自治体への支払いが継続します。ただし、さまざまなライフイベントによって、住民税の納付義務や納付方法などが異なるため、多くの疑問を抱く人も多いでしょう。

    たとえば、ふるさと納税後に転勤した場合の扱いや、退職後に転職先が決まるまでの住民税の納付支払い方法など、手続きを正しく理解していないと損をしてしまう可能性もあります。

    次項では、住民税についてよくある2つの質問と回答を紹介しますので、参考にしてみてください。

    転職した場合の住民税はどうなる?

    会社員の住民税は、基本的に給与から天引きされる「特別徴収」の方法で納付されています。 そのため転職した場合には、それぞれ異なる手続きが必要になりますが、 退職時の状況によって対応が異なります。

    以下では、2つのパターンについて解説していきますので、ご参考にしてください。

    まず退職時に転職先が決まっている場合、企業は特別徴収を継続する旨の「給与取得者異動届出書」を自治体に提出し、特別徴収義務者を前の職場から転職先へ変更する手続きを行います。

    通常、この届出書は退職する会社側が、転職先の情報を記載した上で自治体に提出します。 ただし、転職先の情報を前職に伝えたくない場合は、以下の方法も可能です。

    まず、退職する会社に必要事項を記入してもらった異動届出書を受け取り、その後、転職先の会社で残りの情報を記入してもらい、自治体に提出するという方法です。この手続きを行うことで、転職先でも引き続き特別徴収による住民の納付が継続されます。

    退職時にまだ転職先が決まっていない場合、特別徴収を継続することはできません。 そのため、12月末までの退職であれば本人が希望する場合は一括徴収、希望がなければ普通徴収に切り替え、退職後の住民税は自治体から送られる納付書を使って本人が直接納付することになります。

    また1月から4月途中で退職する場合、住民税は一括徴収が原則です。4月以降に再就職した際、転職先で特別徴収を再開するには、転職先の会社に特別徴収の希望を伝え、手続きを行ってもらう必要があります。

    なお、退職後に転職先が決まるまで期間が空いた場合は、前職の会社から異動届出書が送付されないため、転職先で作成が必要になる点を覚えておきましょう。

    以下の記事では、特別徴収と普通徴収について詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

    ふるさと納税は転勤したらどうなる?

    ふるさと納税は、海外転勤か国内転勤かによって、控除対象になるかどうかが決まります。

    たとえばふるさと納税を行った翌年の1月1日以降に海外転勤した場合、日本国内の居住者とみなされるため、納税義務が発生することによりふるさと納税の控除が受けられます。

    一方、ふるさと納税をした年の途中で1年以上の海外転勤となり、翌年の1月1日時点で海外に居住している場合は、日本の「非居住者」となり住民税が発生しないため、ふるさと納税のメリットを受けられません。

    国内で転勤や引越しをした場合は、ワンストップ特例制度を利用しているかどうかによって手続きが異なります。

    ワンストップ特例申請の申請済みであれば、寄付を行った年の翌年の1月10日までに、寄付先の自治体に「申請事項変更届出書」と、変更部分が確認できる本人確認書類の郵送が必要です。

    ワンストップ特例申請が未申請であれば、ふるさと納税を利用したサイトに問い合わせて、手続き方法を確認しましょう。

    ふるさと納税をした後に転勤する可能性がある場合は、権利が受けられなくなるリスクを考慮し、事前に制度の仕組みをしっかりと守ることが大切です。

    住民税の仕組みを理解して適切な手続きをしよう

    転勤後の住民税は、1月1日時点で住んでいる自治体に納める仕組みです。

    従業員側で特別な手続きをする必要はありません。ただし給与支払者が変わる場合、企業は「異動届出書」の提出が必要であり、転勤先の自治体に住民税の納付が適切に行われる手続きをします。

    また海外転勤は転勤期間により、住民税の納付義務の有無が変わります。

    正しい納税をするためにも、転勤が決まった際には早めに住民税の仕組みを確認し、必要な手続きを漏れなく進めることが大切です。


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